日本からの輸出に関する制度 混合食品の輸入規制、輸入手続き

品目の定義

本ページで定義する混合食品のHSコード

EUでは、「動物由来加工製品(Processed products of animal origin)と植物由来製品(Products of plant origin)の 両方を含む食品 」を「混合食品」として独自の規制を設けています。
本ページでは、2021年4月21日から適用される新たな混合食品規制に関する情報を提供しています。
新制度の対象となる混合食品のCNコード(EU域内で使われる全8桁の合同関税品目分類表で、6桁まではHSコードと共通。)は以下のとおりです。

1517:
マーガリン、動物性油脂や植物性油脂の混合物及びそれらの調製品
1518
動物性又は植物性油脂及びその分別物(ボイル油化、酸化、脱水、硫化、吹き込み又は真空若しくは不活性ガスの下での加熱重合、その他の化学的な変性加工をしたもので、1516項のものを除く。
1601 00
ソーセージその他これに類する物品およびこれらの物品をもととした調製食料品
1602
その他の調製または保存に適する処理をした肉、くず肉および血
1603 00
肉、魚、甲殻類、軟体動物、その他の水棲無脊椎動物のエキス・ジュース
1604
魚(調製または保存に適する処理をしたものに限る)、キャビア、魚卵から調製したキャビア代用物
1605
甲殻類、軟体動物、その他の水棲無脊椎動物(調製または保存に適する処理をしたものに限る)
1702
その他の糖類(化学的に純粋な乳糖、麦芽糖、ブドウ糖及び果糖を含むものとし、固体のものに限る)、香味料又は着色料を加えていないシュガーシロップ、人造ハチミツ(天然ハチミツを混合しているかいないかを問わない)及びカラメル
1704
ココアを含有しない砂糖菓子(ホワイトチョコレートを含む)
1806
チョコレート及びココアを含むその他の調整食料品
1901
麦芽エキス、穀粉、ひき割り穀物、ミール、でん粉または麦芽エキスの調製食料品およびミルク、クリーム、ヨーグルト、ホエイ等の調製食料品
1902
スパゲッティ、マカロニ、ヌードル、ラザーニヤ、ニョッキ、ラビオリ、カネローニその他のパスタ(加熱による調理をし、肉その他の材料を詰めまたはその他の調製をしたものであるかないかを問わない)
1904
穀物又は穀物製品を膨張させて、若しくは煎って得た調整食料品(例:コーンフレーク)、及びトウモロコシ以外の粒状又はフレーク状の穀物若しくは予め調理したかその他の調整を行ったもので、他の項に該当するものを除いたその他の加工穀物(粉、ひきわり燕麦及びミールを除く)
1905
パン、ペーストリー、ケーキ、ビスケットその他のベーカリー製品
2001
食酢又は酢酸により調整した、若しくは保存に適した処理をした野菜、果物、ナッツ及びその他の植物の食用の部分
2004
調製または保存に適する処理をしたその他の野菜(冷凍したものに限る)
2005
調製または保存に適する処理をしたその他の野菜(冷凍してないものに限る)
2101
コーヒー、茶又はマテのエキス、エッセンス及び濃縮物並びにこれらを基にした調整品若しくはコーヒー、茶又はマテを基にした調整品、焙煎したチコリ及びその他の焙煎したコーヒー代用物、並びにそのエキス、エッセンス及び濃縮物
2103
ソース、ソース用調製品、混合調味料、マスタードの粉、ミール、調製マスタード
2105 00
アイスクリーム、その他の氷菓
2106
調製食料品(他の項に該当するものを除く。)
2202
砂糖又はその他の甘味料若しくは香料を加えた天然又は人造のミネラルウォーター及び炭酸水を含む水、並びにその他のアルコールを含まない飲料、2009項のフルーツジュース又は野菜ジュースは含まない
2208
アルコール分が80%未満の変性されていないエチルアルコール:スピリッツ、リキュール及びその他のスピリッツ飲料

ただし、以下の場合には混合食品とみなされませんので、注意が必要です。

  • 最終製品に未加工の動物由来食品が含まれる場合
    (例:寿司、生鮮鶏肉とピーマンの串刺しなど)
  • 動物由来加工製品を特徴づけるために植物製品が添加されている場合
    (例:フルーツ入りヨーグルト、ハーブ入りチーズ、ニンニク入りソーセージなど)

なお、混合食品に該当するか不明な場合は、国境管理所に問い合わせることが可能です。各加盟国の国境管理所の連絡先は、欧州委員会のサイトに掲載されています。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 税制・関税同盟総局 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EEC) 2658/87(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EC) 852/2004(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EC) 853/2004(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
委任規則(EU) 2019/625(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
委任規則(EU) 2021/573(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
農林水産省 EUにおける新たな混合食品規制への対応について外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」
欧州委員会 国境管理所(BCP)の連絡先 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

EUの輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2021年4月

残留物質モニタリング計画
混合食品については、当該混合食品に含まれる各動物由来原材料が第三国リスト要件を満たす国・地域内に所在するEU向け輸出認定施設またはEU域内の施設に由来する場合にのみ、EU内に上市することができます。また、動物由来加工製品の原産国は、対象となる動物種に関して承認された残留物質モニタリング計画を有するとともに決定2011/163/EUに掲載されている必要があります。日本の各動物種の残留物質モニタリング計画の承認状況は以下のとおりです。
動物種 残留物質モニタリング計画の承認状況
ウシおよびウシ科動物(Bovine)
羊・山羊(Ovine/caprine) ×
豚(Porcine)
ウマ科動物(Equine) ×
鶏・家禽類(Poultry)
水産養殖物(Aqua-culture)
乳(Milk)
卵(Eggs)
ウサギ(Rabbit) ×
野生の狩猟獣(Wild game) ×
飼育の狩猟獣(Farmed game) ×
ハチミツ(Honey) ×
第三国リスト
2021年4月21日から適用される新たな第三国リストについては、実施規則(EU) 2021/404および実施規則(EU) 2021/405において定められています。日本は、生鮮の牛肉、生鮮の家禽肉、肉製品(牛、豚、鶏の加工品)、ケーシング、乳・乳製品、卵・卵製品、水産食品、ゼラチンおよびコラーゲンに関して、第三国リストに掲載されています。
混合食品のカテゴリー
実施規則(EU) 2019/625第12条により、混合食品は以下の3つのカテゴリーに分類されています。欧州委員会は「混合食品」の第三国リストも策定するとしていますが、調査時点では策定されていません。混合食品の第三国リストが策定されるまでの間の経過措置として、混合食品の生産国に求められる要件が定められています。
分類 混合食品の生産国要件
混合食品
カテゴリーA
:温度管理が必要
混合食品に含まれる各動物由来加工製品について、実施規則(EU) 2021/404または実施規則(EU) 2021/405に規定されていること。
混合食品
カテゴリーB
:温度管理が不要で肉製品※を含む。
混合食品に含まれる肉製品について、実施規則(EU) 2021/404または実施規則(EU) 2021/405に規定されていること。
混合食品
カテゴリーC
:温度管理が不要で肉製品※を含まない。
混合食品に含まれるか否かを問わず、肉製品、水産食品、乳製品(および初乳ベース)、卵製品のいずれかについて、実施規則(EU) 2021/404または実施規則(EU) 2021/405に規定されていること。

また、カテゴリーAまたはB混合食品は、当該混合食品に含まれる動物由来加工製品が、委任規則(EU) 2020/692に定められたEUへの入域に関する関連要件を満たしている必要があります。カテゴリーC混合食品に乳製品または卵製品が含まれる場合には、委任規則(EU) 2020/692 ANNEX XXVIIまたはANNEX XXVIIIのB欄に記載されているものと同等のリスク軽減措置を受けている必要があります。

なお、日本は、ハチミツについて残留物質モニタリング計画の承認を受けていないことから、日本産のハチミツを原材料に使用した混合食品をEUに輸出することはできません。

放射性物質規制
東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、EUは、日本から輸出される一部の食品・飼料について、日本の政府機関が発行する証明書を求める措置を講じています。 放射性物質検査証明書または産地証明書が必要な品目は以下のとおりです。

【政府作成の放射性物質検査証明書を要求】

  • 福島県:きのこ類、一部の水産物(活魚、甲殻類、軟体動物、海藻および一部の魚種(ブリ・ヒラマサ、カンパチ、マダイ、シマアジ、クロマグロ、マサバ)を除く。)柿、一部の山菜類(タラノキ属、タケノコおよびコシアブラ)
  • 山形県、山梨県、静岡県:きのこ類、コシアブラ
  • 茨城県、長野県、新潟県:コシアブラ
  • 群馬県:きのこ類、一部の山菜類(タラノキ属およびコシアブラ)
  • 宮城県:きのこ類、一部の山菜類(タラノキ属、タケノコ、ワラビおよびコシアブラ)
  • 47都道府県:上記の県ごとの放射性物質検査証明の対象品目の使用割合が50%を超える食品

【政府作成の産地証明書を要求】

  • 47都道府県:上記の品目のうち、上記の放射性物質検査証明の対象となる県以外で生産・加工されたもの、またはそれらの使用割合が50%を超える食品

2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)

調査時点:2021年4月

混合食品を日本からEU域内に輸入するためには、混合食品に含まれる動物由来加工製品がEU加盟国またはそれらの動物由来加工製品のEUへの入域を許可された第三国のいずれかに所在するEU向け輸出認定施設で加工されていなければなりません。日本国内で動物由来加工製品のEU向け輸出認定を取得するためには、「農林水産物及び食品の輸出証明書の発行等に関する手続規程」の別紙として食品の種類ごとに定められている取扱要綱に規定された手続きに従う必要があります。調査時点では、「ケーシング」、「食肉製品、乳製品、殻付き卵および卵製品」、「ゼラチンおよびコラーゲン」、「水産食品」の取扱要綱が定められています。これらは農林水産省の「欧州 | 証明書や施設認定の申請」のページでご覧いただけます。
混合食品の製造施設は、未加工の動物由来製品から混合食品を製造する場合を除き、EUの認定を受ける必要はありませんが、規則(EC) 852/2004(食品衛生に関する規則)に定められた衛生基準と同等な衛生基準を満たす必要があります。

EU向け輸出認定施設の一覧は、以下のリンクからご覧いただけます。

実施規則(EU) 2019/625第12条により、混合食品は以下の3つのカテゴリーに分類されています。カテゴリーごとにEUへの入域の際に必要な添付書類が定められており、公的証明書または自己宣誓書の添付が求められます。公的証明書は、混合食品に使用する動物由来加工製品の種類に応じて、農林水産省食料産業局又は動物検疫所が発行します。自己宣誓書は、輸入者が作成する書類ですが、混合食品製造事業者は、輸入者からの求めに応じ、当該混合食品に使用する動物由来加工製品の加工施設情報などを提供する必要があります。
混合食品の輸出要件および公的証明書の発行手続きについては、「欧州連合、スイス、リヒテンシュタイン及びノルウェー向け輸出混合食品の取扱要綱」をご覧下さい。

分類 添付書類 発行主体
混合食品
カテゴリーA
:温度管理が必要
公的証明書 ・農林水産省 動物検疫所 (肉製品、乳製品、卵製品を含む混合食品)
・農林水産省 食料産業局 (水産製品のみを含む混合食品)
混合食品
カテゴリーB
:温度管理が不要で肉製品※を含む。
公的証明書
混合食品
カテゴリーC
:温度管理が不要で肉製品※を含まない。
自己宣誓書 輸入者

新制度への移行を円滑にするため、実施規則(EU)2020/2235第35条において、混合食品の輸入について、旧規則に基づく証明書によりEUへの入域を認める6カ月間の移行期間を設定しています。これにより、2021年8月21日より前に署名された旧証明書は、2021年10月20日まで有効となります。ただし、2021年4月20日以前に証明書が必要なかった場合(食肉を含まず、動物由来加工製品が50%未満のもの)には、新規則に基づく公的証明書または自己宣誓書の添付が必要となります。

公的証明書(カテゴリーAおよびB混合食品に必要)の様式は、実施規則(EU) 2020/2235のANNEX III Chapter 50に、自己宣誓書(カテゴリーC混合食品に必要)の様式は、同規則のANNEX Vにそれぞれ規定されています。

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2021年4月

日本からカテゴリーA(温度管理が必要)およびB(温度管理が不要で肉製品を含む。)の混合食品のうち、動物性加工原料として、肉製品、乳製品、卵製品を使用しているものを輸出する場合は、農林水産省動物検疫所に動物検疫の申請を行い、公的証明書(輸出検疫証明書)の交付を受ける必要があります。
また、上記の動物性加工原料に加え、水産製品を含む場合は、あらかじめ、農林水産省食料産業局で混合食品確認書の発行を受け、これを添えて農林水産省動物検疫所へ輸出検査申請を行う必要があります。
詳細な手続きは、「欧州連合、スイス、リヒテンシュタイン及びノルウェー向け輸出混合食品の取扱要綱」をご覧ください。

関連リンク

関係省庁
農林水産省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省 動物検疫所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
委任規則(EU) 2019/625(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
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その他参考情報
農林水産省 欧州|証明書や認定施設の申請外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省 EUにおける新たな混合食品規制への対応について外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省 欧州連合、スイス、リヒテンシュタイン及びノルウェー向け輸出混合食品の取扱要綱PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)228KB
ジェトロ「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」

EUの食品関連の規制

1. 食品規格

調査時点:2021年4月

混合食品に関する食品規格はありませんが、EU域外から輸入される食品については、規則(EC) 178/2002に基づき、EUが求める衛生基準などとの同等性(輸出国と特定の合意がある場合はその合意事項)を満たす必要があるため、注意が必要です。

また、混合食品に該当するか不明な場合は、国境管理所に問い合わせることが可能です。各加盟国の国境管理所の連絡先は、欧州委員会のサイトに掲載されています。

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関係省庁
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根拠法等
規則(EC) 178/2002(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
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2. 残留農薬および動物用医薬品

調査時点:2021年4月

混合食品は、残留農薬および動物性薬品規制の対象となります。

EUでは、使用可能な農薬について、ポジティブリスト制を採用しており、規則(EC) 396/2005により食品の種類ごとに許容される残留農薬の上限値(Maximum Residue Limit:MRL)が規定されています。MRLは、当該食品1キログラムあたりに許容される農薬量(mg/kg)として示され、MRLが設定されていない農薬と食品の組み合わせに対しては、一律0.01mg/kgの下限値が適用されます。 すべての食品に対するMRLは、「EU農薬データベース」で検索可能です。データベースは科学的評価に基づき更新されるため、随時確認する必要があります。

また、動物用医薬品についても規則(EU) 37/2010により動物種ごとに上限値(MRL)が規定されています。EU加盟国は、認可された動物用医薬品の食品生産動物への違法使用や誤用を検出し、違反の理由を調査するための残留物質モニタリング計画を実施しています。EUに動物性食品を輸出する第三国も同等の食品安全性を保証する残留物質モニタリング計画の作成と欧州委員会による承認が必要となっています。日本の残留物質モニタリング計画の承認状況については、「輸入規制」の「1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)」に記載していますので、ご参照ください。

関連リンク

関係省庁
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欧州食品安全機関(EFSA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EC) 396/2005(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU) 37/2010(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
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その他参考情報
ジェトロ「EUにおける残留農薬に関する規制(2015年2月)」
EU農薬データベース(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 残留農薬について (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 動物用医薬品の残留について (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

3. 重金属および汚染物質

調査時点:2021年4月

EUでは、規則(EC) 1881/2006により、食品に含まれる汚染物質の上限値を食品カテゴリーごとに規定しています。ここでの「汚染物質」とは、意図的に食品に添加されたものではなく、食品の生産(作物管理、畜産、獣医療における作業を含む)、製造、加工、調理、処理、包装、梱包、輸送および保管などのプロセス、または生育環境に由来して、食品中に存在する物質をいいます。

具体的な基準値は、各品目のページや規則(EC) 1881/2006 ANNEXを参照してください。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州食品安全機関(EFSA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EC) 1881/2006(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EEC) 315/93(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
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その他参考情報
欧州委員会 汚染物質 について(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

4. 食品添加物

調査時点:2021年4月

EUでは、着色剤や保存料、酸化防止剤、その他乳化剤・安定剤などの食品添加物と、食品香料および食品酵素を区別し、これらを合わせて「食品改良剤(Food Improvement Agents)」)と総称しています。食品改良剤については、ポジティブリスト形式での規制が課されており、認可を得た食品添加物のみが使用を認められています。

食品改良剤 根拠法 定義
食品添加物 規則(EC) No 1333/2008 それ自体は通常は食品として消費されず、栄養価の有無を問わずに食品の典型的な原材料としては通常は使用されない物質で、食品の製造、加工、調理、処理、包装、輸送、保存の段階において技術的な効果(防腐、酸化防止、色の定着など)を意図的に追加することにより、その物質やその副産物が直接的・間接的に食品の構成要素となるか、なることが十分に予想される物質。
食品香料 規則(EC) No 1334/2008 それ自体は食品として消費されず、香りや風味を添えるか、もしくは変えるために食品に添加される製品。香料物質、香料調整品、熱処理香料、スモーク香料、香味料前駆体、その他香料およびこれらの複合物からなる。
食品酵素 規則(EC) No 1332/2008 植物、動物、微生物、または植物、動物、微生物に由来する製品から得られる製品で、微生物の発酵によって得られる製品も含む。

また、食品添加物ごとに「使用可能な食品カテゴリー」および「許容含有量(定められていない食品添加物もある)」が定められているため、当該食品添加物がEUに輸入しようとする商品が属する食品カテゴリーにおいて使用可能かどうかについても確認する必要があります。
食品添加物および食品香料のポジティブリストについては、欧州委員会のウェブサイトで検索が可能です。食品酵素のポジティブリストについては、調査時点ではまだ確立されていません。

また、規則(EU) 2019/649により、ビタミン・ミネラルなどの食品への添加に関する規則(EC) 1925/2006が改正され、2021年4月1日から、最終消費者向け食品のトランス脂肪酸は天然由来の動物性の脂肪酸を除き、脂質100gあたり2gを超えてはならないとされています。また、業務向けでこの数値を超える場合は、トランス脂肪酸の量に関する情報を提供する必要があります。 食品に添加できるビタミン剤およびミネラル成分に関しては、規則(EC) 1925/2006のANNEX IIに記載されています。

関連リンク

5. 食品包装(食品容器の品質または基準)

調査時点:2021年4月

EUでは、食品用の容器・包装をはじめ、調理器具や食品製造機械、食品輸送用のコンテナなど、食品と接触することが意図されている、または、通常の使用条件において食品と接触することが合理的に予見されるあらゆる素材・製品を「食品接触素材(FCM:Food Contact Material)」と呼んでいます。すべての食品接触素材は、規則(EC) 1935/2004により、健康被害を引き起こしてはならない、食品成分に許容できない変化を引き起こしてはならない、食品の味・香り・食感などを劣化させてはならない旨が定められています。 また、規則(EC) 2023/2006において、食品接触素材の製造工程における適正製造規範(Good Manufacturing Practice:GMP)がそれぞれ定められています。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州食品安全機関(EFSA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EC) 1935/2004外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
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その他参考情報
欧州委員会 食品接触素材について(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ「海外向け食品の包装制度調査(EU、TPP、米国、中国、韓国、台湾、インド、タイ、インドネシア、GCC、メルコスール)(2020年3月)」

6. ラベル表示

調査時点:2021年4月

EUにおける食品のラベル表示については、規則(EU) 1169/2011で規定されています。同規則は、最終消費者向けおよび調理施設(レストラン、食堂など)向けの輸入食品を含む食品全てに適用されます。アレルギー物質や栄養表示など、日本よりも義務表示の対象が広い項目もあるため、注意が必要です。

日本から混合食品を輸出する場合、同規則第9条に基づき、以下の項目を表示する義務があります。 詳細については、ジェトロ調査レポート「EU における食品ラベル表示に関する規制」や欧州委員会「ラベル表示に関するガイダンス文書」等もご参照ください。なお、消費者を惑わせる表示や医学的効能を宣伝する表示が禁止されているほか、オンライン販売などの手法により遠隔地から販売する事業者にも同様の規定が適用されます。

  • 食品の名称
  • 原材料リスト
  • アレルギー物質
  • 正味量
  • 賞味期限または消費期限
  • 特殊な保存条件や使用条件(あれば)
  • (食品情報について責任を負う)食品事業者の名称または商号、および所在地
  • 原産国または起源地(食肉または消費者に誤解を与えるおそれがある場合)
  • 使用方法の指示(記載がなければ適切な使用が困難な場合)
  • アルコール度数(アルコール度数が1.2%を超える飲料の場合)
  • 栄養表示

食品ラベルに使用される言語は、EUの公用語であれば複数の記載も可能ですが、当該製品を販売する国の公用語を必ず使用する必要があります。

ラベル表示に使用する文字の大きさについても、同規則において次のとおり指定されています。

  • 包装面の最大面積が80cm2以上の場合、「x」の文字の高さ(図中の6)は1.2mm以上
  • 包装面の最大面積が80cm2未満の場合、「x」の文字の高さは0.9mm以上

7. その他

調査時点:2021年4月

なし

EUでの輸入手続き

1. 輸入許可、輸入ライセンス、商品の事前登録等(登録に必要な書類)

調査時点:2021年4月

日本からEU域内に混合食品を輸入するにあたって、輸入許可、輸入ライセンス等や商品登録等は必要ありません。
混合食品に該当するか不明な場合は、国境管理所に問い合わせることが可能です。各加盟国の国境管理所の連絡先は、欧州委員会のサイトに掲載されています。

2. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)

調査時点:2021年4月

日本からEU域内に混合食品を輸入するにあたっては、以下の書類が必要になります。

  1. 通関申告書(単一管理文書 (SAD : Single Administrative Document)) EU域外の第三国とのすべての輸出入手続きに必要な共通申請書。様式は委員会実施規則(EU) 2016/341 Appendix B1に記載されています。
  2. インボイス(商業送り状)
  3. パッキングリスト(包装明細書: P/L)
  4. 価格申告書(Customs Value Declaration)
  5. 船荷証券(Bill of Lading: B/L)/航空運送状(Air Waybill: AWB)
  6. 共通衛生入域文書(CHED-P)
  7. 公的証明書/自己宣誓書
    公的証明書(カテゴリーAおよびB混合食品に必要)の様式は、実施規則(EU) 2020/2235のANNEX III Chapter 50に、自己宣誓書(カテゴリーC混合食品に必要)の様式は、同規則のANNEX Vにそれぞれ規定されています。

なお、委任規則規則(EU) 2021/630により国境での管理が免除されている混合食品については、製品の上市時に製品に自己宣誓書を添付すればよいとされています。

また、新制度への移行を円滑にするため、実施規則(EU)2020/2235第35条において、混合食品の輸入について、旧規則に基づく証明書によりEUへの入域を認める6カ月間の移行期間を設定しています。これにより、2021年8月21日より前に署名された旧証明書は、2021年10月20日まで有効となります。ただし、2021年4月20日以前に証明書が必要なかった場合(食肉を含まず、動物由来加工製品が50%未満のもの)には、新規則に基づく公的証明書または自己宣誓書の添付が必要となります。

また、日EU経済連携協定(以下「日EU・EPA」という。)に基づく特恵税率の適用を受けるためには、当該輸出品の原産地が日本である旨を証明する原産地証明が必要となりますが、日EU・EPAでは、自己申告による原産地証明制度が採用されており、輸出者、輸入者または通関業者のいずれかが、自ら原産地を証明することになります。書式に関しては税関のポータルサイト「原産地規則ポータル」で確認することができます。

関連リンク

関係省庁
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根拠法等
委任規則(EU) 2016/341(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
実施規則(EU) 2019/1715(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
実施規則(EU) 2020/2235(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
委任規則(EU) 2021/630(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
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その他参考情報
ジェトロ「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」

3. 輸入時の検査・検疫

調査時点:2021年4月

混合食品については、規則(EU) 2017/625に基づき、EUへの入域時に国境管理所(Border Control Posts:BCP)における公的管理(いわゆる輸入検疫)の対象となります。BCPにおける公的管理の対象となる製品の具体的なCNコードは、実施規則(EU) 2021/632のANEXXに規定されています。ただし、委任規則(EU) 2021/630において、以下のリストに挙げられているCNコードに該当するカテゴリーC混合食品のうち次の要件を満たすものは、国境管理所での公的管理の対象からは除外されます。

  1. 原料の卵製品及び乳製品について、EU規則に基づく加熱処理※がされていること
  2. ヒトの食用であることが明記されていること
  3. しっかりと密封されていること

※ 委任規則(EU) 2020/692において、乳製品については付属書27のB欄、卵製品については付属書28に定められた加熱処理。

表のタイトル
CNコード 品目(仮訳)
1704, 1806 20, 1806 31 00, 1806 32, 1806 90 11, 1806 90 19, 1806 90 31, 1806 90 39, 1806 90 50, 1806 90 90の一部 菓子類、チョコレート及びココアを含む調整品の一部
1902 19, 1902 30, 1902 40の一部 パスタ、麺類、クスクスの一部
1905 10, 1905 20, 1905 31, 1905 32, 1905 40, 1905 90の一部 パン、ケーキ、ビスケット、ワッフル、ウエハース、ラスク、トーストしたパン及びトーストした製品の一部
001 90 65, 2005 70 00, 1604の一部 魚を詰めたオリーブの一部。
2101 コーヒー、コーヒー代用品、茶又はマテ抽出物、香料・濃縮物及びこれらをもとにした調整品、コーヒー・茶・マテをもとにした調整品
2104の一部 だし汁及び風味料の一部。
2106 の一部 動物性加工原料を含む栄養補助食品(グルコサミン、コンドロイチン及びキトサンを含む。)の一部
2208 70 の一部 酒類の一部

国境管理所に到着するすべての輸入検疫対象貨物に対し、書類検査が実施され、リスクに応じて同一性検査(添付書類と貨物の同一性の確認)と現物検査(検査施設でのサンプル検査等)が実施されます。同一性検査と現物検査の実施率は、実施規則(EU) 2019/2129で定められており、混合食品の場合は、同一性検査100%、現物検査15%となっています。

4. 販売許可手続き

調査時点:2021年4月

EU域内での混合食品の販売にあたっては、許可などは必要ありません。

5. その他

調査時点:2021年4月

なし

EU内の輸入関税等

1. 関税

調査時点:2021年4月

EUは域外共通関税制度の下で、域外からの輸入品の関税率は域内各国で一律となっています。

関税および統計的分類表ならびに共通関税率に関する規則(EEC) 2658/87では、共通関税を設定するために合同関税品目分類表(CN)とよばれる物品の分類表を設定しており、これはHSコードに相当します。そのため、当該合同関税品目分類表のCNコードの中から該当する品目の関税率を特定する必要があります。
関税率は、欧州委員会通商総局が提供する「Access2Markets」や税制・関税同盟総局が提供する「TARIC Consultation」などで検索できます。

なお、2019年2月に発効した日EU経済連携協定(EPA)(以下「日EU・EPA」という。)を利用した場合、ほとんどの品目の関税は削減・撤廃されます。日EU・EPAの適用を受けるには、当該輸出品の原産地が日本である旨を証明する原産地証明が必要となります。日EU・EPAでは、自己申告による原産地証明制度が採用されており、輸出者、輸入者または通関業者のいずれかが、自ら原産地を証明することになります。原産地証明に関する詳細は、税関のウェブサイトで確認できます。また、商品に非日本産原料が含まれており、原産地の判断が困難な場合は、事前教示の制度により、税関当局に照会することができます。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 通商総局 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 税制・関税同盟総局(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EEC) 2658/87(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
決定(EU) 2018/1907 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
欧州委員会Access2Markets (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会TARIC Consultation (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
外務省 日EU経済連携協定(EPA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
税関 原産地規則ポータル外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 関税事前教示(拘束的関税情報)BTI:Binding Tariff Information (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ「日EU・EPA解説書:日EU・EPAの特恵関税の活用について(2020年3月改訂)」PDFファイル6.4MB

2. その他の税

調査時点:2021年4月

EUへの輸入には、輸入関税に加え、各加盟国が独自に定める付加価値税(VAT)や物品税が課されます。これらの税率は国によって異なるため、最終消費国ごとに確認する必要があります。なお、VATに関する共通システムに関しては、指令2006/112において規定されています。

各加盟国のVATや物品税は、欧州委員会通商総局が提供する「Access2Markets」で検索できます。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 税制・関税同盟総局(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
指令2006/112/EC(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
欧州委員会Access2Markets (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ VAT登録の要否:EUへ輸出する場合

3. その他

調査時点:2021年4月

なし

その他

調査時点:2021年4月

1. 有機食品に関する規制

EUでは、規則(EC) 834/2007、規則(EC) 889/2008および規則(EC) 1235/2008により、有機食品を第三国から輸入、販売するための要件およびそのラベル表示について規定されています。また、急速に成長する有機市場に対応するため、2017年11月に規則(EC) 834/2007を改正する新規則(EU) 2018/848が採択され、2022年1月1日から適用されます。

規則(EC) 1235/2008により、日本の有機JAS制度は、EUの有機管理制度との同等性を有するとみなされており、EU域内で「有機」として販売が可能な国のリスト(第三国リスト)に掲載されているため、同リストに掲載された有機JAS登録認定機関が発行する証明書を添付することにより、有機食品としてEU加盟諸国に輸出することが可能です。輸出時には当該証明書を、有機JAS食品に添付しなければなりません。なお、当該証明書は、2017年10月19日からTRACESシステムを用いて電子的に提出することが義務付けられており、証明書を発行する登録認定機関がTRACESに登録されている必要があります。

また、食品に「organic」などの語句を表示してEU域内で販売する際には、有機JAS登録認定機関の認証機関コード番号もラベル表示(事前包装されていない場合は当該商品に言及したボードなど)に記載しなければなりません。任意でEUの有機ロゴ(ユーロリーフ)の使用もできますが、日本から輸入した有機JAS認定食品の場合は「non-EU Agriculture」の表示もあわせて記載する必要があります。生産国が日本のみの場合は、「non-EU」を国名(Japan)で代替・補足することも可能です。

EUの有機ロゴ(ユーロリーフ)

図:EUの有機ロゴ(ユーロリーフ)

日本の有機JAS制度においては一部農薬(無機銅など)の使用が認められており、かつ残留農薬基準が日本よりEUのほうが低く設定されている場合があることから、有機JAS農産物であってもEUの残留農薬基準を満たさない可能性があることについて留意が必要です。

規則(EC) 834/2007および規則(EC) 889/2008に基づき、EU域内に有機食品を輸入・流通させるにあたっては、EU側の輸入者・販売者にも当局への登録、査察の受け入れ、証明書の保持などが義務付けられています。このため、輸出に際してはEU域内の相手方事業者がこれらの要件を満たす事業者であるかどうかについて確認を行うことも必要です。

調査時点:2021年4月

2. 遺伝子組換え作物に対する規制

EUでは、規則(EC) 1829/2003により、認可を受けた遺伝子組換え作物のみ(大豆、とうもろこし、綿実、菜種、テンサイ)がEU域内での流通・販売を認められており、遺伝子組換え作物を含む食品を流通させる場合には遺伝子組換え作物を使用している旨の表示が義務付けられています。 認可を受けた遺伝子組換え体のリストは、欧州委員会ウェブサイトで検索が可能です。

混合食品の原材料に日本で遺伝子組換え作物の流通・使用が認められている原材料(大豆など)を使用している場合には、次のEUと日本の規制の違いについて留意する必要があります。

  • 日本では、遺伝子組換え作物のDNAおよびタンパク質が加工工程で除去される食品(しょうゆや植物油など)については、(たとえ遺伝子組換え作物を原料としていても)遺伝子組換えの表示義務がありませんが、EUでは、最終食品におけるタンパク質・DNAの存在の有無にかかわらず、原材料に遺伝子組換え作物を使用した場合には、その旨の表示義務(原材料名の後ろに‘genetically modified’と記載、または、‘produced from genetically modified ○○(原材料名)’と記載)があります。
  • 日本では、遺伝子組換え作物が食品などの主な原材料(原材料の上位3位以内で、かつ全重量の5%以上を占める場合)ではない場合には、遺伝子組換えについての表示義務がありませんが、EUでは、食品添加物を含む加工食品のすべての原材料について、遺伝子組換え作物を原材料に使用している場合は、表示義務があります(例えば遺伝子組換え由来の大豆レシチンやコーンスターチなど)。
  • 日本では、遺伝子組換えではない原材料について、許容される遺伝子組換え体の「意図せざる混入」の割合は5%未満とされていますが、EUでは、同割合は0.9%未満とされています。0.9%以上となる場合は、遺伝子組換え作物使用の表示が必要です。
  • 日本では、表示可能面積が30 cm2以下の加工食品については、遺伝子組換え表示義務の対象外となっていますが、EUでは、最大包装面積が10 cm2以上の食品には、遺伝子組換え表示の義務があります。また、最大包装面積が10 cm2未満の包装食品や非包装食品についても、遺伝子組換え作物を原材料に使用している場合には、食品陳列棚の近傍に常に見えるかたちで表示する義務があります。
  • 日本では『遺伝子組換え不分別』の概念がありますが、EU規制には当該概念がありません。遺伝子組換え作物を使用もしくは遺伝子組換え作物を飼料の原料としている場合は表示が必要です。
  • 食品成分として使用した遺伝子組換え微生物(酵母エキスなど)にも遺伝子組換え作物使用の記載義務があります。

「遺伝子組換えでない(GM(O)-Free, Non-GM(O)s)」などの表示については、EUの共通規制はありません。従って、EU規制上は、遺伝子組換え作物の混入が偶発的な意図せざるものであり、混入割合が当該原材料の0.9%未満であれば、「GM-Free」などの表示を任意で行うことが可能です。
ただし、加盟国によっては、GM(O)-Free表示に関して独自の規制を課していることがあるため、注意が必要です。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州食品安全機関(EFSA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EC) 1829/2003(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EC) 1830/2003(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
欧州委員会 遺伝子組換え作物について(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 遺伝子組換え作物に関する検索サイト(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ「遺伝子組換え食品規制調査 -EU-」(2016年3月)
EUにおけるGM-Free食品表示の現状と共通規則の必要性に関する調査(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)4MB

調査時点:2021年4月

3. 新規食品に関する規制

EUでは、規則(EU) 2015/2283により、1997年5月15日以前にEU内で人間によって相当量(siginificant degree)を消費されていなかった(つまり、ほとんどあるいは全く消費されていなかった)食品または食品原料を「新規食品(Novel Food)」と定義し、認可を受けた新規食品のみEU域内で販売または食品に使用することができます。

新規食品には、植物からの新たな抽出物(例:菜種タンパク質)、第三国からの農産物(例:チアシード)、新たな生産工程を用いて製造された食品(例:紫外線処理されたパンや牛乳)、新たな栄養素源(例:藻類から抽出されるドコサヘキサエン酸が豊富なオイル)といった幅広い食品が含まれます。第三国由来の伝統食品についても上記の定義に該当するものについては、規制の対象となるため注意が必要です。

認可された新規食品のリストは、実施規則(EU) 2017/2470のANNEXに規定されています。 また、欧州委員会の「新規食品カタログ」でも新規食品に該当するかを調べることができます。

販売しようとする食品が新規食品に該当するかどうかの判断がつかない場合は、最初に販売しようとする加盟国の当局に対して、当該食品が新規食品に該当するか否かを照会することができます。各加盟国の所轄当局のリストは、欧州委員会のウェブサイトで確認することができます。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 保健衛生・食の安全総局 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州食品安全機関(EFSA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EU) 2015/2283(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
実施規則(EU) 2017/2470(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
欧州委員会 新規食品(Novel food)について(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 Novel food catalogue(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会「各加盟国の新規食品の照会に関する所轄当局リスト」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ「EUにおける新規食品(Novel Food)規制」(2018年12月)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます