外資に関する奨励

最終更新日:2022年12月06日

奨励業種

自動車・同部品、バイオテクノロジー・製薬、エレクトロニクス、食品、再生可能エネルギー、ITサービス、ロジスティクス、シェアードサービスセンター(SSCもしくはBSC)を含む全業種。

現政権(オルバーン・ビクトル首相)は、2010年の発足以来工業立国を目指し、特に雇用増大や国内サプライヤーの成長につながる投資を重要視してきた。
近年は、電気自動車(EV)関連や高付加価値製品の製造、生産工程のデジタル化などに結び付く投資事業の誘致に力を入れている。

各種優遇措置

返済不要の補助金、法人税の一部免除など。優遇措置の総額が投資総額に占める割合の上限は、EU規制に準拠している。

主な優遇措置は次のとおり。

  1. 政府が案件ごとに額を決定する「個別補助金」
  2. 開発のための税優遇措置(法人税の一部免除)
  3. EUとハンガリー政府の共同資金援助

各種の優遇措置を受けるには、外国・ハンガリー資本の区別なく、投資額などの条件を満たしていなければならない。雇用創出条件は2020年1月に、国内失業率の低下に伴い、廃止もしくは緩和された。また、EUの国家援助規制に従い、これら優遇措置の総額が投資総額に占める割合の上限は、地方ごとに決められている。2021年~2027年のEU中期予算開始を受け、2022年1月1日に改定された。補助率は地域により0%、30%、50%。
基本的な考え方として、国内北東部、東部など開発が遅れ、失業率も全国平均を上回る地域での投資に対しては、優遇措置を受ける条件が緩和され、より手厚い支援が施される。逆に、首都ブダペスト市、その周辺、および国内北西部など、開発が進んでいる地域での投資に対しては、条件も厳しく、補助率も低くなっている。

なお、国から「優先的投資」の指定を受けた場合、各種許認可の取得がスピードアップされるといった「VIP待遇」を受けられる。

個別補助金(subsidy based on individual government decision

返済不要の補助金。

  1. 資産投資に対する補助金
    土地取得、建築費あるいは期間中の建物賃料、インフラ整備の費用、新たな設備および機械、無形資産の購入費が対象。投資先地域により投資額に条件がある。
    1. 投資額
      • 低開発県での投資の場合:500万フォリント以上
      • それ以外の県での投資の場合:1,000万フォリント以上
    2. 条件
        1. スタートアップの場合:
          • 年間売上高を300万ユーロ増加させること。
          • 賃金費用を30万ユーロ増加させること(モニタリング期間中、毎年)。
        2. スタートアップ以外の場合:
          • 売上高もしくは賃金費用(もしくは両方)を毎年30%以上増加させること。

      ※いずれの場合も、新規雇用創出は補助金受給の条件ではない。

    3. 補助率
      最大補助率は、地域により異なる。
  2. シェアードサービスセンター(SSCもしくはBSC)の設置・拡大に対する補助金
    1. 投資額
      条件なし
    2. 条件
      50人以上の新規雇用
    3. 補助率
      最大補助率は、地域により異なる。
  3. 職業訓練事業に対する補助金
    1. 対象
      次のうちいずれか:
      • 投資事業を実施する際の職業訓練事業
      • シェアードサービスセンター(SSCもしくはBSC)の設置・拡大の際の職業訓練事業
    2. 条件
      • 投資事業の場合は投資額500万ユーロ以上
      • SSCもしくはBSCの場合は25人以上の新規雇用
    3. 補助内容
      • 職業訓練事業費用の最大50%(200万ユーロが上限)
      • 従業員1人当たり最大5,000ユーロ
  4. 研究開発(R&D)プロジェクトに対する補助金
    1. 投資額
      100万フォリント以上
    2. 条件
      10人以上の新規雇用
    3. 補助内容
      研究開発プロジェクト費用の最大25%

開発のための税制優遇措置(development tax allowance, 法人税の一部免除)

  1. 対象となる事業
    例として、以下がある。
    • 30億フォリント以上の投資(指定地域での投資の場合は10億フォリント以上)
    • 研究開発事業で1億フォリント以上の投資
    • 環境保護事業で1億フォリント以上の投資
    • 雇用創出につながる投資(投資額の要件はなし)
    • 中小企業のうち、小規模事業者の場合5,000万フォリント以上、中規模企業の場合1億フォリント以上の投資(『小規模事業者』は従業員50人未満、売上高1,000万ユーロ以下、『中規模事業者』は同250人未満、年間売上高5,000万ユーロ以下)

    ※2020年1月から、新規雇用、賃金費用増加の要件はない。しかし原則として、投資開始前3年間の平均従業員数を、法人税一部免除の開始から4年間は維持しなければならない。

  2. 免除内容

    投資プロジェクト完了後、最大13年にわたり、法人税の最大80%を免除する。免税率は、投資総額などによる。

    EUとハンガリー政府の共同資金援助(EU-co-financed tenders

    返済不要の補助金。補助金支給の対象となる投資案件は入札方式で決まるため、個別入札条件による。

    EU規制による、各地方の国家補助許容上限率

    EUの国家援助規制に従い、優遇措置の総額が投資総額に占める割合の上限は、地方ごとに決められている。開発が進んでいる地域には補助が与えられない。低開発地域、失業率の高い地域の上限は50%と高くなっている。

その他

研究開発事業に関する税の控除。
政府は2022年11月、エネルギー価格高騰を受け、「工場救済プログラム」を開始した。

研究開発(R&D)事業に関する税の控除

研究開発などの事業に関しては、人件費などの経費が税額控除の対象となる。

工場救済プログラム

ウクライナ情勢などに伴うエネルギー価格高騰を受け、政府は2022年11月、3つの柱から成る「工場救済プログラム」を開始した。太陽光パネルなど再生可能エネルギー設備の設置や、エネルギー効率化に伴う設備投資などを後押しする。ハンガリー資本か外国資本であるかについては問わない。

  1. 無償補助金
    50万ユーロ以上の再生可能エネルギーの導入、またはエネルギー効率化に向けた設備投資を行う企業に、国が無償補助金を給付。
    補助率は、
      • ブダペスト市内:投資総額の30%
      • ブダペスト市外:投資総額の45%

    ただし、補助金上限は1,500万ユーロ。
    詳細は、2022年10月26日付ジェトロの記事「政府、大企業にも省エネ関連の投資に補助金給付を決定」を参照。
    ※補助金申請第1期は応募が殺到し、2022年11月に既に締め切られた。

  2. 流動性確保のための信用保証
    ハンガリー国有開発銀行(MFB)が政府保証を行う。中小企業・大企業の流動性確保が狙い。2023年1月から申請受付開始。
  3. 低利融資
    中小企業・大企業の設備投資に対して、国営銀行Eximbankが低利融資を行う。融資額の半分超は、再生可能エネルギーの導入、またはエネルギー効率化事業に充てられなければならない。生産能力拡大、新たな設備導入のための投資にも利用できるが、融資額の最大50%まで。
    金利は、フォリント建ては最大5%、ユーロ建ては最大3.5%と、非常に有利である。2023年1月から申請受付開始、2023年末まで。