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市場の拡大とともに競争が激化する中国の化粧品市場
日本の化粧品企業に商機あり

2019年7月24日

中国国家統計局の発表によると、2018年の中国の化粧品小売総額は前年比4.2%増の2,619億元(約4兆1,904億円、1元=約16円)(図1参照)となった。2018年の日本の化粧品出荷額が1兆6,941億円(注1)であることを考えれば、中国はすでに日本の約2.5倍の市場となっている。

図1:中国における化粧品小売額の推移および伸び率
中国の化粧品小売額の推移について、2013年は前年比21.3%増の1,625億元、2014年は12.3%増の1,825億元、2015年は12.3%増の2,049億元、2016年は8.4%増の2,222億元、2017年は13.1%増の2,514億元、2018年は4.2%増の2,619億元、2019年1~5月は前年同期比13.0%増の1,195億元。

出所:中国国家統計局のデータを基にジェトロ作成

2019年、輸入化粧品で日本のシェアがトップに

化粧品に対する需要の拡大で、化粧品の輸入額も増加している。化粧品(HSコード3304類)の輸入統計をみると、2018年には前年比69.2%増の98億9,241万ドルと過去最多だった。2019年1~5月期で前年同期比43.7%増の51億9,523万ドルとなっていることから、通年で前年を超すことが予想される(図2参照)。

図2:中国における化粧品の輸入額の推移
2010年は約8億ドル、2011年は約11億ドル、2012年は約12億ドル、2013年は約13億ドル、2014年は約22億ドル、2015年は約31億ドル、2016年は約40億ドル、2017年は約58億ドル、2018年は約99億ドル、2019年1~5月は訳52億ドル。国地域別にみると、韓国は2016年にフランスを追い抜きトップとなったが、2019年1~5月に日本に追い抜かれ2位となった。日本は2015~2017年までは3位だったが、2018年に2位となり、2019年1~5月でトップとなった。フランスは2015年までトップだたが、2016年に韓国、2018年に日本に追い抜かれ、2019年1~5月は3位となった。米国は2010年より4位を維持している。英国は2010年より5位を維持している。

出所:中国税関およびGTAを基にジェトロ作成

中国における化粧品の輸入額を国・地域別にみると、2018年の1位は韓国(前年比70%増)、2位は日本(91.4%増)、3位はフランス(44.1%増)、4位は米国(60.4%増)、5位は英国(61.7%増)の順となった。韓国からの輸入額が最も多い理由として、欧米や日本の化粧品に比べ価格面で優位性があること、韓国ドラマなどコンテンツの普及で韓国ブランドが身近な存在になったことが挙げられる。2位の日本はトップ韓国との差を縮め、2019年1~5月期ではトップとなった。日本の化粧品が支持される理由としては、中国人の肌質と相性が良いことに加え、「安心・安全なイメージ」があると考えられる。

ジェトロが北京、上海、広州など6都市の消費者を対象に実施した「中国の消費者の日本製品等意識調査(2018年12月)」では、「安心・安全なイメージのある国」として「日本」(24.5%)がトップだった。「購入したいと思う製品・サービスの原産国」の「化粧品・美容」のカテゴリーでも、「日本」と答えた割合は40.4%と最も多く、前年度調査の27.0%から大きくシェアを拡大している。

実際に日本を訪れる中国人観光客の多くも化粧品を購入している。日本の観光庁が発表した「訪日外国人の消費動向」(2018年次報告書)PDFファイル(1.8MB) によると、中国人観光客が購入した土産品のうち、「化粧品・香水」の購入率が79.5%、購入者単価が5万4,224円(前年比10.3%増)に達し、主要訪日国・地域(韓国、台湾、香港、米国、中国)の中でいずれも最上位だった。

拡大する日本産化粧品への需要を満たすべく、日本の化粧品メーカー各社は増産や中国市場での販売網を拡大させている(表1参照)。資生堂は2019年2月に新たな生産拠点を建設し、2021年度中の稼働を目指すと発表した。この生産拠点では、スキンケア商品の生産を担い、高品質で安心・安全な商品を生み出すとしている。

表1:直近の日本企業による中国の化粧品市場へのビジネス展開事例
時期 企業名 概要
2018年10月 コーセー 中国で高級化粧品の販売店網を拡充する。2020年までに主力スキンケア「雪肌精 MYV(みやび)」と「コスメデコルテ」の販売店の数を現状比で2倍以上に増やす。デコルテなど高価格帯商品のインターネット通販での販売も始めた。
2019年5月 第一三共 営業·マーケティング機能を日本から上海に移管し、中国向けに処方した化粧品を2019年夏発売する。
2019年6月 カネボウ化粧品 欧州や中東で販売している高級絹を原料とした化粧品「センサイ」を中国で販売。百貨店などのほか、ネットでも販売する。

資料:各種報道を基にジェトロ作成

越境ECで参入障壁が低減

一方、中国政府は2014年から一部の保税区で化粧品を含む製品の輸入を一般貿易より簡易な手続きでできる越境EC取引を認めた(税関総署2014年第56号、第57号など)。一般貿易では、外国産化粧品を初めて輸入する際には「輸出入化粧品検験検疫監督管理弁法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」(総局令第143号)で定められているとおり、商品の成分や化粧品の品質基準などの資料を国家食品薬品監督管理総局に提出し、承認を得なければならない。スキンケアやメイクアップ用品など非特殊用化粧品(一般化粧品、注2)は通常4~5カ月の審査期間を要し、商品ごとに数十万円から数百万円の検査費用がかかるとされていた(注3)。

越境ECの関連政策が整備されたことで、中国の大手ECサイトが相次いで越境ECビジネスに参入し、プラットフォームも整備された。中国で化粧品販売を検討する日本企業にとって、簡便な通関手続きと割安な出店コストで中国市場を開拓できる越境ECの魅力は大きい。ただ、中国の大手ECサイトへ出店する場合、一般的に毎月数百万円の維持費がかかるため、「一定規模以上の売り上げがなければ、出店できても続けていくことが難しい」との新たな課題も指摘されている。

中国で日本の化粧品などを販売するECプラットフォームの関係者は「数年前まで、化粧品は日本製というだけで売れたが、最近は一定の知名度がないと、消費者に見向きされない」と消費者の変化を語る。

化粧品の主要ターゲット層である20~30代の消費者に訴求する効果的なプロモーション方法として、インターネット上のインフルエンサーである「KOL」を活用した宣伝が注目されている。KOLとはキーオピニオンリーダーの略で、SNSなどで多くのフォロワーを持ち、ネット上で影響力のある人物を指す。KOLに自社商品をSNSで紹介してもらう、あるいは、ライブ中継を実施しながらの販売(ライブコマース)をしてもらうといったプロモーション活動を行う日本企業が増えている(表2参照)。

表2:KOLやライブコマースを活用した日本企業の事例
時期 企業名 概要
2017年7月 ミキモトコスメティックス 中国への本格展開に向け、SNS やKOL などを利用したマーケティングや、動画や記事でのストーリーテリングを得意とするInagoraのアプリ「豌豆公主(ワンドウ)」に出店。
2018年9月 新日本製薬 中国の交流サイト(SNS)で人気を集める「インフルエンサー」の女性らを日本に招き、主力のスキンケア商品などをPR。
2019年7月 パペルック 動画を見ながら商品を購入できる「ライブコマース」を使い、日本製化粧品を中国で販売する事業を開始。

資料:各種報道を基にジェトロ作成

また、日本で地道な宣伝活動を行っていくことも大切といわれている。中国の消費者は実際に日本で売れている商品を購入したい傾向にあるため、日本国内のクチコミサイトで知名度を高めて実績をつくる、訪日観光客にアプローチするといった方法が考えられる。前出のプラットフォーム関係者は「中国に進出する前に日本、あるいは中国より投資コストの少ないASEANなどで知名度を高めていくやり方もある」と話す。

輸入関税の引き下げでさらに激化する競争

中国政府は2018年7月から化粧品を含む外国製品の輸入関税を引き下げた(2018年6月1日付ビジネス短信参照、化粧品の関税率については表3を参照)。

表3:化粧品類の関税率一覧(調整前後比較)
HSコード 品目名 現行の最恵国関税率 調整後の最恵国関税率
33030000 香水、オーデコロン 10 3
33041000 唇用化粧品 10 5
33042000 アイメイク用化粧品 10 5
33043000 爪用化粧品 15 5
33049100 パウダー 10 5
33049900 スキンケア用品およびその他化粧品 6.5 1

注:日本からの輸入品に対しての課税は、最恵国税率が適用される。
出所:財政部ウェブサイトの発表を基にジェトロ作成

また、2018年11月10日から、初めて輸入される非特殊用化粧品(一般化粧品)に対する管理方式をこれまでの審査制から届け出制に変更した(2018年11月13日付ビジネス短信参照)。これらの政策によって安価かつ短いリードタイムで化粧品が輸入販売できる仕組みが整備された。しかし、市場参入のハードルが低くなったことで、競争がさらに激化することが予想される。

中国市場で勝ち残るには、長期的なビジネスプランを立て、効果的なプロモーション方法を実施していくことが肝要だろう。日本企業のサポートをすべく、ジェトロでは中国で化粧品の販路拡大を希望する国内の中小企業を対象とした商談会を実施している(写真参照)。こうしたイベントでは、バイヤーから消費者が求めている商品や実際に売れている価格帯など生の声を聞くことができる。このようなイベントに参加するなど地道に情報収集することが競争の激しい中国の市場開拓の近道となろう。


ジェトロが主催する商談会の様子(ジェトロ撮影)

注1:
平成30年(2018)経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編
注2:
9種類ある特殊用途化粧品(育毛用、ヘアカラー用、パーマ用、脱毛用、バスト美容用、シェイプアップ用、消臭用、シミ取り用、日焼け止め用)以外の化粧品を指す。
注3:
ジェトロ「中国化粧品市場調査報告書」(2012年3月)PDFファイル(3.2MB) より。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課
方 越(ほう えつ)
2006年4月、ジェトロ入構。展示事業部海外見本市課、金沢貿易情報センターを経て2013年6月から現職。

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