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制度面:専門委員会などで分野別の対話進む
深化を続ける日EU・EPA(1)

2020年3月24日

2月1日に発効1年を迎えた日・EU経済連携協定(以下、「EPA」)。発効後の11カ月間(2019年2~12月)のEUの日本向け輸出額は前年同期比で5.7%増加、EUの日本からの輸入額も5.7%増加(出所:ユーロスタット)したように、EPAは堅調な貿易関係を支えている。この1年、日EUのさまざまなチャネルを通じた対話により、EPAの内容を強化する取り組みが進められてきた。例えば、特恵関税の適用においては、「原産地規則及び税関に関連する事項に関する専門委員会」などを通じた議論の結果、原産地申告について発効時点では必ずしも明確でなかった論点の解消が図られた。また、EPAを活用する企業の側からも、この1年で活用の幅が広がっているとの声を聞く。

本稿では、深化を続けるEPAについて、制度面と運用面から2回に分けて概観する。第1回(制度面)では、EPAの下で設置された主な専門委員会などの活動を概観する。第2回(運用面)では、EPAを活用する在欧州日系企業やEU加盟国の税関、関係機関などへのヒアリングから、EPA特恵関税適用の実務における改善点と残る課題を検討する。

合同委員会の監督の下で各専門委員会・作業部会が活動

EPAでは第22.1条に基づき、日EU双方の代表者からなる合同委員会が設置されている。その主な役割は、EPAの実施および運用について検討・監視を行うことと、EPAに基づいて設置される10の専門委員会(第22.3条)と作業部会(第22.4条)などを監督し、必要な調整や勧告を行うことだ。専門委員会は対象分野の規定の効果的な実施および運用に責任を負い、必要に応じて合同委員会への報告を行う。

以下では、発効から1年間に開催された合同委員会と、2月末時点で欧州委員会ウェブサイト内で公開されている主な専門委員会の合同議事録(Joint Minutes)から、検討された論点を概観する(注)。

  • 合同委員会
    第1回合同委員会ではまず、EPA第21章(紛争解決)の規定するパネル手続きと仲介手続きに関する規則を採択した。また、英国のEU離脱(ブレグジット)を見据えて、EU域内のEPAの適用区域に変更があった場合に、EUが日本に対してその旨を通知することを確認した。個別の問題点としては、とりわけ原産地手続きに関する双方の慣行について、幾つかの問題点が提起され、2019年6月に専門委員会(後述)で検討した。
  • 物品の貿易に関する専門委員会
    物品貿易に関しては、第1回専門委員会で、EPAの普及に向けた活動の促進と、ウェブサイトなどによる中小企業への情報提供における双方の協力について確認した。また、日本側の関税割当品目の運用・管理状況を双方が確認し合った。
  • 原産地規則および税関に関連する事項に関する専門委員会
    原産地規則に関して第1回専門委員会では、「実施初期段階での原産地手続きの問題点の特定と双方の慣行についての理解を得るために双方の専門家が行った努力に対し高く評価」する声が上がった。その上で、双方の税関当局が実行する活動について、共同文書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2MB)(Conclusion)を採択した。これに基づき、日本税関は2019年8月1日から、特恵関税の適用を受けるために輸入申告の際に提出するべき書類を簡略化した。共同文書はまた、EU税関での輸入通関時に輸出者が原産地に関する申告を仕入書(インボイス)上に作成する場合、仕入書またはその他の商業上の文書と申告文を記載した用紙とが一体をなすことがレファレンス番号などから確認できることを条件に、申告文を別紙に記載することを認めた。さらにEUは、EPA発効前に公表した原産地手続きに関するガイダンスを可能な限り速やかに改訂し補足することを約束し、結果的に12月16日に改訂版を公表した(2019年12月26日付ビジネス短信参照)。
  • 貿易の技術的障害(TBT)に関する専門委員会
    貿易の技術的障害(TBT)に関する第1回専門委員会では、双方の関心事項について具体的な論点を挙げて議論を行った。日本側はEUの新たな医療機器規則に関して、第三者認証機関の指名プロセスなどについて懸念を表明した。EU側は日本の「医薬品医療機器等法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」の改正内容、とりわけラベリング要件について問題提起した。また双方は、化学品に関して、使用が制限される化学物質の規制に関する情報を交換することなどを約束した。
  • サービスの貿易、投資の自由化および電子商取引に関する専門委員会
    専門委員会第1回会合ではまず、サービス、投資、電子商取引の各分野に共通する問題意識として、EPAの諸制度の普及におけるオンライン情報の重要性を確認した。サービス貿易に関しては、EPA付属書8―Cに規定された自然人の商用目的での入国および一時的な滞在の手続きに関して意見交換を行った。投資自由化では、双方の投資審査(スクリーニング)制度の整備状況について情報交換し、引き続きこの課題について情報交換を継続することで一致した。電子商取引では、WTOにおける交渉など既存の国際枠組みへの積極的な参加を確認したほか、EPA第8.81条が規定するように、データの自由な流通に関する規定をEPAに含めることの必要性の再評価に関して議論を交わした。
  • 政府調達に関する専門委員会
    政府調達に関しては、第1回専門委員会で双方が最新の国内状況などについて情報提供を行った。日本は政府機関などによる調達に関する法規の改正状況などを説明したほか、電子的手段による調達情報のアクセスポイントとしてジェトロのウェブサイトを紹介した。EU側は直近の日EU鉄道産業間対話の成果を報告した。双方は鉄道部門の市場開放への努力を今後も継続することで一致した。
  • 知的財産に関する専門委員会
    知的財産権の第1回専門委員会では、EUの統一特許制度に関する最新状況など、双方の特許制度について情報を交換したほか、インターネット上での権利保護、特に電子商取引のプラットフォームでの模倣品販売への対策などについて意見交換した。また、地理的表示(GI)に関して、日本は一部のEU加盟国による神戸牛のGI保護侵害の可能性があると指摘した。EU側は早急に問題解決を図ることを約束した。
  • 農業分野における協力に関する専門委員会
    農業分野の協力に関する第1回専門委員会では、農業活動における環境と気候変動の影響について、双方の政治主導の取り組みに関して意見を交わしたほか、有機農業での協力、規制整備に関する情報交換などについて議論した。
  • 自動車および部品に関する作業部会
    自動車・同部品に関する作業部会は、物品の貿易に関する専門委員会の下に設置されている。この作業部会の任務はEPA付属書二―C第20条に規定される。第1回作業部会では、作業部会の目的が国連欧州経済委員会(UNECE)の規制に関する協力関係の強化と自動車関連の双方間の課題についての対話であることを確認した。作業部会では、自動運転技術について、新しい規制を策定するために共同で作業を続けることを確認し、双方の取り組みを紹介した。EUはUNECEが自動運転に関する協議と規制策定の重要なフォーラムになるべきだと強調した。その他の課題では、電気自動車の電気モーターの加工・マーキング要件や、バッテリーのライフサイクルアセスメントなど次世代自動車の重要課題について踏み込んだ議論を行った。

各専門委員会の会合は原則として年1回、または日EUのいずれかの締約国もしくは合同委員会の要請に基づいて開催される。専門委員会の場だけで課題が解決するわけではないが、その開催に向けて双方の政策担当者が議論を重ね、開催時に一定の前進を目指すため、各種委員会は、EPAが「生きた協定」として深化を続けるための中核的な仕掛けと言える。


注:
本稿で取り上げた専門委員会のほか、衛生植物検疫措置の専門委員会、規制に関する協力に関する専門委員会がある。また、物品貿易の専門委員会の下には、自動車・同部品に関す作業部会のほかにも、ぶどう酒の作業部会が設置されている。幾つかの専門委員会では、分野別の特別作業部会を設置することが認められている。

深化を続ける日EU・EPA

  1. 制度面:専門委員会などで分野別の対話進む
  2. 運用面:キーワードから見る原産地手続き
執筆者紹介
ジェトロ・ブリュッセル事務所
安田 啓(やすだ あきら)
2002年、ジェトロ入構。海外調査部国際経済研究課、公益財団法人世界平和研究所(現・中曽根康弘世界平和研究所)研究員、海外調査部国際経済課などを経て、2019年から現職。

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