欧州委が日EU・EPAガイダンスを更新

(EU、日本)

欧州ロシアCIS課

2019年12月26日

欧州委員会税制・関税同盟総局は12月16日付で、日EU経済連携協定(EPA)のEU側運用に関するガイダンスを更新した。欧州委は、同EPA発効前の1月にガイダンスを公表している(2019年1月15日記事参照)が、今回は、新たに原産地に関する申告文の作成方法についての詳細なガイダンスが公表されたことに加えて、公表済みのガイダンス「特恵の要求、確認および否認」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)も一部更新された。

原産地申告作成方法の詳細ルールがより明確に

新たに作成された「原産地に関する申告」ガイダンスPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)については、協定上規定される基本的なルールをまとめるとともに、日本税関と欧州委員会税制・関税同盟総局との間で新たに合意された文書が「ANNEX1(付属書)」として含まれている。EUおよび日本は、6月26日に開催された「日EU・EPA原産地規則および税関に関連事項に関する専門委員会」第1回会合での採択文書(2019年7月30日記事参照)において、税関運用の改善に向けた一定の事項を確認するとともに、同EPA運用に関して不明瞭な部分があった以下の3点についてのさらなるガイドラインを作成するとしており、今回の更新は同合意を受けたもの。

(1)生産者が作成する原産地に関する申告の適切な取り扱い

今回のガイダンスで明らかになったのは、原産地に関する申告を作成することのできる「輸出者」の定義に、自身が産品を輸出しなくとも、実際の輸出者が作成する文書上に原産地に関する作成を行う者が含まれる点だ。つまり、同ガイダンスで、産品の輸出申告者と、同申告文を記載する「インボイスその他の商業上の文書」の作成者とが、同一である必要はないことがあらためて確認された。ただし、同ガイダンスは、インボイスなど商業上の文書の作成者と申告文を作成する「輸出者」が異なる場合には、原産地に関する申告を作成した「輸出者」が商業上の書類を発⾏した者でないことを、書類上に明記することが必要だとしている。

(2)「その他の商業上の文書」の例示

同EPAは、原産地に関する申告を作成することのできる文書として、「仕入書(インボイス)その他の商業上の文書」と規定する。この「その他の商業上の文書」については、協定上具体例が示されていない。今回のガイダンスで、商業取引が記録された文書として、プロフォーマインボイス、船積書類(パッキングリスト、デリバリーノート)などの各種⽂書が含まれることが明記された。

(3)第三国で発行されたインボイスとともに使用される原産地に関する申告の適切な取り扱い

同EPAは、インボイスが第三国において発行されたことのみを理由として、関税上の特恵待遇が否認されないことを明確に規定する一方、その場合の原産地に関する申告の作成方法などについて、具体的な説明はされていない。今回のガイダンスで、第三国の事業者がインボイスを発行する貿易の場合には、原産地に関する申告は、輸出締約国に所在する「輸出者」が作成する商業上の文書(例えば、デリバリーノート)に記載されなければならないことが確認された。

なお、日本税関も、専門委員会での約束に基づき日本側輸入時の運用に関して同日付で「自己申告および確認の手引き」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を更新した。欧州委員会ガイダンスANNEX1(付属書)は、日EU当局間で合意された文書であることから、同一の内容が日本税関の手引きの「別表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」に日本語で掲載されている。

(根津奈緒美)

(EU、日本)

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