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自動車大手、新型コロナ禍を受け2020年上半期の販売台数が大きく減少(ドイツ)

2020年9月9日

ドイツの自動車メーカー大手3社が7月下旬から8月上旬にかけて、2020年上半期の業績を発表した。新型コロナウイルスの影響を受け、世界経済は減速。主要市場のGDP成長率の見通しも厳しい。IMFが6月に発表した予測では、2020年通年の実質GDP成長率は、ユーロ圏がマイナス10.2%。米国もマイナス8.0%、中国は1.0%と低水準にとどまる。

2020年上半期、新型コロナウイルスはドイツの自動車大手にどのような影響を及ぼしたのか。また、3大メーカーはこの危機にどのように対応し、今後の市場動向をどうみているのか。公表された各社の業績報告から、2020年上半期の生産・販売状況と今後の経営戦略を読み解く。

ドイツ自動車大手の2020年上半期の販売台数、全世界で2~3割近く減少

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、2020年上半期、ドイツの自動車大手の販売は大きく減少した。各社の乗用車販売台数は、前年同期比で2割から3割近く減少。特に、欧州の落ち込みは3割から4割近くに達した。

他方、2020年第1四半期(1~3月)に影響を受けた中国市場は、第2四半期(4~6月)に回復した。その結果、2020年上半期の中国での販売台数は、他地域に比べて減少が抑えられた。例えばBMWの中国での販売は、第1四半期に急激に落ち込み、前年同期比30.9%減となっていた。しかし、4月から回復。第2四半期は前年同期比で17.0%増となった。また、ダイムラーの場合、中国では2月に底を打ち、メルセデス・ベンツとスマートの第2四半期の販売台数は19万6,173台(前年同期比16.6%増)と、過去最高を記録している。

表1:BMWグループの乗用車販売台数(2020年上半期)

ブランド別(単位:台、%)(△はマイナス値)
ブランド名 販売台数 前年同期比
BMW 842,153 △ 21.7
MINI 118,862 △ 31.1
ロールスロイス 1,560 △ 37.6
合計 962,575 △ 23.0

注:「BMW」には華晨汽車集団(Brilliance)との合弁会社分を含む。

国・地域別(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 販売台数 前年同期比
欧州 372,754 △ 32.3
階層レベル2の項目ドイツ 116,362 △ 27.9
階層レベル2の項目英国 63,919 △ 47.0
米州 152,580 △ 30.5
階層レベル2の項目米国 121,318 △ 29.5
アジア 416,882 △ 8.2
階層レベル2の項目中国 329,447 △ 6.0
その他 20,359 △ 24.0
合計 962,575 △ 23.0

注:「アジア」「中国」には華晨汽車集団(Brilliance)との合弁会社分を含む。
出所:BWM四半期報告(2020年6月30日)からジェトロ作成

表2:ダイムラー・グループの乗用車販売台数(2020年上半期)(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 販売台数 前年同期比
欧州 302,559 △ 37.0
階層レベル2の項目ドイツ 100,556 △ 37.4
北米 128,831 △ 21.7
階層レベル2の項目米国 110,977 △ 20.6
アジア 417,346 △ 6.4
階層レベル2の項目中国 327,739 △ 4.0
その他 30,769 △ 23.8
合計 879,505 △ 22.2

注:メルセデスベンツおよびスマートの合計。
出所:ダイムラー「2020年第2四半期中間報告」からジェトロ作成

表3:VWグループの乗用車等販売台数(2020年上半期)

ブランド別(単位:台、%)(△はマイナス値)
ブランド名 販売台数 前年同期比
VW乗用車 2,198,908 △ 26.7
アウディ 707,225 △ 22.0
シュコダ 426,712 △ 31.3
セアト 193,419 △ 38.5
ポルシェ 116,964 △ 12.4
ベントレー 4,918 2.8
ランボルギーニ 3,548 △ 22.1
ブガッティ 33 △ 21.4
VWブランド商用車 163,633 △ 37.0
合計 3,815,360 △ 27.2
国・地域別(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 販売台数 前年同期比
欧州・その他地域 1,603,005 △ 35.3
階層レベル2の項目西欧 1,212,360 △ 37.4
階層レベル3の項目ドイツ 451,183 △ 34.9
階層レベル3の項目フランス 91,513 △ 41.2
階層レベル3の項目英国 157,599 △ 47.8
階層レベル3の項目イタリア 101,947 △ 40.7
階層レベル3の項目スペイン 91,165 △ 46.9
階層レベル2の項目中・東欧 276,052 △ 27.1
階層レベル2の項目その他 114,593 △ 28.7
北米 339,245 △ 26.1
階層レベル2の項目米国 247,781 △ 22.2
南米 169,166 △ 33.9
アジア大洋州 1,703,944 △ 16.9
階層レベル2の項目中国 1,588,923 △ 17.0
合計 3,815,360 △ 27.2

注:中国の合弁会社分を含む。VWブランド商用車を含む。
出所:VW半期ファイナンス報告(2020年1~6月)に基づきジェトロ作成

生産を2020年3月に一時停止、需要回復に合わせ生産を徐々に再開

2020年上半期の販売台数の減少は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた一時的な需要減や、感染拡大を防ぐためディーラー店舗が一時的に閉鎖したことなどに起因する。需要減を受けて、各社は世界各地の工場で生産を一時停止した。BMWは中国・瀋陽の合弁工場を2020年1月末から2月中旬まで停止。続いて 3月中下旬から5月中旬まで欧州・米国の工場を停止した。ダイムラーは3月下旬から欧州で生産の大部分と幾つかの管理部門・子会社を2週間休止、その後「短時間労働給付金制度」(注1)を導入しつつ、労働時間を低減させた。

第2四半期に入り、新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大が抑えられ、需要が徐々に持ち直してきた。このことを受け、各社とも適切な感染対策措置をとった上で生産を再開した。BMWは第2四半期から生産を再開、6月中旬からは全工場で通常シフトをとっている。ダイムラーも乗用車工場について4月中旬から徐々に生産を再開、6月30日付で本社従業員の「短時間労働給付金制度」下での短縮労働を終えた。3月中旬に生産を停止したフォルクスワーゲン(VW)は4月上旬、中国工場用の部品生産のためドイツ国内の部品工場の生産を再開した。4月下旬には乗用車を生産するツビッカウ工場、ボルフスブルク工場を再開。6月中旬のメキシコ・プエブラ工場の生産再開をもって、全世界でVWの乗用車工場が再開したことになる。6月末時点のドイツ国内のVW工場の生産状況は、新型コロナウイルス拡大前に比べ75~95%程度までに回復したという。

2020年下半期、販売は回復も上期の落ち込みを補えず

各社は2020年下半期の販売についてどのように見通しているのか。

各社ともに、新型コロナウイルスの影響が見通せないながらも、販売状況は改善するとみる。だが、上半期の落ち込みは補えず、2020年通年では販売台数が前年を下回るとの見立てだ。例えばBMWのオリバー・ツィプセ最高経営責任者(CEO)は、2020年下半期について「上昇トレンドがどの程度か、いつ個々の市場が回復するか」がカギになるとしている。

ダイムラーのオラ・ケレニウス会長は、慎重ながらも、「中国市場の回復に他の地域も追随する」とみる。ただ、それでも、同社の2020年通年の乗用車販売台数は前年を下回る見込みだ。VWもグループ全体の2020年の販売台数が前年を下回るとする。なお、ドイツ自動車産業連合会(VDA)は7月3日、2020年の全世界の乗用車市場が前年比17%減の6,590万台になるとの予測を発表した(2020年7月15日付ビジネス短信参照)。

構造改革を加速させる各社

販売台数の減少は、売り上げ減に直結する。その中で利益を生み出す(または損失を抑える)ためには、費用面、特に固定費削減が必須だ。新型コロナウイルス感染拡大前からも、各社は構造改革に取り組んでいた。2020年上半期には、さらなるコスト面の対策を出している。

BMWは選択と集中を進めている。2020年上半期の投資額(設備投資・無形固定資産)は前年同期比で32.1%減の14億7,700万ユーロだったと発表した。ツィプセCEOは「全部門で費用削減を意識し、生産の効率化・構造改革をさらに進める」とした。また、自然減と早期退職などで従業員数も抑える。「フランクフルター・アルゲマイネ」紙(6月20日付)によると、同社は従業員を約6,000人削減する予定という。また、ハンガリーの新工場稼働を1年延期すると決定したと同社は発表している。

ダイムラーも構造改革を進める。小型車スマートを生産するフランス・ハンバッハ工場を売却するほか、メキシコ工場(アグアスカリエンテス)、米国工場(タスカルーサ)の生産能力も調整する。ケレニウス会長は「われわれの世界中の工場の生産能力を市場の需要に合わせることを計画する」とした。また、「フランクフルター・アルゲマイネ」紙(7月13日)は、同社がこれまで明らかにしていた早期退職などによる従業員約1万5,000人削減計画は、新型コロナの影響でその削減数はこれを上回るものになるとダイムラーがコメントしたと報じている。VWもトルコ工場の新設を白紙撤回したという。

EV、プラグインハイブリッド車の投入を本格化

生産能力を需要に合わせる一方で、各社は将来への投資も進める。その1つが電動化だ。BMWの2020年上半期の販売台数は前年同期比で23.0%減少した。しかし、その中でも純電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車は3.4%増加の6万1,652台となった。ツィプセCEOは2020年通年では約20万台の電動車両の販売を見込む。特に、プラグインハイブリッド車の販売が伸びると予想する。同社は厳しい状況であるにもかかわらず、2020年上半期の研究開発への支出を前年同期比2.2%減(27億3,400万ユーロ)とほぼ同額を維持。電気自動車(EV)の研究開発をさらに進めている。2023年までに電気駆動車25車種を市場投入し、10年以内にBMWグループの電動車両を700万台以上販売、うち3分の2はEVとすること、を目標に掲げる。

ダイムラーも2020年末までにBEVを5モデル、プラグインハイブリッド車を20モデル展開する予定だ。同社の2020年上期の研究開発費は前年同期比2.1%減の46億ユーロ。主として次世代EVや蓄電池製造などの研究開発を進めた。同社が2020年9月に発表した新型Sクラスについて、ケレニウス会長は「電動化とデジタル化という2つの戦略的の焦点を結合したもの」とする。新型Sクラスのプラグインハイブリッド車は同セグメントで最大の航続距離となる見込みだ。

VWも2025年までに20、2028年までに約70のEVモデルの市場投入を予定する。またEVの生産は、2025年に150万台を見込む。それに向けて、VWグループとして2024年までに330億ユーロ、うちVWブランドで110億ユーロを投資するとした。VWグループのEVは、ドイツ国内ではツビッカウ、エムデン、ハノーバー、ツッフェンハウゼン、ドレスデンの各工場で生産される見込み。VWは2020年9月、MEB(注2)によって製造する車種「ID.3」について、欧州での納車を開始する。

車載ソフトウエアの開発にも注力

もう1つのテーマは車内システム、ソフトウエアの開発だ。背景には、ドイツ自動車大手3社がこの分野で米国のテスラに後れを取ったという危機感がある。VWグループでは、2020年4月に就任したマルクス・デュースマン・アウディCEOがVWグループの研究開発を統括。ソフトウエア開発も担当する。具体的には、2020年末までにグループのソフトウエアエンジニア約5,000人をグループ全体の車両関連ソフトウエアを担当する組織「Car.Software-Organization」に送り込む。これによって、ブランド横断でグループ全体が統一的に使えるソフトウエアの開発を加速する。2025年までに70億ユーロ以上を投資する予定だ。「Car.Software-Organization」は2019年6月に設立が発表され、2020年1月からはグループ内で独立企業として活動している。VWグループで使用するソフトウエアのうち自社開発の割合は2019年6月時点で10%未満だった。しかし、2025年までに6割にすることを目指すという。ダイムラーも2020年6月、米半導体大手エヌビディアとの提携を発表した。車載コンピュータ、AI(人工知能)コンピュータシステムの開発で協力。2024年から新システムを導入する予定だ。


注1:
一時的に休業する労働者の賃金などの一部を助成する制度。日本の雇用調整助成金に相当。
注2:
Modularer E-Antriebs-Baukastenの略。VWが開発した次世代EV向けモジュラープラットフォーム(共通設計・部品共通化のための基盤)。
執筆者紹介
ジェトロ・ミュンヘン事務所長
高塚 一(たかつか はじめ)
1999年、ジェトロ入構。2009年~2012年ジェトロ・デュッセルドルフ事務所、2020年7月から現職。

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