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ロシアのEC市場では消費者保護法と個人情報保護法に留意
現地法律事務所に聞く

2020年2月26日

成長するロシアの電子商取引(EC)市場に対して、日本企業の注目が徐々に高まっており、越境ECビジネスに取り組み始める日本企業もいくつか見られる(2019年11月1日12月26日付地域・分析レポート参照)。他方、ロシア国内もしくはロシア向け越境ECを行うに当たってはロシアのEC関連法令を熟知する必要があろう。世界大手の法律事務所デントンズ・サンクトペテルブルク支店のルザンナ・アハベコワ弁護士に、ロシアのECを取り巻く法律の現状や課題について聞いた(2019年11月1日)。


ルザンナ・アハベコワ弁護士(ジェトロ撮影)
質問:
ロシアのECに関わる法律の問題点はあるか。
答え:
ECに関するまとまった法律がなく、煩雑で分かりにくい。現状では、消費者保護法や個人情報保護法などのさまざまな法律に、ECに関する条項が挿入されている。数年前から改正や追加がされて分かりやすくなってきたが、専門家でないとまだ把握が難しい。当社では外国企業がロシアでECサイトを立ち上げる際のリスク評価も行っており、現在、日本、米国、中国、ドイツ、フランスなど世界各国の企業から問い合わせを受けている。
質問:
最近の改正や追加では具体的に何が変わったのか。
答え:
EC市場で販売された商品に、トラブルが起きた際の責任の所在が定められた。商品自体の欠陥については同商品の製造者が、商品または販売者に関する情報が消費者に適切に提供されなかったために起きたトラブルについては、オゾンやワイルドベリーズなどのプラットフォーム企業が責任を負うことになった。なお、同商品のプラットフォームへの出品を行っている販売店は、消費者保護法に定められるすべての消費者の権利について責任を負う。
質問:
ECに関してどのような問い合わせが多いか。
答え:
最も多いのは、個人情報保護に関する問い合わせ。サイト上に個人情報の取扱規約を必ず明記しなければならない。加えて、ポップアップなどを活用して、個人情報取扱規約について利用者の合意を得る必要がある。また、収集した情報は必ずロシア国内のサーバーに1次保管しなければならない。1年間の売上高が4,000万ルーブル(約7,200万円、1ルーブル=約1.8円)以上の場合、カード情報のロシア国内での保管も必須だ。自社での対応が不可能な場合、他社に委託しても問題ない。
質問:
消費者保護法についてロシア特有の厳しいルールはあるか。
答え:
同様の問い合わせはよく寄せられるが、ロシア特有のものは特にない。ただし、万が一に備えて、何事もサイトに明記しておくことが肝要。消費者を守るための法律なので、曖昧な記載によってトラブルが起きれば、90%以上の割合で企業側が責任を問われることになる。返品ルールについては特に、返品可能期間、返品可能理由、利用の有無などの条件を明記すること。また、正しい価格情報を消費者に提供するために、「〇ルーブル以上購入で〇%オフ」といったキャンペーン情報も、その詳細や条件を明記することが不可欠。
質問:
ECにおいて特別に支払わなくてはならない税金はあるか。
答え:
付加価値税(VAT)は、ロシア国内に法人を持つ企業にのみ支払いが課されるため、ロシア国内に法人を持たない越境ECサイト企業は支払わなくてよい。一方で、これにより生じるロシア国内のEC企業との税負担の差を軽減させるため、消費者が越境ECを利用する際の免税上限額の引き下げが実施されている(注)。
質問:
日本企業がロシアのECサイトに出店したり、ロシアでECサイトを立ち上げる際に注意すべきことは。
答え:
個人情報保護法と消費者保護法に留意すべき。しかし、欧州の法律と比較してハードルが高いわけではないため、欧州でECビジネスの経験があるならば躊躇(ちゅうちょ)する必要はない。またEC市場に参入する際、日本を含めた外国企業に特別必要な書類はない。ロシア企業と同様の手続きで事業を開始することが可能。ロシアで特別に厳しい法律が定められているのは、ビデオコンテンツのみ。EC分野では、ロシア特有の制限はない。

なお、この記事はあくまでECに関する法令についてのインタビューであり、法的助言ではない。


注:
ユーラシア経済連合(EEU)域外から域内への輸入小包の免税上限額は、2020年1月から200ユーロに引き下げられた。超過した場合、超過額の15%もしくは超過量1キログラム当たり2ユーロの支払いが課される。なお、財務省は、2020年7月から100ユーロ、2021年1月から50ユーロ、2022年1月から20ユーロへの上限額引き下げを提案している。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課
加峯 あゆみ(かぶ あゆみ)
2018年4月、ジェトロ入構。同月より現職。

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