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世界最大、健全な発展が期待される中国のEC市場に見いだす販路
大連で越境EC事業を展開する地場企業にヒアリング

2019年4月15日

中国は世界最大の電子商取引(EC)市場となり、ネットショッピング利用者が6億人を突破した。2019年1月1日から「電子商務法」が施行され、健全な発展が期待されている。また、同日より越境EC関連の政策が変更されたほか、4月9日から行郵税率の引き下げが施行され、越境ECで日本の輸入品を購買する動きは今後も拡大すると見込まれている。2019年1月末、ジェトロ・大連事務所では日本商品の中国国内のEC展開について議論する第3回内販研究会を開催した。大連で越境EC事業を展開する地場企業にもヒアリングした。

中国のEC市場は1兆ドル超、2019年1月に「電子商務法」施行

中国のEC市場の発展は目覚ましい。経済産業省によると、2017年の中国のEC(BtoC)市場規模は前年比35.1%増の1兆1,153億ドルとなった。第2位の米国(4,549億ドル)の2倍を超える規模で、世界最大だった(注1)。また、中国インターネット情報センター(CNNIC)によると、2018年12月時点で中国のネットショッピング利用者は前年比14.4%増の6億1,011万人に達した(注2)。中国国内のインターネット利用者8億2,851万人のうち、約7割が利用していることとなる(2019年3月8日記事参照)。

足元の中国の消費動向をみると、社会消費品小売総額の伸びは2017年の前年比10.2%増から2018年は9.0%増に鈍化したものの、インターネット小売額の2018年の伸びは23.9%増だった。2017年の32.2%増と比べればやや低下しているとはいえ、インターネットにおける消費の伸びは依然として高いことが分かる。

一方、EC市場の急速な発展に伴い、消費者トラブルなどの問題が急増した。ECにおけるルールの整備が喫緊の課題となり、中国政府は消費者保護の強化や納税義務の徹底、オンラインとリアル店舗のバランスを図ることなどを目的に、2019年1月1日から「電子商務法」を施行した。

「電子商務法」は中国で初めてのECを対象とした包括的な法律で、いわばECの基本法である。これまで明確な定義がなかった「電子商取引(EC)」は、「インターネット等の情報ネットワークを通じて商品を販売、あるいはサービスを提供する経営活動」とされたほか、EC活動を行う事業者の定義や義務、罰則、消費者の権益などが規定された(表1、参考1・2参照、ジェトロでは「電子商務法」の原文PDFファイル(311KB) および日本語訳PDFファイル(418KB) を公開している)。

表1:「電子商取引の活動」を行う事業者の定義
「電子商取引の活動」を行う
事業者の活動分類
定義(第9条)
電子商取引経営者 インターネット等の情報ネットワークを通じて商品販売およびサービス提供の経営活動を行う自然人、法人、非法人組織であり、電子商務プラットフォーム経営者、プラットフォーム内経営者および自ら開設したウェブサイトや他のネットサービスを通じて商品販売、あるいはサービス提供を行う電子商務経営者を含む。
電子商取引プラットフォーム経営者 電子商務取引において取引相手双方および関連する主体にインターネット経営の場所、取引マッチング、情報提供などのサービスなどを提供する法人、非法人組織。
プラットフォーム内経営者 電子商務プラットフォームを通じて商品販売あるいはサービス提供を行う電子商務経営者。

出所:「電子商務法」を基にジェトロ作成

参考1:電子商取引経営者に課される義務と罰則について

電子商取引経営者に課される義務
(第10条~第26条に規定、主なものの概要は以下)
  • 市場主体登記手続きをする義務(第10条)
  • ホームページの目立つ位置に、営業許可証、行政許可等の情報またはこれら情報のリスクを公示(第15条)、電子商取引への従事を自ら終了する場合には、30日前までにその旨を公示する義務(第16条)
  • 抱き合わせ販売を行うにあたって消費者に注意を促す義務(第19条)
  • 商品運送中のリスクおよび責任を引き受ける義務(第20条)
  • ユーザー情報の照会、訂正、削除、ユーザー抹消手続を明示し、ユーザー情報の照会、訂正、削除の申請を受けたときには遅滞なく応じる義務(第24条)
前述の記規定に違反した場合
第75条ないし第78条の規定に基づき、罰金が科せられる。罰金の金額は、情状が重大な場合には最大で50万元。

出所:「電子商務法」を基にジェトロ作成

参考2:電子商取引プラットフォーム経営者に課される義務と罰則について

電子商取引プラットフォーム経営者に課される義務
(前項に掲げた義務の他に、第27条~第46条に規定、主なものの概要は以下)
  • 当該プラットフォーム内経営者の確認検査・登記を行う義務(第27条)
  • ネットワークセキュリティ事件緊急対策を制定する義務(第30条第2項)
  • 情報の安全性、秘密保持性、利用可能性を保証する義務(第31条)
  • ホームページの目立つ位置にプラットフォームサービス合意・取引規制の情報又はそのリンクを表示させる義務(第33条)
  • 当該プラットフォームで自営業務を展開する場合に、その旨の表記を行う義務(第37条)
  • プラットフォーム内経営者が販売する商品・サービスが、人身、財産安全保障の要求に適合しないか、またはその他の消費者の合法的権益の侵害行為があることを知ったまたは知るべきであったが、必要な措置を講じていなかった場合、当該プラットフォーム内経営者と連帯責任を負う義務(第38条第1項)
  • 検索連動型広告の商品・サービスについて、目立つように「広告」と明記する義務(第40条)
  • 知的財産権の侵害について、権利者から通知を受けたときに、遅滞なく必要な措置を講じ、かつ通知を当該プラットフォーム内経営者に転送する義務および遅滞なく必要な措置を講じない場合には、損害の拡大について当該プラットフォーム内経営者と連帯責任を負う義務(第42条第2項)
前述の規定に違反した場合
第80条ないし第84条の規定に基づき、罰金が科せられる。罰金の金額は、情状が重大な場合には最大で200万元。第80条ないし第84条の規定に基づき、罰金が科せられる。罰金の金額は、情状が重大な場合には最大で200万元。

出所:「電子商務法」を基にジェトロ作成

商品のブランド価値向上が重要、魅力を訴求する新たな手法の検討も

2019年月1月末、健全な発展が期待される中国のEC市場をテーマに、ジェトロ・大連事務所では第3回内販研究会を実施した。内販研究会は、中国国内で販路拡大を目指す日系企業を対象に、ジェトロ・大連事務所が2018年9月に立ち上げたもので、今回は進出日系企業の関係者約20人が日本商品の中国国内でのEC展開について議論を交わした。

講師を務めたジェトロものづくり産業部生活関連産業課の草場歩課長代理(当時)は「中国の消費者はECサイトを閲覧する際、キーワードで商品を探すことが多いため、自社商品を指名買いしてもらうために、自社商品のブランド価値を上げていく取り組みが重要になる。具体的には、商品コンセプトの明確化や現地の消費者ニーズを捉えた商品開発、マーケティング活動が重要となってくる」と述べた。

また、クロスシー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます の山本達郎執行役員は「中国では人々の日常生活の中にEC利用が浸透。潜在的な顧客に対し、商品の魅力を深く伝える試行錯誤が続けられている。2018年までに、KOL(Key Opinion Leader、ネット上で影響力のある人物)による情報拡散や、ライブ中継による販売、いわゆる『ライブコマース』という手法が確立された。今後は数十秒の動画からネットショッピングにつなげる『ショートムービーコマース』に注目が集まる」と、商品の広報戦略に関する中国の最新事情を報告した。

第3回内販研究会では、中国国内の販路拡大でEC展開を図る日系企業にとって、自社商品のブランド価値向上のための取り組みが重要なことや、商品の広報戦略を練る際にはKOLの活用のほか、ライブ中継や写真、動画(数十秒~数時間)による販売など商品の魅力を訴求する新たな取り組みが必要という認識が共有された。


第3回内販研究会の様子(ジェトロ撮影)

天猫国際、日本からの輸入額が第1位

ここまで中国のEC市場について触れてきたが、中国では国境を越えたECも盛んである。越境ECでは特に、日本からの輸入品の人気が高い。中国EC大手アリババグループの越境ECプラットフォーム「天猫国際(Tモール・グローバル)」の2017年の国・地域別輸入額ランキングで、日本が第1位となった。

ジェトロの「中国の消費者の日本製品等意識調査(2018年12月)」では、2018年8月に北京市など6都市に居住する20~49歳の月収5,000元(約8万5,000円、1元=約17円)以上の中国人1,200人を対象にアンケート調査を実施したところ、65.3%が越境ECで日本製品を購入した経験があった。経験のない人でも66.1%が「今後、越境ECで日本輸入品を購入したい」と回答した。

また、経済産業省によると、2017年の中国の越境ECによる日本からの購入額は、前年比25.2%増の1兆2,978億円だった(注1)。2021年には2兆8,487億円となる予測で、今後も拡大の見通しである。

取引限度額の拡大など、越境EC関連政策が変更

2019年1月1日から施行された「電子商務法」では、第26条で越境ECにおける電子商取引経営者の責任が規定されるなど、越境ECも同法の適用範囲内にあることが示されている。また、同じく2019年1月1日からは、大きく3つの越境ECに関する政策が変更されている。

1点目は、2019年1月1日から越境EC小売輸入商品の取引限度額が拡大されたことである。1回当たりの取引限度額が2,000元から5,000元に、年間上限額も1人当たり2万元から2万6,000元となった(2018年11月26日記事参照)。

2点目は、2019年1月1日から越境EC税制の適用対象となる品目リストが改定された(2018年12月4日記事参照)。

3点目は、2019年1月1日以降も越境EC新制度の猶予措置が延長されることになった。2016年4月8日から施行された越境EC新制度で求められる通関証明書(通関単)の提出や、化粧品、幼児用粉ミルク、医療機器、特殊商品など一部指定商品の初回輸入時の輸入許可証、登録、届け出は、これまでにも実施の猶予が繰り返し発表され、動向が注目されていたが、期限を定めない形で2019年1月1日以降も猶予措置が延長されることとなった。「将来的な政策の方向性として、個人使用商品と同じ管理が続く可能性が高い。このことは業界にとって非常に重要なことだ」との見方もある(「新京報」2018年11月23日)。

2019年3月5日の第13期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の「政府活動報告」で、李克強首相は「越境ECなど新業態の支援策を改革して充実させる」と言及した。4月9日には、行郵税(入国する個人の荷物や郵便物に対する輸入関税)の税率の引き下げが施行され、食品や薬品などは15%から13%に、スポーツ用品や紡績品などは25%から20%になった(2019年4月10日記事参照)。越境ECのビジネスモデルのうち、海外から商品を直接郵送する直送モデルに影響を与えるとみられている。李克強首相は「行郵税が影響する範囲は比較的広く、税率の引き下げは輸入の促進と消費の拡大に役立つだけでなく、大衆に実益をもたらすことができる」との認識を示した(「中国政府網」4月5日)。

中国の消費者の嗜好に合わせた商品開発や知名度向上が鍵

遼寧省人民政府は2016年4月、「中国(大連)越境EC総合試験区実施方案」を公布し、同省では保税倉庫が整備された。その保税倉庫を最初に利用したことで有名な辣萍果(Lapingguo)の薛源董事は、中国の消費者の嗜好(しこう)について「中国人は大容量の商品を好む」と指摘する。日本と韓国から商品を輸入している同社は、日本商品について「質は良いが、量が少なく値段も高い」と話す。同社が取引する韓国企業は、中国向けに商品の大容量化や金額の交渉に応じることができるとし、日本企業も中国人の嗜好に合わせた商品開発や取引の際の交渉により柔軟性が必要と述べた。

また、2016年から大連市において越境EC事業に取り組む庫特熊(Kutebear)の王記COO(最高執行責任者)は「中国人はネットショッピングする際、事前に商品について情報収集する人が多い。中国のネット上で商品を検索した際、有名だったり良い口コミを確認できたりするものは売れやすい」と語る。越境ECでの販路拡大において、自社商品の知名度を向上させることは重要といえる。


庫特熊の王記COO(ジェトロ撮影)

一方、中国のECおよび越境ECに関する法整備の影響で、「代理購入(CtoC)」が淘汰(とうた)される可能性がある。代理購入とは、海外にいる留学生などが商品を購入して、注文者に個別に郵送もしくはハンドキャリーする形態、インターネット取引サイトを用いて個人間で代理購入をする形態などである。納税などをせず売価で優位に立っていたが、前述の「電子商務法」で電子商取引経営者に納税義務や行政許可の取得が義務付けられた(第11条、第12条)ため、今後は価格優位を維持することが困難になるとみられる。

辣萍果の薛源董事は「弊社はこれまでの越境ECや一般貿易での実務経験を生かし、納税や商品の中国語ラベル表示の徹底などのサポート事業にも取り組みたい」と意気込む。「電子商務法」の施行などによって、今後中国のEC市場が健全な発展を遂げることができるか注目される。


左から辣萍果の薛源董事、金愛玲開発部経理(ジェトロ撮影)

注1:
経済産業省「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」。
注2:
中国インターネット情報センター(CNNIC)「第43回中国インターネット発展状況統計報告」。
執筆者紹介
ジェトロ・大連事務所
李 莉(り り)
2007年、ジェトロ・大連事務所入所。経済情報部、進出企業支援センターを経て、現在は市場開拓部で中国企業の対日投資と日系企業の内販拡大、イノベーション事業を担当。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課
清水 絵里子(しみず えりこ)
2016年4月、ジェトロ入構。海外調査部海外調査計画課を経て、2017年6月より現職。 中国の経済概況や電子商取引(EC)、日系企業動向、消費動向などについて調査、講演、リポートの執筆に従事。

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