輸出入手続

最終更新日:2023年07月06日

輸出入許可申請

ブラジルの輸出入手続きは、経済省貿易局2011年7月14日付省令第23号に管理規定が定められている。2023年6月までに354回近く改正、追加、廃止等があり、その内容は複雑、難解。そのため、最近の改正は、規則を簡素化する内容となっている。
通関の規定は、輸入がブラジル国税特別局2006年付細則省令第680号、輸出が同細則1994年4月27日付第28号に基づき、いずれも10回以上改正されている。輸出通関の簡素化を目的として、2017年3月21日から「単一輸出申告制度(DUE)」、2021年7月からは「単一輸入申告制度(DUIMP)」が導入されている。

  1. 輸出入手続きの管理規定
    経済省貿易局2011年7月14日付省令第23号に規定される。全266条、附属書30点から成るものの、最近の改正では主に規則の簡素化に伴い、いくつかの条項や附属書は廃止され、別省令にて個別に規定するようになっている。
  2. 通関規定
    輸入:ブラジル国税特別局2006年10月2日付細則第680号に規定。2023年6月までに、26回の改正が行われている。
    輸出:同1994年4月27日付省令第28号に規定。2023年6月までに、14回の改正が行われている。
  3. 輸出通関の簡素化を目的とした「単一輸入申告制度(DUIMP)」「単一輸出申告制度(DUE)」
    DUIMP・DUEともに、商品の登録は国内に持ち込まれる前、国外に持ち出される前から行われ、それに並行して輸入ライセンスの取得が行われるようになるほか、様々な種類の輸入業務に対して単一のライセンスとして機能するようになるため、業務の簡素化が期待されている。DUEは2017年3月21日からテストケースとして、サンパウロ州グアルリョス国際空港およびヴィラコッポス国際空港の税関倉庫で開始。段階的に導入が進められてきた。2018年7月31日までに、従来の輸出登録書(Registro de Exportação:RE)および簡易輸出申告(Declaração Simplificada de Exportação:DES)による申請に代わり、本格運用に入っている。
    一方のDUIMPは、2018年10月よりパイロット導入が進められていた。当初はパイロット導入として非OEA認定事業者のみを対象としてDUIMPが運用されていたが、それ以外の企業についても2021年7月22日より利用可能となった。

輸入手続きとその手順、輸入通関書類

船積前の輸入手続き

海上貨物と航空貨物で多少の差があるが、通常の輸入手続きとその順序は次のとおり。

  1. 輸出入業者登録制度に相当する通関業者活動追跡登録であるRADAR(「貿易管理制度:輸入管理その他」参照)が稼動状態にあるかを確認する。
  2. 輸入する物品のプロフォルマインボイスを基に、メルコスール共通関税番号(NCMコード)を確定する。
    ※通関トラブルは、NCMコードに関するものが多いため、留意が必要。
  3. NCMコードを決定した後、貿易統合システム「SISCOMEX」の「Tratamento Administrativo」(輸入規制管理)により、輸入品が事前の輸入ライセンス(Licenciamento de Importação:LI)を要するか確認。必要とするライセンスの種類により、関連する機関が公表する規則に則り、ライセンス申請を行う。なお、ライセンスを認可する機関の規定により、「船積前に取得すべきもの」と、「船積時点では必要ないものの、通関前までに取得すべきもの」とがある。
    輸入ライセンスが不要と判明した場合、輸入者は、対象貨物のブラジルの港湾または空港に到着後に、輸入申告書(Decalaração de Importação:DI)を登録する。

    ブラジル向けに輸入貨物を発送する場合の留意点として、輸入者がB/Lを発行する船会社(あるいはその代理店)に対し、NCMコード4ケタあるいは8ケタをB/Lに記載するよう依頼する義務がある。
    B/Lに記載されるNCMコードは、輸入者が通関申請時に「輸入申告書」に記入する関税番号と連動しているため、B/L記載の番号に不備(番号の間違い、不足、追加等)が指摘されると、B/L訂正(Emenda)の手配が必要となり、B/Lは再発行となる。

    この手続きには時間とコストがかかる上、仮に、船会社による輸入貨物一覧リスト(マニフェスト)登録に間に合わないと、罰金(500~5,000レアル)の対象になる。この意味で、NCMコードの最終決定は、輸入者が責任を持って行わなければならない。
    ただし、実際には、輸入者や輸出者自身が、出荷されるすべての商品の正確なNCMコードを把握していないケースや、NCMコードの決定に迷うケースもある。輸入者は、より詳細な商品情報を輸出者に要求し、その情報に沿って、指定通関業者の通関士にNCMコードの選定を依頼し、輸入者が最終決定することになる。

  4. 輸入保険の手配

    2011年にインコタームズ2010を容認して以来、ブラジルでの輸入には、CIFあるいは CIP条件取引の場合、原則、外国の保険会社と契約する。2008年のブラジル民間保険審議会(CNSP)決議第197号の規定による制約を基に、民間保険監督庁(SUSEP)は2022年12月に回章(Circular)第683号を公布し、SUSEPが被保険者に対し、国内の保険会社最低5社の見積依頼内容や正当な理由により付保が拒否された文書の写しの提出を求めることが認められ、保険引き受けがない場合に限って、国外の保険会社による付保を可能としており、国内保険会社に有利になるよう配慮した形になっている。

    一方、輸入取引では船積前に保険契約をするのが一般的であるが、ブラジルの場合は小額・少量の輸入(FOB金額が1万ドル程度まで、あるいは100kg前後)の場合、無保険で輸入通関しているケースが大部分である。理由は、通常の保険料率は(CIF価格+10~50%)x 0.5%だが、実際には、多くの保険会社が最低100ドルの保険料金を要求していることや、免責条項(保険者の負担%:フランキーア)で、最低義務金額が割高であること、ブラジル港や空港の到着時点で貨物に損傷が認められた場合、特に緊急を要する場合は求償手続きに時間と手間が掛かることがその理由である。
    例えば、CIF価格5,000ドル相当の商品の場合、通常料率を適用すれば25ドルだが、実際には最低料金100ドルのほか、免責額が、商品の種類により輸入貨物金額の2~5%(梱包形態や生鮮貨物は4~5%)に設定されているため、少量の損傷や紛失の場合は割高になる。

  5. 輸出者に対して、船積手配を依頼(規制がない場合)。
  6. 輸入規制管理(Tratamento Administravo)の対象品目リストで規制の有無を確かめた結果、輸入ライセンス(Licença de Importação:LI)の中でも、非自動輸入ライセンスの取得が必要な製品に該当する場合は、輸入規制管理で指示された必要書類を準備し、指定された関連機関へライセンスの申請・認可を依頼する(「貿易管理制度:管轄官庁」参照)。LIを認可する機関は、輸入者から申請されたLIの内容を審査し、SISCOMEXを通じて許可・不許可を通知する。

    現行の非自動輸入ライセンスは、次の3種類。製品により、いずれかに該当する。

    1. 船積前に、指定された関連機関の「船積許可書」の申請が必要なもの
      船積前に手配するLIのうち、輸入管理規制の対象品目を管轄する機関によっては、「船積許可書」を取得しないと船積みできない商品もある。この場合は、SISCOMEXを通じた該当機関へのLI申請登録と同時に、「船積許可書」の申請を行う。
      登録したLIは、入国時に該当機関の検査官による現物検査後に認可、発給される。国家衛生監督庁(ANVISA)や農務省の許可を必要とする製品のうち、一部の商品がこれに該当する。
      許可申請なしに船積みした場合で、担当機関の許可が必要とされる場合は、返却するか、押収対象とみなされる。事後の「船積許可証」の申請は不可。
    2. 船積前にLIを必要とするが、「船積許可書」を必要としないもの
      事前のLIを取得せずに出発、出港し、ブラジルの港湾あるいは空港に到着した場合、事後処理でLIの登録申請はできるが、発給された場合でも、罰金の対象となる。ただし、到着後90日間で取得できなかった場合は、輸入通関申請が不可能のため、放棄商品とみなされ、押収される。
    3. 船積後にLIを登録し、通関前に許可を得るもの
      食品、医療品、化学品の中には、船積後にLIの申請ができる商品もある。その場合、到着した製品が現物検査を通過した後にLIが認可される。ドローバック制度の輸入は、このケースに該当する。
      国家度量衡・品質・科学技術院(INMETRO)のLIを必要とする輸入は、2019年5月27日付省令(Portaria)第260号により、連邦官報記載日である同年5月29日以降の輸入に必要なLIは、船積みされた後に発給することができる。ただし、輸入申告書(DI)の提出前までに、LIを取得しなければならない。
    新WEB輸入ライセンス「単一輸入申告」(DUIMP)

    国税特別局は貿易業務のワンストップ化を目指しており、輸出で「単一輸出申告(DUE)」制度が導入されたのと同様に、輸入でも「単一輸入申告(Declaração Única de Importação:DUIMP)」の導入を開始した。これは従来の簡易輸入申告書(DSI)、輸入申告書(DI)を置き換えるもので、2018年10月にSISCOMEX単一ポータルにパイロット版が導入され、2021年7月に本格運用が始まった。
    ただし、従来のDI・DSIを置き換えるための本格導入スケジュールは未定。
    また、非自動輸入ライセンスの取得が必要な輸入については、事前許可を必要とするDUEによる輸出手続きと同様に、「ライセンス・許可・認証・その他書類(LPCO)」モジュールが今後運用開始される予定。現在、非自動輸入ライセンスの取得を必要とする輸入についてはそれぞれの認可機関に申請を行う必要があるが、LPCOの運用開始により、SISCOMEXポータル内のLPCOモジュールから認可機関への申請が行えるようになる見込み。

  7. 輸入ライセンスの準備が整い次第、輸出者に対し船積書類の作成を依頼し、船積許可となる。
    ※船積書類作成上の注意点
    1. 船荷証券(B/L)の発給
      船会社が発給するB/Lは、他国向けの輸出B/Lと異なり、ブラジル向け輸出では[1]輸入者の法人登録番号(CNPJ)と、[2]輸出商品のHSコードあるいはメルコスール共通関税番号(4ケタないし8ケタのNCMコード)の2点の記載が必要。
      積み込まれる商品のすべてに、HSコードあるいはNCMコードが必要とされ、補給部品など多岐にわたる場合は、十分留意が必要。
      後述の「SISCARGA」登録時点で、ブラジルの船会社(あるいはその代理店)がB/Lに最初の4ケタを誤って記載した輸入貨物一覧リスト(マニフェスト)を作成し、税関に提出した場合、罰金が科せられる。
    2. インボイスの作成
      輸出者のオリジナルのレターヘッドを使用し、下欄には必ず会社の責任者ないし担当者の名前を記載および署名し、その役職を記載する。輸入商品のメーカー名と所在地を明記すること(商品を購入する商社名と所在地ではないので、注意を要する)。
    3. パッキングリストの作成
      レターヘッドに、梱包別の梱包荷姿、数量、商品名、NW、GW、容積(梱包サイズ)などを記載するのが通常である。

船積後の輸入通関手続き

輸入通関手続きに必要な書類は、B/Lの原本またはオリジナルの航空運送状(Air Waybill:AWB)、署名付きオリジナルのインボイス、パッキングリストを、輸入申告書(DI)とともに、税関に提出する(税関2セット、通関士1セット)。
輸入商品によっては、このほか、原産地証明書、領事査証、検疫証明書、燻蒸証明書、品質証明書、分析表などの提出が要求される場合もある。

海上貨物の場合
  1. 船積書類のオリジナルを輸出者、メーカー、あるいは銀行経由で受け取った後、契約している通関業務代理会社(Comissária de Despachos、あるいは個人の場合Despachante Aduaneiro)などに渡して、通関手続きを依頼する。
    通関代理業者は、受け取った書類の内容を、輸出入管理規則(2011年付SECEX省令第23号)および、ブラジル通関管理規定(2006年付国税庁細則第680号)と照合し、問題がないかを確認する。輸入申告書(DI)などの作成と課税金額・港湾費用などの概算を準備する。
  2. SISCARGA(シスカルガ)システムにデータ入力

    船会社(またはその代理店)がSISCARGA(SISCOMEX Cargaの略)システムに入力。SISCARGAは海上貨物・コンテナ等の荷卸し、税関倉庫への搬入管理、AFRMM(商船隊更新追加税)の徴収等を管理するシステム。
    SISCARGAは、船会社(またはその代理店)が船積書類を基に記載するもので、不備項目等があると、通関で予想外の時間を要し、誤記載した船会社に対し罰金が科せられる。船会社は、その罰金を、船積書類を提出した輸出または輸入者に転嫁する。

    船会社(またはその代理店)は、輸入貨物の本船がブラジルの最初の港に入港する48時間前までに、輸入貨物に関するデータを、SISCOMEXを通して輸入貨物一覧リスト(マニフェスト)を入力する義務があり、これらのデータに誤りがある場合は、修正手続きの必要がある。
    船会社(またはその代理店)が、B/Lの番号をSISCARGAに入力すると、本船の入港予定がどの港に何時か、対象貨物・コンテナが何時どの船から荷卸しされ、どの桟橋の税関倉庫に納庫されたか、マニフェストに船積データが記録されたかなど、当該貨物の状況を確認できる。

    輸出入者は、SISCARGAの規定通りの船積書類一式を税関に提示しないと、通関に時間と手間を要する。入手した船積書類に不備がある場合、本船が指定港に入港する少なくとも48時間前までに、修正、差し替え、追加した、正規の書類を提出する必要がある。
    輸入者は輸出者に対し、ブラジル税関が要求する正規かつ厳密な書類作成を依頼する必要がある。誤りの主要事例は、NCMコード、輸入業者の連邦税納税者番号(CNPJ)、重量(ネットおよびグロスウェイト)の誤り、輸入商品のメーカー名や所在地が不明等の項目。

  3. 輸入申告書(Decalaração de Importação:DI)の登録

    輸入商品が本船から荷卸しされ、港の税関倉庫に納庫されたことが確認されると、税関倉庫会社はSISCOMEXを通して、17ケタの「納庫証明番号」(Presença de Carga)を出す。同番号が出るまでは、輸入者は通関申請できない。
    DIの登録に必要な、船積書類(B/L、LI、インボイス、パッキングリストなど)を基に、輸入取引に関するすべてのデータ(輸出者、輸入者、対象商品のNCMコード、インコタームズ、支払条件、価格、貨幣の種類、数量、重量(ネットおよびグロスウェイト)などを入力すると、輸入税、IPI、PIS、COFINS、その他支払うべき連邦税が自動的に計算、記録される。すべてのデータ入力後に、DI番号が付される。DI番号は10ケタ(例:11/1234567-0:最初の2ケタが年度を表す)で構成される。

  4. 輸入簡易申告書(Decalaração Simplificada de Importação:DSI)の登録

    輸入簡易申告書(DSI)は以下の輸入に使用できる〔ブラジル国税特別局2006年1月18日付細則第611号〕。

    1. 個人の輸入で、商品金額3,000ドル未満のもの
    2. 法人の輸入で、商品金額3,000ドル未満のもの
    3. 外国の政府・機関からの連邦、州、市政府機関、公社、慈善団体等への贈与の名目で受け取る物品の輸入
    4. テンポラリー輸入制度および再輸入〔同2015年12月14日付細則第1601号〕
    5. 委託輸出制度により、輸出された物品が正式輸出されずに、返却された物品の輸入
    6. 輸出商品の技術欠陥の修理あるいは交換のために、返却される物品
    7. 輸出商品が、輸入相手国の輸入関連法規の変更により入国できず、返却される場合
    8. 戦争・災害のために返却される物品
    9. 3,000ドル未満の国際郵便物
    10. 3,000ドル未満の国際空港便(クーリエ便取扱業者)による「注文品」
    11. 輸入税(関税)の免税あるいは非課税が確認された物品の輸入
    12. 旅行社の別送貨物の輸入
    13. マナウス自由港地域(ZFM)で使用されるための1967年付政令第288号に基づく恩典付きの輸入品が、ブラジル国内の他地域へ入域する場合で、その金額が3,000ドルを超えない物品
    14. 1967年付政令第288号の恩典に基づきZFMで製造される物品が、ブラジル国内の他地域へ入域する場合で、その金額が3,000ドルを超えない物品
    15. 1967年付政令第288号の恩典に基づきZFMの恩典区域内で使用されるか、あるいは工業化のために輸入された物品で、商業目的を伴わずに、個人がブラジル国内の他地域へ持ち込む場合
    16. 科学技術開発審議会(CNPq)が輸入する、あるいは同審議会が認可した科学者、研究者、科学機関による1万ドル未満の免税輸入で、数量あるいは頻度が商業目的とみなされないもの
  5. 輸入税(関税)など、課税される連邦税および州税

    輸入に課税される関税(輸入税)、工業製品税(IPI)、社会統合計画基金(PIS)、社会保険融資負担金(COFINS)の支払いは、指定した輸入者の銀行口座から自動引き落としされる。
    これら連邦税の支払いと同時に、SISCOMEX使用料として、1回の通関申告で1つの関税番号の場合115.67レアルかかる。なお、1つの申告書で2つの関税品目がある場合38.56レアルが追加され、追加3~5品目では30.85レアル、追加6~10品目では23.14レアルと、使用料が加算される。
    州税の商品流通サービス税(ICMS)は、別途州財務局によりバーコードが付いた払込票が発給され、銀行で直接、もしくはオンラインで支払う。

航空貨物の場合

輸入品が国際空港に到着し、税関保税倉庫(空港公社INFRAERO社が管理)に納庫されると、MANTRA(マントラ:航空貨物のマニフェスト管理システムで、海運貨物のSISCARGAに相当する航空貨物の納庫管理システム)によって、当該貨物の入荷状況を知ることができる。
航空機から荷卸しされた後、連邦警察・税関立会いの後、空港保税倉庫に納庫される。
通関業者がMANTRAに航空貨物受取書(AWB)番号を入力すると、税関倉庫への納庫を確認でき、通関申請もできる。
入手した船積書類の不備や、AWB記載の重量(グロスウェイト)と実際の検量重量に差(通常10%以上)があった場合、または当該貨物に何らかの損傷が認められた場合は、MANTRAの画面上にそれらの問題が表示される。
書類上の修正や貨物の損傷があった場合、通関に10~30日を要することもある。こうした問題が発生すると、高額な空港倉庫料や、保険会社による貨物検査などにより、想定外の時間と費用が発生することになる。

国際宅配便(クーリエ便)による航空便の輸入通関手続き

FedEx(米)、DHL(独)、UPS(米)、TNT(蘭)などのクーリエ便で、ブラジルの国際飛行場に到着する小口輸入貨物は、税関検査で3,000ドル未満の規定に該当する場合は、簡易課税制度(Regime de Tributacao Simplificada)が適用され、単一税としてCIF金額に対して一律60%が課税される。クーリエはこの単一税を立替え払いして貨物を引き取り、荷主に届けるのが普通である。

しかし、税関検査で対象貨物の金額、容積、数量、種類、内容、用途などが規定に該当しないと判断されると、簡易課税制度が適用されず、通常の輸入申告書(DI)が求められる。
このような場合、クーリエのAWBに「DI申告」の印(Carimbo)が押され、輸入者は自社が使っている通関業者に輸入通関を依頼せざるを得ないため、余計に時間と費用が掛かるケースが多々ある。

また、インボイス価格が3,000ドル未満であっても、税関の査定価格、あるいは用途や数量によっては、通常の輸入手続きとなる。この場合、輸入業者登録(RADAR)が必要となり、万一RADARのない会社や個人の場合、通関は事実上困難となる。

このほか、簡易課税制度が適用される「簡単輸入(Importa-Facil)」による輸入通関がある。これは対象貨物が、(販売目的でない)個人使用の場合の極めて小口のもので、国営郵便局のウェブサイトを通して、税金その他通関費を支払うシステムである。ただし、対象となる物品は、税関の判断による。

通関に必要な各種予備知識

  1. 船積書類(海上貨物、航空貨物共通):必要書類は次のとおり。
    1. 通関業者がSISCOMEXを通して作成する輸入申告書(DI)のコピー(税関への提出は2部、通常5部)。
    2. B/L(船荷証券)、航空貨物受取書(AWB)原本*。
      *Sea&Air便は最終便が航空貨物となるため、オリジナルのAWBを提出しなければならない。
    3. 輸出業者のレターヘッド(会社名・所在地などが印刷された便箋)を使って作成された署名入りオリジナル・インボイス。
    4. 輸出業者のレターヘッドを使って作成された署名入りのオリジナル・パッキングリスト(梱包別の数量、品名、NW、GW、M3など)。
    5. 輸入ライセンス(LI)を必要とする輸入製品の場合には、そのコピー。
    6. 機械設備・機器・計器あるいは化学品などの場合には、メーカーのカタログ、パンフレットの提出が要求される。
    7. 化学品や食料品・原料などの場合は「分析表」、輸出国政府が発給する「衛生検疫証明書(Export Quarentine Certificate- Certificado Fitossanitário)」やロット番号、製造年月日、有効期限日などを明記した証明書を手配しなければならない。
    8. 輸入商品によっては「原産地証明書」が要求される。

    ブラジル向け輸出用木材梱包材は、国際梱包材規定(ISPM-15号)に基づいた措置が必要。もし、同措置が行われたことを示す表示がなければ、通関申請前に2022年11月8日付農牧畜供給省省令第514号の規定に基づき、検査、消毒、廃棄または返送処置がなされる。

  2. 輸入貨物の検査基準(「チャネル(Canal)」あるいは「パラメータ化(Parametrização)」と呼ばれる)

    輸入貨物の検査基準は、海上貨物と航空貨物のFirst Zoneでの税関、あるいは地方のEADI保税倉庫での税関において適用されている。
    各税関では「パラメータ化(Parametrização)」の検査基準に基づき、輸入申告書(DI)の登録後(すなわち、輸入に関わる諸税の支払い後)数時間内に無作為のコンピューター操作で、4色(緑色、黄色、赤色、灰色)のうちの1つを区分として指定される。

    1. 緑色:フリー通関で、検査なしで通関完了となる。
    2. 黄色:提出した船積書類の検査が行われる。黄色に指定された場合でも、担当検査官(Fiscal)の判断で、赤色に切り替えて、現物チェックを要求するケースがある。
    3. 赤色:書類検査以外に現物検査の対象となり、輸入者またはその代理の通関業者の立ち会いの下、税関吏が現物を開梱し、検査を行う。
    4. 灰色:物品の輸入者の資格、資金調達法、値段・価格などのダンピング等に嫌疑がかかる場合に指定される。

    4色のうちの1色を選定する基準は、次の9要素を考慮して、SISCOMEXによって無作為に行われる。

    1. 輸入者の税務遵守程度
    2. 輸入者の輸入頻度
    3. 輸入商品、容量、金額など
    4. 輸入に課税される諸租税の金額の多寡
    5. 輸入商品の原産地、経由国、用途
    6. 課税の種類(免税、減税など)
    7. 輸入商品の特徴
    8. 輸入者の貿易操作、経済、金融能力
    9. 輸入者の過去の輸出入実績

    各色が割当てられる割合は、一般的に緑75~80%、黄20~25%、赤5~10%、灰は極めて稀となっている。全般的な傾向として、輸入FOB金額が10万ドル以上の貨物、中古機械製品の輸入、関税が0%の商品、Ex-Tarifário適用の商品などは、黄色か赤色になるケースが多い。
    また、東南アジア、特に中国、インドなどを原産国とし、欧米原産の物品価格と比べ極めて割安と判定される場合、赤色になる割合が多いといわれる。

    赤色に指定された輸入商品を検査する場合、担当検査官は、民間の税関専門技師(Engenheiro Aduaneiro)を検査責任者に指定することができ、税関技師は輸入者(あるいはその代理人)立会いの下、検査官が依頼する検査項目を検査し、技術データや写真等を添付した検査結果の報告書を検査官に提出し、検査官がこれを受理して初めて通関が完了する。
    灰色に指定される場合、主にアンダーバリューの疑いがあるケースが多い。
    また、一度、緑色(フリー通関、検査なし)に指定された場合でも、担当検査官の判断で、書類上や輸入商品の種類により、何らかの不正や異常が認められる場合は、現物検査の対象となる。

分割船積による複数の船荷証券(BL)を一括して「単一の輸入申告書(DI)」で申請するケース(税関長への事前の許可申請)

次の場合は、通関指定税関長の許可を得て、分割船積をすることができる。

  1. 輸出者と輸入者間での商談(Commercial Operation)が唯一のもの、すなわち「Commercial Invoice」が一本で、
    1. 貨物の重量あるいは容積量が大きいために、複数の台数や回数で輸送される場合。
    2. 組み合わせによって単一の完全な製品または機能を有する物品で、その物品としての税区分を有し、輸入申告や取引書類上、それに則した記載がされている製品の場合。
  2. 商業的・技術的理由により製品が複数のB/Lにまたがり、組み合わせにより統合されたシステムを構成する、Ex-Tarifárioの関税の免税制度によってCAMEX(貿易協議会)の決議の認可を受けた製品。

これらに該当する物品が分割船積された場合、最初の分割物品(ロット)が通関申請を予定している税関に「一括して単一の輸入申告書(DI)の許可申請」を行うことができる。申請書類は、申請目的と理由の書簡に、分割船積のスケジュール表、一括Commercial Invoice、仮のパッキングリスト、輸入者と輸出者の契約書、通関士への委任状などを添付する。

「単一の輸入申告書(DI)」申請の認可から最終ロットの工場移管・通関完了まで
  1. 最初のロットがブラジル港に到着し税関倉庫に荷揚された時点で、輸入者は、対象機械設備・装備の一括商業送り状(Commercial Invoice)と最初のロットの船荷証券(B/L)およびInvoiceとパッキングリストを添付する。
  2. 船積書類の検査が終了後、輸入者は、a.の一括商業送り状を基にSISCOMEXを通じて輸入申告書(DI)を申告し、輸入税(Ex-Tarifárioの場合はゼロ%)、IPI(工業製品税)、PIS(社会統合計画基金)、COFINS(社会保障金融負担金)、海運更新付加税(AFRMM)、ICMS(商品サービス流通税)など課税されるすべての税金を支払う。課税対象金額は、提出した一括商業送り状の金額に予想した複数回の海上運賃(Ocean Freight)に予想の合計保険料金を加算したCIF金額である。
  3. 担当課による船積書類検査の後、税関長から任命された税関検査官(Auditor Fiscal)と、同様に税関長から任命された税関技師(Engenheiro Aduaneiro)で、最初のロットの現物検査が行われる。
  4. 最初のロットの仮通関が完了し、輸入者の工場への移管・輸送が行われ、荷卸し後直ちにロットを開梱し、次のロットの到着を待つことになる。
  5. 第2回目以降のロットの仮通関は、第1回と同様の手順で検査が行われ、仮通関として引き取り許可が出る。
  6. 最後のロットの貨物が、仮通関を終えて工場に搬入された時点で、ある一定の期間のうちにすべてのロットを組み立てた状態で、税関検査官および税関技師に最終検査を依頼する。
  7. 最終検査日として指定された日に、税関検査官、税関技師、通関士、輸入者の責任者の立会いの下に、船積書類とロットごとの書類と照合しながら組み立てられた機械設備・装備の総合検査が行われる。
  8. この最終検査の終了後、税関技師が「技術鑑定書(Laudo Técnico)」を作成し、税関検査官に提出した後、検査官が受理すれば、最終輸入通関が許可され、輸入通関証明書(CI=Comprovante de Importação)が発給されて、分割船積輸入が完了する。
根拠関連法規:
  • 1966年11月18日付政令(Decreto-Lei)第37号
  • 開発商工サービス省(MDIC)貿易局(SECEX)2011年7月14日付省令(Portaria)第23号
  • 国家度量衡・品質・科学技術院(INMETRO)2019年5月27日付省令第260号
  • ブラジル国税特別局(RFB)2006年1月18日付細則(Instrução Normativa)第611号
  • RFB 2006年10月2日付細則第680号
  • RFB 2007年12月27日付細則第800号
  • RFB 2017年11月13日付細則第1759号
  • RFB 1994年4月27日付細則第28号
  • 農牧畜供給省(MAPA)2022年11月8日付細則第514号
  • 民間保険監督庁(SUSEP)2022年12月18日付回章(Circular)第683号

輸出手続きとその手順、輸出通関書類

ブラジル産品を輸出する場合、海上貨物と航空貨物で多少の差はあるが、通常の輸出手続きとその順序は次のとおり。

  1. 輸出者の輸出入業者登録RADAR(「貿易管理制度」参照)が稼働状態にあるかどうかを確認する。
  2. 輸出する製品のNCMコードの決定
    輸出商品のNCMコードを決定し、それがブラジルの貿易管理上何らかの規制対象か否かをSISCOMEXの「輸出規制管理リスト(Tratamento Administrativo)」で調べる。
  3. 輸出規制や輸出商品により、特別手配を必要とするものは次のとおり。
    1. 前述の「輸出規制管理リスト」に掲載される、特別のプロセスに基づいて行われる輸出製品
    2. フォームAによる原産地証明書の申請要領:2011年7月14日付SECEX省令第23号の附属書“XXIV”参照
    3. 貿易局(SECEX)が信任した原産地証明書を発給する民間機関:同省令附属書“XXII”参照
    4. メルコスールと第三国あるいはSACME(第三国に対して承認された割当分配管理システム:Sistema de Administração e Distribuição de Cotas Outorgadas ao Mercosul por terceiros países ou Grupos de Países)間で設定された協定による輸出:2020年12月18日付SECEX省令第72号参照

    事前の特別手配が必要ない場合、次の決済条件により船積手配を始める。

  4. 輸出代金の決済条件

    輸出取引が成立した時点で、代金決済条件と取引条件のインコタームズを決定しなければならない。取引条件あるいは決済条件により、船積手配が異なる。代表的な支払条件は次の4種類。

    1. 前払い(Advance payment):取引銀行において、輸入者からの送金の有無を確認後、船積手配を始める。
    2. 信用状付き決済(Foreign Exchange with Letter of Credit):輸入者から振出された信用状(LC)を取引銀行で入手し、その信用状の各条項を確認した上で、船積みを手配する。
    3. 支払渡条件(Delivery against Payment-DP at sightEntrega contra Pagamento):船積書類を銀行経由で送付する。各条件規定を充分理解した上で、輸出荷手形を発行し、取引銀行に取立てを依頼する。
    4. 引受渡条件(Delivery against AcceptanceEntrega contra Aceite):支払渡条件と同じ。

輸出登録書(RE)申請要綱プログラムの運用停止・廃止と単一輸出申告書(DUE)の完全稼働

従来、輸出者が使用してきた輸出登録用のWeb環境モジュールである“Siscomex Exportação Web”(通称“Exportação NOVOEX”)および”Siscomex Exportação Grande Porte”は2018年末に運用停止となり、2017年3月より試験的に導入された新たな輸出登録許可・申請システム「単一輸出申告書(DUE)」制度が、すでに本格運用に入っている。

輸出手順の簡素化と迅速化

前記のDUE方式が導入されたことで、ブラジルの輸出業務は以前と比べて大幅に簡素化され、港湾、空港税関での通関と出荷までの時間は半減した。輸出者自身(通関業者を通さずに行う場合)がこのDUE方式による申請登録業務を行う手順は、次のとおりである。

  1. 輸出者が、自社のe-Nota Fiscal(電子徴税伝票)を発行する。
  2. インターネットで“Portal Único SISCOMEX”を開くと、7つの選択肢が現れる(Importador /Exportador, Cadeira Logistica, Remessa Expressa/Postal, Instituição Financeira, Certificação OEA, Habilitar Empresa, Acesso Público)。
  3. Acessar com Certificação Digital - CD」(デジタル認証を使ってアクセス)をクリックして、Exportadorをクリックする(既に登録されている場合)。
  4. 次にDUEのモジュールの中の“Elaborar DUE”(DUEの作成)を選択。
  5. DUEの様式の各項目に必要データを入力する(CNPJ、輸出形式、NFの種類、使用する貨幣、輸出通関場所、RFB(税関名)その他)。
  6. すべてのデータを記載し、No. de Chave de Acesso(11グループx4=44の数字)を記入すると、1.のNFに記載されたすべてのデータが移転記載される。
  7. これらのNFに記載されたデータ以外の次の輸出基本データを入力する。外貨による貨幣の種類とその金額、輸出条件、ネット重量など。
  8. すべてのデータの入力が終了すると登録が完了となり、次の3つの管理番号が表示される。
    1. DUEの登録番号(10ケタ)
    2. RUC番号(35ケタ):Referência Única de Cargaと呼ばれる貨物参照用の一意の番号
    3. Chave de Acesso da DUE(11ケタ):DUEにアクセスする番号
  9. 輸出者は、直ちに輸出貨物を指定税関倉庫に搬送入する(運送会社と契約するか、自社のトラックで)。
  10. 税関倉庫会社は、この輸出貨物を受け取ると、Presença de carga(貨物受領番号)を発給する。
  11. 税関倉庫のインターネットによる無作為(At randomAleatório)方式の輸出貨物検査基準(Parametrização)により、緑色、黄色、赤色、灰色のうち一色が指定される。
  12. 緑色が指定されると、直ちに輸出通関完了(書類検査や現物検査は免除される)。黄色の場合は書類検査、赤色は書類検査と同時に現物検査、灰色は輸出者および輸出貨物に関する特別調査。
  13. 税関保税倉庫から本船までの横持ち(トラックによる荷受けから船積込みは、輸出者自身が運送業者と契約)
  14. 本船への積込みが完了して、船会社からB/L(船荷証券)が発給される。

* 電子税務出荷伝票:DANFE=Documento Auxiliar de Nota Fiscal Eletrônica
** CD:デジタル認証のための公開鍵証明書=Certificação Digital

Portal Único SISCOMEX環境によるDUEの登録の規制

I-DUEによる輸出登録は、輸出貨物とその輸出者に関連する税関、管理、商業、金融、税制、税務、およびロジスティックの情報が網羅された電子書類である。
原則として、いかなる輸出業者、貨物の運輸形態でも輸出手続きを可能とする。DUEおよびそれに連動する「ライセンス・許可・認証・その他書類(LPCO)」モジュールを通じて、次の手続きが可能となっている。

  • 財務局(RFB)の管理以外の、政府の他の機関の事前の許可を要する物品の輸出
  • ドローバック制度を適用した輸出操作
  • PROEX(輸出金融制度)の資金による輸出
  • 割当輸出の枠内の輸出

DUEの作成には、原則として電子出荷徴税伝票e-Nota Fiscal(e-NF)が必要となるが、紙のNota Fiscalの場合には、SISCOMEX内の「スキャンされた書類の添付」機能を用いてブラジル国税特別局(RFB)が確認できるようにする必要がある。

また、輸出者は、DUEによる次の3つの輸出形態のうちの1つを選択することができる。

  1. 輸出者自身の輸出(コンソーシアムの場合は、どれか1つの輸出者を指定する)
  2. クーリエ便、あるいはブラジル公立郵便局(ECT)が輸出の申告者となる輸出
  3. 第三者の勘定および注文による輸出

このほか、メルコスール加盟国への輸出で道路輸送の場合の国際マニフェストは、MIC/DTA (Manifesto Internacional de Carga/Declaração de Transito Aduaneiro)または、 TIF/DTA(Conhecimento-Carta de Porte Internacional /Declaração de Transito Aduaneiro)と代替する。
輸出用の徴税伝票(Nota Fiscal)は単一のDUEにのみ使用されるが、対象貨物の輸入者が同一の場合は、複数のDANFEを同時にDUEに登録できる。

根拠法令:
  • 開発商工サービス省貿易局(SECEX)2011年7月14日付省令第23号
  • 同2020年12月18日付省令第72号
  • ブラジル国税特別局(RFB)1994年4月27日付省令第28号
  • RFB 2006年10月2日付細則(Instrução Normativa)第680号
  • RFB 2021年4月28日付細則第2024号

必要書類等

前項「輸出入許可申請」参照。

査証

必要なし。

その他

ブラジルへの輸入にあたっての関税込持込渡し(DDP)。

インコタームズ2020のDDPについては、ブラジル連邦歳入庁より特に禁止といった条項等はないが、運用上での問題があるため、留意が必要。詳細は、以下の資料を参照。
ジェトロ:サンパウロ/パラグアイ・フラットフォームのコーディネーター発ミニレポート「ブラジルへの輸入にあたっての関税込持込渡し(DDP)の利用実態」