外資に関する奨励
最終更新日:2023年12月06日
- 最近の制度変更
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2021年4月20日
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2021年1月13日
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2020年11月30日
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奨励業種
自動車・同部品、電気自動車(EV)および車載電池関連、バイオテクノロジー・製薬、エレクトロニクス、食品、再生可能エネルギー、ITサービス、ロジスティクス、シェアードサービスセンター(SSCもしくはBSC)を含む全業種。
現政権(オルバーン・ビクトル首相)は2010年の発足以来、工業立国を目指し、特に雇用増大や国内サプライヤーの成長、輸出増加につながる投資を重要視してきた。
近年は、電気自動車(EV)関連や高付加価値製品の製造、生産工程のデジタル化などに結び付く投資事業の誘致に力を入れている。
各種優遇措置
返済不要の補助金、法人税の一部免除など。優遇措置の総額が投資総額に占める割合の上限は、EU規制に準拠している。
主な優遇措置は次のとおり。
- 政府が案件ごとに額を決定する「個別補助金」
- 開発のための税優遇措置(法人税の一部免除)
- EUとハンガリー政府の共同資金援助
各種の優遇措置を受けるには、外国・ハンガリー資本の区別なく、投資額などの条件を満たしていなければならない。雇用創出条件は2020年1月に、国内失業率の低下に伴い、廃止もしくは緩和された。また、EUの国家援助規制に従い、これら優遇措置の総額が投資総額に占める割合の上限は、地方ごとに決められている。2021年~2027年のEU中期予算開始を受け、2022年1月1日に改定された。補助率は地域により0%、30%、50%。
基本的な考え方として、国内北東部、東部など開発が遅れ、失業率も全国平均を上回る地域での投資に対しては、優遇措置を受ける条件が緩和され、より手厚い支援が施される。逆に、首都ブダペスト市、その周辺、および国内北西部など、開発が進んでいる地域での投資に対しては、条件も厳しく、補助率も低くなっている。
なお、国から「優先的投資」の指定を受けた場合、各種許認可の取得がスピードアップされるといった「VIP待遇」を受けられる。
個別補助金(subsidy based on individual government decision “VIP cash subsidy“)
返済不要の補助金。
- 資産投資に対する補助金
土地取得、建築費あるいは期間中の建物賃料、インフラ整備の費用、新たな設備および機械、無形資産の購入費が対象。投資先地域により投資額に条件がある。- 投資額
- 低開発県での投資の場合:500万ユーロ以上
- それ以外の県での投資の場合:1,000万ユーロ以上
- 条件
- スタートアップの場合:
- 年間売上高を300万ユーロ増加させること。
- 賃金費用を30万ユーロ増加させること(モニタリング期間中、毎年)。
- スタートアップ以外の場合:
- 売上高もしくは賃金費用(もしくは両方)を毎年30%以上増加させること。
※いずれの場合も、新規雇用創出は補助金受給の条件ではない。
- スタートアップの場合:
- 補助率
最大補助率は、地域により異なる。
- 投資額
- シェアードサービスセンター(SSCもしくはBSC)の設置・拡大に対する補助金
- 投資額
条件なし - 条件
50人以上の新規雇用 - 補助率
最大補助率は、地域により異なる。
- 投資額
- 職業訓練事業に対する補助金
- 対象
次のうちいずれか:- 投資事業を実施する際の職業訓練事業
- シェアードサービスセンター(SSCもしくはBSC)の設置・拡大の際の職業訓練事業
- 条件
- 投資事業の場合は投資額500万ユーロ以上
- SSCもしくはBSCの場合は25人以上の新規雇用
- 補助内容
- 職業訓練事業費用の最大50%(補助金の上限額は300万ユーロ)
- 従業員1人当たり最大5,000ユーロ
- 対象
- 研究開発(R&D)プロジェクトに対する補助金
- 投資額
100万ユーロ以上 - 条件
10人以上の新規雇用 - 補助内容
研究開発プロジェクト費用の最大50%(ただし補助金の上限額は2,500万ユーロ)
- 投資額
開発のための税制優遇措置(development tax allowance, 法人税の一部免除)
- 対象となる事業
例として、以下がある。- 30億フォリント以上の投資(指定地域での投資の場合は10億フォリント以上)
- 研究開発事業で1億フォリント以上の投資
- 環境保護事業で1億フォリント以上の投資
- 雇用創出につながる投資(投資額の要件はなし)
- 中小企業のうち、小規模事業者の場合5,000万フォリント以上、中規模企業の場合1億フォリント以上の投資(『小規模事業者』は従業員50人未満、売上高1,000万ユーロ以下、『中規模事業者』は同250人未満、年間売上高5,000万ユーロ以下)
※2020年1月から、新規雇用、賃金費用増加の要件はない。しかし原則として、投資開始前3年間の平均従業員数を、法人税一部免除の開始から4年間は維持しなければならない。
- 免除内容
投資プロジェクト完了後、最大13年にわたり、法人税の最大80%を免除する。免税率は、投資総額などによる。
エネルギー効率化投資事業に対する法人税一部控除
エネルギー効率化を目的とした投資、改修事業に対して、法人税の最大70%控除を申請できる。
税額控除は、ブダペスト市の場合、対象費用の30%まで。それ以外の場所は45%まで。小規模事業者の場合はさらに20%上乗せ、中規模事業者の場合は10%上乗せが可能。ただし、いずれの場合も上限は3,000万ユーロ。
EUとハンガリー政府の共同資金援助(EU-co-financed tenders)
返済不要の補助金。補助金支給の対象となる投資案件は入札方式で決まるため、個別入札条件による。
EU規制による、各地方の国家補助許容上限率
EUの国家援助規制に従い、優遇措置の総額が投資総額に占める割合の上限は、地方ごとに決められている。開発が進んでいる地域には補助が与えられない。低開発地域、失業率の高い地域の上限は50%と高くなっている。
その他
研究開発事業に関する税の控除。
ネットゼロ産業向けのインセンティブ措置(2025年末まで)。
研究開発(R&D)事業に関する税の控除
研究開発などの事業に関しては、人件費などの経費が税額控除の対象となる。
ネットゼロ産業向けのインセンティブ措置
欧州委員会は2023年3月、ネットゼロ経済(温室効果ガスの排出実質ゼロ)への移行促進のため、こうした産業への国家援助の提供を可能にする「暫定危機・移行枠組み(TCTF:Temporary Crisis and Transition Framework)」を採択した。これに基づき、ハンガリーでもネットゼロ産業への支援(総額23.6億ユーロ相当)が可能になった。
- 支援内容:助成金の直接提供または税制上の優遇措置、もしくは両方
- 対象:ネットゼロ産業関連製品の製造(バッテリー、太陽光パネル、風力発電用タービン、ヒートポンプ、水素製造用の電解槽、炭素回収・貯留と、これらの製造に必要な部品の生産、関連する重要な原材料の生産とリサイクル)
- 支援上限:
- ブダペスト市内:1.5億ユーロ
補助率上限は、大企業は15%、中規模企業は25%、小規模企業は35% - ブダペスト市以外の場所:3.5億ユーロ
補助率上限は、大企業は35%、中規模企業は45%、小規模企業は55%
- ブダペスト市内:1.5億ユーロ
- 期限:援助に関する契約は2025年末までに締結しなければならない。
- その他:モニタリング期間は、大企業の場合5年間、中小企業の場合3年間。モニタリング期間中に雇用を増加させる必要はないが、援助受領前の従業員数を維持しなければならない。
(参考資料)ハンガリー投資促進庁(HIPA):Incentive Guide TCTF subsidy for net-zero economy(1.0MB)(2023年8月発行)
社員寮建設への補助金
政府は2024年からの4年間で、社員寮建設への返済不要の補助金として合計200億フォリントを配分すると決定した。これまでにも社員寮建設への補助金プログラムはあったが、今後は条件が厳しくなる。EU域外第三国からの出稼ぎ労働者ばかりではなく、ハンガリー人の雇用も促すため。
- 補助金割合:社員寮建設費用のうち、30~80%
- 条件:
- 社員寮の収容人数は80~200人。そのうち50%以上はハンガリー人労働者とする。これにより、国内労働者の労働移動を促進させるのが狙い。
- 外国人ゲストワーカー(出稼ぎ労働者)の雇用は、ハンガリー人労働者では見付からない時のみとする。
- 10年以上運営する。
- ハンガリー人の登録求職者を4人以上雇用する。