投資インセンティブ法を改正、高付加価値の投資誘致に転換

(チェコ)

プラハ発

2019年08月20日

チェコのミロシュ・ゼマン大統領は8月12日、投資インセンティブ法の改正法に署名した。より高い技術を創出する付加価値の高い案件の誘致に注力し、かつ、経済状況への臨機応変な対応を可能とすることを目的としている。

チェコでは、2000年に投資インセンティブ法が制定され、一定の条件を満たす投資企業に対して、法人税免除などの優遇措置が適用されてきた。現在は製造業、技術センター、戦略サービスセンター(ソフト開発、高度な機器などの修理、業務委託などビジネス支援を行う機関)を対象に、10年間の法人税免除、雇用創出に対する補助金支給などの優遇策が提供されている。

うち、製造業への投資に関しては、現行法ではインセンティブ適用対象は新規投資と既存拠点の拡張と定義されているが、改正法ではこれに新製品の生産や製法・手順の抜本的改革が追加された。これにより、生産工程のデジタル化やロボット導入も新たに優遇適用の対象となる。

また、インセンティブ適用条件について、改正法では、各投資案件に関して「高質の人材雇用あるいは高度な技術の導入を伴う付加価値の高い案件」が求められるが、その要件が別途の政令に基づき、追加され得ることが定められている。

現行法では、各業種に対して固定資産への投資額、雇用創出数などの適用基準が詳細に決められていたが、改正法では、環境基準をクリアしていることなど一般的な条件を定めるのみで、固定資産への最低投資額や新規雇用創出数、付加価値の高さを証明する具体的な条件などは全て、そのときの国の経済状況、労働市場状況を基に政府が政令で定めることになる。

政府が現在審議している政令案では、製造業への優遇適用基準から雇用創出数(現行法では最低20人)の条件が排除されている。これに代わって、「付加価値の高い案件」であることの証明事項として、従業員の80%の賃金が投資実現地の州の平均賃金以上であることに加えて、研究開発機関と提携関係にあるか、または、自社の研究開発担当者数が従業員数の2%以上を占める、あるいは、研究開発用の機械設備コストが全投資コストの10%以上を占めることなどの条件を満たすことが提案されている。また、投資インセンティブ適用対象が大企業に限定されないよう、中小企業に対してインセンティブ適用条件となる固定資産への最低投資額を50%引き下げるなど、適用基準の緩和も提議されている。政令の成立は10月ごろになる見込みだ。

(中川圭子)

(チェコ)

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