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補助金や法整備など国を挙げてEV普及を促進(英国)
世界のEVトップランナーへ(1)

2018年10月29日

英国は2017年の時点でプラグイン車(PEV)の新車登録台数に占める割合が1.9%とEUの中でも普及が進んでおり、充電設備も年々増加している。政府は産業戦略の中で電気自動車(EV)など低排出車の普及促進を掲げており、購入費補助や法整備でも支援を行っている。

2017年も大きな伸び

英国自動車製造販売者協会(SMMT)によると、2017年の新車登録台数は全車種合計で254万617台で、そのうち、プラグイン車(PEV)は4万7,263台で全体の約1.9%で、電気のみを動力とするEV(BEV)に絞ると1万3,597台で0.5%となっている(表1参照)。ただし、登録台数でみるとBEVは前年比で32.5%と大きな伸びをみせた。

表1:代替燃料車の登録台数 (単位:台、%)(△はマイナス値)
燃料種別 2016年 2017年 前年比
プラグイン 電気のみ(BEV) 10,264 13,597 32.5
プラグイン・ハイブリッドなど 26,828 33,666 25.5
ハイブリット ガソリン・電気 50,076 71,522 42.8
ディーゼル・電気 1,713 1,001 △41.6
全車種合計 2,692,786 2,540,617 △5.7
出所:
英国自動車製造販売者協会(SMMT)

欧州の代替燃料観測機関であるeafoによると、2017年時点ではEUの半分以上の加盟国でPEVのシェアは1%未満であり、英国はEUの中でも普及が進んでいる状況にあるといえる(表2参照)。

表2:EUのプラグイン車(PEV)シェア上位10か国(2017年、単位:台、%)
国名 PEV登録台数 PEVシェア PEVのうちBEVの割合
スウェーデン 20,032 5.3 21
ベルギー 14,654 2.7 18
フィンランド 3,055 2.6 16
オランダ 9,192 2.2 87
オーストリア 7,265 2.1 75
ポルトガル 4,237 1.9 42
英国 48,338 1.9 28
ルクセンブルグ 992 1.9 36
フランス 36,888 1.8 69
ドイツ 53,562 1.6 46
EU合計 217,465 1.4 44
出所:
eafo

一方、英国の公共のEVの充電設備の普及状況は、eafoによると、2017年時点で1万4,256台(普通充電、急速充電設備の合計)だった。充電設備1台につき平均でPEV10台を充電する計算になる(2018年9月発表の統計)。PEVのシェアが大きい国でも、充電設備1台につき充電するPEVが5~15台程度のところが多く、普及状況はおよそEUの平均と考えられる。実際、英国の住宅街では路上駐車が多いが、周辺居住者向けの路上駐車用充電設備も日常的に見ることができる。

EV、充電設備に補助金導入

政府は2017年11月に英国産業の生産性を向上させるための方針をまとめた産業戦略(2017年12月28日ビジネス短信参照)を発表した。同戦略では、「アイデア」「人材」「インフラ」「ビジネス環境」「地域」の5つの基礎項目が設定され、投資促進や人材育成による研究開発の強化を目指すことや、住宅やデジタルインフラ、政府と産業界のパートナーシップの構築など、物質的・制度的両面からインフラ整備を進めることが発表された。特にインフラの分野では、EV向けの支援策として充電設備に4億ポンド(約588億円、1ポンド=約147円)を投資し、購入補助に追加で1億ポンド拠出することが盛り込まれた。

充電設備やEV購入に対する補助金は、例えば、家庭向け充電設備スキーム(EVHS)では、家庭の充電設備設置費用の最大75%を補助する内容となっている。他にも、職場向け充電設備や路上駐車向け充電設備など、各場面に応じた補助スキームがある。また、EV購入補の助成では、対象車種を二酸化炭素(CO2)排出量や、CO2を排出せずに走行できる距離(CO2ゼロ排出走行距離)によって分類し、カテゴリーごとの金額を補助する(表3参照)。例えばカテゴリー1は、走行1キロ当たりCO2排出量が50g未満で、CO2ゼロ排出走行距離が112km以上可能な自動車が対象と高い基準が設けられているが、補助金額も購入価格の35%(上限金額4,500ポンド)と大きい。日本車では、日産リーフが該当するほか、BMW i3やテスラ・モデルSなど複数のメーカーのPEVが対象車種とされている。

表3:EV購入補助金一覧
種別 条件 対象車種 補助金額
カテゴリー1 CO2排出量50g/km未満、CO2ゼロ排出走行距離112km以上 日産リーフ、BMW i3、テスラ・モデルSなど 35%
(上限4,500ポンド)
カテゴリー2 CO2排出量50g/km未満、CO2ゼロ排出走行距離16km以上 トヨタプリウス・プラグイン、アウディA3 e-tronなど 35%
(上限2,500ポンド)
カテゴリー3 CO2排出量50~75g/km、CO2ゼロ排出走行距離32km以上 メルセデス・ベンツE350 eAMGライン、ミニ・カントリーマンPHEVなど 35%
(上限2,500ポンド)
オートバイ CO2ゼロ排出走行距離50km以上 アスコルeS3、Vmoto100など 20%
(上限1,500ポンド)
原動機付き自転車 CO2ゼロ排出走行距離30km以上 アスコルeS1、NIU Mシリーズなど 20%
(上限1,500ポンド)
バン CO2排出量75g/km未満、CO2ゼロ排出走行距離16km以上 三菱アウトランダー(商用)、日産e-NV200(カーゴバン)など 20%
(上限8,000ポンド)
カテゴリー1 タクシー CO2排出量50g/km未満、CO2ゼロ排出走行距離112km以上 LECV TX 20%
(上限7,500ポンド)
出所:
英国政府

このような補助政策に加えて、政府は2018年7月に「自動運転・電気自動車法(AEVA)」を成立させた。この法律はEV充電設備の導入促進などを目的としており、高速道路のサービスエリアの充電設備を充実するための政府の権限を強化することや、地方自治体に管轄地域の大手燃料小売業者に充電設備の設置を義務付ける権限を与えることなどが盛り込まれている。また、公共の充電設備が全ての規格に適合し、自動車によっては充電ができないといったことをなくすこと、充電料金の精算方法の統一、安全基準の統一などドライバーの利用環境の向上に資する制度整備も行われることとなった。また、この法律には、自動運転技術の導入に対応した保険ルールの見直しも含まれている。これは従来の自動車保険のルールが機械による運転を想定していないためで、見直しによって人間による運転と機械による運転のどちらの場合でも保険が適用できるようルールを設定するものだ。

さらに政府は9月に入って、低排出車普及促進の一環としてグリーン・ナンバープレートの導入に対する意見公募を開始した。政府によると、これはノルウェー、カナダ、中国でも導入されているもので、EVや水素自動車など環境に優しい自動車に与えられ、ドライバーの関心を高める効果があるという。また、グリーン・ナンバープレート車には専用の自動車レーンでの走行やバス専用車線での走行が認められ、充電設備のある専用駐車場で駐車ができ、超低排出車のみ走行可能な区域が設定されるなどメリットがあり、消費者の低排出車購買を後押しする。

将来型モビリティーを後押し

産業戦略では、英国が注力すべき「グランド・チャレンジ」として「AI(人工知能)・データ」「高齢化社会」「クリーン成長」「将来型モビリティー」の4つの分野を設定している。2018年5月には4つの分野における具体的なミッションを設定したことを発表した(2018年5月30日ビジネス短信参照)。そのうち、「将来型モビリティー」では英国をゼロ排出車の設計・製造の最前線とすること、2040年までに自動車の全ての新車を実質的にゼロ排出とする目標を打ち出した。「クリーン成長」は気候変動や大気汚染に対処するための環境型技術の普及促進を目指すものだが、この分野においてもEVなど低排出車の果たす役割は大きいと考えられる。

さらに、英国政府は一連の政策目標の達成と自動車産業の発展を支援するため、2018年7月に道路輸送における排出削減のロードマップとなる「ロード・トゥー・ゼロ」を発表(2018年7月12日ビジネス短信参照)、2040年の全新車を実質的なゼロ排出車にするという大きな目標を達成するための段階的な施策が示された(表4参照)。英国の温室効果ガス(GHG)のうち27%が輸送部門から排出され、さらにその90%は道路輸送によるものであり、道路輸送の排出削減が大気汚染の改善に大きく寄与するとしている。中間目標としては2030年までに新車販売のうち乗用車は50~70%、商用車(バン)では最大40%を超低排出車(ULEV)(注1)にすることが盛り込まれた。欧州委員会の提案する目標は新車販売のうちゼロ排出車または低排出車(注2)の占める割合を2025年に15%、2030年に30%にすることであり、政府はEUよりも野心的な目標を設定したとの認識を示した。また、2050年までに道路を走行するほぼ全ての乗用車・商用車(バン)の排出をゼロにすることも長期目標として記されている。

表4:2040年までの政府ロードマップ
達成時期 目標
2018年 ロード・トゥー・ゼロ開始
2020年 超低排出車(ULEV)への政府資金拠出が15億ポンドに到達
オックスフォードが世界初のゼロ排出地域となる
2022年 英国で生産されるULEVの部品の50%を英国産とする
2030年 新車のCO2排出量を2021年比で30%減とする
新車販売台数に占めるULEVの割合を乗用車で50~70%、商用車(バン)で40%とする
2035年 蓄電池のコストを1kWh当たり100ドルまで低下させる。あるいはエネルギー密度を1リットル当たり1,000Whに到達させる
2040年 英国の全ての新車販売(乗用車・バン)を実質的にゼロ排出化
出所:
英国政府

このほかの施策としては、大型トラックなどの重量積載貨物車両(HGV)については、乗用車などに比べて排出ゼロへの取り組みが十分ではないとして、HGVの排出削減に向けた取り組みを促進する。またEVの充電設備の新築住宅への取り付け義務化や、通勤先や高速道路への設置促進など、EVドライバーの利便性向上のための施策によってインフラ面での環境整備も行うこととしている。


注1:
英国政府の定義では走行距離1キロ当たりのCO2排出量を75グラム未満としている。
注2:
走行距離1キロ当たりのCO2排出量が50グラム未満と定義されている。
執筆者紹介
ジェトロ・ロンドン事務所
木下 裕之(きのした ひろゆき)
2011年東北電力入社。2017年7月よりジェトロに出向し、海外調査部欧州ロシアCIS課勤務を経て2018年3月から現職。

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