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新型コロナウイルス対策へ正念場(ドイツ)
対策を矢継ぎ早に発表、経済への深刻な懸念も

2020年4月3日

ロベルト・コッホ研究所によると、3月30日現在のドイツ国内の新型コロナウイルス感染者数は57,298人、死者455人と感染拡大が続いている(注)。そうした中、連邦政府はこれ以上の感染拡大を防ぐべく、積極的な対策を矢継ぎ早に発表している。

出入国関係では、3月16日にオーストリア、スイス、フランス、ルクセンブルク、デンマークとの国境で国境管理を開始、さらに18日には、対象国としてイタリアとスペインを追加し、陸路のみでなく、航空機や船舶を利用した移動についても新たに国境管理の対象とした。17日にはEUへの入域制限に関する欧州委員会の指針に従い、非EU市民、非EFTA加盟国市民、非英国市民のEUへの入域を30日間制限する措置を発動した。

国内でも、食料品・飲料品販売店などをはじめとした必要最低限の施設以外の営業を禁止するなどの社会生活上のさらなる接触制限措置について、16日に連邦政府と各州政府の間で合意、22日には新たな全国的な統一ガイドライン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、同居家族などを除く他人との接触は絶対に必要な最低限とすることなどを定めた。なお、政府は4月1日、各州政府の首相と電話会議を行い、この措置を少なくとも4月19日まで延長することを決定している。

公共放送局ZDFが3月27日に発表した世論調査によると、連邦政府の新型コロナウイルスの感染拡大防止措置について、「厳し過ぎる」と回答した割合は4%にすぎず、75%が「妥当」、20%が「さらなる対策が必要」と回答するなど、政策に対する国民の理解も広がっている様子がうかがえる。 連邦政府は感染防止策と同時に、短時間労働給付金制度の柔軟性向上のほか、税関連の流動性(資金繰り)支援、中小企業と零細企業(従業員10人未満)に対する給付金や緊急融資プログラムの提供、保証枠の拡大、中堅企業向けの6,000億ユーロ規模の企業救済ファンド「経済安定化基金」など、総額7,500億ユーロに及ぶ大型経済対策を導入、国内企業の救済に乗り出している(2020年03月13日付2020年03月18日付2020年03月26日付ビジネス短信参照)。

GDPを7.2~20.6%ポイント押し下げる可能性も

経済への影響は深刻だ。ドイツ政府の経済諮問委員会(5賢人委員会)は3月30日、「新型コロナウイルス・パンデミックにおける全体的な経済状況外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」と題したスペシャルレポートを発表した。それによると、現在得られる情報に基づくベースラインシナリオでは、ドイツ経済は2020年夏に正常化すると仮定し、同年のGDPは前年比で2.8%減少、2021年に3.7%増加するとしている。一方、生産が広範に停止または経済的な制限が想定より長く継続するシナリオでは、経済的閉鎖の影響で、2020年第2四半期(4~6月)のGDPが現在の水準より最大10%減少し、通年ではマイナス5.4%に落ち込むと指摘した。2021年のGDPは4.9%増加すると予測されるが、これは2020年の反動によるものが大きいとしている。さらに同レポートでは、感染拡大防止対策が夏以降も継続する場合には、経済回復が2021年にまで遅れる可能性もあると指摘している。この場合、倒産や解雇といった経済構造への深刻な影響を阻止できず、講じられている政策が不十分となる可能性があるという。資金調達条件の悪化や不確実性の増加・常態化が投資を減速させ、民間消費が停滞、さらに金融市場または銀行システムに負の影響を引き起こす可能性を指摘し、2020年のGDPは4.5%減少、2021年の経済回復も遅れて1.0%の成長にとどまるとしている。

ドイツの公的研究機関のifo経済研究所は3月23日、新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響について、国内総生産は2,550億〜7,290億ユーロ減少、率にして7.2%から20.6%縮小するとのレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同レポートによると、経済的な閉鎖(ロックダウン)が2カ月続くシナリオに基づけば、落ち込み幅は2,550億~4,950億ユーロ、率にして7.2~11.2%縮小、閉鎖が3カ月続くシナリオの場合、落ち込み幅は3,540億~7,290億ユーロ、率にして10~20.6%縮小するとしている。雇用では、最大180万人が失職、600万人以上が就業時間の短縮措置の影響を受けるという。また、感染拡大の影響に対処するための財政負担は、現状で最大2,000億ユーロに達するとしている。経済の部分的な閉鎖でも、1週間で250億~570億ユーロ(成長率換算では0.7〜1.6ポイント低下)の追加コストが発生するとし、新型コロナウイルス流行の封じ込めと経済活動を両立させる戦略を早急に立案することが必要と指摘している。ifo経済研究所のクレメンス・フュースト所長は「恐らく過去数十年でドイツが経験したいかなる経済危機や自然災害をも上回る影響が出ることになる」とコメントしている。このほか、国内の複数の調査機関もまた国内経済への負の影響をそれぞれ予測しており、予測にも幅が出るなど、最終的にどの程度のインパクトがあるかは見通せない状況だ(表1参照)。

表1:主要な経済研究所の経済予測(△はマイナス値、-は値なし)
団体名 発表日 2020年GDP予測 2021年GDP予測 備考
ケルン経済研究所(IW) 3月26日 a)新型コロナウイルスの影響がない場合に比べ、5%減
b)新型コロナウイルスの影響がない場合に比べ、10%減
a)経済的な閉鎖が4月末まで続くシナリオに基づく
b)経済的な閉鎖が6月末まで続くシナリオに基づく
ifo経済研究所 3月23日 a)7.2~11.2%ポイント減
b)10~20.6%ポイント減
a)経済的な閉鎖が2カ月続くシナリオに基づく
b)経済的な閉鎖が3カ月続くシナリオに基づく
ドイツ経済研究所(DIW) 3月19日 △0.1% 1.7% 早期正常化シナリオの場合。2020年後半に新型コロナウイルス危機後急速に生産や消費が回復
ライン・ウェストファーレン経済研究所(RWI) 3月19日 △0.8% 2.3%
キール世界経済研究所(IfW Kiel) 3月19日 a)△4.5%
b)△8.7%
a)7.2%
b)10.9%
a)経済的な閉鎖が4月末まで、5月から回復し始めるシナリオに基づく
b)経済的な閉鎖が7月末まで、8月から回復し始めるシナリオに基づく
ハンブルク国際経済研究所(HWWI) 3月18日 △2.5% 2.3% 少なくとも2020年前半は経済的に大きな影響を受ける

出所:各経済研究所資料からジェトロ作成

幅広い産業に甚大な影響

ドイツ商工会議所連合会(DIHK)が3月27日に発表した調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(対象企業:約15,000社、調査期間:3月24日~26日)によると、92.4%の企業が「事業への負の影響がある」と回答した。特に外食・ホテル業(99.9%)や旅行業(99.5%)への影響が大きく、人的サービス業(94.6%)、小売業(94.4%)などが続いた(表2参照)。

表2:新型コロナウイルスにより負の影響があると回答した企業の産業別割合
産業名 割合
全体 92.4%
外食・ホテル業 99.9%
旅行業 99.5%
人的サービス業 94.6%
小売業 94.4%
運輸・倉庫業 93.3%
卸売業 91.5%
BtoBサービス 91.2%
工業 88.9%
健康産業 88.0%
建設産業 86.8%

出所:ドイツ商工会議所連合会(DIHK)

また80%以上の企業が2020年に売り上げ減少を予想、特に26%の企業は通常と比べて売り上げが50%以上減少すると回答したという。事業への具体的な影響としては、「製品やサービスへの需要減」を挙げた企業が63%と最も多く、「注文・発注のキャンセル」(48%)、「事業活動の停滞」(43%)が続いた(表3参照)。「流動性(資金)の不足」を挙げた企業は41%、「倒産の危機」と回答した企業も18%に上った。雇用への影響も懸念される。38%の企業は雇用削減をする必要性を感じていると回答、特に外食・ホテル業、旅行業では3分の2以上の企業が雇用削減が必要と回答した。自社にとって有益な政府の支援策については、「給付金というかたちでの即時支援」(69%)や「短時間労働給付金の制度」(68%)、「税の納付期限の延期、予納金の削減」(60%)などが挙がった。

表3:新型コロナウイルス感染拡大による事業への影響
影響 回答の割合
製品やサービスへの需要減 63%
注文・発注のキャンセル 48%
事業活動の停滞 43%
流動性(資金)の不足 41%
投資の削減 38%
労働力不足 25%
モノやサービスの不足 24%
物流の停滞 20%
破産の危機 18%
現時点で評価不可 4%
影響なし 2%

出所:ドイツ商工会議所連合会(DIHK)

見本市産業にも大きな痛手

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、3月4~8日にベルリンで開催予定だった世界最大規模の観光産業見本市「ITB」や、3月12日~15日にライプチヒで予定していた「ライプチヒ・ブック・フェア」が中止になったほか、デュッセルドルフで3月15~17日に開催予定だった国際ワイン・アルコール飲料展「プロワイン(ProWein)」の中止が決定するなど、大型見本市の中止が相次いでいる(2020年3月5日付ビジネス短信参照)。さらに、ドイツを代表する総合産業見本市「ハノーバーメッセ」については、4月20~25日だった会期を7月13~17日に延期することが3月4日に発表されたが、その後、3月26日には中止することが発表された。

これらの見本市の中止や延期は、ドイツが誇る世界有数の見本市産業にも大きな痛手だ。ドイツ国内に多数存在する大型見本市会場では、2018年に178の見本市が開催された。来場者数は延べ957万人以上、出展者数も19万社・団体に上った。ケルン経済研究所(IW)の付属機関iwdが発表したレポートによると、見本市産業に直接的または間接的に関連する経済効果は2014年から2017年の平均で約280億ユーロに上り、年間約23万1,000人の雇用を生んでいるという。


注:
掲載時(2020年4月3日)時点で、感染者は7万3,522人、死亡者は872人まで増加している。
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所
ベアナデット・マイヤー
2017年よりジェトロ・デュッセルドルフ事務所で調査および農水事業を担当。
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所 ディレクター
森 悠介(もり ゆうすけ)
2011年、ジェトロ入構。対日投資部対日投資課(2011年4月~2012年8月)、対日投資部誘致プロモーション課(2012年9月~2015年11月)を経て現職。

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