英国の貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2025年の実質GDP成長率は1.4%、企業の設備投資が拡大。
  • 輸出入とも原動機が牽引、乗用車の輸出は減少。
  • 米国と関税引き下げで合意。EUとは衛生植物検疫圏など貿易円滑化へ向け交渉。
  • 対内・対外ともに直接投資は大幅増。データセンター関連投資が活発。
  • 日本の対英直接投資は前年から大幅減も、エネルギー・脱炭素関連案件が目立つ。

公開日:2026年8月4日

マクロ経済

実質GDP成長率は1.4%、企業の設備投資が成長を下支え

2025年の実質GDP成長率は1.4%となった。企業の設備投資が活発で、国内総固定資本形成が4.3%増となり、成長に寄与した。個人消費は0.8%増だった。

四半期別に見ると、第1四半期は米国のトランプ政権による関税引き上げ見通しを受けて、対米輸出の前倒しが実質GDP成長率全体を前期比0.6%増へと押し上げた。一方、第2四半期は0.1%、第3四半期、第4四半期はいずれも0.2%にとどまった。第3四半期は、英国の自動車大手ジャガー・ランドローバー(Jaguar Land Rover)に対するサイバー攻撃の影響などから、製造業が減少に転じた。サービス部門は、第4四半期は横ばいとなるなど伸び悩んだ。

表1 英国の需要項目別実質GDP成長率 (単位:%)(△はマイナス値)〔注〕四半期の伸び率は前期比。
項目 2023年 2024年 2025年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 0.3 1.0 1.4 0.6 0.1 0.2 0.2
民間最終消費支出 △ 0.4 △ 0.2 1.0 0.2 0.2 0.1 0.1
政府最終消費支出 2.1 2.9 1.6 0.0 0.7 0.3 0.1
国内総固定資本形成 0.5 1.7 4.3 2.8 0.4 0.8 △ 0.1
財・サービスの輸出 △ 2.3 1.3 2.1 1.1 △ 1.2 2.0 △ 0.3
財・サービスの輸入 △ 1.6 2.7 4.2 0.8 0.1 0.5 0.6

〔注〕四半期の伸び率は前期比。

〔出所〕英国国家統計局(ONS)2026年5月14日改定数値

インフレ率は、2025年1月は3.0%だったが、航空運賃の上昇などにより7月には3.8%に上昇し、11~12月に再び3%台前半に戻った。

政策金利については、イングランド銀行(BOE、中央銀行)が緩やかなペースで4回の引き下げを実施。2025年2月に4.5%、5月に4.25%、8月に4.0%に引き下げ、12月にはさらに低い3.75%とした。その後、中東情勢を含む先行き不透明感を背景に、2026年4月30日時点では3.75%に据え置かれている。

また、中東情勢の悪化以前から雇用市場は弱含みで推移し、失業率は2025年8月から5%台の高い水準が続いている。2026年第1四半期には、就学・就業・職業訓練のいずれにも参加していない若者(NEET)が100万人を超え、16~24歳人口の13.5%に達した。

貿易

輸出は原動機が2割増と好調、乗用車は減少傾向

2025年の貿易は、輸出が前年比3.0%増の4,226億6,100万ポンド、輸入は12.2%増の7,193億3,900万ポンドとなった。貿易収支は2,966億7,800万ポンドの赤字で、赤字幅は前年より655億2,700万ポンド拡大した。

輸出を品目別に見ると、最大品目の機械類・輸送機器類(構成比36.1%)は前年比3.5%増だった。内訳をみると、原動機(11.8%)は航空・防衛関連需要の拡大を背景に23.7%増と高い伸びを示した。道路走行車両(7.2%)は、中国国内の需要低迷やサイバー攻撃による生産停止の影響などを受けた乗用車(5.5%)が17.4%減少した。金価格の高騰を受け、非貨幣用金(15.0%)が20.1%増加した。また、有機化学品(0.9%、33.3%減)の減少が響き化学工業製品(11.9%)は7.2%減となった。鉱物性燃料、潤滑油等(6.7%)も12.3%減少した。このうち原油・石油製品(5.4%)が17.9%減だった。

表2 英国の主要品目別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ポンド、%)(△はマイナス値)〔注〕通関ベース。ただし、北アイルランドとEUとの貿易は各企業のインボイス報告に基づく。
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械類・輸送機器類 147,394 152,568 36.1 3.5 216,226 227,636 31.6 5.3
原動機 40,142 49,672 11.8 23.7 29,865 35,961 5.0 20.4
道路走行車両 36,840 30,370 7.2 △ 17.6 68,423 69,715 9.7 1.9
その他の一般用工業用機械など 17,888 18,120 4.3 1.3 22,587 22,779 3.2 0.9
電子・電気機器 14,574 14,860 3.5 2.0 31,237 31,587 4.4 1.1
その他輸送機器 14,058 14,310 3.4 1.8 12,558 11,312 1.6 △ 9.9
産業用機械 9,757 9,325 2.2 △ 4.4 9,599 10,168 1.4 5.9
通信・音響機器 8,288 8,944 2.1 7.9 24,908 25,515 3.5 2.4
未分類のその他製品 66,614 76,244 18.0 14.5 84,641 144,759 20.1 71.0
非貨幣用金 52,760 63,348 15.0 20.1 60,817 117,374 16.3 93.0
雑製品 41,689 41,484 9.8 △ 0.5 75,939 79,015 11.0 4.1
その他雑製品 18,615 18,609 4.4 △ 0.0 25,547 27,335 3.8 7.0
専門機器・計測機器・制御機器 13,086 13,029 3.1 △ 0.4 13,035 13,292 1.8 2.0
衣類 3,176 2,896 0.7 △ 8.8 16,281 17,120 2.4 5.2
家具 2,374 2,518 0.6 6.1 8,183 8,332 1.2 1.8
化学工業製品 54,125 50,209 11.9 △ 7.2 63,459 63,454 8.8 △ 0.0
医薬品 23,080 21,463 5.1 △ 7.0 24,011 24,473 3.4 1.9
その他化学品 6,414 6,232 1.5 △ 2.8 7,080 7,234 1.0 2.2
香料・化粧品 6,244 6,161 1.5 △ 1.3 8,548 8,788 1.2 2.8
有機化学品 5,940 3,962 0.9 △ 33.3 7,801 6,924 1.0 △ 11.2
原料別製品 33,978 38,751 9.2 14.0 60,684 66,261 9.2 9.2
鉱物性燃料、潤滑油等 32,485 28,485 6.7 △ 12.3 63,927 57,509 8.0 △ 10.0
原油・石油製品 27,616 22,685 5.4 △ 17.9 46,537 38,400 5.3 △ 17.5
ガス 4,087 4,557 1.1 11.5 13,622 15,074 2.1 10.7
電力 564 1,110 0.3 96.9 3,093 3,557 0.5 15.0
食料品・動物 16,235 17,402 4.1 7.2 54,065 57,964 8.1 7.2
食用でない原材料(鉱物性燃料除く) 8,710 8,520 2.0 △ 2.2 12,356 12,862 1.8 4.1
飲料・たばこ 8,244 8,233 1.9 △ 0.1 7,857 7,890 1.1 0.4
動物性および植物性油脂とろう 680 766 0.2 12.7 2,153 1,990 0.3 △ 7.6
合計(その他含む) 410,155 422,661 100.0 3.0 641,306 719,339 100.0 12.2

〔注〕通関ベース。ただし、北アイルランドとEUとの貿易は各企業のインボイス報告に基づく。

〔出所〕英国歳入関税庁

輸出を国・地域別に見ると、最大の仕向け先の米国(構成比15.9%)は非鉄金属や原動機が増加し、前年比16.9%増となった。2位はドイツ(7.8%)で6.9%増だったが、EU(42.3%)向け全体では0.3%減とほぼ横ばいだった。EU向けの主要品目では、原動機、非貨幣用金、電力が増加した一方、原油・石油製品、道路走行車両、有機化学品などが減少した。中国(6.6%)向け輸出は24.9%減だった。特に非貨幣用金と道路走行車両の減少が目立った。

表3 英国の主要国・地域別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ポンド、%)(△はマイナス値)〔注1〕通関ベース。ただし、北アイルランドとEUとの貿易は各企業のインボイス報告に基づく。 〔注2〕アジア大洋州はASEAN+6(ASEAN、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
欧州 219,116 221,609 52.4 1.1 384,080 414,149 57.6 7.8
EU 179,339 178,880 42.3 △ 0.3 319,477 325,403 45.2 1.9
ユーロ圏 163,366 147,348 34.9 △ 9.8 268,331 273,841 38.1 2.1
ドイツ 30,836 32,972 7.8 6.9 75,020 74,659 10.4 △ 0.5
オランダ 28,312 25,265 6.0 △ 10.8 47,515 48,530 6.7 2.1
アイルランド 23,688 23,241 5.5 △ 1.9 18,137 18,630 2.6 2.7
フランス 22,910 23,010 5.4 0.4 35,397 36,797 5.1 4.0
ベルギー 16,980 15,360 3.6 △ 9.5 30,804 29,535 4.1 △ 4.1
スペイン 9,494 10,567 2.5 11.3 20,536 22,580 3.1 10.0
イタリア 8,917 8,633 2.0 △ 3.2 23,062 23,093 3.2 0.1
非ユーロ圏 19,981 21,605 5.1 8.1 40,394 40,802 5.7 1.0
ポーランド 7,278 8,659 2.0 19.0 13,378 13,669 1.9 2.2
スウェーデン 5,127 4,975 1.2 △ 3.0 7,793 7,552 1.0 △ 3.1
スイス 22,726 23,809 5.6 4.8 16,971 43,178 6.0 154.4
ノルウェー 3,267 3,362 0.8 2.9 23,549 22,274 3.1 △ 5.4
アゼルバイジャン 3,004 4,185 1.0 39.3 101 93 0.0 △ 8.2
ロシア 561 363 0.1 △ 35.3 71 74 0.0 4.1
カザフスタン 331 243 0.1 △ 26.7 4,758 1,021 0.1 △ 78.5
アジア大洋州 82,938 78,292 18.5 △ 5.6 118,677 135,185 18.8 13.9
中国 37,032 27,811 6.6 △ 24.9 62,042 62,610 8.7 0.9
ASEAN 12,188 13,472 3.2 10.5 17,185 22,565 3.1 31.3
シンガポール 6,351 7,903 1.9 24.4 3,562 5,106 0.7 43.4
香港 9,519 13,087 3.1 37.5 5,903 9,719 1.4 64.6
インド 7,063 7,557 1.8 7.0 10,178 10,186 1.4 0.1
日本 5,969 5,953 1.4 △ 0.3 8,727 10,285 1.4 17.8
北米 64,854 75,011 17.7 15.7 83,169 106,633 14.8 28.2
米国 57,515 67,247 15.9 16.9 62,596 75,932 10.6 21.3
カナダ 5,724 6,411 1.5 12.0 18,133 27,687 3.8 52.7
中東および北アフリカ 24,344 28,639 6.8 17.6 18,117 17,428 2.4 △ 3.8
アラブ首長国連邦(UAE) 9,815 8,083 1.9 △ 17.6 3,830 3,677 0.5 △ 4.0
カタール 2,872 7,442 1.8 159.1 648 1,001 0.1 54.3
トルコ 6,268 6,507 1.5 3.8 13,709 13,085 1.8 △ 4.6
サウジアラビア 4,235 4,802 1.1 13.4 1,808 1,934 0.3 7.0
中南米 7,830 8,447 2.0 7.9 10,666 11,631 1.6 9.1
サブサハラアフリカ 6,023 5,861 1.4 △ 2.7 12,402 16,759 2.3 35.1
南アフリカ共和国 1,546 1,393 0.3 △ 9.9 8,488 12,803 1.8 50.8
合計(その他含む) 410,155 422,661 100.0 3.0 641,306 719,339 100.0 12.2

〔注1〕通関ベース。ただし、北アイルランドとEUとの貿易は各企業のインボイス報告に基づく。
〔注2〕アジア大洋州はASEAN+6(ASEAN、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。

〔出所〕英国歳入関税庁

輸入は米国がドイツを上回って首位の相手国に浮上

輸入を品目別に見ると、最大品目の機械類・輸送機器類(構成比31.6%)は前年比5.3%増となった。道路走行車両(9.7%)の1.9%増、原動機(5.0%)の20.4%増が寄与した。鉱物性燃料、潤滑油等(8.0%)は、原油・石油製品(5.3%)の減少(17.5%減)が全体を押し下げ、10.0%減少した。増加に寄与したのは非貨幣用金(16.3%)で、金価格の高騰を受け93.0%の大幅増となった。

輸入を国・地域別に見ると、米国(構成比10.6%)は前年比21.3%増で首位に立った。非貨幣用金の輸入増が影響したほか、液化天然ガス、野菜・果実、穀類が大幅に増加した。前年に首位のドイツ(10.4%)は非貨幣用金、穀類、鉄鋼が減少し0.5%減で2位、3位の中国(8.7%)は0.9%増だった。このほか、スイス(6.0%)が非貨幣用金の伸びなどを受け、前年の2.5倍と大きく増加した。

通商政策

米国、EUと通商交渉を加速、インドとは貿易協定締結

英国は2025年6月26日、「通商戦略」を発表した。通商政策を通じ、保護主義の脅威や貿易の歪曲的慣行などに対応し、英国企業の機会拡大、経済成長の実現を図るとしている。英国にとっての重点市場としてEU、米国、インド、中国を位置付けた。

EUとの間では、2025年5月、ブレクジット後初の英EUサミットが開催され、英国・EU間で衛生植物検疫圏の設定や排出量取引制度(ETS)の連携、若者の移動を巡る協力に関する交渉などを開始することに合意した(2025年5月21日ビジネス短信記事参照)。次回以降の英EUサミットまでの妥結を目指すとしている。

米国とは2025年5月、英国産自動車や鉄鋼などに対する米国の関税引き下げなどを含む経済繁栄協定を締結し(2025年5月9日記事参照)、9月には、人工知能(AI)や量子など先端技術の協力強化に関する技術繁栄協定を締結した(2025年9月22日記事参照)。医薬品価格設定に関しては2025年12月に基本合意に達し(2025年12月9日記事参照)、これを踏まえて2026年4月に妥結した。英国側の医薬品支出の増加などを条件に、米国は英国産医薬品に対して、1962年通商拡大法232条に基づく関税を課さないとした。

インドとの包括的経済貿易協定は2025年7月に締結された(2025年7月30日記事参照)。協定が発効すれば、インドへ輸出される英国製品に対する関税引き下げが行われる。英国企業にとって年間最大4億ポンドのコスト削減効果が見込まれ、10年以上の段階的実施を経て、その効果は年間約9億ポンドにまで拡大する可能性がある。

中国には、英国のキア・スターマー首相が2026年1月、英国首相としては8年ぶりに訪問し、英中サービス貿易協定の共同フィージビリティー調査などを含む覚書(MOU)を締結した(2026年2月3日記事参照)。

韓国とは2025年12月15日、湾岸協力会議(GCC)諸国とは2026年5月20日に(2026年5月25日記事参照)、それぞれFTA交渉の妥結に至った。スイス、トルコとは交渉を継続している。一方、イスラエルとのFTA交渉は2025年5月、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区侵攻を受けて、英国側が一時中断を決定した。

2024年12月に日本を含む9カ国との間で既に発効した、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)(2024年12月17日記事参照)は、2026年6月22日にメキシコとの間でも発効した。これにより、英国のCPTPP加盟をまだ批准していない加盟国はカナダのみとなる。

一方、鉄鋼製品に対するセーフガード措置は年々強化が図られている。2025年7月~2026年6月に適用されたセーフガード措置は、残余割当に対する1カ国の利用率上限が設定され、未使用の割当枠を次の四半期に持ち越す「キャリーオーバー」制度が廃止された(2025年7月16日記事参照)。さらに、2026年7月以降は、従来の総関税割当枠を60%削減し、超過分に対する関税率を50%へと引き上げ、安価な鉄鋼の流入リスクの高まりに対応するとしている(2026年3月25日記事参照)。

対内・対外直接投資

直接投資は対内、対外ともに大幅増に転じる

英国国家統計局(ONS)の2026月3月31日の発表によると、2025年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は583億5,900万ポンドで、前年の101億7,800万ポンドの引き揚げ超過から大幅な増加に転じた。2025年末の対内直接投資残高は2兆3,376億ポンドとなった。2025年に発表された主なグリーンフィールド投資案件としては、9月のドナルド・トランプ米国大統領の国賓訪英に合わせて公表されたマイクロソフト(Microsoft)、エヌビディア(NVIDIA)、グーグル(Google)といったテック企業の投資が目立った。英国政府は2025年6月に発表した産業戦略(2025年6月25日記事参照)において、8つの成長産業の1つに人工知能(AI)を含む「デジタル・テクノロジー」を指定。AIを経済成長やイノベーションを牽引するものと位置付け、AI向けデータセンターの建設計画承認の迅速化などに取り組んでいる。

ONSの2026年3月3日の発表によると、2025年に実行された100万ポンド以上のクロスボーダーM&A(国境を越える企業の合併・買収)は、英国企業に対する買収案件が799件、買収金額が650億4,300万ポンドとなり、前年の757件、263億4,900万ポンドから件数、金額ともに増加した。国・地域別で見ると、金額が最も大きかったのは米国で、369億1,300万ポンド(269件)だった。製紙、不動産、IT(データセンター)、食品といった幅広い分野で米国企業によるM&Aが行われた。EU企業によるM&Aは181億8,000万ポンド(251件)、アジア企業によるM&Aは30億9,300万ポンド(58件)だった。

表4-1 英国の主な対内直接投資案件(2025年)〔M&A以外〕
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
IT マイクロソフト
(Microsoft)
米国 2025年9月 300億ドル マイクロソフトは、2025~2028年の4年間で英国に300億ドルを投じると発表。うち150億ドルは、英国内のクラウドおよび人工知能(AI)インフラ構築に向けた設備投資に、そのほかは英国全土でのマイクロソフトの継続的な事業運営に充てる。
IT エヌビディア
(NVIDIA)
米国 2025年9月 最大110億ポンド エヌビディアは、米国コアウィーブ(CoreWeave)、英国エヌスケール(Nscale)などと英国で連携すると発表。エヌビディアのGPU12万基を導入し、最大110億ポンドをデータセンター向けに投資することで、2026年末までに、パートナー企業とともにオープンAIなどの主要AIモデルを提供する「AIファクトリー」を構築する。
IT グーグル
(Google)
米国 2025年9月 50億ポンド グーグルは、今後2年間で設備、研究開発、および関連のエンジニアリングに50億ポンドを投資すると発表。同投資の一環として、ロンドン郊外のウォルサムクロスにデータセンターを9月16日、オープンした。
IT オラクル
(Oracle)
米国 2025年3月 50億ドル オラクルは、英国におけるクラウドサービス需要の急増に対応するため、今後5年間で50億ドルを投資し、クラウドインフラを拡充する。
不動産 アラダ
(Arada)
アラブ首長国連邦(UAE) 2025年11月 非公開 UAEの不動産デベロッパーであるアラダは、ロンドンのロイヤル・ドックス西端に位置する総開発価値25億ポンドのウォーターフロント複合開発プロジェクト「テムズサイド・ウェスト」の株式80%を取得することで合意したと発表。

〔出所〕各社発表および報道などから作成

表4-2 英国の主な対内直接投資案件(2025年)〔M&A〕
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
製紙 DSスミス
(DS Smith)
インターナショナル・ペーパー(International Paper) 米国 2025年1月 非公開 米国の製紙企業インターナショナル・ペーパーは英国の同業DSスミスを買収した。
不動産 バーチェスター
(Barchester)
ウェルタワー(Well Tower) 米国 2025年10月 52億ポンド 米国のヘルスケア不動産投資会社ウェルタワーは、主に米国と英国における140億ドル規模の高齢者向け住宅買収の一環として、英国のバーチェスターが保有する高齢者向け住宅ポートフォリオを52億ポンドで買収した。
IT ヨンダーグループ
(Yondr Group)
デジタルブリッジグループ
(Degital Bridge Group)/ラ・ケス(La Caisse)
米国/カナダ 2025年7月 総額58億ドル デジタルインフラへの投資を専門とする米国のデジタルブリッジグループおよびカナダの投資会社ラ・ケスは、ハイパースケールデータセンターの開発、所有、運用を行うヨンダーグループを買収した。買収元のキャセクシス・ホールディングス(Cathexis Holdings)はヨンダ―グループのオーナー企業、買収額は58億ドルとされる。
食品 ブリットビック
(Britvic)
カールスバーグ・グループ(Carlsberg Group) デンマーク 2025年1月 非公開 カールスバーグ・グループは、完全子会社のカールスバーグUKが、英国を代表する国際的な清涼飲料事業であるブリットビックの買収を完了した。両企業を統合し、「カールスバーグ・ブリットビック」とする。
食品 レキット
(Rechitt)
アドベント(Advent) 米国 2025年7月 非公開 プライベート・エクイティ投資会社のアドベントは、レキットの、ホームケア用品を扱うエッセンシャル・ホーム事業への出資で合意に達した。エッセンシャル・ホーム事業を分社化し、アドベントが70%の株式を取得する。30%は引き続きレキットが保有する。

〔出所〕各社発表および報道などから作成

2025年の対外直接投資額は656億1,400万ポンドとなり、前年の563億3,900万ポンドの引き揚げ超過から一転して、大きく増加した。2025年末時点の対外直接投資残高は2兆1,586億ポンドとなった。主なグリーンフィールド投資案件としては、製薬大手アストラゼネカ(AstraZeneca)による米国および中国への巨額投資の発表のほか、アプトDC(Apto DC)やグリーン・スケール(GreenScale)によるイタリアとノルウェーでのデータセンター建設の発表があった。

2025年の英国企業による100万ポンド以上のクロスボーダーM&A案件は314件、買収金額は165億2,300万ポンドとなり、前年の303件、148億8,800万ポンドから件数、金額ともに増加した。地域別に見ると、金額、件数ともに欧州が最大で、前年に金額で最大だった米州と逆転した。欧州は79億3,900万ポンド(151件)で、前年の43億1,600万ポンド(133件)から増加した。他方、米州は57億8,600万ポンド(105件)で、前年の92億7,900万ポンド(107件)から件数は微減だが、金額は大幅に減少した。欧州企業に対する主な案件としては、資源、食品、ITといった幅広い分野でM&Aが行われた。また、アルジュン・インフラストラクチャー・パートナーズ(Arjun Infrastructure Partners、英国)およびインテロゴ・ホールディング(Interogo Holding、スイス)によるデータ4(Data4、フランス)のデータセンター買収もあり、グリーンフィールド投資と同様に欧州のデータセンターへの投資が目立った。

表5-1 英国の主な対外直接投資案件(2025年)〔M&A以外〕
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
製薬 アストラゼネカ
(AstraZeneca)
米国 2025年7月 500億ドル アストラゼネカは、米国で販売する全医薬品の米国内製造を目指し、今後5年間で米国で医薬品製造と研究開発に500億ドルを投資すると発表。
機械・機器 CNHインダストリアル
(CNH Industrial)
米国 2025年11月 約50億ドル 農業・建設機械メーカーのCNHインダストリアルは、米国内の製造および研究開発施設に今後5年間で約50億ドルを投資すると発表。
IT アプトDC
(Apto DC)
イタリア 2025年5月 30億ユーロ アプトDCは30億ユーロを投じ、ミラノ県ラッキアレッラにイタリア最大級のデータセンター・キャンパスを建設する計画を発表。
IT グリーン・スケール
(Green Scale)
ノルウェー 2025年6月 25億ユーロ以上 グリーン・スケールは25億ユーロ以上を投じ、ノルウェー西部アグデル県シルダル市にデータセンター「トンスタッド・データパーク」を建設すると発表。2027年の稼働開始を目指す。
製薬 アストラゼネカ
(AstraZeneca)
中国 2025年3月 25億ドル アストラゼネカは25億ドルを投じ、中国の北京医薬イノベーションパークにグローバル戦略研究開発センターを設置すると発表。同社は2026年1月、2030年までに150億ドルを投じて中国での医薬品製造・研究開発事業を拡大することも発表している。

〔出所〕各社発表および報道などから作成

表5-2 英国の主な対外直接投資案件(2025年)〔M&A〕
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
リオ・ティント
(Rio Tinto)
資源 アーカディウム・リチウム
(Arcadium Lithium)
アイルランド 2025年3月 67億ドル 英国・オーストラリアの資源大手リオ・ティントは、アイルランドのアーカディウム・リチウムを買収したと発表。同社を「リオ・ティント・リチウム」に社名変更し、完全子会社化する。
アルジュン・インフラストラクチャー・パートナーズ
(Arjun Infrastructure Partners)/インテロゴ・ホールディング
(Interogo Holding)(スイス)
IT データ4
(Data4)
フランス 2025年8月 非公開 データセンターの所有・運営企業であるデータ4は、英国のアルジュン・インフラストラクチャー・パートナーズおよびスイスのインテロゴ・ホールディングによる、同社のデータセンターポートフォリオへの出資を発表。本ポートフォリオには、パリ、ミラノ、マドリードに位置するハイパースケールデータセンターが含まれ、合計契約容量は244MW。
ローズバンク・インダストリーズ
(Rosebank Industries)
機械・機器 エレクトリカル・コンポーネンツ・インターナショナル
(Electrical Components International)
米国 2025年7月 約19億ドル 英国の投資会社ローズバンク・インダストリーズは開閉装置および配電盤装置メーカーの米国エレクトリカル・コンポーネンツ・インターナショナル(ECI)を買収したと発表。ECIは米投資ファンドのサーベラス・キャピタル・マネジメント傘下にあった。取引額は約19億ドル。
コンパス・グループ
(Compass Group)
食品 フェルマート・グループ
(Vermaat Groep)
オランダ 2025年8月 約15億ユーロ 学校、病院などでのフードサービス事業を展開する英国のコンパス・グループは、オランダの同業フェルマート・グループを約15億ユーロで買収することに合意したと発表。
ブリッジポイント・グループ
(Bridgepoint Group)/ジェネラル・アトランティック
(General Atlantic)(米国)
IT エスカー
(Esker)
フランス 2025年3月 非公開 英国のブリッジポイント・グループおよび米国のジェネラル・アトランティックは、フランスのビジネス向けソフトウエア会社エスカーの株式公開買付完了を受け、同社の上場廃止を発表。

〔出所〕各社発表および報道などから作成

対日関係

原動機関連貿易が拡大

2025年の英国の対日貿易は、輸出が前年比0.3%減の59億5,300万ポンドとほぼ前年並みにとどまった一方、輸入は2桁増となる17.8%増の102億8,500万ポンドとなった。その結果、対日貿易赤字は43億3,200万ポンドと前年より15億7,400万ポンド増加した。日本は英国にとって輸出では18位、輸入では17位の相手国となっている。

主な対日輸出品目を見ると、最大品目の機械類・輸送機器類(構成比48.1%)が前年比0.4%減となった。主力の原動機(20.3%)が8.7%増となり、航空・防衛関連需要の拡大を背景にターボジェット(9.3%)が前年から倍増したことなどが寄与した一方、乗用車(11.3%)が15.5%減と振るわず、道路走行車両(12.6%)は13.8%減だった。化学工業製品(19.7%)は、無機化学品(3.1%)が20.4%減となったが、需要増を背景に医薬品(11.4%、10.7%増)が全体を押し上げ、3.9%増となった。

表6 英国の対日主要品目別輸出入〔通関ベース〕(単位:100万ポンド、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2024年 2025年 2024年 2025年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械類・輸送機器類 2,876 2,864 48.1 △0.4 5,506 5,800 56.4 5.3
原動機 1,110 1,207 20.3 8.7 1,105 1,440 14.0 30.4
道路走行車両 872 751 12.6 △13.8 2,736 2,588 25.2 △5.4
電子・電気機器 259 216 3.6 △16.5 430 388 3.8 △9.8
その他の一般用工業用機械など 225 243 4.1 8.1 449 463 4.5 3.1
産業用機械 176 145 2.4 △17.9 337 506 4.9 50.2
通信・音響機器 94 112 1.9 19.6 272 238 2.3 △12.3
化学工業製品 1,131 1,174 19.7 3.9 602 435 4.2 △27.7
医薬品 615 681 11.4 10.7 151 115 1.1 △24.0
無機化学品 232 185 3.1 △20.4 156 31 0.3 △80.4
その他化学品 137 146 2.5 6.5 50 64 0.6 28.8
原料別製品 740 815 13.7 10.1 686 1,091 10.6 59.0
非鉄金属 499 561 9.4 12.4 328 694 6.7 111.5
その他金属製品 112 138 2.3 23.4 105 122 1.2 16.3
雑製品 700 665 11.2 △4.9 674 799 7.8 18.5
専門機器・計測機器・制御機器 332 302 5.1 △9.0 272 309 3.0 13.7
その他雑製品 166 200 3.4 20.7 159 250 2.4 57.0
飲料・たばこ 225 183 3.1 △18.5 15 12 0.1 △17.5
食料品・動物 148 138 2.3 △6.6 55 82 0.8 50.3
食用でない原材料(鉱物性燃料除く) 133 86 1.4 △35.4 385 401 3.9 4.2
鉱物性燃料、潤滑油等 7 9 0.2 23.6 191 85 0.8 △55.6
原油・石油製品 7 9 0.1 23.3 2 2 0.0 △27.6
石炭 0 0 0.0 39.7 189 83 0.8 △56.0
未分類のその他製品 6 14 0.2 135.5 612 1,578 15.3 158.0
非貨幣用金 1 8 0.1 455.9 522 1,441 14.0 176.0
合計(その他含む) 5,969 5,953 100.0 △0.3 8,727 10,285 100.0 17.8

〔出所〕英国歳入税関庁

日本からの輸入では、最大品目の機械類・輸送機器類(構成比56.4%)が前年比5.3%増となった。このうちターボジェットおよびその部品(9.6%、33.6%増)を含む原動機(14.0%)が需要拡大などを背景に30.4%増となった。また、英国内のインフラ投資や企業設備投資の拡大を追い風に、360度旋回式の機械式ショベルや油圧ショベルなどの建設機械(3.0%、77.7%増)をはじめとする産業用機械(4.9%)が50.2%増となり、輸入全体の伸びを牽引した。

2国間投資は大幅減も、エネルギー・脱炭素関連で案件組成続く

日本銀行の「国別・業種別直接投資」によれば、2025年の日本から英国への直接投資(ネット、フロー)は5,539億円で、前年の2兆7,345億円から大幅減となった。

業種別では、非製造業が3,658億円だった。うち投資額が最大なのは金融・保険業で4,746億円、卸売・小売業が1,257億円でこれに続いた。なお、通信業は5,108億円、サービス業は651億円の引き揚げ超過となった。製造業は1,881億円で、うち精密機械器具が2,348億円と最大だった一方、電気機械器具と石油はそれぞれ2,061億円、12億円の引き揚げ超過となった。

2025年の日本企業の投資事例では、前年に続きエネルギー・脱炭素関連分野への投資案件が目立った。住友商事は7月、ピーク・クラスター炭素回収プロジェクトを支える二酸化炭素(CO2)輸送パイプライン開発事業への出資を発表した。イングランド中北部ピーク地域から沿岸部リバプールまでパイプラインを敷設する。三井物産は同月、欧州三井物産を通じて商船三井と共同で、ジーイージー・ホールディングス(GEG Holdings)保有のスコットランド北東部ニグ港および一部事業を買収すると発表した。買収対象事業はエネルギー産業向け鋼材加工・機器製造事業と基地港湾事業となる。また、カナデビア傘下のカナデビア・イノバ(Kanadevia Inova、本社:スイス)は11月、イングランド北部ウォードリー、中西部ローワー・ドレイトンの2つのバイオガスプラントの買収を発表した。

スタートアップへの投資では、2025年1月に東邦ガスが地産地消型グリーン水素の製造・販売を手掛けるプロティウム・グリーン・ソリューションズ(Protium Green Solutions)に出資した。2月には日揮ホールディングスが、スマート変圧器の開発・ライセンスを行うアイオネート(IONATE)に出資し、次世代変圧器の普及などを図る。

2025年の英国から日本への直接投資受入額は1,742億円となり、前年の2,435億円から大幅に減少した。非製造業は460億円、製造業は1,282億円だった。脱炭素化や高機能素材の需要などを背景に投資額が最大だったのは鉄・非鉄・金属で1,268億円、次いで一般機械器具が396億円となった。一方、電気機械器具は150億円、不動産業は41億円、食料品は24億円のそれぞれ引き揚げ超過となった。

主な事例では、石油大手BPの太陽光発電子会社ライトソースBP(Lightsource BP)が2025年2月に北海道で設置容量15メガワットピーク(MWp)の太陽光発電プロジェクトを買収し、日本市場に参入した。4月には自動運転向け人工知能(AI)技術を開発するウェイブ・テクノロジーズ(Wayve Technologies)が横浜市内に開発拠点を新設し、日産自動車と協力して運転ソフトウエアの開発を進めると発表した。

基礎的経済指標

(△はマイナス値) 〔注〕 1人当たりGDP:2025年は推定値 失業率:年平均、ILOベース 貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
項目 単位 2023年 2024年 2025年
実質GDP成長率 (%) 0.3 1.0 1.4
1人当たりGDP (米ドル) 49,938 53,339 57,608
消費者物価上昇率 (%) 7.3 2.5 3.4
失業率 (%) 4.2 4.4 4.9
貿易収支 (100万ポンド) △ 192,136 △ 205,022 △ 242,309
経常収支 (100万ポンド) △ 98,257 △ 85,666 △ 73,705
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 157,341 148,569 170,782
対外債務残高(グロス) (100万ポンド) 7,456,180 7,841,275 8,221,019
為替レート (1米ドルにつき、ポンド、期中平均) 0.8045 0.7824 0.7595

〔注〕
1人当たりGDP:2025年は推定値
失業率:年平均、ILOベース
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)

〔出所〕
実質GDP成長率、消費者物価上昇率、失業率、貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):英国国家統計局(ONS)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF