税制

最終更新日:2023年12月06日

法人税

法人税標準税率は、一律9%。一部の多国籍企業や大企業は15%。

2022年12月にEUで採択された理事会指令2022/2523に基づき、ハンガリー国内法(グローバル・ミニマム課税に関する法律)を整備し、2024年(2023年12月31日以降に開始する会計年度)から、売上高が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業およびハンガリーの大企業に対し、世界共通の最低法人税率15%を導入した。ハンガリー国内で税額を計算する際は、法人税に加えて、地方事業税、エネルギー業者に対する特別税、イノベーション貢献税も含まれる。なお、軽課税支払ルール(UTPR)は2024年12月31日以降に開始する事業年度に適用される。

二国間租税条約

あり。

その他税制

法人税のほか、主要税目としては、付加価値税(VAT)、物品税、個人所得税、雇用関係の税(社会貢献税)、地方事業税がある。その他、特定の業界に対する特別税や細かい税も合わせると約50の税目がある。頻繁に制度が改正されるため注意が必要。2022年には、時限措置として「超過利益税」の導入や、既存税の税率引き上げが行われた。政府は当初、2023年までの2年間の措置と発表していたが、2024年も大部分は残る。その中には税率が引き下げられるものもあるが、逆に引き上げられるものもある。

付加価値税(value added tax:VAT)

標準税率は27%。軽減税率として18%と5%がある。
軽減税率と対象品目・サービスは次のとおり。

  1. 18%:穀物や小麦などを使用した製品、乳製品など。
  2. 5%:牛乳、卵、鶏肉、豚肉、魚などの食品、医療品、本、セントラル・ヒーティング、商業宿泊施設、飲食店での食事、インターネット接続サービス、新築住宅など特定の品物・サービス。
    なお、新築住宅の軽減税率適用は、2024年末までに建設許可証が交付されていれば、2028年12月31日まで。

物品税(excise tax

物品税は、酒類、鉱油(ガソリン、軽油など)、たばこを対象とする。
2024年1月1日より自動車燃料に対する物品税が引き上げられた。以下は1リットル当たりの課税額。

  1. ガソリン
    1. ブレント原油価格が50ドル/バレル以下の場合:157.55フォリント
    2. ブレント原油価格が50ドル/バレル超の場合:152.55フォリント
  2. 軽油
    1. ブレント原油価格が50ドル/バレル以下の場合:152.9フォリント
    2. ブレント原油価格が50ドル/バレル超の場合:142.9フォリント

    課税額は四半期ごとに見直される。
    運送会社には、軽油の物品税還付制度があり、2024年1月からは1リットル当たり10フォリント(従来は3.5フォリント)。

個人所得税(personal income tax

一律15%。
ただし、4人出産した女性は生涯免除。また2022年1月から、25歳未満の労働者については、前年7月時点の国の平均給与所得への個人所得税納付額までは免除。さらに2023年1月からは、30歳未満で出産した女性は、30歳になるまで個人所得税は免除されることになった(上限は25歳未満の労働者と同じ)。個人所得税制度は、扶養家族控除、法定最低賃金、福利厚生支給関連で細かく規定が存在し、毎年変更されるので注意が必要。

雇用関連の税

社会貢献税(social contribution tax):社会保険の雇用主負担分相当を税として納付する。従業員の給与その他の報酬総額の13%を雇用主が納税(2022年1月~)。
加えて、「身体障害者雇用促進のための拠出金(contribution to the Rehabilitation Fund)」がある。これは、雇用主が身体障害者の法定雇用率(*)を満たすことができなかった場合、納付義務が生じるもの。拠出額は、雇用しなかった障害者1人につき、法定最低賃金(月額)の9倍/年。
*従業員数25人以上の場合、全従業員の5%以上。

参考:従業員による社会保険負担は18.5%。従来あった国民年金、医療保険、雇用保険の3つが2020年7月に統合された。

日・ハンガリー社会保障協定が2014年1月1日に発効。この協定によって、両国の年金制度等に二重に加入する必要がなくなったほか、両国での加入期間を通算して、それぞれの国における年金の受給権を確立できるようになった。

中小企業向け税制(KIVA)

KIVA(small business tax)は、中小企業のなかでもより規模の小さい事業者(従業員50人以下、年間売上高30億フォリント以下)が選択できる税。法人税(9%)、社会貢献税(13%)を別々に支払わずに、一括10%で支払う。

地方税

地方税には主に「地方事業税」「建物税」「土地税」があり、「地方税法」(Act C of 1990 on Local Taxes)により、これら税目の上限率・上限額が定められている。各地方自治体はその範囲内で、採用する税目、および税率・税額を毎年決定する。最も重要な税目は、売上高に課される「地方事業税」である。

地方事業税(local business tax

課税ベースは、売上高から売上原価・原材料費などの経費を控除したもの。法律で定められている最高税率は2%で、各地方自治体が毎年税率を決定する。
売上原価・原材料費など経費の控除が可能な割合は、純売上高の規模に応じている。純売上高が大きいほど、控除可能な割合が小さくなる。
2016年1月からは、運送業者は国内外の高速道路・国道などの通行料金費用の7.5%を、地方事業税から控除することが可能になった。

2023年1月からは、年間売上高が2,500万フォリント未満の中小企業は、簡素化された納税額計算法を選択できる。

  • 売上高1,200万フォリント未満:課税ベースは250万フォリント
  • 売上高1,200万以上~1,800万フォリント未満:同600万フォリント
  • 売上高1,800万以上~2,500万フォリント未満:同850万フォリント

特定の業界に対する特別税(銀行、エネルギー、通信、広告業界など)

  1. 通称「銀行税」(surtax on financial institution=bank tax
    銀行、信用組合等が対象。
    総資産* 500億フォリントまで:0.15%
    総資産500億フォリント超:0.20%(2019年1月1日から)
    * 総資産は2年前の年末時点
    ※金融機関には2022年以降、超過利益税(後述)が課されている。当初2023年末までの予定だったが、2023年6月から制度変更となり、税引前利益に対して課されている(200億フォリントまでは13%、超過分には30%)。
  2. 通称「ロビンフッド税」(Robin Hood tax
    エネルギー供給会社(電力、天然ガス、石油卸等)が対象。課税率は利益の31%。
    ※超過利益税として、2022年以降、バイオエタノール生産者も対象。
  3. 金融取引税
    主に銀行が対象。
    1. 標準課税率:取引額の0.3%(銀行送金、チェックを利用した光熱料金支払い、為替交換等)。1回の取引につき、課税上限額は1万フォリント(個人口座からの送金に関しては2万フォリントを超える金額に課税)。
      ※海外送金サービスを提供するレボリュート(Revolut)やワイズ(Wise)などの取引額も対象にする。
    2. その他
      ATM、銀行窓口からの現金引き出し:0.6%、課税上限額なし。
      ただし、1カ月当たり最大で2回、合計15万フォリントまでの個人によるATMからの現金引出しには、銀行が手数料を課すことは禁止されている。手数料の無料化を受けるためには、口座を有する銀行の窓口、もしくはネットで登録が必要。
  4. 通信サービス税(通称「電話税」)
    納税義務者は通信サービス事業者。税額は次のとおり。
    1. 法人契約の場合
      電話通話に対し3フォリント/分。ショートメッセージ・サービス(SMS)、マルチメディア・メッセージング・サービス(MMS)に対し3フォリント/回。課税上限額は5,000フォリント/月。
    2. 個人契約の場合
      電話通話に対し2フォリント/分。ショートメッセージ・サービス(SMS)、マルチメディア・メッセージング・サービス(MMS)に対し2フォリント/回。課税上限額は700フォリント/月。
  5. 公益事業税
    電気、通信サービス用のケーブル、また上下水道、ガス、熱供給などの管に対して課税。納税義務者は事業者。課税額は125フォリント/メートル(通信ケーブルは、控除規定が別途ある)。2024年1月からは通信サービス用ケーブルへの課税は廃止。2025年1月からは公益事業税そのものが廃止になる。
  6. 広告税
    テレビ会社、新聞社、ネット上のニュースサイト運営会社などの前年の広告収入に対して課税。
    2019年7月1日から2024年12月31日までは、税率0%。
  7. 小売税
    新型コロナ禍による歳入減を補うものとして2020年に導入。スーパーマーケットチェーンなど日用消費財(FMCG)を販売する事業者が対象。年間売上高に応じて累進課税。2022年に「超過利益税」として税率が一時的に引き上げられた。当初は2023年末までの2年間の措置の予定だったが、2024年も残り、一部はさらに引き上げられる。
    1. 売上高5億フォリント以下:0%
    2. 売上高5億超~300億フォリント以下:0.1%(※2022年以降、「超過利益税」として0.15%に一時的に引き上げ)
    3. 売上高300億超~1,000億フォリント以下:0.4%(※同1%)
    4. 売上高1,000億フォリント超過分:2.7%(※2022~2023年は4.1%、2024年は4.5%)

その他

  1. エネルギー税
    対象は、電気・天然ガス関連事業者、および電気・ガスの産業用としての消費者。個人消費者は対象外。
  2. 環境汚染税
    対象は、大気・水・土壌に対し環境負荷を与えている法人。汚染規模や排出物質の種類によって税率は異なる。
  3. 研究・技術・イノベーション基金への拠出
    中規模以上の企業が課税対象。地方税課税標準の0.3%、ただし研究開発費分は控除可能。
  4. 環境保護製品税(environmental protection product charges

    石油精製製品、タイヤ、乾電池・バッテリー、ソーラー・パネル、家電製品、石鹸、洗剤、化粧品、ペットボトル、包装用品などに課せられる。
    製造業者(輸入の場合は輸入業者)が納税義務を負う。

    ただし、2023年7月1日から導入された拡大生産者責任料金 (extended producer responsibility fee:EPR料金*)を支払っている場合は、その負担分を環境保護製品税から控除できる。EPR料金の方が環境保護製品税よりも数倍高いため、両方の対象になっていても実質的にはEPR料金のみの支払いになることが多い。

    * EPR料金は、生産者の他、輸入業者、オンライン販売業者も負担する。対象製品は、容器・包装材(紙、プラスチック、金属、木材など)、特定の使い捨ておよびその他のプラスチック製品(食品保存容器、飲料ボトル、飲料カップ、ウェットティッシュ)、電気・電子機器、 バッテリー(車載蓄電池含む)、自動車、タイヤ、事務用紙、印刷物、揚げ油・脂、一部の繊維製品、一部の木製家具など。

  5. 国民健康製品税(俗称「ポテト・チップス税」)
    塩分、糖分、カフェイン等の含有量が高く、大量摂取すると健康に害を及ぼし得る食品や飲料品に対して課せられる。
    製造業者(輸入の場合は輸入業者)が納税義務を負う。
    食品群により課税額は異なる。毎年対象品目が増加、課税額上昇の傾向があるので注意が必要。
  6. 保険料税
    任意自動車保険(CASCO)は保険料の15%、強制加入の自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)は保険料の23%、火災および損害保険は保険料の10%。
  7. 所有権移転税(property transfer tax
    1. 不動産
      不動産、もしくは不動産を所有する会社の株式を取得した場合、市場価値10億フォリントまでは4%、超過分に対して2%。ただし、不動産1件当たりの税額は2億フォリントを上限とする。
    2. 自動車
      自動車を購入した場合の所有権移転税は、エンジン出力と車の使用年数によって税額が決定される。
  8. 自動車登録税(registration tax
    新車または輸入車を購入した場合に、国内登録する際に課せられる税。
    総排気量と環境負荷の度合いにより、0~480万フォリント。二酸化炭素(CO2)排出量がゼロの電気自動車の場合は非課税、ハイブリッド車は一律7万6,000フォリント、自動二輪車登録税は2万~23万フォリント。
  9. 社用車税(company car tax
    法人名義所有の自動車に課税される。エンジン出力と環境負荷の度合いにより、月額1万4,000~8万1,000フォリント。
    CO2排出量がゼロの電気自動車の場合は非課税。
  10. 食品農産品監督局への監督料金
    国家フードチェーン安全監督局(National Food Chain Safety Office:NEBIH)の監督対象となっている分野の業者および個人は、「監督料金」として、前年の売上高の0.1%を毎年納付しなければならない(食品製造加工業、食品卸売小売業を含む)。
  11. 個人事業者向け定額納税制度(KATA)
    個人事業主が、法人税、個人所得税、社会保険料など公租公課を個別に支払わずに、一括で月に5万フォリントの定額納税を行える制度である。個人事業主の納税額と事務負担の軽減が目的。
    制度が大きく変わり、2022年9月以降は年間売上高1,800万フォリントまでの場合において、利用できるようになった(従来は1,200万フォリント)。売上がそれ以上となった場合は、超過分に40%の税が課せられる。一方で、制度利用は個人客相手からの売上のみに限られることになり、法人客からの収入は適用外となった。そのため、制度を利用できる人は著しく減った。 ただし、タクシー運転手は例外で、法人客からの収入でも引き続き当該制度を利用できる。
  12. 国債購入奨励のための税
    政府は国債購入奨励措置として、2023年7月から個人の銀行預金利息や株式におけるキャピタルゲインに対する税を引き上げた。具体的には、従来の個人所得税15%に加えて、社会貢献税(social contribution tax、ハンガリー語:Szocho)13%が課せられることになった。国債の利子は非課税。

超過利益税(2022年~)

政府は2022年、ウクライナにおける戦争長期化の影響で国家財政が厳しくなる中、7つの業種に「超過利益税」を課した。具体的には銀行、保険会社、エネルギー、小売チェーン、情報通信会社、航空会社、医薬品流通販売会社および製薬会社。政府の説明では、これらの業界は新型コロナ禍や戦争による金利上昇や価格上昇で予定外の大規模な臨時収入をあげたため、これに課税することで国防強化と家庭の安価な光熱料金制度の維持のための財源にする。
当初は2023年末までの2年間の時限措置だったが、大半は2024年以降も残ることになった。ただし、そのまま維持されるものもある一方で、税率が引き下げられるもの、逆に引き上げられるものがある。

前述の「特定の業界に対する特別税」の項で紹介した以外で、7業種に適用される超過利益税の例としては、以下のものがある。

  1. 航空業界税(課税額は2022年以降、何度か改正され、最新は2023年3月~)
    ハンガリー出発便に課す。
    航空機の1座席当たりのCO2排出量と目的地により課税額を決定。目的地がEUおよび近隣国の場合、1座席当たりのCO2排出量により、1,600~6,200フォリント。その他の目的地の場合は、3,900~1万5,600フォリント。
  2. 情報通信業界税
    2022年以降、純売上高に対して累進課税。
    1. 10億フォリント以下:0%
    2. 10億超~50億フォリント以下:1%
    3. 50億超~1,000億フォリント以下:3%
    4. 1,000億フォリント超過分:7%

    ※2024年末で廃止予定(政府が2023年9月15日に発表)。
    ※超過利得税の詳細は、2022年6月15日付ジェトロの記事「超過利益税を含む強化課税策が明らかに、開始は7月1日」参照。