日本からの輸出に関する制度

コメの輸入規制、輸入手続き

品目の定義

本ページで定義するコメのHSコード

1006.20 :玄米
1006.30 :精米(研磨の有無またはつや出しの有無を問わない)
1102.90 :米粉など(小麦粉およびメスリン粉、とうもろこし粉、大麦粉および裸麦粉などを除く)
19049010:コメの調整食料品(あらかじめ加熱による調理その他の調製をしたもの)

調査時点での最新の情報を記載していますが、2021年4月以降混合食品含め、植物衛生、動物衛生、公的管理の規則が新制度に移行されたため、記載事項は常に変更される可能性がある点に留意してください。
2021年4月以降に施行された新制度については、ジェトロ「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」も参照してください。

関連リンク

根拠法等
規則(EEC)No 2658/87(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
財務省貿易統計外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロレポート「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」

EUの輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2021年9月

なし

また、本項目に関して、主要加盟国(ドイツ、フランス、イタリア、オランダ)において、EU規制に上乗せで課される独自規制は確認されていません。

ただし、パックご飯の原材料に動物由来加工製品が含まれている場合には、混合食品規制の対象になりますので、注意が必要です。混合食品に関する規制は、EU ポータルサイト「混合食品」を参照してください

※本項以降では、EU規制に加え、主要EU加盟国がEU規制に上乗せで定めている独自規制についても言及していますが、これは、ジェトロで把握できた範囲において言及しているものであり、各国の独自規制を網羅しているものではありません。また、各項目で明示的な言及がない国については、記載できる情報がないということであり、独自規制が存在しないということではありません。

2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)

調査時点:2021年9月

コメを日本から海外へ、販売などの目的で輸出する場合は、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」(食糧法)第36条に基づき、事前に最寄りの農政局管内の窓口へ輸出数量の届け出を行うことが義務付けられています。届け出を行わなかったり、虚偽の届け出によりコメを輸出したりした場合には、20万円以下の過料に処せられることがあるため注意が必要です。個人的使用に供するために非商業的に輸出される米穀や、コメ加工品(レトルト米飯、米粉など)は届け出の必要はありません。詳細は関連リンクの「米麦等を輸出される方へ」(農林水産省)を確認してください。

パックご飯の原材料に動物由来加工製品が含まれている場合には、混合食品規制の対象になりますので、注意が必要です。混合食品に関する規制は、EU ポータルサイト「混合食品」も参照してください。

その他、通常の船積み書類、通関書類が必要です。

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2021年9月

日本からEUにコメを輸出する場合、特別な検疫上の措置は求められません。植物検疫証明書の取得も不要です。ただし、栽培用のコメについては植物検疫証明書が必要となります。

ただし、パックご飯の原材料に動物由来加工製品が含まれている場合には、混合食品規制の対象になりますので、注意が必要です。混合食品に関する規制は、EU ポータルサイト「混合食品」も参照してください。

また、本項目に関して、主要加盟国(ドイツ、フランス、イタリア、オランダ)において、EU規制に上乗せで課される独自規制は確認されていません。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
植物防疫所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
実施規則(EU)2018/2019外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則 (EU) No 2016/2031(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
実施規則(EU)2019/2072(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
植物防疫所 輸入規則等詳細情報 欧州連合(EU)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(243 KB)

EUの食品関連の規制

1. 食品規格

調査時点:2021年9月

EUでは、EU市場に上市されるすべての製品に対して同水準の品質を保証するという観点から、消費者に新鮮な状態で供給される農産物や水産物を中心に取引規格(marketing standard)が定められていますが、コメについては、取引規格は定められていません。

ただし、後述する輸入ライセンスにかかる規則(EU)No 2016/1237および規則(EU)No 2016/1239に記載されているとおり、規則(EU)No 1308/2013に規定されるANNEX IのCNコード、ANNEXII に記載されているEU市場におけるもみ殻付のコメ(脱穀前の状態のコメpaddy rice)、玄米を含む籾米(husked rice)、半精米(胚芽精米semi-milled rice)、精米(wholly milled rice)、短粒種(round grain rice)、中粒種(medium grain rice)、長粒種(long grain rice A or B)、砕精米(broken rice)の定義を順守する必要があります。これらの定義は基本的にはコーデックス規格とほぼ同じ基準ですが、胚芽精米(semi-milled rice)や砕精米(broken rice)に関しては、EU市場が定める定義にのっとる必要があります。

なお、パックご飯や米粉に関する食品規格は定められていませんが、EU域外から輸入される食品については、規則(EC) 178/2002に基づき、EUが求める食品に関する要件またはそれと同等と認められた要件(輸出国と特定の合意がある場合はその合意事項)に適合している必要があるため、注意が必要です。食品衛生に関する要件は、規則(EC) 852/2004のANNEX IおよびIIに食品事業者に関する一般的な衛生基準が定められています。

加えて、パックご飯の原材料に動物由来加工製品が含まれている場合には、混合食品規制の対象になりますので、注意が必要です。混合食品に関する規制は、EU ポータルサイト「混合食品」も参照してください。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 農業・農村開発局(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則 (EU) No 1308/2013(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU)No 2016/1237(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU)No 2016/1239(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EC)No 178/2002(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則 (EC) No 852/2004 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則 (EC) No 853/2004 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU)No 2017/625 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
欧州委員会 農業・農村開発総局 Agricultural markets and prices(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
コーデックス・アリメンタリウス(STANDARD FOR RICE外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

2. 残留農薬および動物用医薬品

調査時点:2021年9月

EUでは、使用可能な農薬について、ポジティブリスト制を採用しており、食品の種類ごとに、許容される残留農薬の上限値(Maximum Residue Limit:MRL)が規定されています(欧州議会・理事会規則(EC)No 396/2005)。MRLは、当該食品1キログラムあたりに許容される農薬量(mg/kg)として示され、MRLが設定されていない農薬と食品の組み合わせに対しては、一律0.01mg/kgの上限値が適用されます。
すべての食品に対するMRLは、「EU農薬データベース」で検索が可能です。データベースは科学的評価に基づき更新されるため、随時確認する必要があります。データベースは、関連リンクの「その他参考情報」にある「EU農薬データベース(英語)」を参照してください。また、データベースの使用方法については、関連リンクの「その他参考情報」にあるジェトロ調査レポート「EUにおける残留農薬に関する規制(2015年2月)」を参照してください。

いもち病対策として使用されることが多いトリシクラゾールについて、2017年6月30日から、MRLが1mg/kgから0.01mg/kgに大幅に引き下げられました。日本でのトリシクラゾールのMRLは3ppm(=mg/kg)であり、EUとは基準値が大きく異なるため、注意が必要です。
コメなどに使用されている農薬活性成分であるイプロジオンもEUでの登録が撤回されたことに伴い2019年7月31日からコメのMRLは0.01mg/kgに引き下げられています。詳細は、ジェトロ調査レポート「EU農薬登録規制改正が輸出に与える影響調査(2019年3月)」を参照してください。

なお、パックご飯のような加工食品や混合食品についても本規制の対象となりますが、加工食品に適用されるMRLは調査時点で設定されていません。ただし、原材料として使用するコメなどについては設定されたMRLを順守する必要があります。

なお、オランダでは、残留農薬に関するEU規制に加えて、食品と接触する装置の消毒に用いられる薬剤についても、独自にMRLが定められているため注意が必要です。

関連リンク

関係省庁
欧州食品安全機関(EFSA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EC)No 396/2005(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
一般社団法人全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会「令和元年度日本産コメ・コメ加工品輸出ハンドブック」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
EU農薬データベース(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ「EUにおける残留農薬に関する規制」(2015年2月)
ジェトロ「EU農薬登録規制改正が輸出に与える影響調査」(2019年3月)

3. 重金属および汚染物質

調査時点:2021年9月

EUでは、欧州委員会規則(EC)No 1881/2006で食品カテゴリーごとに含まれる汚染物質の上限値を規定しています。ここでの「汚染物質」とは、意図的に食品に添加されたものではなく、食品の生産(作物管理、畜産、獣医療における作業を含む)、製造、加工、調理、処理、包装、梱包、輸送および保管などのプロセス、または生育環境に由来して、食品中に存在する物質をいいます(欧州理事会規則(EEC)No 315/93 Article 1(1))。
コメの場合、アフラトキシン、オクラトキシンA、カドミウム、メラミン、無機ヒ素の残留濃度の上限値が規定されています。
アフラトキシンについては、最も毒性の強いアフラトキシンB1単独での上限値と、B1・B2・G1・G2の総量の上限値がそれぞれ定められています。

なお、規則(EC)No 1881/2006を改正する規則(EU) 2021/1323および規則(EU) 2021/1317により、2021年8月31日から「カドミウム」や「鉛」の上限値や対象品目が一部変更となっています。例えば、コメに含まれるカドミウムの基準値が0.2mg/kgから0.15mg/kgに引き下げられていますので留意してください。(ただし経過措置として、旧基準値で既にEU域内に上市されているコメについては、2022年2月28日までは旧基準値のまま流通が可能です。)

汚染物質の上限値(コメ)
物質名 上限値 対象品目
アフラトキシン B1:5.0㎍/kg ヒトの消費/食品原材料として使用する前に選別その他の物理的処理を経るコメやトウモロコシ
B1,B2,G1,G2の総量: 10.0㎍/kg
B1:2.0㎍/kg 前述および乳児・幼児向けを除くすべての穀物および穀物加工品※1
B1,B2,G1,G2の総量:
4.0㎍/kg
オクラトキシンA 5.0 ㎍/kg 未加工穀物
3.0㎍/kg 穀物加工品およびヒトが直接消費する穀物を含む、未加工穀物から作られるすべての製品※2
0.2mg/kg 穀物および豆類※2
カドミウム 0.15mg/kg コメ※2
メラミン 2.5mg/kg 乳児用調製粉乳および乳児用栄養補給調製食品を除くすべての食品※2
無機ヒ素 0.2mg/kg 精白米(パーボイルド加工なし)※2
無機ヒ素 0.25 mg/kg パーボイルドライスおよび玄米※2
過塩素酸塩 0.01mg/kg 乳幼児用向け食品など

その他、EUでは、環境残留性と生物蓄積性が高く環境と健康にリスクをもたらすダイオキシン類・ポリ塩化ビフェニル(PCB)・DDTなどの残留性有機汚染物質(POPs)に関して、EU域内での生産、販売および使用が禁止、または厳しく制限されています。2019年6月から、旧規則(EC) 850/2004は新規則(EU)2019/1021により改正されており、同規則ANNEX1に記載されている物質はEU域内における上市、使用が禁止されます。

なお、コメそのものには直接関連しませんが、パックご飯などのコメ調理品などEU域内で流通する食品は規則(EC) 2073/2005に規定される微生物学的基準を順守する必要があります。

関連リンク

根拠法等
規則(EC)No 1881/2006(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EEC)No315/93(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU)2020/685 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU) 2019/1021 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EC) 2073/2005 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU) 2021/1323(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU) 2021/1317(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。

4. 食品添加物

調査時点:2021年9月

EU では、着色剤や保存料、酸化防止剤、その他乳化剤・安定剤などの食品添加物と、食品香料および食品酵素を区別し、これらを合わせて「食品改良剤(Food Improvement Agents)」)と総称しています。食品改良剤については、ポジティブリスト形式での規制が課されており、認可を得た食品改良剤のみが使用を認められています。食品添加物および食品香料のポジティブリストについては、欧州委員会のウェブサイトで検索が可能です。食品酵素のポジティブリストについては、調査時点ではポジティブリストが完成していないため、ポジティブリスト形式での使用規制は適用されていません。

食品改良剤に関するEU根拠法
食品改良剤 根拠法 定義
食品添加物 規則(EC) 1333/2008 それ自体は通常は食品として消費されず、栄養価の有無を問わずに食品の典型的な原材料としては通常は使用されない物質で、食品の製造、加工、調理、処理、包装、輸送、保存の段階において技術的な効果(防腐、酸化防止、色の定着など)を意図的に追加することにより、その物質やその副産物が直接的・間接的に食品の構成要素となるか、なることが十分に予想される物質。E番号で表示される。
ただし、下記は食品添加物として使用されない場合、本規則の適用外である。
  • 加工助剤(processing aids)
  • 植物の健康に関する共同体ルールに従って植物や植物製品の保護のために使用される物質
  • 栄養素(nutrients)として食品に添加される物質
  • 理事会指令98/83/ECの範囲に該当するヒトの消費を意図した水の処理などで使用される物質
  • 規則(EC) No 1334/2008の範囲に該当する香味料
その他、添加物とみなされないものについては同規則第3条を確認のこと。
食品香料 規則(EC) 1334/2008 それ自体は食品として消費されず、香りや風味を添えるか、もしくは変えるために食品に添加される製品。香料物質、香料調整品、熱処理香料、スモーク香料、香味料前駆体、その他香料およびこれらの複合物からなる。
”flavouring”、具体的な名称または香料の概要で表示。天然(Natural)の記載については同規則第16条の条件を満たす必要がある。
食品酵素 規則(EC) 1332/2008 植物、動物、微生物、または植物、動物、微生物に由来する製品から得られる製品で、微生物の発酵によって得られる製品も含む。
同規則で定められている食品酵素の名称または販売概要で表示。

なお、規則(EC) 1333/2008のANNEX Iに掲載され、「添加物」とみなされる27項目は次のとおりです。

添加物に分類される項目(規則(EC) 1333/2008 (ANNEX I))
甘味料(sweeteners) 食品に甘味を与える(単糖類、二糖類除く)
着色剤(colours) 食品を着色する、またはその色調を回復させる
防腐剤(preservatives) 食品を微生物による品質の劣化から守り、保存期間を長くする
抗酸化剤 (antioxidants) 酸化による品質の劣化を防ぎ食品の保存期間を長くする
キャリア・担体(carriers) 甘味料、香料、栄養素などを溶解、希釈、分散させることで、その取り扱いを容易にする
酸味料 (acids) 食品の酸味を増強・添加させる
pH 調整剤(acidity regulators) pH を調整する
凝結防止剤 (anti-caking agents) 食品の構成要素同士の接着を防ぐ
消泡剤(anti-foaming agents) 泡立つのを防ぐ、または減らす
増量剤 (bulking agents) 食品の栄養価に大きく寄与することなく、食品のかさを増やす
乳化剤 (emulsifiers) 食品中で乳化を均一にする、またはその状態を保つ
乳化塩(emulsifying salts) タンパク質の構造を変えて脂肪の分離を防ぐ
固化剤(firming agents) 組織の形状を保護または強化する
化学調味料(flavour enhancers) 食品にある風味や香りを増強する
発泡剤(foaming agents) 食品中で気泡を均一に分散させる、またはその状態を維持する
ゲル化剤(gelling agents) ゲル化し、食品に食感を与える
光沢剤(glazing agents) 食品の外皮に使用し、食品に光沢を与える、またはその表面を保護する
保湿剤 (humectants) 食品周囲の乾燥による影響で、食品自体が乾燥するのを防ぐ
加工でん粉(modified starches) 物理的または酵素で加工し、アルカリ処理、酸処理、漂白処理などをしたでん粉
充填剤 (packaging gases) 食品を酸化や損傷から守るために食品の容器に注入する気体
噴射剤 (propellants) 食品を容器の外に出すために食品の容器に注入する気体
膨張剤(raising agents) 気体を発生させパンの生地やころもを膨らませる
隔離剤 (sequestrants) キレート作用により、食品の色調、香り、食感を安定化させる
安定剤(stabilisers) 食品の構成要素の分散状態を均一に保ち物理化学的状態を維持する
増粘剤(thickeners) 食品の粘度を増加させる
小麦粉処理剤(flour treatment agents) 小麦粉や生地に加え、焼き上がった食品の品質や色調を改善する
コントラスト増強剤(contrast enhancers) 果物・野菜の表面の一部を脱色することで色を際立たせる

EU では「漂白剤」「炭化剤」「保色剤」が食品添加物として分類に含まれていない一方で、「酸味料」「加工でん粉」「コントラスト増強剤」が食品添加物とされています。

さらに食品添加物には「使用可能な食品カテゴリー」および「許容含有量(定められていない食品添加物もある)」が定められているため、EUに輸入しようとする商品に食品添加物が含まれる場合、その商品が属する食品カテゴリー(パックご飯は、サブカテゴリー6.7「Pre-cooked or processed cereals」に属する。)における当該食品添加物の使用可否とその許容含有量についても確認する必要があります。

ANNEX II パートEに記載される食品カテゴリーごとの認可済み添加物と使用条件
6.7 事前調理済み・加工済み穀物製品
E番号 名称 最大許容量 例外事項  
Group I 添加物      
Groupe II 香料 「適量」(quantum satis) 「適量」 (quantum satis)    
E 200 - 202 ソルビン酸カリウム 200 mg/kg ポレンタ(polenta : 粥状に煮たコーンミール)のみ (1)
(2)
E 200 - 202 ソルビン酸カリウム 2000 mg/kg ゼンメルクヌーデル(Semmelknödelteig :パン粉を寄せたお団子)のみ (1)
(2)
E 310 - 320 没食子酸プロピル、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA) 200 mg/kg 事前加熱した穀物のみ (1)
E 471 脂肪酸モノ-およびジグリセリン 「適量」 (quantum satis) インスタント調理のコメのみ  
E 472a 脂肪酸モノおよびジグリセリン酢酸エステル 「適量」 (quantum satis) インスタント調理のコメのみ  
E 481 - 482 ステアロイル乳酸 4 000 mg/kg インスタント調理のコメのみ (2)

ただし、ANNEX II に記載されていない場合でも、ANNEX IIIに掲載されている添加物やキャリアは使用条件に従って食品添加物、食物酵素、食品香料、栄養物(ビタミン・ミネラル)に使用することが可能です。

例えば、プロピレングリコール(E1520)は食品への直接使用は認められていませんが、ANNEX IIIに使用できる条件、上限値が記載されています。
また、規則(EU) 2019/649により、ビタミン・ミネラルなどの食品への添加に関する規則(EC) 1925/2006が改正され、2021年4月1日から、最終消費者向け食品のトランス脂肪酸は天然由来の動物性の脂肪酸を除き、脂質100gあたり2gを超えてはならないとされています。また、業務向けでこの数値を超える場合は、トランス脂肪酸の量に関する情報を提供する必要があります。食品に添加できるビタミン剤およびミネラル成分に関しては、規則(EC) 1925/2006のANNEX IIに記載されています。

なお、2020以降、添加物E 410 (ローカストビーンガム)に酸化エチレンに汚染されているとして、EU域内で大幅なリコール対象となったことから注意が必要です。

5. 食品包装規制(食品容器の品質または基準)

調査時点:2021年9月

EUでは、食品用の容器・包装をはじめ、調理器具や食品製造機械、食品輸送用のコンテナなど、食品と接触することが意図されている、または、通常の使用条件において食品と接触することが合理的に予見されるあらゆる素材・製品を「食品接触素材(FCM:Food Contact Material)」と呼んでいます。規則(EC) 1935/2004により、すべての食品接触素材は、健康被害を引き起こしてはならない、食品成分に許容できない変化を引き起こしてはならない、食品の味・香り・食感などを劣化させてはならない旨が定められています。

また、規則(EC) 2023/2006において、食品接触素材の製造工程における適正製造規範(Good Manufacturing Practice:GMP)がそれぞれ定められています。

前述の一般原則を規定する規則に加え、特定の食品接触素材について、個別の規則が定められており、定められた条件に準拠していることを示す適合宣言書の添付が求められています。

主な食品接触素材に関する根拠法
食品接触素材 規則・指令 主な内容
プラスチック 規則(EU) 10/2011 ポジティブリスト形式での使用規制がなされており、同規則ANNEX Iのリストに掲載されている物質を原料として製造されたプラスチックのみが、食品接触素材として使用可能となっています。このリストは科学的評価に基づき更新されるため、随時確認する必要があります。
アクティブ・インテリジェント素材 〔鮮度保持などの目的で食品から物質を吸収する素材(吸湿材など)、容器内に物質を放出する素材(防腐剤を放出する鮮度保持材など)、食品の状態を監視する素材(温度変化に反応する素材など)〕 規則(EC) 450/2009 食品と誤認されるおそれがある場合には、3mm以上のフォントサイズで ‘DO NOT EAT’ と表記する必要があります。なお、調査時点では、ポジティブリストは制定されていません。
再生プラスチック 規則(EC) 282/2008 同規則に従って認可を受けたリサイクルプロセスから得られた物質を原料として製造された再生プラスチックのみが、食品接触素材として使用可能となっています。
セラミック 指令84/500/EEC カドミウムと鉛の検出上限値が規定されています。
再生セルロースフィルム 指令2007/42/EC ポジティブリスト形式での使用規制がなされており、同規則ANNEX IIのリストに掲載されている物質を原料として製造された再生セルロースのみが、食品接触素材として使用可能となっています。

さらに、特定の物質に関する規則が定められています。
規則(EU) 2018/213:BPA(ビスフェノールA)
規則1895/2005/EC:エポキシ樹脂
指令93/11/EEC: ゴムからのN-ニトロソアミンおよびN-ニトロソ

また、EUレベルでの法規制に加えて、EU加盟国は独自規制を導入することが可能となっているため、注意が必要です。

例えば、フランスでは、デクレNo 2007-766(2007年5月10日付)とデクレNo 2008-1469(2008年12月30日付)により、ゴム、シリコンゴム(ポリマー)、イオン放射線処理、金属・合金 (ステンレススチール、アルミニウム) に関するアレテが定められており、適用される基準値や添加できる物質のポジティブリストなどが規定されています。
また、食品の包装と保管、着色に関する1912年6月28日付アレテにより、一部の製造・醸造を除き、飲食品に直接、銅、亜鉛、亜鉛メッキが触れることは禁止されており、食品に接触する重金属(ヒ素、鉛、スズ)、紙・ボール紙、ニス・コーティング剤、人口着色料などについても独自規定が設けられています。

その他、ガラス・グラスセラミックなどに含有する重金属量(カドミニウム、鉛、クローム)の上限値や禁止の有無を定めた規定、製造に使用できる素材(木材など)の規定や洗浄剤それぞれ該当規定を確認する必要があります 。
また、法令No 2012-1442に基づき、食品に接触するすべての包装容器などについてビスフェノールAの使用が禁止されています。

関連リンク

根拠法等
規則(EC)No 1935/2004(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EC)No 2023/2006(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EC)No 1895/2005(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
指令(EEC) 84/500(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU)No 10/2011(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則 (EC) No 282/2008 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU) 2020/1245(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EC)No 450/2009(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
指令(EC)No 2007/42(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則 (EU) No 2016/2031(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU) 2019/787 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
委任規則 (EU) 2019/2125 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
EU指令 2011/91/EU (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
規則(EU) 2018/213 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
指令93/11/EEC (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
2007年5月10日付 デクレNo 2007-766 (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※ 関連リンクに示した仏国内法のリンクは、すべて制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、Version à la date du で最新の日付を入力してください。
2008年12月30日付 デクレNo 2008-1469 (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1994年11月9日付飲食品に接触するゴム製品・素材に関するアレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1992年11月25日付飲食品に接触するシリコンゴム製品・素材に関するアレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1986年8月12日付飲食品に接触する製品・素材へのイオン放射線処理に関するアレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1976年1月13日付食品に接触するステンレス製品・素材に関するアレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(375KB)
1987年8月27日付飲食品に接触するアルミニウムまたはアルミニウム合金製品・素材に関するアレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1985年11月7日付アレテ飲食品に接触するセラミック製品から抽出可能なカドミニウムや鉛の上限値に関するアレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1999年9月8日付アレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1912年6月28日付食品の包装と保管、着色に関するアレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
フランス法令No 2012-1442(フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
その他参考情報
欧州委員会 食品接触材 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
食品との接触を意図したプラスチック素材と製品に関する規則(EU)No 10/2011に関するEUガイドライン(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(579KB)
EU加盟国の食品接触素材に対する独自規制に関するレポート(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
フランス国立計測試験研究所(LNE)(フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ「食品輸出にかかる食品接触材規則と留意点:欧州」(貿易・投資相談Q&A)
ジェトロ「海外向け食品の包装制度調査(EU、TPP、米国、中国、韓国、台湾、インド、タイ、インドネシア、GCC、メルコスール)」(2020年3月)

6. ラベル表示

調査時点:2021年9月

食品のラベル表示は、欧州議会・理事会規則(EU)No 1169/2011で規定されています。同規制はEU域内で流通する食品全般(最終消費者向けおよび調理施設(レストラン、食堂など)向けの輸入食品を含む)に適用され、輸入食品にも適用されます。EU市場で流通し消費者に販売される時点から、輸入者もしくは販売者に表示の義務が課されます。アレルギー物質や栄養素の表示など、日本よりも義務表示の対象が広い項目もあるため注意が必要です。

コメやパックご飯を輸出する場合、同規則Article 9およびEU指令2011/91/EUに基づき次の項目を表示する義務があります。なお、消費者を惑わせる表示や医学的効能を宣伝する表示が禁止されているほか、オンライン販売などの手法により遠隔地から販売する事業者にも同様の規定が適用されます。

ラベル表示義務項目
コメ・米粉 パックご飯 項目 補足説明
食品の名称 食品の名称は、次の優先順位で記載する必要があります。
  1. 法的名称:EUまたは加盟国の法律、規則等で定められた名称。
  2. 慣習的名称:当該販売国で消費者に食品名称として受け入れられている名称。その名称以外に説明が不要なもの。
  3. 説明的名称:製品の本質が消費者に分かり、混同しやすいほかの製品と区別できる食品を形容した説明、および必要に応じてその用途を示す名称。
なお、商標やブランド名を食品の名称として使用することはできません。
  原材料リスト 原則として、すべての原材料(食品添加物や酵素を含む。)を重量順に表示する必要があります。ただし、食品に占める割合が2%未満の原材料については、重量順と異なるかたちで列挙することも可能です。なお、複合原材料についても、名称・総重量を記載したうえで、その後に原材料リストを記載する必要があります。食品添加物および食品香料は、そのカテゴリー(酸化防止剤、防腐剤、着色料など)ごとに物質名またはE番号を表示する必要があります。
ただし、加工助剤や最終製品技術的な機能を持たないキャリーオーバーなどについては同規則第20条を参照。 単一原材料の「コメ」や「米粉」で食品の名称同一の「コメ」や「米粉」である場合は不要。
アレルギー物質 表示が義務付けられているアレルギー物質は、次のとおりです。
  • グルテンを含む穀物(小麦、大麦、オーツ麦など)および同製品(一部例外あり)
  • 甲殻類および同製品
  • 卵および同製品
  • 魚および同製品(一部例外あり)
  • ピーナッツおよび同製品
  • 大豆および同製品(一部例外あり)
  • 乳(ラクトースを含む)および同製品(一部例外あり)
  • ナッツ類および同製品
  • セロリおよび同製品
  • 辛子および同製品
  • ゴマおよび同製品
  • 濃度が 1キロ/1リットルあたり10mg 超の二酸化硫黄または亜硫酸塩
  • ルピナス(マメ科植物)および同製品
  • 軟体動物および同製品
原材料リストの標記を太字などで強調することにより表記することが可能です。
ただし、コメはアレルゲン物質には該当しないため、実質的な表示義務はない。
特定原材料の分量 次の場合には、原材料の分量を表示する必要があります。
  • 当該原材料が食品の名称に使用されている場合
  • 当該原材料がラベル上で言葉・写真・図で強調されている場合
  • 当該原材料がある食品を特徴づけ、名称や見た目が類似するほかの製品と区別するのに必須な場合
正味量

重量単位で「kg(キログラム)」または「g(グラム)」で表示します。 文字の大きさは重量に応じ、次のとおり表示する必要があります。

公称重量 文字の高さ
50g以下 2mm以上
50g超200gまで 3mm以上
200g超1,000gまで 4mm以上
1,000g超 6mm以上
また、容量誤差の許容範囲(容器に記載された公称重量と実質重量の誤差)については、指令76/211/EEC により、次のとおり規定されています。
公称重量
(g)
許容範囲
(公称容量より少ない場合)
公称重量
に対する%
g
5 ~ 50 9
50 ~ 100 4.5
100 ~ 200 4.5
200 ~ 300 9
300 ~ 500 3
500 ~ 1,000 15
1,000 ~ 10,000 1.5
表示されている正味量が関連する英国/EU規制に準拠していることを示すため、eマークを正味量の横に表示することが可能です。
〇g eマーク
図:eマーク
賞味期限または消費期限 事前包装されている食品に関して、微生物学の視点からみて傷みやすく、短期間で危険となりうる食品の場合、日本と同様に、賞味期限(the date of minimum durability)に代えて「消費」期限(the ’use by’ date)を表示する必要があります。
特殊な保存条件や使用条件 当該食品が特別な保存条件や使用条件を必要とする場合には、表示する必要があります。また、開封後の食品の適切な保存または使用を可能にするために、必要に応じて保存条件や消費期限を表示することができます。
例:「冷暗所で保管」
(食品情報について責任を負う)食品事業者の名称または商号、および所在地 食品を当該名称または商号で販売している食品事業者(EU域内事業者でない場合は、EUへの輸入者)の名称または商号および所在地を表示する必要があります。
委託製造の場合、フランスでは« EMB »の後に5桁の登記番号
使用方法の指示 記載がなければ適切な使用が困難な場合に記載する必要があります。
  栄養表示 次の項目について、100gまたは100mlあたりの栄養素を表示する必要があります。これに加えて、一食あたりの栄養素を表示することも可能です。栄養表示はスペース上で可能であれば表形式で記載し、難しい場合は列記しなければなりません。
  • エネルギー量(kJ/kcalの両方を記載する必要があります)
  • 脂肪(g)
  • 飽和脂肪酸(g)
  • 炭水化物(g)
  • 糖類(g)(単糖類および二糖類の合計値のことを指します。)
  • タンパク質(g)
  • 塩分(g)〔(塩分)=(ナトリウム含有量)×2.5で算出することとなっています〕
製造ロット番号
(EU指令2011/91/EU)
EU域内で流通する包装済み食品は、製造ロット番号を表示する必要があります。明確な表示(LOTなど)の場合を除き、「L」の文字に続けてロット番号を表示する必要があります。

その他、一部の食材(牛肉など)に関して原産地表示義務や「表示されている食品の産地」と違う原材料を使用している場合、当該原材料の原産地を記載する必要があります。

また、密閉した包装容器内の空気を除去し、窒素などその他のガスを充てんしたガス充てん包装がなされた食品については、「packaged in a protective atmosphere」と表示する義務が追加されます(同規制ANNEX III)。

食品のラベルに使用される言語は、EUの公用語であれば複数の記載も可能ですが、当該製品を販売する国の公用語を必ず使用する必要があります(同規則Article 15)。
また、ラベル表示に使用する文字の大きさについても、同規則において次のとおり指定されています。

Appendix
  • 包装面の最大面積が80cm2以上の場合、「x」の文字の高さ(図中の6)は1.2mm以上
  • 包装面の最大面積が80 cm2未満の場合、「x」の文字の高さは0.9mm以上
グルテンフリー食品
実施規則(EU) 828/2014により、グルテン含有量が20mg/kg以下である場合には「gluten-free」の表示が可能です。その際には、「gluten-free」の表示とともに「suitable for people intolerance to gluten(グルテン不耐症のヒト向け)」または「suitable for coeliacs(セリアック病患者向け)」の文言を付すことも可能です。
遺伝子組換え食品
規則(EC) 1829/2003により、認可を受けた遺伝子組換え作物のみがEU域内での流通・販売を認められており、遺伝子組換え作物を含む食品を流通させる場合には遺伝子組換え作物を使用している旨の表示が義務付けられています。遺伝子組換え食品を含む場合、原材料リストの当該原材料の直後に「genetically modified(遺伝子組換え)」または「produced from genetically modified (name of ingredient)(遺伝子組換え(原材料名)から作られた)」という言葉を括弧書きで表示しなければならない。原材料がカテゴリー名で表示されている場合は、原材料リストに「contains genetically modified (name of organism)(遺伝子組換え(生物名)を含む)」または「contains (name of ingredient) produced from genetically modified (name of organism)(遺伝子組換え(生物名)から製造された(原材料名)を含む)」という文言を表示しなければなりません。これらの表示は、少なくとも原材料リストと同じ大きさのフォントで印刷されていることを条件に、原材料リストの脚注に記載することができます。
新規食品
規則(EU) 2015/2283により、EU内で新規食品を市場に出すための規則が定められています。原材料として新規食品を使用する場合には、新規食品の認可リストを確立する実施規則(EU) 2017/2470に規定される新規食品の特定の表示要件に従う必要があります。
栄養・健康に関する強調表示
規則(EC) 1924/2006により、栄養・健康に関する強調表示(例:「DHA は正常な血圧の維持に寄与します」「脂肪分 0%」)に関する規制が定められています。食品ラベル上に記載可能な強調表示はポジティブリスト形式(EU リスト)で定められており、強調表示が可能な栄養素等・記載可能な表現・強調表示を行うために含まれるべき栄養素等の基準が詳細に定められているため、強調表示を行う場合には注意が必要です。

容器包装のリサイクルなどに関する表示

リサイクルプラスチックに関しては規則 (EC) 282/2008に規定されており、同規則第11条により、リサイクルプラスチックの表示はISO 14021:1999に準ずるものまたは同等のものとされています。

なお、EUレベルでは、環境を配慮する目的で、包装および包装廃棄物の管理に関する国内措置(システム)を整備するEU指令94/62/CEの枠組みの中で、2014年から、使用されている包装容器が「PRO EUROPE」のリサイクルシステムに組み込まれていることを証明するロゴ 「グリーンドット」Green Dot.(独 :グリューネ・プンクト, 仏 : Le Point vert)が導入されています。 これらのリサイクルシステムは各加盟国の団体組織により管理されています。
フランスにおいては、CITEO (旧Eco-Emballage/Ecofolioただしガラス瓶はAdelphe)により運営されており、92年以降本システムを利用している包装容器に「Point vert」の表示が義務化されていましたが、2017年に義務的表示が廃止となりました。さらに、消費者に「リサイクル可能な容器であると誤認させている」という理由で、2021年1月以降表示が禁止となる予定でしたが、調査時点では、適用開始日に関し協議中です。他方で、一部のEU加盟国(スペイン、キプロス)では表示が義務化されています。

グリーンドット

PRO EUROPEに参加していることを証明する (Green Dot.)(独 :グリューネ・プンクト, 仏 : Point vert

他方で、飲料用ガラス瓶は調査時点で、対象外ですが、2015年からフランス国内市場で流通する家庭向け製品の「リサイクル可能でゴミの分別の対象である包装容器」には「トリマン(Triman)」ロゴの表示が、製造業者、輸入業者または流通業者に義務付けられています。多くの場合、ゴミの分別方法の説明を「Info-tri」(CITEO)というイラストで補完しています。

トリマンロゴ 現行のInfo-tri (CITEO)マーク

(左)トリマンロゴ(右) 現行のInfo-tri (CITEO)マーク

なお、「廃棄物削減および循環経済に関する法律」により、2022年1月以降リサイクル可能か否か関係なく家庭消費向け包装容器(飲料用ガラス瓶は除く)にはトリマンロゴとフランスで統一したゴミの分別方法のロゴ(現行の「Info-tri」に代わるもの)の表示が義務づけられる予定ですが、2021年7月調査時点では統一された「分別方法のイラスト」は公表されていません。

EU加盟国(仕向け地)により、表示する「リサイクル可能な包装容器」あるいは「リサイクルシステム採用」はロゴが変わってきますので、留意してください。

7. その他

調査時点:2021年9月

  1. EU域外から輸入される食品については、欧州議会・理事会規則(EC)No 178/2002に基づきEU規制が求める衛生基準などとの同等性(輸出国と特定の合意がある場合はその合意事項)を満たす必要があります(同規則Article 11)。
  2. EUの食品輸入事業者は、輸入した食品がEUの食品衛生要件を満たしていないと判断した場合、即時に製品を市場から回収する手続きをとり、加盟国の所管当局に通知する義務があります(欧州議会・理事会規則(EC)No 178/2002 Article 19)。また、同規則では、食品がヒトの健康や環境に甚大なリスクをもたらす可能性があると判断された場合、EU が当該食品の上市停止などの緊急措置をとることが認められています(同規則Article 53)。取られた措置についてはRASFF(食糧・飼料緊急アラートシステム)で確認することができます。

EUでの輸入手続き

1. 輸入許可、輸入ライセンス等、商品登録等(輸入者側で必要な手続き)

調査時点:2021年9月

EUの共通農業政策(CAP)保護対象農産品の輸入規則により、玄米または精米を、1トンを超えて輸入する輸入事業者は、事前に輸入ライセンスを取得する必要があります(委員会委任規則(EU)2016/1237)。ただし、輸入関税割当制度を利用する場合は、輸入する重量にかかわらず、ライセンスの取得が必要です(輸入関税割当制度については「輸入関税等」の「1. 関税」の項を参照)。玄米または精米の輸入ライセンスを取得するには、1トンあたり30ユーロの担保の預入が求められます(輸出額が100ユーロ以下の場合は不要)。

輸入ライセンスを取得すると、輸入の許可と同時に義務も負います。輸入量の実績が許可された量の±5%以内であれば、輸入義務が果たされたとみなされます。輸入義務が果たされなかった場合、預け入れた担保は払い戻されません。
輸入ライセンスを取得した輸入事業者には、当該ライセンスに定められた有効期間内に、当該ライセンスで定められた数量(±5%)を輸入することが認められます。輸入ライセンスは、貨物が税関に到着するまでに取得する必要があります。

また、輸入ライセンスの有効期間は、取得した月から2カ月後の月末までとされています。輸入関税割当制度を利用する場合は、輸入ライセンスの申請受付期間が限定されているため、注意が必要です。 輸入ライセンス効力の対象国は「国」ではなく「EU域内」のため、輸入ライセンスを取得すれば、ライセンス取得国のみならず、EU全体への輸入が可能です。
ライセンスは、電子申請が可能です。申請様式は、欧州委員会規則(EU)No 2016/1239 ANNEX Iに定められています。

フランスの場合、仏農業・食料省管轄のFranceAgriMer(仏農業省関連機関Etablissements National des Produits de l'Agriculture et de la Mer)が管轄しており、輸入ライセンス(Certificat d’importation AGRIM)をFranceAgriMerに申請・取得する必要があります。申請書に必要事項を書き込み、社印を押印し、保証金の支払いと合わせて郵送します。申請書が受理されると、後日、輸入許可が送付されます。最初の申請の場合には輸入業者の3カ月以内に入手したK-bisのオリジナル(登記情報)、銀行情報(RIB)、社名入りレターヘッドなども必要となります。

その他、パックご飯など、原材料に動物由来加工製品を含む場合には、混合食品規制が適用されますので、EU ポータルサイト「混合食品」を参照してください。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 貿易ヘルプデスク(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
フランス FranceAgriMer(仏語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EU)No 2016/1237(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU)No 2016/1239(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
フランス 農業・食糧省 輸入ライセンスの入手(仏語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
AGRIMER 輸入ライセンス申請書(仏語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(38KB)

2. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)

調査時点:2021年9月

日本からEU域内にコメを輸入する際に、次の書類が必要になります。

  1. 通関申告書(単一管理文書 (SAD : Single Administrative Document)) EU域外の第三国とのすべての輸出入手続きに必要な共通申請書。様式は委員会実施規則(EU) 2016/341 Appendix B1に記載されています。
  2. インボイス(商業送り状)
  3. パッキングリスト(包装明細書: P/L)
  4. 価格申告書(Customs Value Declaration) CIF価格が2万ユーロを超える場合、SADとあわせて価格申告書の提出を求められます。様式は規則 (EU) 2016/341 ANNEX 8に記載されています。
  5. 船荷証券(Bill of Lading: B/L)/航空運送状(Air Waybill: AWB)その他保険書類など

有機製品の場合、共通衛生入域文書(Common Health Entry Documents: CHED)
その他、原材料に動物由来加工製品を含む場合には、混合食品規制が適用され、共通衛生入域文書(CHED-P)および公的証明書/自己宣誓書が必要となります。詳細は、EU ポータルサイト「混合食品」を参照してください。

貨物の到着1日前までに共通衛生入域文書(CHED : Common Healthy Entry Document)をTRACES などの電子システム経由で国境管理所(BCP:Border Control Post)に通知する必要があります。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EU)No 2017/625 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
規則(EU)No 2016/341(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
その他参考情報
欧州委員会 TRACES(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 BCPs(指定国境管理所)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 各加盟国の国境検査所 BCPs(動物検疫)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

3. 輸入時の検査・検疫

調査時点:2021年9月

EUに日本からコメを輸出する場合、特別な検疫上の措置は求められませんが、規則(EU)No 2017/625第44条および第47条に基づき、国境管理所に到着するすべての輸入検疫対象貨物に対し、書類検査が実施され、リスクに応じて同一性検査(添付書類と貨物の同一性の確認)と現物検査(検査施設でのサンプル検査など)が実施されます。同一性検査と現物検査の実施率は、実施規則(EU) 2019/2129で定められており、混合食品の場合は、同一性検査100%、現物検査15%となっています。

残留農薬検査のサンプリング手法は、欧州委員会指令2002/63/ECに定められていますが、同指令の内容はCODEX(コーデックス委員会)の推奨するサンプリング手法を踏襲しているため、CODEXの手法と原則同じ内容です。
検査に要した費用は請求されます。

なお、パックご飯の原材料に動物由来加工製品が含まれている場合には、混合食品規制の対象になり、国境管理所(Border Control Posts:BCP)での公的管理(いわゆる輸入検疫)の対象となりますので、注意が必要です。混合食品に関する規制は、EU ポータルサイト「混合食品」も参照してください。

また、公的管理の強化期間中に同じ業者または国からの貨物が同じ違反を3回した場合は、欧州委員会は第三国の発送国の当局に対し必要な調査と是正を要請します。

4. 販売許可手続き

調査時点:2021年9月

コメの販売について、EUレベルでの規制はされていませんが、販売国ごとの規制を確認する必要があります。

ただし、EU域内で販売される食品については、欧州議会・理事会規則(EC)No 178/2002に基づきEU規制が求める衛生基準などとの同等性(輸出国と特定の合意がある場合はその合意事項)を満たす必要があります(同規則Article 11)。同規則では、食品がヒトの健康や環境に甚大なリスクをもたらす可能性があると判断された場合、EUが当該食品の上市停止などの緊急措置をとることが認められています(同規則Article 53)。

この衛生に関する要件(「衛生パッケージ」)は、欧州議会・理事会規則 (EC) No 852/2004 (一般食品衛生規則)、欧州議会・理事会規則 (EC) No 853/2004 (動物由来食品衛生規則)
そして、欧州議会・理事会規則 (EU) 2017/625(新公的管理規則)により補完されます。

また、コメそのものの販売には関連しませんが、動物性食品を使用するコメ調理品などの販売に関しては施設のHACCP衛生認可などが必要となる場合があります。詳細は関連リンクの「その他参考情報」にあるジェトロレポート「EU・フランスにおけるコメ調理品の流通規制調査」で確認することができます。

関連リンク

根拠法等
規則(EC)No 178/2002(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則 (EC) No 852/2004 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則 (EC) No 853/2004 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU)No 2017/625 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
ジェトロ「EU・フランスにおけるコメ調理品の流通規制調査」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

5. その他

調査時点:2021年9月

なし

EU内の輸入関税等

1. 関税

調査時点:2021年9月

関税および統計的分類表ならびに共通関税率に関する欧州理事会規則(EEC)No 2658/87では、共通関税を設定するために合同関税品目分類表(CN)とよばれる物品の分類表を設定しており、これはHSコードに相当します。そのため、当該合同関税品目分類表のCNコードの中から該当する品目の関税率を特定する必要があります。

なお、2019年2月から、日本からEUへの輸出品は、日EU経済連携協定の適用対象となりますが、コメは関税撤廃の対象外です。
2020年3月に実施規則(EU)2020/383により、玄米の輸入関税が65.00ユーロ/1,000kgから42.50ユーロ/1,000kgに引き下げられています。

玄米および精米が該当するCNコードと関税率
CNコード/品目 関税率
1006.20.9200
玄米のうち短粒種
42.50ユーロ/1,000kg
1006.30.9210
完全精米(研磨してあるかないかまたはつや出ししてあるかないかを問わない)
短粒種のうち、正味重量が5キログラム以下に包装されたもの
175.00ユーロ/1,000kg
1006.30.9220
完全精米(研磨してあるかないかまたは、つや出ししてあるかないかを問わない)
短粒種のうち、正味重量が5キログラム超20キログラム以下に包装されたもの
175.00ユーロ/1,000kg
1006.30.9290
完全精米(研磨してあるかないかまたは、つや出ししてあるかないかを問わない)短粒種のうちその他のもの
175.00ユーロ/1,000kg
1904.90.10
コメ由来の事前調理品
100kgあたり8.30% + 46.00ユーロ
1102.90.50
米粉など
138.00 ユーロ/1,000kg

なお、精米については、欧州委員会実施規則(EU)No1273/2011に基づき、米国、タイ、オーストラリア以外のすべての国の合計で年間1,805トンの輸入関税割当が設けられています。この割当の枠内に該当する輸入については、関税率がゼロに設定されます。
また、玄米については、同規則に基づき、従価税が15%とされており、うち、すべての国の合計で年間1,634トンの輸入関税割当が設けられています。なお、日本産の玄米の場合、通常、価格単価が高いため、関税割当を用いた場合の関税率よりも、通常の関税率の方が低くなる場合があります。

輸入関税割当を利用するには、輸入ライセンスを取得する必要があります。輸入ライセンスについては、「輸入手続き」の「1.輸入許可、輸入ライセンス等、商品登録等(輸入者側で必要な手続き)」の項を参照してください。

その他、関税率は、欧州委員会通商総局が提供する「Access2Markets」や税制・関税同盟総局が提供する「TARIC Consultation」などで検索できます。さらに、日EU経済連携協定(EPA)の原産地ルールや税率に関しても、「Access2Markets」で確認することができます。

関連リンク

関係省庁
European Commission Taxation and Customs Union (欧州委員会 税制関税同盟総局)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EEC)No 2658/87(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EEC)No 1273/2011(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
実施規則(EU) 2020/383(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
欧州委員会Access2Markets (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会TARIC Consultation(関税検索ページ) (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
一般社団法人全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会「令和元年度日本産コメ・コメ加工品輸出ハンドブック」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 日EU・EPAガイダンス「特恵の要求、確認および否認」(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(454KB)
欧州委員会日EU・EPAガイダンス「原産地に関する申告」(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(481KB)
ジェトロ「経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(日EU・EPA)ガイダンス要求、確認および特恵の否認(2019年12月更新版)(ジェトロ仮訳)」PDFファイル(722KB)
ジェトロ「経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(日EU・EPA)ガイダンス原産地に関する申告(ジェトロ仮訳)」PDFファイル(711KB)

2. その他の税

調査時点:2021年9月

EUへの輸入には、輸入関税に加え、各国が独自に定める付加価値税(VAT)や物品税が課されます。これらの税率は国によって異なるため、最終消費国ごとに確認する必要があります。なお、VATに関する共通システムに関しては理事会指令2006/112において規定されています。加盟国ごとのヒトの消費用コメ、パックご飯、米粉などに適用されるVATの税率は次のとおりです。ただし、用途によって異なる税率が適用される場合がありますので、注意が必要です。

各加盟国のVAT税率
加盟国 税率 加盟国 税率
ベルギー 6% / 21% リトアニア 21%
ブルガリア 20% ルクセンブルク 3%
チェコ 15% ハンガリー 18% / 27%
デンマーク 25% マルタ 0%
ドイツ 7% オランダ 9%
エストニア 20% オーストリア 10%
アイルランド 0% ポーランド 5%
ギリシャ 13% ポルトガル 6% / 23%
スペイン 4% / 10% ルーマニア 9%
フランス 5.5% / 20% スロベニア 9.5%
クロアチア 25% スロバキア 20%
イタリア 10% フィンランド 14%
キプロス 5% スウェーデン 12%
ラトビア 21%

関連リンク

根拠法等
指令2006/112(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。

3. その他

調査時点:2021年9月

なし

その他

調査時点:2021年9月

有機食品に関する規制

EU域内で有機食品を第三国から輸入、販売するための要件およびそのラベル表示に関する規制は、欧州理事会規則(EC)No 834/2007および規則(EC)1235/2008で規定されていますが、新公的管理の規則(EU)No 2017/625に照らし合わせ、新規則(EU)2018/848が2021年1月1日から適用される予定でしたが、コロナ渦の影響により、規則 (EU) 2020/1693により2022年1月1日からの適用に延長されています

調査時点では、日本の有機JAS制度は、EUの有機制度との同等性を有するとみなされており、EU域内で「有機」として販売が可能な国のリスト(第三国リスト)に掲載されているため、同リストに掲載された有機JAS登録認定機関が発行する証明書を添付することにより、有機食品としてEU加盟諸国に輸出することが可能です。輸出時には当該証明書を、有機JAS食品に添付しなければなりません。なお、当該証明書は、2017年10月19日からTRACESシステムを用いて電子的に提出することが義務付けられており、証明書を発行する登録認定機関がTRACESに登録されている必要があります。

また、食品に「organic」などの語句を表示してEU域内で販売する際には、有機JAS登録認定機関の認証機関コード番号もラベル表示(事前包装されていない場合は当該商品に言及したボードなど)に記載しなければなりません。また、任意でEUの有機ロゴ(ユーロリーフ)の使用もできますが、日本から輸入した有機JAS認定食品の場合は「non-EU Agriculture」の表示もあわせて記載する必要があります。生産国が日本のみの場合は、「non-EU」を国名で代替・補足することも可能です。

EUの有機ロゴ(ユーロリーフ)

図:EUの有機ロゴ(ユーロリーフ)

日本の有機JAS制度はEUの有機制度との同等性が認められていますが、日本の有機JAS制度においては一部農薬(無機銅など)の使用が認められており、かつ残留農薬基準が日本よりEUのほうが低く設定されている場合があります。その場合は有機JAS農産物であってもEUの残留農薬基準を満たさない可能性があることについて留意が必要です。

なお、欧州理事会規則(EC)No 834/2007および欧州委員会規則(EC)No 889/2008に基づき、EU域内に有機食品を輸入・流通させるにあたっては、EU側の輸入者・販売者にも当局への登録、査察の受け入れ、証明書の保持などが義務付けられています。このため、輸出に際してはEU域内の相手方事業者がこれらの要件を満たす事業者であるかどうかについて確認を行うことも必要です。

前述のとおり、新公的管理の規則(EU)No 2017/625に照らし合わせ、新規則 (EU) 2018/848が今後適用されると有機の第三国との同等性の規則が失効されることが示唆されています。規則 (EU) 2020/1693によると、EU有機と日本の有機JASの同等性の失効期限は2026年12月31日までとなっているため、有機JAS制度を利用したEUへの有機食品の輸出ができなくなる可能性があります。