牛乳・乳製品の輸入規制、輸入手続き
米国の食品関連の規制
1. 食品規格
調査時点:2019年10月
米国連邦規則集、第21巻パート1240.3 「一般的定義」そして第21巻パート131により、乳製品とは健康な乳生産動物から得られた乳汁分泌物、またはそれを主原料に作られた食品と定義されています。また、第21巻パート131により乳製品各カテゴリーについての詳細も定められています。
関連リンク
- 関係省庁
-
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)
- 根拠法等
- 米国連邦規則集
2. 残留農薬および動物用医薬品
調査時点:2019年10月
残留農薬に関する規制には該当しませんが、残留動物用医薬品規制の対象になります。 残留抗生物質の許容値については、米国食品医薬品局(FDA)が制定しており、同機関が制定する、肉、鶏肉、卵製品、乳製品に区分した残留許容値を各業者が順守するよう強化・監視するのが米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)の役割となります。
日本と米国の相違の一例に、フルオロキノロンの使用が挙げられます。日本国内の抗菌剤の慎重使用では、「フルオロキノロンなどの第二次選択薬は、第一次選択薬が無効の場合にのみ使用」としていますが、FDAはラベル表示外薬品使用ELDU(承認済み表示に掲載されていない目的・方法における薬品の使用)規定で、フルオロキノロンの使用を禁止しています。
肥育用ホルモン剤については、FDAが製造・販売を承認し、適正な使用方法と残留基準を設定しています。詳細については、関連リンクの連邦規則集第21巻第522条「動物用新規医薬品の注入・投薬形態」を参照してください。
関連リンク
- 関係省庁
-
米国食品医薬品局(FDA)
-
米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)
- 根拠法等
- 米国連邦規則集
- その他参考情報
-
食品医薬品局(FDA)から入手できる主な情報
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抗菌剤の慎重投与について
(「慎重使用のカタログ Judicious Use Brochures」ページ内 「牛肉獣医師における抗生物質の慎重投与 Judicious Use of Antimicrobials for Beef Cattle Veterinarians」参照) -
承認済み動物医薬品(水産向けを含む)データベース
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抗菌剤の慎重投与について
3. 重金属および汚染物質
調査時点:2019年10月
食品に含まれる有毒および有害な物質の許容量は、食品医薬品化粧品法第406条に基づく規則で定められています。現在、FDAが規則で食品に関して暫定残留許容濃度を定めている物質は、ポリ塩化ビフェニール類(PCB類)のみで(21CFR Part109.30)、ヒ素および有害重金属などの汚染に関する規制については、総括的な法的水準は決められていないのが現状です。それぞれの有毒・有害物質が長期的に健康に与える影響は不明確とし、有害な物質の含有はなるべく避けることが望ましいとされています。
(1)有毒・有害物質の欠陥対策レベル
FDAは、有毒・有害物質に関する欠陥対策レベルをガイダンス「ヒト向け食品および動物飼料に含まれる有毒・有害物質に関する対策レベル」として2000年に発行しています。同ガイダンスでは、19種類の有毒・有害物質について、食品と飼料の品目別に対策レベルの値(ppmなど)が設定されています。
なお、このガイダンスには規則のような法的拘束力はありませんが、FDAが法的措置を発動するかどうかを決定する際の基準と位置付けられています。従って、有毒・有害物質の含有量が欠陥対策レベルを下回っている必要があります。
(2)トータルダイエットスタディに基づく参考指標
米国では、1991年からさまざまな食品に含まれる物質(ヒ素および有害重金属などを含む)のトータルダイエットスタディ(Total Diet Study:TDS)が実施されており、FDAのウェブサイト上で結果が公開されています。これは法的に設定された許容量や基準値ではありませんが、米国で消費されているさまざまな食品中におけるヒ素や有害重金属などの含有量について、最小値、最大値、平均値などを知ることができるため、参考指標として有効利用することができます。
2006年から2013年に行ったサンプリングでは次のような結果となっており、米国で消費されている食品に含まれるヒ素および有害重金属などの参考指標として活用することができます。
ここでは例として、低脂肪液状チョコレートミルク、チョコレートミルクシェイク、プロセスチーズ、ナチュラルチーズについて取り上げます。
乳製品に含まれるヒ素および有害重金属などの参考指標(mg/kg)
名称 | 最小値 | 最大値 | 平均値 |
---|---|---|---|
ヒ素 | 0 | 0 | 0 |
カドミウム | 0 | 0.005 | 0.002 |
銅 | 0 | 0.4 | 0.2 |
鉛 | 0 | 0.008 | 0.0003 |
マンガン | 0 | 0.46 | 0.28 |
亜鉛 | 3.7 | 5.0 | 4.3 |
名称 | 最小値 | 最大値 | 平均値 |
---|---|---|---|
ヒ素 | 0 | 0 | 0 |
カドミウム | 0 | 0.007 | 0.001 |
銅 | 0 | 1.0 | 0.4 |
鉛 | 0 | 0.008 | 0.0003 |
マンガン | 0 | 1.1 | 0.41 |
亜鉛 | 3.5 | 6.5 | 4.5 |
名称 | 最小値 | 最大値 | 平均値 |
---|---|---|---|
ヒ素 | 0 | 0.022 | 0.001 |
カドミウム | 0 | 0.013 | 0.001 |
銅 | 0 | 0 | 0 |
鉛 | 0 | 0 | 0 |
マンガン | 0 | 0.77 | 0.11 |
亜鉛 | 22.8 | 32.6 | 26.6 |
名称 | 最小値 | 最大値 | 平均値 |
---|---|---|---|
ヒ素 | 0 | 0 | 0 |
カドミウム | 0 | 0 | 0 |
銅 | 0 | 0 | 0 |
鉛 | 0 | 0 | 0 |
マンガン | 0 | 1.1 | 0.08 |
亜鉛 | 32.6 | 42.5 | 38.4 |
(3)その他
米国では、連邦レベルより州レベルでさらに厳しい規制を設けている場合があるため、詳しくは、州、地方自治体のウェブサイトで確認してください。
一般的に、カリフォルニア州は、全米で最も食品に対する規制が厳しいとされています。具体的には、カリフォルニア州法プロポジション65(安全飲料水および有害物質施行法:Prop.65)の警告表示に係る改正で、2018年8月30日以降は、警告文に有害物質名を少なくとも一種類表示し、その物質を’含む’ではなく、’暴露する’という表現にする、インターネットでの販売にも該当する製品には警告文の表示をすることが義務付けられました。なお、生殖毒性があるとされるビスフェノールA(BPA)に関しては、当該製品の容器に表記する、または小売店の棚の表示でも製品を明確にすることにより消費者などに警告することが義務付けられました。BPAに関しては、緊急法に基づく暫定措置として、全体警告を認め、個々の商品もしくは商品棚への警告の義務は免れていましたが、2017年12月30日で終了し、2017年12月31日以降は個々の商品もしくは商品棚への警告表示が必要となり、全体警告も認められません。Prop.65の有害物質リストは900種類以上に及び、年に2~3回はリストの内容が変更されるので、確認の際には必ず直近のリストを参照してください。
関連リンク
- 関係省庁
-
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)
-
米国カリフォルニア州環境保護庁有害物質管理局(OEHHA)
- その他参考情報
- 米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)から入手できる主な情報
- 米国カリフォルニア州環境保護庁有害物質管理局(OEHHA)から入手できる主な情報
- ジェトロから入手できる主な情報
4. 食品添加物
調査時点:2019年10月
米国に輸入される水産物に含まれる食品添加物に関する規制は、合衆国法典第21巻第348条(21U.S.C.348)Food Additivesに基づいて行われています。食品添加物の定義は、合衆国法典第21巻第321条(21U.S.C.321)により規定されており、食品への直接または間接に使用が認められている食品添加物やそれに係る規則は、米国連邦規則集第21巻第170条から第189条(21CFR Part170~189)に列挙されています。
米国において新規の食品添加物を使用する場合には、GRAS通知、または食品添加物申請(Food Additive Petition(FAP))をFDAに申請し、事前許可を得る必要があります。
なお、食品の製造、梱包、包装、輸送または保管に用いられる材料を構成している物質であって、食品の性質に技術的な影響を与えないものを食品接触物質と呼び、食品添加物として定義しています。食品接触物質に関する情報は、「5.食品包装規制」の項目を参照してください。
着色料に関する規制は、合衆国法典第21巻第379条(21U.S.C.379)に基づいて行われています。使用することができる着色料は、日本で許可されているものとは異なるため、FDAウェブサイト上の「使用が許可されている着色料一覧(Color Additive Status List)」と「米国連邦規則集第21巻パート第70~82条(21CFR Part70~82)」を事前に確認してください。
関連リンク
- 関係省庁
-
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)
- 根拠法等
- 米国連邦規則集
- 合衆国法典
- その他参考情報
-
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)から入手できる主な情報
-
食品添加物に関する情報
-
食品添加物申請(FAP)について
(" Petition Guidance"内、"Food Additive Petition Submission"参照。) -
FAP(動物用食品添加物申請)に関するページ
-
GRAS通知に関するベージ
-
使用が許可されている着色料一覧
-
使用が許可されている添加物一覧(着色料以外)
-
食品添加物に関する情報
- ジェトロから入手できる主な情報
5. 食品包装規制(食品容器の品質または基準)
調査時点:2019年10月
食品の製造、梱包、包装、輸送または保管に用いられる資材を構成している物質であって、食品の性質に技術的な影響を与えないものを食品接触物質(Food Contact Substances:FCS)といいます(食品医薬品化粧品法第409条(h)(6)、合衆国法典21U.S.C.348(h)(6))。FDAは、食品接触物質を間接添加物(Indirect additive)として、食品添加物として定義しています。なお、包装などの資材を構成している成分が溶出し食品に移行するかどうかを確認する責任は、資材の製造業者にゆだねられています。
食品接触物質は、FDA規則に合致している物質(次の(1)参照)でない場合は、FDAへの食品接触物質通知(次の(2)参照)が必要です。
(1)食品接触物質の規制の適合確認
次の規則にあてはまらない食品接触物質は、FDAへの食品接触物質通知をしなければなりません。
- 間接添加物(連邦規則集 21CFR Part174~179)
- GRAS (連邦規則集 21CFR Part 182,184,186)
- 1958年以前に容認されている物質(Prior Sanctioned Material, 連邦規則集 21CFR Part181)
- 規制の適用除外になる物質(Threshold of Regulation Exemption, 連邦規則集 21 CFR Part 170.39)
(2)FDAへの食品接触物質通知(Food Contact Substance Notification)
食品接触物質の製造業者あるいは供給業者は、市販の120日以上前にその物質の情報をFDAに通知しなければならなりません(連邦規則集21CFR Part170.100)。通知から120日の間にFDAから異議申し出がない場合はその通知が有効となり、食品接触物質の使用が合法となります(連邦規則集21CFR Part170.104)。ただし、食品接触物質通知は、申請した製造業者に対して有効となるものであるため、同じ物質であっても申請した製造業者以外の製造業者には、通知の効果は及びません。提出方法および提出先については、関連リンクの「申請フォームFDA3480」を参照してください。
なお、カリフォルニア州におけるビスフェノールA(BPA)の警告表示については、食品関連の規制の「3.重金属および汚染物質」を参照してください。
関連リンク
- 関係省庁
-
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)
- 根拠法等
-
合衆国法典
-
第21巻170条(21U.S.C.170)「食品添加物」
-
第21巻174条(21U.S.C.174)「間接食品添加物:一般」
-
第21巻175条(21U.S.C.175)「間接食品添加物: 接着およびコーティングの成分」
-
第21巻176条(21U.S.C.176)「間接食品添加物:紙およびボール紙の成分」
-
第21巻177条(21U.S.C.177)「間接食品添加物:ポリマー」
-
第21巻178条(21U.S.C.178)「間接食品添加物: 補助剤、生産補助具、殺菌剤」
-
第21巻179条(21U.S.C.179)「食品の製造、処理、取扱いにおける放射線照射」
-
第21巻181条(21U.S.C.181)「事前に容認された食品成分」
-
第21巻182条(21U.S.C.182)「一般的に安全と認識される物質」
-
第21巻184条(21U.S.C.184)「一般に安全と確定された直接食品物質」
-
第21巻186条(21U.S.C.186)「一般に安全と確定された間接食品物質」
-
第21巻348条(h)(21U.S.C.348(h))「食品接触物質に関する通知」
-
第21巻170条(21U.S.C.170)「食品添加物」
- その他参考情報
- 米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)から入手できる主な情報
- ジェトロから入手できる主な情報
6. ラベル表示
調査時点:2019年10月
乳製品を小売用の食品として商業目的で米国に輸入するには、米国税関・国境警備局(CBP)およびFDAが定める表示を行わなければなりません。条件によっては表示義務が免除されますが、一般的に表示しなければならない項目は次のとおりです。表示は英語で行わなければなりません。詳しくは、関連リンクのFDAの「食品表示ガイド」を確認してください。
- 主要表示パネル:PDP(Principal Display Panel)
-
- 食品名称/識別事項
- 内容量・正味重量
- 情報パネル:IP(Information Panel)
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- 原材料名(未加工で生鮮の場合は必要ない。ただし、2種類以上の原材料〔添加物を含む〕が使用されている場合は、それぞれの名称を表示しなければならない。
- 栄養成分表示
- 製造業者、包装業者、流通業者のいずれかの名称と住所
- 警告および取り扱い上の注意
- 原産国
なお、4.栄養成分表示について、2016年7月26日に改正法が施行されました。改正のポイントは次のとおりです。
- 消費者に見てほしいサービングサイズやカロリーの文字をより大きく太字にして強調すること。
- 栄養素表示に”added sugars”を新たに追加すること。
- ビタミンA、ビタミンCの代わりにビタミンDとカリウムの表示を追加すること。
FDAは食品製造業界が対応に必要な期間を考慮し、2018年5月、改正法への対応期限を当初の期日からそれぞれ1年半延期し、原則2020年1月1日まで、ただし年間売上高1,000万ドル以下の小規模製造業者は2021年1月1日までとすることを公表しました。
関連リンク
- 関係省庁
-
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)
-
米国国土安全保障省・米国税関国境取締局(CBP)
- 根拠法等
- 合衆国法典
- 米国連邦規則集
- その他参考情報
- 米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)から入手できる主な情報
- 連邦取引委員会(FTC)から入手できる情報
- ジェトロから入手できる主な情報
7. その他
調査時点:2019年10月
米国で販売される乳製品の安全性は、FDAが所管しています。米国に乳製品を輸出する製造/加工、梱包、保管施設は、食品の衛生および安全性を確保することを目的とした現行適正製造規範(Current Good Manufacturing Practice In Manufacturing, Packing or Holding Human Food:CGMP)に従った衛生管理を行う必要があります。
また、2011年1月に成立した食品安全強化法(Food Safety Modernization Act:FSMA)第103条により、米国で消費される食品を製造/加工、梱包、保管する施設は、危害分析およびリスクに基づく予防管理(Hazard Analysis and Risk Based Preventive Controls)として、食品安全計画の策定と実施が義務付けられています。輸入業者も、第301条により、外国供給業者検証プログラム(Foreign Supplier Verification Program:FSVP)として、輸入食品に対する安全検証活動に応える必要があります。さらに、2019年7月以降は、第106条に基づき「意図的な食品不良事故の防止(食品防御)」にも対応する必要があります。適用対象や要件などの詳細は、関連リンクのジェトロの「食品安全強化法に関する情報」で確認してください。
関連リンク
- 関係省庁
-
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)
-
農林水産省
- 根拠法等
- 合衆国法典
- 米国連邦規則集
- 米国食品安全強化法
- その他参考情報
- 米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)から入手できる主な情報
- ジェトロから入手できる主な情報
その他
調査時点:2019年10月
- FDAによる食品施設の査察
- 米国では2011年1月4日、食品安全強化法(FSMA)が成立し、FDAの権限が多岐にわたって強化されました。FSMAの制定により日本企業への影響は、さまざまな点で生じています(食品関連の規制「7.その他」参照)。特に、同法の第201条に基づき、FDAによる外国の食品関連施設への査察権限が強化され、日本の食品関連施設でもFDAによる査察が実施されるようになりました。そのため、米国で消費される食品の関連施設はFDAからの査察がいつ入っても対応ができるように、米国の規則に沿った対応をすることが必要になっています。
関連リンク
- 関係省庁
-
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)
- 根拠法等
- 米国連邦規則集
- その他参考情報
- 米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)から入手できる主な情報
- ジェトロから入手できる主な情報