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収益にマイナス影響も、日系企業は「攻めの姿勢」を堅持(中国)
新型コロナ禍以降の湖北省進出日系企業

2020年8月21日

中国・湖北省は、新型コロナウイルス(以下、ウイルス)感染拡大で甚大な被害を受けた。被害は、経済的な面にも及んだ。

しかし、3月11日以降、武漢市を除く地域で企業の操業再開を許可。また、3月21日からは武漢市でも操業の再開が認められた。また、3月25日から湖北省から省外、4月8日からは武漢市から省内外への移動制限も解除された。これにより、物流が回復するとともに、従業員の職場復帰も進み、徐々に省内企業の操業が正常化してきた。

現在、湖北省に進出する日系企業のビジネスはどのような状況なのか。ジェトロ武漢事務所では、武漢市を中心とする湖北省進出日系企業に対して、事業の現状や課題などに関する状況についてアンケート調査を実施した〔第1回:5月11~18日(2020年5月26日付ビジネス短信参照)、第2回:7月23~29日(2020年8月3日付ビジネス短信参照)〕。これらの結果を踏まえ、同省に進出する日系企業の動向についてレポートする。

約8割が収益にマイナス影響も、9割が操業を正常化

第2回の調査結果によると、新型コロナウイルスが2020年の収益にもたらす影響について「マイナスの影響がある」と回答した企業は、全体で78%に上った(表1参照)。「1~20%の減少」とした企業が45%で最多、「50%以上の減少」とした企業は5%にとどまった。一方で、「ほぼ影響なし」「プラスの影響がある」と回答した企業がそれぞれ17%、4%と、第1回の確認の結果と比較して増加した。また、自動車関連企業(35社)に限定すると、「ほぼ影響なし」「プラスの影響がある」とした企業はそれぞれ22%、5.7%となった。

表1:新型コロナウイルスの2020年の収益への影響見込み
項目 プラスの影響 ほぼ影響なし 1~20%減少 21~30%減少 31~40%減少 41~50%減少 51~60%減少 61~70%減少 70%以上減少
第1回調査
(5月11~18日、n=83)
0% 4% 37% 36% 13% 5% 0% 2% 2%
第2回調査
(7月23~29日、n=71)
4% 17% 45% 20% 7% 1% 1% 1% 3%

注1:湖北省進出日系企業を対象に実施。第1回調査は5月11~18日に実施し、有効回答数は83社。第2回調査は7月23~29日に実施し、有効回答数は71社。以下の表も同じ。
注2:割合は四捨五入しているため、合計が100とならない場合がある。
出所:ジェトロまとめ

事業の再開状況については、「ほぼ100%」と回答した企業が86%に上る。5月に実施した第1回と比較して、操業を正常化させた企業が10ポイント超増加した(表2参照)。

表2:事業再開の状況について
項目 ほぼ100% 70~80%
程度
半分程度 30~40%
程度
20%未満 再開できて
いない
第1回調査
(5月11~18日、n=83)
73% 12% 7% 2% 1% 4%
第2回調査
(7月23~29日、n=71)
86% 10% 3% 0% 0% 1%

出所:ジェトロまとめ

湖北省発展改革委員会がまとめた報告書によると、省内の主要業種に属する企業(注)の操業再開率と従業員の職場復帰率は、5月時点ですでにほぼ100%に達した。湖北省政府および省内各市政府は、税金や社会保険料などの減免、家賃補助、マスクなどの医療物資の供給といった企業支援策を相次いで打ち出し、企業の操業再開を支援してきた。進出日系企業も、こうした支援を背景に操業を再開。稼働率も向上していったと考えられる。

日系自動車メーカーの好調で、約2割がビジネス規模の拡大を検討

一方、今後の湖北省でのビジネスに関する方針では、「当面(1~2年程度)変更する計画なし」と回答した企業が72%で最多だった。これに、「規模を拡大する」の23%が続いた(表3参照)。逆に「規模を縮小する」と答えた企業はなかった。第1回調査時点から引き続き、湖北省進出日系企業が、今後も積極的なビジネス展開を進める姿勢を保持していることが分かった。

表3:今後の湖北省でのビジネス方針
項目 規模を拡大する 当面(1~2年程度)
変更する計画なし
規模を縮小する まだ分からない
第1回調査
(5月11~18日、n=83)
20% 72% 1% 6%
第2回調査
(7月23~29日、n=71)
23% 72% 0% 6%

出所:ジェトロまとめ

その要因の1つに、新型コロナ禍が収束に向かって以降に中国の自動車市場が急速な回復を遂げていることが挙げられる。中国自動車流通協会の発表(8月11日)によると、2020年7月における中国の乗用車販売台数は、前年同月比7.7%増の159万7,000台だった。特に日系ブランド車は、好調な販売が続いている。湖北省に進出する日系企業のおよそ半数が自動車関連企業だ。それら企業の主要な取引先である日系自動車メーカーが好調なことから、収益への影響や今後のビジネス方針に悲観的な見方が少なくなったと思われる。

事業を行う上での課題(複数回答)については、「現地従業員の賃金上昇」を挙げた企業が54%で最多。次いで「現地従業員の不足・採用難」が37%と続いた(表4参照)。近年、湖北省では半導体や第5世代移動通信システム(5G)、人工知能(AI)、ビッグデータをはじめとするハイテク産業への投資が拡大している。これらの投資が、湖北省の賃金相場の全体を押し上げていると考えられる。

表4:事業を行う上での課題(複数回答可)
項目 現地従業員の賃金上昇 現地従業員の不足・採用難 外部とのミーティング制限 取引先の操業再開の遅れ 駐在員の不足 市・省を跨ぐ物流の制限 工場やオフィスへの出社制限 当局による事業再開許可等の遅れ 防疫物資の不足 その他
第1回調査
(5月11~18日、n=83)
39% 24% 42% 25% 8% 14% 10% 7% 6% 25%
第2回調査
(7月23~29日、n=71)
54% 37% 23% 20% 13% 7% 4% 1% 0% 17%

出所:ジェトロまとめ

日本人駐在員の現地への復帰状況については、「ほぼ100%」と回答した企業が61%で最多だった(表5参照)。「復帰できていない」と答えた企業は17%にとどまった。5月時点の調査では、「復帰できていない」とした企業が55%だった。それ以降、駐在員の現地への復帰状況は大幅に改善したことが分かる。

表5:日本人駐在員の職場への復帰状況
項目 ほぼ100% 70~80%
程度
半分程度 30~40%
程度
20%未満 復帰できていない 元から派遣していない
第1回調査
(5月11~18日、n=83)
14% 8% 5% 2% 1% 55% 13%
第2回調査
(7月23~29日、n=71)
61% 7% 4% 0% 0% 17% 11%

出所:ジェトロまとめ

中国政府は、域外からのウイルス流入を未然に防ぐため、2020年3月以降、査証停止や航空便の運航制限などの措置を講じた。そこの規制で、多くの駐在員が中国に渡航できない状況が続いていた。しかし、6月以降、ビジネス事由に限り、招聘(しょうへい)状や査証の発給が緩和された。その結果、駐在員の復帰が進んだものとみられる。

湖北省進出日系企業は引き続き「攻めの姿勢」でビジネス展開

湖北省は、2020年上半期の域内総生産(GRP)成長率が前年同期比で19.3%の大幅な減少となった。しかし、企業の経済活動の再開によって、省内経済は着実に回復を遂げてきた。また、同省に進出する日系企業の経済活動も正常化しつつある。今回の調査結果から、湖北省に進出する日系企業が、引き続き「攻めの姿勢」でビジネス展開を進めていることが読み取れる。その大きな理由は、湖北省の基幹産業である自動車産業において日系自動車メーカーの生産が好調なことなどが考えられる。ただ、長期化する新型コロナ禍拡大がもたらす外需の落ち込み、米中貿易摩擦の国内産業に与える影響などに加え、湖北省などの長江流域に甚大な被害をもたらした洪水の影響などの懸念材料もある。湖北省に進出する日系企業にとって、なおも難しい経営環境が続くとみられる。


注:
工業、建築業、卸小売り・宿泊飲食業、サービス業
執筆者紹介
ジェトロ・武漢事務所
片小田 廣大(かたおだ こうだい)
2014年、ジェトロ入構。進出企業支援・知的財産部進出企業支援課(2014~2015年)、ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課(2015~2016年)を経て現職。

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