中小企業への給付金など、新型コロナ経済対策を大幅拡張

(ドイツ)

ベルリン発

2020年03月26日

3月23日、オラフ・ショルツ財務相とペーター・アルトマイヤー経済・エネルギー相は、これまでの新型コロナウイルスに対応する緊急対策パッケージ(3月13日3月18日記事参照)の大型追加措置を発表した。

追加された1,225億ユーロの補正予算では、ウイルス拡散防止策(個人保護具の調達、ワクチン開発と治療法の開発促進、連邦軍による支援サービス、および住民への情報提供)に35億ユーロ、パンデミックへの緊急対策用として550億ユーロ、保証および保証の分野で考えられる請求について約59億ユーロの引当金増額、中小企業への給付金500億ユーロなどが盛り込まれた。特に注目されていた中小企業ならびに零細企業(従業員10人未満)に対する支援は、融資ではなく給付金(課税対象)に決定した。コロナ危機の影響で2020年3月11日以降に経済的困難に陥る企業が資金の流動性を確保できるようにするため、従業員5人以下(フルタイム相当)の事業者に対しては3カ月分の緊急支援として、最大9,000ユーロが、従業員10人以下(フルタイム相当)の事業者には同じく最大1万5,000ユーロが、一括で支払われる。もし、家主が家賃を20%以上減額し、かつ給付限度額を超えない場合は、さらに2カ月間の必要資金を申請額に計上できる。

さらに、6,000億ユーロ規模の企業救済ファンド「経済安定化基金」の設立も発表された。本来健全だった企業の流動性と支払い能力の確保を目的としている。アルトマイヤー経済・エネルギー相は、資金不足に陥り、資金調達を求める優良ドイツ企業を買収などから防御する狙いもあるとしている。当面は2021年末までの時限基金で、市場でのリファイナンス(債務の借り換え)を目指す企業向けの4,000億ユーロの政府保証枠、企業の資本強化のための1,000億ユーロ以上の与信承認、ドイツ復興金融公庫(KfW)の特別プログラムへのつなぎ融資用の1,000億ユーロの追加与信承認が設定された。対象は、(1)総資産4,300万ユーロ以上、(2)売上高5,000万ユーロ以上、(3)年間平均従業員数249名以上の3つの要件のうち2つ以上を満たす企業。この要件に満たない中小企業でもインフラ関係で重要な企業であれば対象となりうる。

また芸術・文化インフラの確保のため、芸術・文化分野の企業、従業員、自営業者向けの対策も打ち出された。中小企業向け給付金にあわせ、失業手当申請手続きの迅速化、芸術家向け社会保険料の減免などの措置が含まれる。

産業界からは「KfWの融資プログラムにより、企業は資金調達の問題に迅速に取り組める。政府による無制限の貸出条件の設定は賞賛に値する」(ドイツ産業連盟(BDI)ヨアヒム・ラング事務局長)、「政府の即座の行動と巨額援助は、政府がコロナウイルスが国民、国家、経済にもたらす危機の大きさをよく意識していることを反映している。政治と行政に携わるすべての人に特別な感謝を表明したい」(ドイツ自動車産業連合会(VDA)ヒルデガルト・ミュラー会長)など、高く評価するコメントが相次いだ。

他方で、中小企業連盟(BVMW)のマリオ・オーホーフェン会長は、「従業員数が11~249人規模の伝統的な中小企業がほぼ除外されている」としてアルトマイヤー経済相を批判している。

(中村容子)

(ドイツ)

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