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経済は順調、高付加価値化を目指す動きも(ポーランド、ハンガリー、チェコ、ルーマニア、オーストリア、スロバキア、西バルカン)
2020年政治経済展望セミナー(中・東欧編)報告

2020年2月14日

ジェトロは1月22日、在英日本商工会議所の後援で「2020年政治経済展望セミナー(中・東欧編)」をロンドンで開催した。ジェトロのワルシャワ事務所、ブダペスト事務所、ブカレスト事務所、プラハ事務所、ウィーン事務所の各所長がオーストリアを含む中・東欧の政治・経済動向について説明した。以下、概要を紹介する。

多くの国で内需は堅調、労働力不足に課題

ポーランドでは、2019年11月19日、再任されたマテウシュ・モラビエツキ首相を首班とする新内閣が発足した。モラビエツキ首相は、2020年1月21日、日本で安倍晋三首相と会談し、エネルギー、インフラなどの分野で日本政府や日系企業との関係を重視する姿勢を見せた(2020年1月30日付ビジネス短信参照)。経済面では、2018年の実質GDP成長率は5.1%とEU平均やドイツと比べても高く、個人消費が経済を下支えしている。

ハンガリーでは、オルバーン・ビクトル首相が「国家主権」「就労」「家族」を重視した政策を実施している。対外政策では、過度な欧州依存からの脱却を目指しアジア、ロシア、中東との関係強化に力を入れている。また、EU主導の難民受け入れに強い反対姿勢を示している。経済面では、2018年の実質GDP成長率は4.9%、2020年も3%台後半の成長率になるとみられ、成長軌道にある。貿易では輸出入ともにEUが全体の75%、うちドイツが25%と、EU、特にドイツ経済の影響を受けやすい面がある。

ルーマニアでは、2019年10月にルドビク・オルバン内閣が発足した。GDP成長率は2017年7.0%、2018年4.1%とEUトップ水準の伸び率であり、内需が安定成長を牽引している。他方で、現在はやや高インフレ状態であり、金融引き締めなどにより成長は抑制される見通しと説明した。また、リスクとしては、インフラ整備の遅れ、頻繁に変わる法律、税制の不安定さ、人口減少などが挙げられた。チェコでは、ロシアおよび中国との積極的な経済交流推進派として知られるミロシュ・ゼマン大統領が、アンドレイ・バビシュ首相と共に、EUによる加盟国への難民割当に強い反対姿勢を示している。なお、バビシュ首相にはEU補助金の不正受給や利益相反疑惑があり、首相退陣を求めるデモが拡大しているが、首相支持率は今のところ安定していると説明した。外需減速の影響を受けるも個人消費が成長を下支えし、2019年のGDP成長率は2.5%と予測されている。ドイツ経済の不振、英国のEU離脱(ブレグジット)など、外部要因に懸念はあるものの、比較的好調である。また、賃金上昇により消費者の購買力が高まっており、日本食への関心の高まりも見られる。

オーストリアでは、2020年1月2日、国民党と緑の党との連立による第2次セバスティアン・クルツ政権が発足した。2040年までの温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロの方針を発表するなど環境問題に力をいれており、この先のビジネスへの影響を注視する必要がある。また、進出に当たっては、人材確保と同様に、オフィスに関しても高コストとなる可能性があると指摘した。また、日本との間で社会保障協定が未締結であることから、駐在員を置く日系企業にとっては、公的年金保険料の二重支払いなどのコスト増の要因になり得ると説明した。

スロバキアでは、2020年2月29日に総選挙が予定されており、現職のペテル・ペレグリニ首相が続投するか注目されている。また、西バルカン(アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、モンテネグロ、北マケドニア、セルビア)の経済は、不況から回復し、安定成長に入った。好況が続くが、西欧、特にドイツの影響が大きく、経済が冷え込めば、影響は避けられない見通しである。また、西バルカンへの直接投資は、2017年、金融危機前のレベルまでほぼ回復した。特にセルビアへの投資は堅調であり、近年では、アルバニアへの投資も増加している。

ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、チェコ、スロバキアでは、経済成長が堅調で内需が強い一方、人材不足、賃金上昇という課題が顕在化してきている。チェコ、スロバキアでは、外国人就業手続きを簡素化し、ウクライナ、セルビアなどの第三国から労働力を確保することによって対応している。オーストリアでは、人材確保が日本と比較しても高コストとなることが指摘された。一方で、成長途上の西バルカンでは、高度な人材を比較的低賃金で雇用できる場合があるという。

高付加価値産業を目指す動きも

ポーランド政府は、IT人材の育成に力を入れ、国内各地に多くの工科大学も立地していることから、IT人材や起業家が増えている。そのため、高度な人材を西欧に比べて安い給料で雇用できる環境が整いつつある。また、2018年9月から新投資優遇制度が導入され、優先許可が必要な未開発鉄鋼資源上の土地を除く、国内のどの地域でも条件を満たせば法人税減免の恩恵を受けられるようになったことも、日系企業にとってはポジティブな材料と述べた。ハンガリーでは消費市場でのビジネス展開が活気づいていて、日本のモノやサービスを売り込む機会も到来している。また、高付加価値産業の振興を志向している政府の支援により、電気自動車分野などの新規投資や追加投資が続いている。2019年は特に蓄電池関係で韓国からの投資が目立ち、ドイツを抜いて投資額1位となった。

ルーマニアでは、カルパティア山脈による豊富な資源に恵まれており、北西部のクルージュ・ナポカ市には2つのITクラスターがあるなど、高度人材が集中しつつある。人口減少に伴う労働者不足という課題があるが、賃金は他の中・東欧諸国と比較していまだ低水準である。チェコ政府は、経済、産業の高度化を目指し、付加価値の高い案件・プロジェクトを誘致、推進しており、2019年2月には国家イノベーション戦略「未来へ向かう国」を発表した。また、2019年9月には投資優遇措置を改正し、労働集約型の組立工場の誘致から、研究開発分野やテクノロジーセンターなどを優遇対象とする政策へ転換した(2019年8月20日付ビジネス短信参照)。2019年12月には、交通インフラの建設・近代化などへの投資計画を盛り込んだ国家投資計画を発表(2019年12月26日付ビジネス短信参照)するなど、2019年は産業高度化に向けて大きくかじをきった年となった。

国際情勢とブレグジットの影響

ルーマニアは旧共産圏であり、ロシアの影響が強いと誤解されることがあるが、輸入量が増加傾向にある天然ガスなど一部を除いて、影響は大きくない。経済面では、ドイツやイタリアとの結び付きが強いが、ルーマニアはNATO加盟国でもあり、さまざまな場面で米国の意向が尊重されることも多い。第5世代移動通信システム(5G)導入に向け、華為技術(ファーウェイ)など、ルーマニア市場を狙う中国企業の動きも活発になっている。ハンガリーでは、インフラ整備を支えたEU補助金が見直しされるとされており、民間主導の開発に期待がかかる。これまで参入していなかった事業者にも市場参入の機会となるため、高い技術力を持つ日系企業にもチャンスとなる可能性がある。

ブレグジットの影響については、各国ともに、英国よりもドイツ経済の影響が強いこと、先が見えれば対応可能であることから、大きな影響はないとみられている。また、欧州拠点の移転を検討している日系企業に対し、オーストリアでは、欧州の中央に位置しているためフライトの便が良いこと、英語が通じることなどをアピールポイントとして、政府が日系企業の拠点をウィーンに誘致しようと力を入れていると説明があった。


ディスカッションおよびQ&Aセッションの様子(ジェトロ撮影)
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所
近藤 亜美 (こんどう あみ)
2020年、ジェトロ・ロンドン事務所インターンシップ。
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所
木下 裕之(きのした ひろゆき)
2011年東北電力入社。2017年7月よりジェトロに出向し、海外調査部欧州ロシアCIS課勤務を経て2018年3月から現職。

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