日本からの輸出に関する制度 ペットフードの輸入規制、輸入手続き

米国の輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2023年10月

これまで米国は東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、福島県産のコメや原木シイタケなどについて輸入停止措置を講じていましたが、2021年9月22日に撤廃されました。

ペットフードの成分は、承認された食品添加物か、一般に安全と認められている (GRAS:Generally Recognized As Safe)か、または米国飼料検査官協会 (AAFCO) の公式出版物 (OP) で公開されている成分でなければなりません。AAFCOの検索可能なデータベースには、動物飼料での使用が許容される成分の包括的なリストがあり、成分の一般名または通常名が記載されています。米国では、多くのハーブやその他の物質のペットフードへの使用が承認されておらず、ヒトの食品への使用が承認されているGRAS物質であればペットフードへの使用も許容されていて安全であるというわけではないことに十分注意してください。

米国におけるペットフードの食品安全基準(例えば有害細菌が存在していない、残留農薬や添加物に関する規制など)に準拠している必要があります。米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)は輸入時にサンプリング検査などを課しており、有害細菌が見つかった場合などは輸入警告(インポートアラート)の対象となります。輸入警告は米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)のウェブサイトで公開されています。

2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)

調査時点:2023年10月

米国に輸入されるペットフードの安全は、米国保健福祉省の食品医薬品局(以下FDA)が所管しています。なお、ペットフードに関して、FDAによる市販前承認は要求されていません。

日本からペットフードを輸出するためには、ヒト向けの食品と同様にFDAの動物向け食品施設登録と事前通知などが必要となります。

FDA食品施設登録

バイオテロ法により、米国内でヒトや動物の消費に供するための食品を製造/加工・梱包・保管する米国内外の施設の所有者、経営者またはエージェントは、FDAに食品施設を登録することを義務付けられています。さらに食品安全強化法により、登録は西暦の偶数年の10月1日から12月31日の間に更新することが義務付けられています。

FDA向け事前通知

食品の到着までに事前通知を提出する必要があります。(連邦規則集第21巻第1.279(c):21 CFR 1.279(c))

輸入通関にあたり輸出者側で用意すべき書類は原材料によって異なりますが、動物由来の原材料が含まれている場合、日本からの輸出検疫証明書が必要なことがあります。

また、次のカテゴリーに入るペットフードについては輸入前の手続きが必要です。米国に輸出する前に、輸出業者、現地の輸入業者、通関業者などに輸入の適否も含め確認してください。

密封容器(レトルトパウチや缶詰、瓶詰など)入りの低酸性食品(常温流通)と酸性化食品(常温流通)
  • 水分活性が0.85より高く、pHが4.6より高い、密封・常温で流通する食品は、低酸性缶詰食品として、連邦規則集第21巻第108条および第113条(21CFR Part108.113)が適用されます。当該食品を製造/加工、梱包する施設は、食品缶詰施設登録様式FDA-2541、またはオンラインのFDA産業システム(FDA Industry Systems)を通して施設(FCE)登録を行う必要があります。また、それぞれの食品、容器の大きさと種類、製造方法ごとに、殺菌条件などの製造工程に関する情報を様式FDA-2541d、もしくは2541f、2541gの適切なフォームでFDAに提出しなければなりません。
  • 水分活性が0.85より高く、酸または酸性食品を加えることによりpHを4.6以下の酸性状態にした加工食品を密封・常温で流通する場合は、酸性化食品として、連邦規則集第21条第108条および第114条(21CFR Part108,114)が適用されます。当該食品を製造/加工、梱包する施設は、食品缶詰施設登録様式FDA-2541、またはオンラインのFDA産業システム(FDA Industry Systems)を通して施設(FCE)登録を行う必要があります。また、それぞれの食品、容器の大きさと種類、製造方法ごとに、殺菌条件などの製造工程に関する情報を様式FDA-2541eでFDAに提出しなければなりません。
なお、一貫して冷蔵または冷凍で保存・流通する場合は、FCE登録や製造工程情報の提出は不要です。
原料に牛乳、脱脂粉乳、生クリーム、練乳などを使用した製品
商品によって必要な許可やその取り扱いが細かく異なっているため、USDA APHIS(米国農務省 動植物検査局)のデータベースであるVSパーミットアシスタントで確認してください。USDAのAPHISに直接問い合わせることもできます。粉乳の場合は、通常、そのような証明書がなくても通関できます。詳細はUSDAに問い合わせてください。
原料に畜肉・家きん肉(エキスを含む)由来のものを使用した製品
ヒトの消費のための肉および動物製品に関する規制により、ほとんどの国からの生肉、乾燥肉、缶詰の肉、脱水スープミックス、および肉副産物の輸入が禁止されていますが、特定の肉やその他の動物製品は、ペットフードや動物飼料として使用するために輸入される場合があります(これらの製品はヒト用の消費には使用できません)。原産国の動物疾病の状況によっては、ペットフード製品を生で輸入することもありますが、ほとんどの場合、調理済みである必要があります。いずれの場合も、米国の輸入業者は USDA 発行の輸入許可を申請する必要があります。
原料に卵由来の原料を使用した製品
FDA所管の卵を含む加工品(egg containing products)や調理済みの卵製品(cooked)に該当するペットフードは、製造工程で有害菌が殺菌され、食品に有害菌が存在していないことなど食品の安全性について輸出者が確認したものであれば、日本産の卵由来のものであっても勾留対象には通常ならないとみられます。
卵製品(液卵、乾燥卵など)を原材料に使用する場合は、USDA FSIS(米国農務省 食品安全検査局)の認定施設由来もしくは低温殺菌済みや使用直前に割卵した殻付き卵由来の卵製品の使用が可能ですが、Animal Health Restrictionの対象になっている国からの卵製品を原材料にした食品の場合はVSパーミットの取得が必要です。 (*)担当する検査官によっては、卵製品と卵加工品を区別する基準に差があることに留意してください。例えばカスタードクリームなどは輸入許可証を要求されるケースもあります。卵を含む加工品などとしてFDAの所管として検査され輸入された場合には、通常、前述のFDA所管の卵を含む加工品としての対応で問題ありません。 食品の安全な製造に関するすべてのFDAの要件を満たせば輸入可能です。

関連リンク

関係省庁
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3. 動植物検疫の有無

調査時点:2023年10月

日本からのペットフードの輸出にあたっては、動植物検疫は課されていませんが、動物由来の原材料が含まれている場合、USDA(米国農務省)から、日本側で発行の輸出検疫証明書が求められることがあります。証明書の要否は、USDA APHISのデータベースであるVSパーミットアシスタントを確認してください。詳細は動物検疫所へ問い合わせしてください。

米国の製品関連の規制

1. 製品規格

調査時点:2023年10月

ペットフードは米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)などにより明確に定義されてはいないようですが、一般的に、飼料用に供する種類の調製品のことをいいます。

2. 残留農薬および動物用医薬品

調査時点:2023年10月

ペットフードの製造は農産物のような直接的な検査対象にはなりませんが、残留農薬などの規則を順守した安全な原材料を使って製造することは製造業者の責任となります。

米国における農薬の規制は環境保護庁(EPA)と米国食品医薬品局(FDA)が所管しています。EPAは農薬の種類と最大残留農薬限度(MRL)の承認と登録、FDAは食品についてEPAが設定した規制を執行する役割を担っています。

EPAは、農薬成分および農作物ごとに残留農薬の許容量を設定(ポジティブリスト制)しており、その基準を満たしていなければなりません。なお、一部の農薬成分については、安全であるとして許容量の設定を免除しているものもあります。

ペットフードに関係して残留農薬の許容量が定められている農薬・殺虫剤には、グリホサート(glyphosate)などがあります。EPA によると、除草剤に使われるグリホサートは人体に対する毒性は低いものの、 ペットが噴霧されたばかりの植物に触れたり食べたりすると、消化器疾患や腸疾患を引き起こす危険性があります。EPA は、トウモロコシ、大豆、油用種子、穀物、一部の果物や野菜を含む幅広いヒトおよび動物の食用作物に対するグリホサートの許容範囲を0.1~400ppm の範囲で定めています。

残留農薬の許容量に関する詳細は、「関連リンク」の「その他参考情報」にある農林水産省の「諸外国における残留農薬基準値に関する情報」や連邦規則集第40巻第180条(40CFR Part180)で確認してください。連邦規則集での確認方法はEPAのウェブサイト「残留農薬許容量情報(Part 180)の索引」を参照してください。

許容量を超えて農薬成分が残留している製品、およびEPAが残留農薬の許容量の設定も免除も行っていない農薬成分が残留している製品は、米国に輸入することができないため、日本から米国向けの輸出にあたっては、農薬の使用可否、そして残留する農薬の許容値について事前に確認しておく必要があります。

許容量が設定されている農薬成分が残留しているものについては、次の3つの条件をすべて満たさなければなりません。(1)加工前の原料における残留農薬が許容量を超えていないこと。(2)現行適正製造規範(CGMP)に基づく製造工程が行われ、残留農薬ができる限り取り除かれていること。(3)加工後の製品の残留農薬が、加工前の原料の許容量を超えていないこと。食品医薬品化粧品法(FD&C 法)第 408 条(a)(2)、合衆国法典21USC346a(a)(2)

また、ペットフードは残留動物用医薬品規制の対象になります。
残留抗生物質の許容値については、米国食品医薬品局(FDA)が制定しており、同機関が制定する、肉、鶏肉、卵製品、乳製品に区分した残留許容値を各業者が順守するよう強化・監視するのが米国農務省 食品安全検査局(USDA FSIS)の役割となります。

日本と米国の相違の一例に、フルオロキノロンの使用が挙げられます。日本国内の抗菌剤の慎重使用では、「フルオロキノロンなどの第二次選択薬は、第一次選択薬が無効の場合にのみ使用」としていますが、FDAはラベル表示外薬品使用ELDU(Extralabel Drug Use:承認済み表示に掲載されていない目的・方法における薬品の使用)規定で、フルオロキノロンの使用を禁止しています。

肥育用ホルモン剤については、FDAが製造・販売を承認し、適正な使用方法と残留基準を設定しています。詳細については、ホルモン剤の使用方法や禁止事項について規定している連邦規則集第21巻第522条(21CFR Part522)「動物用新規医薬品の注入・投薬形態」を参照してください。

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合衆国法典
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米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)から入手できる主な情報
米国農薬情報センター(National Pesticide Information Center (NPIC))から入手できる主な情報
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3. 重金属および汚染物質

調査時点:2023年10月

食品に含まれるヒ素および有害重金属などの汚染に関する規制については、FDAが中心に行っていますが、ペットフードに関してはガイダンス、アクションレベル、許容量などが公表されていません。それぞれの有毒・有害物質が長期的に健康に与える影響は不明確とし、有害な物質の含有は避けることが望ましいとされています。

1. 有毒・有害物質の欠陥対策レベル

FDAは、有毒・有害物質に関する欠陥対策レベルをガイダンス「ヒト向け食品および動物飼料に含まれる有毒・有害物質に関する対策レベル」として2000年に発行しています。同ガイダンスでは、19種類の有毒・有害物質について、食品と飼料の品目別に対策レベルの値(ppmなど)が設定されています。
なお、このガイダンスには規則のような法的拘束力はありませんが、FDAが法的措置を発動するかどうかを決定する際の基準と位置付けられています。従って、有毒・有害物質の含有量が欠陥対策レベルを下回っている必要があります。

2. その他

米国では、連邦レベルより州レベルでさらに厳しい規制を設けている場合があるため、詳しくは、州、地方自治体のウェブサイトで確認してください。

一般的に、カリフォルニア州は、全米で最も食品に対する規制が厳しいとされています。具体的には、カリフォルニア州法プロポジション65(安全飲料水および有害物質施行法:Prop 65)の警告表示にかかわる改正で、2018年8月30日以降は、警告文に有害物質名を少なくとも一種類表示し、「その物質を“含む”ではなく、“有害物質にさらされる”という表現にする、インターネットでの販売にも該当する製品には警告文の表示をすることが義務付けられました。これはペットフードの包装材についても同様です。なお、生殖毒性があるとされるビスフェノールA(BPA)に関しては、2017年12月31日以降は個々の商品もしくは商品棚への警告表示が必要となり、全体警告も認められません。Prop 65の有害物質リストは1,000種類以上に及び、年に2~3回はリストの内容が更新されます。確認の際には必ず直近のリストを参照してください。

4. 食品添加物

調査時点:2023年10月

米国に輸入されるペットフードに含まれる食品添加物に関する規制は、合衆国法典第21巻第348条(21U.S.C.348)Food Additivesに基づいて行われています。食品添加物の定義は、合衆国法典第21巻第321条(21U.S.C.321)により規定されており、動物飼料やペットフードに対して直接または間接に使用が認められている食品添加物やそれにかかわる規則は、連邦規則集第21巻第570~573条(21CFR570-573)に列挙されています。

米国において新規の食品添加物を使用する場合には、GRAS(Generally Regarded As Safe:一般に安全と認められている)通知、または食品添加物申請(Food Additive Petition:FAP)をFDAに提出し、事前許可を得る必要があります。承認されていない食品添加物をペットフードに使用することは違法です。FD&C 法によれば、承認されていない食品添加物を含むヒトまたは動物用の食品は安全でなく、粗悪品とみなされます。なお、動物用食品GRAS通知インベントリのデータベースが開始されるまでの暫定的なものとして、FDAは「動物用食品GRAS通知の現在のインベントリ」という表を提供しています。

意図的に使用することにより、直接的または間接的に食品の成分となる、またはなりうる物質、あるいは、食品の性質に影響を及ぼす、または及ぼし得る物質を食品添加物として定義しています。

着色料に関する規制は、合衆国法典第21巻第379条(21U.S.C.379)に基づいて行われています。使用することができる着色料は、日本で許可されているものとは異なるため、FDAウェブサイトの「使用が許可されている着色料一覧(Color Additive Status List)」と「連邦規則集第21巻第70条から82条(21CFR70-82)」で確認してください。

特に、赤色102号については、日本をはじめEUやアジアの主要国では着色料として使用が認められていますが、米国では認められていません。また、クチナシ、ベニバナ、ベニコウジも日本では古くから着色料として広く使用されていますが、米国では使用することはできません。

このほか、FDAは、トランス脂肪酸の原因となる部分水素化油脂(Partially Hydrogenated Oils:PHOs)について「安全と認められる(GRAS)食品」ではないとし、2018年6月18日までに添加物として承認を受けていないかぎり、使用を禁止しました。これを受け、食品事業者は、PHOsを使用しない代替材料への切り替え、またはPHOsの使用継続許可に関する食品添加物申請(food additives petition)を提出することが求められています。

5. 製品包装(製品容器の品質または基準)

調査時点:2023年10月

食品の製造/加工、包装、梱包、輸送または保管に用いられる資材を構成している物質であって、食品の性質に技術的な影響を与えないものを食品接触物質(Food Contact Substances:FCS)といいます(食品医薬品化粧品法第409条(h)(6)、合衆国法典21USC348(h)(6))。FDAは、食品接触物質を間接添加物(Indirect additive)(食品添加物の一種)として定義しています。なお、包装などの資材を構成している成分が溶出し食品に移行するかどうかを確認する責任は、資材の製造業者が負うことになります。

食品接触物質は、FDA規則に合致している物質(次の1を参照)でない場合は、FDAへの食品接触物質通知(次の2を参照)が必要です。

1. 食品接触物質の規制の適合確認
次の規則にあてはまらない食品接触物質は、FDAへの食品接触物質通知をしなければなりません。
  • 間接添加物(連邦規則集第21巻第174条から第179条:21CFR Part174-179)
  • GRAS(連邦規則集 第21巻第182条、第184条、第186条:21CFR Part182,184,186)
  • 1958年以前に容認されている物質(Prior Sanctioned Material, 連邦規則集第21巻第181条: 21CFR Part181)
  • 規制の適用除外になる物質(Threshold of Regulation Exemption, 連邦規則集 第21巻第170.39条:21 CFR Part170.39)
2. FDAへの食品接触物質通知(Food Contact Substance Notification)
食品接触物質の製造業者あるいは供給業者は、上市の120日以上前にその物質の情報をFDAに通知しなければなりません(連邦規則集第21巻第170.100条:21CFR Part170.100)。通知から120日の間にFDAから異議申し出がない場合はその通知が有効となり、食品接触物質の使用が合法となります(連邦規則集第21巻第170.104条:21CFR Part170.104)。ただし、食品接触物質通知は、申請した製造業者に対して有効となるもので、同じ物質であっても申請した製造業者以外の製造業者には、通知の効果は及びません。提出方法および提出先については、関連リンクの「申請フォームFDA3480」を参照してください。
カリフォルニア州法プロポジション 65は、企業は、がん、先天性欠損症、またはその他の生殖障害を引き起こす化学物質への暴露についてカリフォルニア州民にあてた警告を表示することを求めています。カリフォルニア州民が購入する製品、自宅や職場または環境に放出される製品に含まれているものも含むため、ペットフードもカリフォルニア州民が購買しその製品に接するという意味において対象になるものとみられます。そのため、カリフォルニア州におけるビスフェノールA(BPA)の警告表示については、食品関連の規制「3.重金属および汚染物質(最大残留基準値/禁止)」を参照してください。
3. PFAS
PFASとは、パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質と呼ばれる化学物質の部類で、非粘着性およびグリース(潤滑性)、耐油性、耐水性に優れた特性により調理器具、食品包装、および食品加工において使用されています。FDAは食品接触物質として長鎖PFASを2011年に禁止しましたが、短鎖PFASは許可してきました。しかし、FDAは、6:2フルオロテロマーアルコール(6:2 FTOH)を含む短鎖PFASの安全性に関しても懸念し、規制の変更措置を取り始めています。
さらに、米国環境保護庁(EPA)が飲料水に関する規制を発表し、米国素材メーカーの3Mが2025年末までの製造および使用の中止を発表しています。
また、FDAの連邦レベルにおける動きだけでなく、ワシントン州、ニューヨーク州、カリフォルニア州などいくつかの州が既にその州で食品包装のPFASを禁止し始めているため注意が必要です。
4. フタル酸エステル類
FDAは、可塑剤、接着剤、消泡剤、表面潤滑剤、樹脂、および殺ダニ剤として使用される23種類のフタル酸エステルと、ほかの2つの物質の食品接触使用許可を取り消しました。この措置により、これらのフタル酸エステルは、第21巻第175条から第178条:21CFR Part175~178の規制によって認可された物質のリストから削除され、食品接触用途ではフタル酸エステルの使用は残り9つに制限されます。
連邦レベルのFDAのみならずミネソタ州、ミシガン州、ニュージャージー州、ニューヨーク州は現在、立法会議でフタル酸エステル類を制限する法案を検討しています。メイン州では食品包装中のフタル酸エステル類の禁止法が2019年に可決されているなど注意が必要です。
5. 食品包装用リサイクルプラスチック
米国では、プラスチックを含む使用済みリサイクル(PCR: post-consumer recycled)材料の使用を増やすことに重点が置かれています。一方で、食品接触物品におけるPCRプラスチック材料の使用に関するFDAの主な安全上の懸念は、次の3点です。
  1. PCR材料中の汚染物質がリサイクル材料から作られた最終的な食品接触物品に出現することで食品に移行する可能性があること、
  2. PCR材料は食品接触用途として規制されていない可能性があること、
  3. PCRプラスチック中のアジュバント(添加剤・補助物質)は食品接触用途としての規制を順守していない可能性があること
リサイクルプラスチックから作られた食品接触物品の製造業者は、未使用の材料と同様に、リサイクルされた材料が意図された用途に適した純度であり、未使用の材料のすべての既存の仕様を満たすことを保証する責任があります。
リサイクルポリマーに新規添加物を使用する場合、あるいは未使用ポリマーに現在許可されている添加物の量を超えて認可された添加物を使用する場合は、食品接触物質通知(FCN)または食品添加物申請(FAP)が必要です。
FDAは、食品包装材メーカーがPCRプラスチックを食品包装材に使用するための工程を評価する際の参考として「産業界向けガイダンス - 食品包装における再生プラスチックの使用:化学上の検討事項(Guidance for Industry - Use of Recycled Plastics in Food Packaging: Chemistry Considerations)」を作成しています。また、FDA は食品接触物品の製造に使用されるPCRプラスチックを製造するための特定のプロセスの適合性に関して肯定的な意見を出した申請のリストを公開しています。

関連リンク

関係省庁
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根拠法等
合衆国法典
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厚生労働省から入手できる主な情報
ジェトロから入手できる主な情報

6. ラベル表示

調査時点:2023年10月

ペットフードのラベル表示は、FDA規則と州レベルでの規制の二段階で規制されています。

FDA規則

ペットフード製品が FDA による市販前承認を受ける必要はありませんが、連邦食品医薬品化粧品法(FD&C法)では、ペットフードもヒト向け食品と同様に、食するに適して安全であること、衛生的な条件下で製造され、有害物質を含まず、適切なラベルが貼られていることを義務付けています。ペットフードは一般食品と同様に公正な包装および表示法(Fair Packaging and Labeling Act)により規制されています。ペットフードを商業目的で米国に輸入するには、CBP(米国税関・国境取締局)およびFDAが定める表示を行わなければなりません。現在の FDA 規制では、製品の適切な識別、正味量の記載、製造業者または販売業者の名称、事業所の所在地、および製品に含まれるすべての成分を重量に基づいて多いものから少ないものへと適切に記載することが求められています。また、表示は英語で行わなければなりません。

なお、ペットフードのラベル表示において”natural”という用語がしばしば使用されていますが、この用語は正式に定義されていません。米国飼料検査官協会(Association of American Feed Control Officials :AAFCO)が策定した「ナチュラルと主張するためのガイドライン」によると、ほとんどの部分で、”natural”とは人工香料、人工着色料、または人工保存料が製品中にないことと同等として解釈されることができます。

“natural” と“organic(有機)”は同じではありません。現時点ではペットフード用“organic(有機)”のラベル表示に関する公式な規則はありませんが、USDAは現在、“organic(有機)”としてラベル表示されるペットフードに使用される合成添加物の種類を規定する規則を策定中です。USDAのNOP(National Organic Program)は、当面の間、オーガニックを主張するペットフードはヒト向け食品の規制を満たさなければならないとしています。

州レベルでの規制

いくつかの州では、州独自のラベル表示規制を施行しています。州レベルの規制については、その多くがAAFCOにより提供されたモデルに基づいています。AAFCO は一連の「ペットフードおよび特殊ペットフードのモデル規制」を策定し、AAFCOの公式出版物で確認することができます。AAFCO の「モデル規制」は連邦政府の要件と一致して作成されています。

「モデル規制」に基づき、ペットフード製品のラベルには次が含まれることが求められています。

  • 適切な製品名
  • 製品が対象としているペットの種類
  • パッケージまたは容器内の食品の量を示す数量表示
  • 保証された分析
  • 製品の全成分のリスト
  • 必要な場合、栄養摂取の充足率に関する記載
  • 必要な場合、製品の与え方の指示
  • 製造業者または販売業者の名前および住所

2023年7月にAAFCOは、標準化された栄養情報、明確な成分表示、保管と取り扱いの指示を含む、新たに提案されたラベル表示ガイドラインを承認しました。AAFCO は、州の飼料規制プログラムが、2024 年の公式出版物の印刷版が入手可能になった日付から6年間、ペットフードのラベルの審査に執行裁量権を活用することを推奨しています。

主な変更は次のとおりです。

  • 栄養情報表示:ヒト向け食品のラベルにより良く似た形に更新
  • 使用目的に関する記述:消費者がペットフードの目的を簡単に識別できるように、前面表示パネル下方の新しい位置に更新。
  • 成分に関する記述:一貫した用語の使用を明確にし、ビタミンの括弧書きや一般名を許可するように更新。
  • 取り扱いおよび保管に関する指示 (オプション):一貫性を高めるために、オプションのアイコンを更新・標準化。

7. その他

調査時点:2023年10月

米国に輸入される動物飼料、ペットフードの安全はFDAが所管しています。米国に動物飼料、ペットフードを輸出する製造/加工、梱包、保管施設は、食品の衛生および安全性を確保することを目的とした現行適正製造規範(Current Good Manufacturing Practice Requirements for Food for Animal:CGMP)に従った衛生管理などを行う必要があります。

また、2011年1月に成立した食品安全強化法(Food Safety Modernization Act:FSMA)第103条により米国で消費される動物向け食品を製造/加工、梱包、保管する施設は、危害分析およびリスクに基づく予防管理(Hazard Analysis and Risk Based Preventive Controls)として、食品安全計画の策定と実施が義務付けられています。

輸入業者も、第301条により、外国供給業者検証プログラム(Foreign Supplier Verification Program:FSVP)として、輸入食品に対する安全検証活動を実施する必要があります。

また、2019年7月以降は、第106条に基づき「意図的な食品不良事故の防止(食品防御)」への対応は免除されています。適用対象や要件などの詳細は、関連リンクの「食品安全強化法(FSMA)に関する情報」(ジェトロ)で確認してください。

なお、次の場合には、特別な食品安全規制がかかるため留意し、米国に輸出する前に規制内容を確認するとともに、輸出業者、現地の輸入業者、通関業者などに輸入の適否を確認する必要があります。

  • 常温流通される密封容器入りの低酸性食品と酸性化食品の場合(常温流通)
  • 原料に牛乳、脱脂粉乳、生クリーム、練乳などを使用した製品
  • 原料に畜肉、家きん肉(エキスを含む)、卵由来の原料を使用した製品

一部のペットフード製品は、動物の栄養ニーズを満たし、腎臓病や糖尿病などの特定の病気を治療または予防することを目的とした完全食として調合されていることから、2016年にFDA はそのような製品に関するFDA の現在の考え方を概説したコンプライアンスポリシーガイドを作成しました。コンプライアンスポリシーガイドでは、病気の治療または予防を目的とした完全食としてのペットフードを違法に販売している可能性のある企業に対して、規制措置を講じるかどうかを決定する際に、FDA がどのような要素を考慮するのかについて説明しています。

FD&C 法は「医薬品」という用語に「ヒトまたはほかの動物の病気の治療または予防に使用することを目的とした物」を含むと定義しています。 しかし、病気の治療や予防を目的とした完全食としてのペットフードのほとんどは動物用医薬品として承認されておらず、その場合はFDAにより、未承認の動物用医薬品とみなされることに注意が必要です。

米国内の輸入関税等

1. 関税

調査時点:2023年10月

米国にペットフードを輸入・販売するにあたって、輸入業者は関税を納付しなければなりません。日本から米国へ輸入されるペットフードに課せられる関税は次のとおりです。関税表は、米国国際貿易委員会(USITC)が管理しています。

ペットフードの関税率
HSコード 税率
2309:飼料用に供する種類の調製品 0%,1.4%, 1.9%, 7.5%,80.4¢/kg+6.4%

関税率については、関連リンクの「世界各国の関税率(World Tariff)」を確認してください。

2. その他の税

調査時点:2023年10月

州、地方自治体へ納付する売上税
米国内では地方自治体により売上税が課されます。州ならびに郡や市の地方自治体により売上税の合計税率は異なるため、USITC、米国税関国境取締局(CBP)、州、地方自治体のウェブサイトで確認する必要があります。

関連リンク

関係省庁
米国国際貿易委員会(USITC)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
米国税関・国境取締局(CBP)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
その他参考情報
米国国土安全保障省・税関・国境警備局(CBP)から入手できる主な情報
ジェトロから入手できる主な情報

3. その他

調査時点:2023年10月

商業貨物税関使用料、港湾維持料
輸入業者はペットフードの輸入にあたって、関税だけでなく商業貨物税関使用料(Merchandise Processing Fee:MPF)を納付する必要があります。正式通関(Formal Entry)の場合、MPFは輸入申告価格(FOB価格)の0.3464%で、最低31.67ドル、最高614.35ドルです。さらに、船便による輸入の場合には、輸入業者は貨物価格の0.125%の港湾維持料(Harbor Maintenance Fee:HMF)を納付する必要があります。これらは米国税関国境取締局(CBP)が徴収しています。

その他

調査時点:2023年10月

米国食品医療品局(FDA)による食品施設の査察
米国では2011年1月4日、食品安全強化法(FSMA)が成立し、FDAの権限が多岐にわたって強化されました。FSMAの制定により日本企業への影響は、さまざまな点(製品関連の規制「7.その他」を参照)で生じています。特に、同法の第201条に基づき、FDAによる外国の食品関連施設への査察権限が強化され、日本の食品関連施設(ペットフード含む)でもFDAによる査察が実施されるようになりました。そのため、米国で消費される食品の関連施設はFDAからの査察がいつ入っても対応ができるように、米国の規則に沿った対応をすることが必要になっています。