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清酒、その他日本産アルコール飲料の今(ブラジル)

2020年4月16日

2019年のブラジル向け日本酒輸出額は過去最高に

日本の財務省統計によると、2019年のブラジル向け日本酒(HSコード:2206.00-200)輸出額(FOB)は1億1,869万7,000円、数量で34万3,674リットルとなり、金額ベースでは過去最高となった(図1参照)。ブラジル向け日本酒輸出は、リーマン・ショックが発生した2008年をピークに2011年まで金額、数量ともに増減を繰り返していたが、2012年以降は徐々に回復している。2008年時点では、ブラジルで販売されている日本酒の多くが大手メーカーの普通酒だったが、今では純米酒や吟醸酒といった特定名称酒も増加している。また、最近では消費者の関心が、大手メーカーだけでなく、さまざまな酒蔵の製品に寄せられていることも、日本酒のブラジル向け輸出増加の背景にあるとみられる。2019年末に筆者が行ったヒアリング調査によれば、サンパウロ市内に出回っている日本酒は21道府県・54酒蔵、192銘柄となっている。また、そのうち28銘柄が純米大吟醸、33銘柄が純米吟醸だ。

図1: ブラジル向け日本酒輸出
1990年はFOB額345万1千円、量は7.871キロリットル、1991年のFOB額178万4千円、量は3.671キロリットル、1992年のFOB額85万1千円、量は2.188キロリットル、1993年のFOB額130万6千円、量は3,18キロリットル、1994年のFOB額283万3千円、量は6.825キロリットル、1995年のFOB額519万4千円、量は14,466キロリットル、1996年のFOB額は872万8千円、量は16.968キロリットル、1997年のFOB額は981万5千円、量は23.15キロリットル、1998年のFOB額は913万2千円、量は21.106キロリットル、1999年のFOB額は841万2千円、量は23.798キロリットル、2000年のFOB額は1546万円、量は43.049キロリットル、2001年のFOB額は2369万3千円、量は60.61キロリットル、2002年のFOB額は2965万1千円、量は80.387キロリットル、2003年のFOB額は3150万8千円、量は85.738キロリットル、2004年のFOB額は2509万1千円、量は63,757キロリットル、2005年のFOB額は3261万7千円、量は78.288キロリットル、2006年のFOB額は3340万3千円、量は75.502キロリットル、2007年のFOB額は4856万1千円、量は122.205キロリットル、2008年のFOB額は1億852万2千円、量は343.674キロリットル、2009年のFOB額は6963万4千円、量は256.442キロリットル、2010年のFOB額は8747万1千円、量は269.829キロリットル、2011年のFOB額は4906万2千円、量は96.986キロリットル、2012年のFOB額は6022万2千円、量は114.640キロリットル、2013年のFOB額は6878万6千円、量は116.667キロリットル、2014年のFOB額は9038万円、量は174.03キロリットル、2015年のFOB額は8798万1千円、量は183.628キロリットル、2016年のFOB額は9287万4千円、量は183.507キロリットル、2017年のFOB額は1億882万7千円、量は219.307キロリットル、2018年のFOB額は9281万3千円、量は207.471キロリットル、2019年のFOB額は1億1869万7千円、量は248.536キロリットルである。 

出所:財務省統計

ブラジル国産清酒に85年の歴史あり

同ヒアリング調査では、ブラジルの日系清酒メーカーは10社だった。その中でも存在が大きいのは「東麒麟」ブランドを製造販売するキッコーマン・ド・ブラジル社(以下、「東麒麟」)(注)で、市場関係者によれば、東麒麟はブラジル国産清酒で50~60%のシェアを占めているといわれている。

東麒麟の歴史は古く、日本人移民の健康と娯楽のための清酒を提供するため、三菱財閥3代目総帥の岩崎久弥氏によって、1934年に設立された。1975年からキリンビールが資本参加し、当時の最新技術を導入した新工場を建設し、品質向上および製造能力増強を行った。東麒麟は現在、一年中「寒造り」で清酒を仕込むことができる工場を有している。清酒造りに適した水は地下130メートルからくみ上げ、酒造好適米ではないが酒造りに適したあきたこまち米をウルグアイから調達している。

2000年代に入り、サンパウロを中心とした都市部では、サトウキビの絞り汁を発酵・蒸溜させて作るブラジル独自の酒を清酒に混ぜる「サケピリーニャ」(または「サケリーニャ」)と呼ばれるカクテルが若者や女性の間でブームとなった。これが国内での清酒消費を大幅に伸ばした。これを受け、東麒麟は2004年に新工場を建設し、製造量を倍増させている。近年では、カクテル以外の清酒の飲み方も浸透してきており、こうした流れの中で東麒麟は、火入れを一度しかしない「生」や、よりプレミアム感の高い純米酒や吟醸酒を市場に投入するなど、市場のニーズに応え続けている。

東麒麟の尾崎英之社長は「日本酒の輸入増加は、市場の取り合いではなく拡大につながっており、東麒麟にとってよい機会だと捉えている。ブラジル人の清酒に対する知識は向上し、嗜好(しこう)の多様化が起こっている。そのような中で、日本では作れない、例えばブラジルにしかない植物の酵母を使った清酒造りなどにチャレンジしたい。もともとはブラジルにおける日本人移民のためにおいしい清酒を提供することを目的に東麒麟は生まれたが、時代の経過とともに、今では多くのブラジル人が清酒を楽しむようになった。東麒麟はこれからもブラジル人の方々に喜んでいただける清酒を作り続けたい」とコメントをしている。

清酒造りで日伯の人材交流も

清酒造りでは、日本とブラジルの交流も生まれている。秋田県にある小玉醸造株式会社は、東麒麟が1975年に新工場設立の際、同社で東麒麟の技術者を受け入れた経緯がある。そのような縁もあり、このたび、同社の小玉智之氏がブラジル日本交流協会(anbi)の協力を受け、2019年4月~2020年3月の間、東麒麟での研修に参加した。小玉氏は、小玉醸造社の社長である小玉真一郎氏の長男で、2020年で27歳。25歳で小玉醸造社に入社し、独立行政法人酒類総合研究所(広島)への出向を経て、今回の研修に参加した。

小玉氏は、東麒麟で伝統的な製造プロセスがきちんと守られていることに驚くと同時に、「同プロセスを進化させることで、より上質な製品を均質に仕上げることができる」と指摘した。具体的には、米の洗い方、蒸し方、こうじ造り、酒母の温度管理などだ。研修期間中は、「吟醸酒品質向上プロジェクト」に参画し、さまざまな清酒の製造にもチャレンジした。小玉氏は、プロジェクトを通して自分がおいしいと思う酒ができた時に、ブラジル人にもおいしいと評価してもらえた。「日本人とブラジル人が、清酒に対して同じ感覚をもてることが分かったのは価値がある」と述べ、結果が出るようになってきたところで、研修期間が終了してしまうのが残念で、小玉醸造と東麒麟がもっと協力し合えるように、今後も相互人材交流を続けていきたい、と研修を振り返った。小玉氏はまた、「実際にブラジルを訪問するまで、食を含む日本文化がこれほどブラジルに浸透しているとは思わなかった」と日本酒の種類も非常に豊富なブラジルでの様子に驚いたようだ。ただ、「『ブラジル料理と清酒のペアリング』を研修テーマの1つに掲げたが、真に清酒と相性の良いブラジル料理は見つけられなかった」と残念がった。「ブラジルでの清酒展開はやはり日本食レストランが中心となるだろうが、一方で『サケピリーニャ』は、日本でも成人したばかりの若者や学生が飲むのに親しみやすいと思う。日本酒の国内消費が落ち込む中で、『サケピリーニャ』は日本に逆輸入したい文化だ」と述べた。また、「ブラジル訪問前には、ブラジル人は辛口の酒を好む、大吟醸酒はそれほど好まれないと聞いていたが、実際には甘口よりの酒を好んでいる人は多いし、大吟醸酒を飲んでもらったら非常に喜んでいた。ブラジル人の清酒の嗜好が多様化しているのだろう」とコメントしている。

日本酒以外の日本ブランド酒類も多様化

日本酒以外の日本産酒類も、特にサンパウロを中心とした都市部で人気だ。ここ数年は並行輸入品が少量だけ流通していた日本産ウィスキー(HSコード:2208.30)について、2019年に蒸留酒流通大手の当地ビーム・サントリーが、サントリーウィスキーの正規輸入を開始した。併せて、同社はクラフトジン「六」、クラフトウォッカ「白」も輸入している。

また、ビール(HSコード:2203.00)の日本からブラジル向け輸出が、2017年以降大きく伸びている(図2参照)。アサヒ・スーパードライ、オリオン・ドラフトビールが日本から輸出されている。日本産以外の日本ブランドビールでは、キリン一番搾りをハイネケンブラジルが委託生産・販売を行っているほか、ベトナム産のサッポロ・プレミアムビールがブラジル国内で流通している。リキュール(HSコード:2208.70)は、梅酒とゆず酒が流通している。2018年に食材としての「ゆず」がブラジル飲食業界で注目を集めたことや、混成酒類に関するメチルアルコール濃度規制が緩和されたことにより梅酒が輸入解禁されたことが主な要因だ。(2018年4月16日付ビジネス短信参照)今後のさらなる販売増加が期待される。

図2:ブラジル向け日本酒以外のアルコール飲料輸出
種類はリキュール、ウイスキー、焼酎、ビール。  2010年はリキュール52万8千円、ウイスキー0円、焼酎786万1千円、ビール271万円、2011年はリキュール28万5千円、ウイスキー0円、焼酎681万7千円、ビール24万4千円、2012年はリキュール110万5千円、ウイスキー166万2千円、焼酎453万3千円、ビール24万6千円、2013年はリキュール31万3千円、ウイスキー1008万1千円、焼酎669万9千円、ビール286万9千円、2014年はリキュール151万5千円、ウイスキー648万3千円、焼酎360万円、ビール203万3千円、2015年はリキュール28万8千円、ウイスキー0円、焼酎592万円、ビール349万7千円、2016年はリキュール102万6千円、ウイスキー137万1千円、焼酎324万2千円、ビール331万4千円、2017年はリキュール0円、ウイスキー0円、焼酎547万5千円、ビール256万円1千円、2018年はリキュール147万5千円、ウイスキー0円、焼酎148万5千円、ビール506万6千円、2019年はリキュール52万1千円、ウイスキー95万円、焼酎145万3千円、ビール783万8千円。 

出所:財務省統計

芋焼酎の規制緩和が望まれる

日本産酒類のブラジル市場展開における課題の1つが「芋焼酎規制」だ。2011年3月 31日付農務省令第15号(Instrução Normativa Nº 15/2011)において、ブラジル国内で流通可能な蒸留酒の成分規制値が規定され、蒸留酒に含まれるメチルアルコールが、一部の特例を除いて100ミリリットル中20ミリグラム以下に制限された。日本の一般的な芋焼酎は、その特性上、この上限値を下回ることができないため、現在、商業輸入ができない状態だ。同種の問題は、台湾でも存在していたが、台湾では日本政府の熱心な働きかけによって2016年12月に規制緩和された事例がある。現時点では、芋焼酎をハンドキャリーでブラジルに持ち込むことは禁止されていないが、規制緩和による芋焼酎の商業輸入が望まれている。


注:
4月1日付で東麒麟飲料食品製造販売からキッコーマン・ド・ブラジル社に社名変更。キリンホールディングスが保有していた同社株式をキッコーマンに譲渡したことによるもの。(2020年3月23日付ビジネス短信参照)。
執筆者紹介
ジェトロ・サンパウロ事務所
山本 祐也(やまもと ゆうや)
2000年、通商産業省入省。大臣官房、通商政策局、内閣官房(出向)を経て、2016年から現職(出向)。

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