台湾で脱プラスチックの動きが加速

2019年6月5日

台湾清浄海洋行動連盟が2017年9~10月に行った海洋廃棄物に関する調査によると、台湾海域で最も多かったごみは「ペットボトル」、2位は「ペットボトルのふた」、3位は「ストロー」、4位は「ガラス瓶」、5位は「プラスチック製レジ袋」だった(注1)。近年、こうした海洋ごみが生態系に与える影響について大きく取りあげられ、世界各国で脱プラスチックの動きが加速している。台湾でも近年、使い捨てプラスチック製品の規制を強化している。2019年7月から開始される、使い捨てプラスチックストローの規制もその一環である。

本稿では台湾における使い捨てプラスチック製品に対する規制や、廃プラスチック規制を概観しながら、台湾における「脱プラスチック(以下、脱プラ)」の動きを考察する。

使い捨てプラ製品は2030年全面的に使用禁止

行政院環境保護署(以下、行政院環保署)は2018年2月13日、海洋ごみの削減をめざす「台湾海洋廃棄物治理行動法案」(以下、「行動法案」)を環境保護団体と共同で発表し、「行動法案」に基づく「使い捨てプラスチック製品の削減および使用制限(スケジュール)」を明らかにした(注2、表参照)。「行動法案」の中で対象としているのは、(1)プラスチック製レジ袋(以下、プラ製レジ袋)、(2)使い捨てプラスチック食器(以下、使い捨てプラ製食器)、(3)使い捨て持ち帰り用プラスチックコップ(以下、使い捨てプラ製コップ)、(4)使い捨てプラスチックストロー(以下、使い捨てプラ製ストロー)である。品目別の規制動向などは次のとおり(注3)。

表:使い捨てプラスチック製品の減量と使用制限のスケジュール
プラ製レジ袋 使い捨てプラ製
食器
使い捨てプラ製
コップ
使い捨てプラ製
ストロー
2020
  • 使用制限範囲を拡大(例:レシートくじ(統一発票)を発行するすべての店舗)
  • 現行で使用が制限されている業者は、消費者が店内で飲食する際、使い捨てプラ製食器の提供禁止
  • タンブラーなど飲料容器を持参した消費者に対して優遇サービスを強化
  • 価格引き上げにより数量を制限
  • 飲食業者内で取り扱う飲料に対して使い捨てプラ製ストローの提供禁止
2025
  • 全面的に使用制限
  • 価格引き上げにより数量を制限
  • 全面的に使用制限
  • 価格引き上げにより数量を制限
  • 全面的に使用制限
  • 価格引き上げにより数量を制限
  • 全面的に使用制限
  • 価格引き上げにより数量を制限
2030
  • 全面的に使用禁止
  • 全面的に使用禁止
  • 全面的に使用禁止
  • 全面的に使用禁止

出所:行政院環境保護署新聞資料(2018年2月13日付)を基に作成

(1)プラ製レジ袋

プラ製レジ袋については、2002年7月から「プラスチック製レジ袋およびプラスチック類使い捨て食器使用制限政策」を推進し、「プラスチック製レジ袋およびプラスチック類(ポリスチレンを含む)使い捨て食器の使用制限対象、実施方法および施行日」(以下、プラ製レジ袋および使い捨てプラ製食器に関する法令)を発表、段階的にプラ製レジ袋の使用規制を開始した。第1段階(2002年7月から開始)は(1)公的機関(公立学校、公立病院などを含む)、(2)私立学校などを対象とし、第2段階(2003年1月から開始)は(3)デパートやショッピングセンター、(4)量販店、(5)スーパー、(6)コンビニエンスストアチェーン、(7)ファストフードチェーンなど7つの対象へ使用規制を拡大した。使用制限のある場所ではプラ製レジ袋の使用が禁止され、さらに、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)などの成分を含む厚さ0.06ミリメートル(mm)未満のプラ製レジ袋は「提供不可」、厚さ0.06mm以上のプラ製レジ袋は「無料提供不可」とした。なお、飲食業でのプラ製レジ袋の有料化や厚さに関する規制は2006年5月から廃止となった。2006年6月には前述のプラ製レジ袋および使い捨てプラ製食器に関する法令を廃止するとともに、「プラ製レジ袋」と「プラ製食器」を分割し、改めて「プラ製レジ袋の使用制限対象、実施方法および施行日」を発表した。

2017年8月には、行政院環保署が改正「プラ製レジ袋の使用制限対象、実施方法および施行日」を発表し、2018年1月からプラ製レジ袋の有料化範囲を拡大した。前述した7つの対象に加え、ドラッグストア・薬局、医療機器販売店、書籍・文房具販売店、クリーニング店、飲料スタンド、パン・ケーキ店など約10万事業者を対象とした。なお、以前はプラ製レジ袋の厚さに関する規定があったが、今回の改正では厚さにかかわらず、プラ製レジ袋の無料提供を禁止した。

今回発表されたスケジュールによると(表参照)、プラ製レジ袋は、2020年にはレシートくじ(統一発票)を発行する店舗などを含め使用制限範囲を拡大し、2025年には全面的に使用制限、2030年には全面的に使用禁止とする予定である。

(2)使い捨てプラ製食器

使い捨てプラ製食器は、プラ製レジ袋の規制と並行し、2002年7月から「プラスチック製レジ袋およびプラスチック類使い捨て食器使用制限政策」が推進されたが、北部地域の干ばつの影響で、急きょ、使い捨てプラ製食器のみ第1段階の開始時期を同年10月に変更した。第1段階(2002年10月から開始)は (1)公的機関(公立学校、公立病院などを含む)、(2)私立学校などを対象とし、第2段階(2003年1月から開始)は(3)デパートやショッピングセンター、(4)量販店、(5)スーパー、(6)コンビニエンスストアチェーン、(7)ファストフードチェーン、(8)小規模飲食店などと、プラ製レジ袋と同様に、2段階で使用規制を開始した。

その後、プラ製レジ袋と同様に、プラ製レジ袋および使い捨てプラ製食器に関する法令を2006年6月に廃止すると同時に、「使い捨てプラスチック食器使用制限対象、実施方法および施行日」を発表した。同年7月には、政府機関内の食堂でのコップ、茶わん、皿、箸、スプーン、ナイフ、フォーク、マドラーなどといった各種使い捨てプラ製食器の使用(ただし、持ち帰りの場合は、箸、スプーン、ナイフ、フォーク、マドラーなどはこの制限を受けない)を禁止し、同年9月には公私立学校の食堂まで拡大した。2008年7月には、行政院環保署は観光ホテル業者と協議し、レストラン内では再使用可能な食器(繰り返し洗って使える食器)に切り替えることを決めた。

2019年5月に環境保護署は、これまで以上に環境にやさしい食器を普及させ、プラ製食器の使用を削減するため、また地方自治体が地域の状況に応じて使い捨てプラ製食器の規制対象を拡大できるようにするため、「使い捨てプラスチック食器使用制限対象、実施方法および施行日」の修正草案を発表した。今後は今回の草案の修正作業を経て、正式発表となる。なお、今回の修正草案には、法令名を「使い捨てプラスチック食器使用制限対象、実施方法」と改め、施行日は発表日とすることなどが盛り込まれている。

今回発表されたスケジュールでは(表参照)、2020年には現行で使用が制限されている業者は、消費者が店内で飲食する際は使い捨てプラ製食器の提供禁止、2025年には全面的に使用制限、2030年には全面的に使用禁止とする予定である。

(3)使い捨てプラ製コップ

使い捨てプラ製コップは、すでに使い捨てプラ製食器の規制対象に含まれているが、行政院環保署は2011年1月に発表した「使い捨て持ち帰り用コップの供給量削減及び奨励金回収実施方法」により、2011年5月から使い捨てプラ製コップの規制をさらに強化した。ファストフードチェーンや飲料スタンドでタンブラーなど飲料容器を持参した消費者に対して割引や増量などの優遇サービスを提供するなどの規定である。

今回のスケジュールでは(表参照)、2020年にはタンブラーなど飲料容器を持参した消費者に対して優遇サービスを強化、2025年には全面的に使用制限、2030年には全面的に使用禁止とする予定である。

(4)使い捨てプラ製ストロー

行政院環境保護署は2018年6月に「使い捨てプラスチックストローの使用制限対象、実施方法および施行日」に関する草案を発表し、その後、修正などを経て、2019年5月に「使い捨てプラスチックストローの使用制限対象、実施方法および施行日」を発表した。2019年7月から、政府機関(食堂、売店などを含む)、学校、百貨店やショッピングセンター、チェーン展開するファストフード店など約8,000事業者を対象に、店内飲食時に使い捨てプラ製ストローの提供を禁止する。

今回発表されたスケジュールでは(表参照)、2020年にはこれまでの対象をさらに拡大し、飲食店店内飲食時に使い捨てプラ製ストローの提供を禁止する。2025年には全面的に使用を制限し、2030年には全面的に使い捨てプラ製ストローを使用禁止とする予定である。

使い捨てプラ製ストローの減量推進方法として、(1)(必要がない場合は)ストローを使わない、(2)再利用可能な素材のストロー使用を推奨する、(3)代替素材のストローに改める、というもので、プラ製の代替素材として、紙製、ステンレス製などのストローが流通している。


カフェでは代替ストローが普及し始めている(ジェトロ撮影)

2018年10月から廃プラ輸入を制限

中国が2017年12月31日から廃プラスチック(以下、廃プラ)の輸入を一部禁止したことにより(注4、2017年9月15日記事2018年4月23日記事2019年4月4日調査レポート参照)、それまで中国で受け入れられていた廃プラが台湾に流れ、2018年は廃プラ輸入量が急激かつ大幅に増加している(図参照)。

当局は廃プラ輸入量の急激かつ大幅な増加を問題視し、2018年8月、行政院環保署は法令の改正により、廃棄物輸入の取り締まりを強化し、廃プラや古紙輸入について一部の材質に制限する方針を明らかにした(注5)。その後、行政院環保署は、同年10月に「産業用資材のための事業廃棄物」を改正公布した(注6)。

図:プラスチックのくず(HS3915)輸入量の推移
輸入量は2012年149,128トン、2013年201,316トン、2014年203,563トン、2015年221,463トン、2016年177,425トン、2017年201,485トン、2018年428,452トン。 伸び率は2012年△2.4%、2013年35.0%、2014年1.1%、2015年8.8%、2016年△19.9%、2017年13.6%、2018年112.6%。

出所:財政部関務署発表データを基に作成

同法令の廃プラ輸入に関する主な改正点は、(1)プラスチック製造過程で生じた単一素材あるいは単一形態の廃プラや不良品、あるいは(2)非プラスチック製造過程で生じたプラスチック原料や完成品の単一素材で単一形態の廃プラに限定して輸入を認める。また、(3)いずれの廃プラも土壌が付着していてはいけない。加えて、台湾域内の事業者向けに確実に資材を供給するため、(4)輸入業者は合法的な工場(関連法規にのっとり工場登記を行っている業者、あるいは法により工場登記を免除された業者のみ)に制限される、というものである。

行政院環保署は、同法令は品質の源流管理を行い、バックエンドでの使用を標準化するものとしている。将来的には、輸入業者が提出した輸入業務データを記録し、バックエンドユーザーにとって効率的な管理ができるようにするほか、今後は財政部関務署と協力して輸入時の検査を強化すると述べた。

このように、台湾における脱プラの動きは、まだ始まったばかりであり、今後も引き続き注視していく必要がある。


注1:
台湾環境資訊協会「2017年台湾ICC監測成果統計公布外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」より。
注2:
行政院環境保護署新聞(2018年2月13日付)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます より。
注3:
プラ製レジ袋、使い捨てプラ製食器、使い捨てプラ製コップ、使い捨てプラ製ストローの規制については、行政院環境保護署の関連資料に基づいてまとめた。主な資料としては「政策説明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (減量里程碑、管制歴程、推動情形及案例)」『一次用産品減量宣導網』(行政院環境保護署、2019年4月22日時点)、「一次用産品外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 」『生活廃棄物質管理資訊系統』(行政院環境保護署、2019年3月28日時点)、行政院環境保護署新聞(2016年10月28日付)、行政院環境保護署新聞(2017年4月7日付)、行政院環境保護署新聞(2019年5月9日付)、行政院環境保護署新聞(2017年8月15日付)、行政院環境保護署新聞(2011年1月14日付)、「飲料杯源頭減量及回收奨励金実施方式Q&A」(行政院環境保護署、2011年6月15日付)、行政院環境保護署新聞(2018年6月8日付)、行政院環境保護署新聞(2019年5月8日付)など。
注4:
中国は2017年12月31日から生活由来の廃プラ8品目を輸入禁止としたほか、2018年12月31日からは工業由来の廃プラ8品目の輸入を禁止した。
注5:
行政院環境保護署新聞(2018年8月13日付)より。
注6:
行政院環境保護署新聞(2018年10月1日付)より。なお、今回の改正により、法令名を「産業用資材のための事業廃棄物の種類」(属産業用料需求之事業廃棄物種類)から「産業用資材のための事業廃棄物」(属産業用料需求之事業廃棄物)に変更している。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課 アドバイザー
嶋 亜弥子(しま あやこ)
2017年4月より現職。