外国企業の会社設立手続き・必要書類

最終更新日:2016年03月31日

外国企業の会社設立手続き・必要書類

ブラジルにおける会社設立手続きは煩雑かつ言葉の問題があるため、進出企業は地元の弁護士事務所や会計事務所に委託するケースが多い。日本語あるいは英語が使える事務所も多数存在する。一般的に設立が比較的簡単な有限会社形式をとるケースが多い。現地法人を設立しない駐在員事務所は特別なケースを除き認められない。会社設立準備から現地法人登記、必要なライセンスの申請・取得、事業スタートまでには半年から1年以上掛かることもある。


1. 代理人の任命
ブラジルで会社を設立するにはブラジルに居住するブラジル人、帰化外国人、あるいは永住ビザを取得した外国人が必要となる。新設企業の場合には現地の弁護士や会計士などを代理人に任命するケースが多い。

2. 会社形態の選択  
ブラジルの新民法によれば、法人格を有する団体の形態は、次の2種類に分けることができる。 

(1) 企業型法人(Sociedade Empresária) 
一般的な会社形態をとり、例えば出資者は出資のみ、実際の役務は従業員が提供するという構造の法人。多くの企業が企業型法人の形態をとっている。設立時の所轄機関は、州商業登記所(Junta Comercial)、連邦国税庁(Receita Federal)、財務局(Secretaria da Fazenda)、市役所(Prefeitura Municipal)など。 

(2) 簡易形態型法人(Sociedade Simples)
弁護士事務所、会計事務所、コンサルタント事務所、歯科医師など、定款に記載されている出資者本人が直接役務を提供する形態の法人のこと。例えば出資者以外に業務を補助する社員がいたとしても、出資者本人が役務を提供しているのであればSociedade Simplesとして設立できる。設立時の所轄機関は、法人民事登記所(Cartório de Registro Civil das Pessoas Jurídicas)、連邦国税局、市役所など。 

さらに、法人形態は次の7種類に分けられる。 
a. 合名会社(Sociedade em Nome Coletiva/Collective Name Company) 
b. 合資会社(Sociedade em Comandita Simples/Limited Co-Partnership) 
c. 個人有限会社(Empresa Individual de Responsabilidade Limitada/Individual Limited Liability Company)
d. 有限会社(Sociedade Limitada / Limited Liability Company) 
e. 株式会社(Sociedade Anônima / Joint-Stock Company)※ 
f. 株式合資会社(Sociedade em Comandita por Ações / Limited Partnership by Shares) 
g. 協同組合(Cooperativa / Cooperative Company)※

※株式会社は企業型法人としてのみ設立が可能。協同組合は簡易形態型法人としてのみ設立が可能。

ブラジルでは「駐在員事務所」という概念が法律上定められていない。また、「支店」の設立には連邦政府による事前承認を必要とし、特別なケースを除き採用されていない。結果としてブラジルで事業活動を行うには「現地法人」の設立が必要となる。上記の法人形態の中で、外国企業が現地法人を設立する際に検討対象となるのは、通常は「有限会社」と「株式会社」の2つである。ブラジルで設立される会社の90%から95%は有限会社が占めていると言われている。進出日系企業の場合も以下の理由から有限会社形態を選択する例が多い。


<有限会社のメリット>
・財務諸表が、最低年1回開催される総会で承認されれば良く、さらに共同出資者全員が書面で議決する場合には総会開催が免除される。株式会社の場合、財務諸表の公告が義務付けられている。
・経営審議会の常設が不要(任意で設立することも可能)。
・増資、株式譲渡、定款変更、会社清算手続きなどは75%以上の出資者の合意により可能。
・ブラジル証券取引委員会に登録された外部の会計監査人が不要(総資産が2億4,000万レアル以上あるいは売上高が3億レアル以上の“大規模有限会社”の場合には必要)。
・零細・中小企業に対して“SIMPLES NACIONAL(シンプレス)”と呼ばれる簡易で低率の税制体系の選択が可能(法人や海外居住者が出資者に含まれる場合や株式会社には適用不可、また業種や売上高による制限がある)。
・業務執行者(日本の取締役の役割を担う者)が最低1人で良い(ただし、居住者でなくてはいけない)。

<株式会社のメリット>
・出資者の加入、脱退は株式移転台帳への反映があればよく、会社定款の改定を必要としない(有限会社の場合、その都度定款を改定し、商業登記所への登録が必要)。
・ブラジル証券市場への上場が可能。


※以下は外国企業がブラジルに進出する際に最も多く利用される法人形態である「有限会社」のケースをベースに記述。

3. 会社定款を定める
会社定款には以下の項目を定める必要がある。

(1) 会社商号
事前に商号を調査し、同一の商号の有無について確認する。一般的に商号の一部に主たる業務内容を入れる必要がある。

(2) 会社の所在地
所在地を説明する書類(賃貸契約、使用許可など)を必要とする。所在地により事業活動が制限されることがある。

(3) 詳細な会社の業務内容
設立時の定款の業務内容に“輸出入業務”や“製造業務”を加えると関係するライセンスの取得が必要となり手続きに長時間を要する。設立時の定款の業務内容は必要最低限のものに留め、その後、必要に応じ業務内容を後から追加・変更していくのが一般的。

(4) 出資者
外国人・外国企業であるなしにかかわらず、会社設立のためには最低2人の出資者が必要。個人あるいは法人のどちらでもよい。ブラジルに居住しない外国人・外国企業が出資者となる場合は、ブラジル居住者を法定代理人(1人または複数名で、ブラジル人または永住ビザを保有する外国人)に任命しなければならない。委任状はブラジル領事館による認証が必要。

(5) 業務執行者
会社のサイン権限を持ち会社を代表し業務を行う業務執行者を、有限会社の場合には最低1人選任する。業務執行者はブラジル居住者がなれる。駐在員がビザを取得し赴任するまでの期間は現地の弁護士や会計士等を業務執行者に選任するケースが多い。永住ビザを保有するブラジル在住の外国人を業務執行者に任命することもできる。業務執行者の権限は定款内に規定する必要がある。

(6) 出資金の内訳等
一般的なルールとして最低資本金に関する法律上の要請はない。会社設立後に増資を行う場合、定款の記載内容の変更が必要となるが、監督官庁等への申請手続きは不要。

(7) 定款の変更
会社資本の4分の3を有する出資者は、定款を一方的に変更できる。また、新たな出資者を加える場合は、出資者の4分の3の承認が必要。非出資社員を業務執行者に任命する場合、出資者の3分の2以上(資本払込が完了している場合)、もしくは100%(資本払込が完了していない場合)の承認が必要。

4. 定款登記・法人税登録番号(CNPJ)
作成した定款は本社が所在する州商業登記所(Junta Comercial)に登記する。定款登記が終わると国税庁より法人税登録番号(CNPJ)が発行される。銀行口座の開設などにはCNPJが必要となる。

5. 資本金の送金、ブラジル中央銀行への登録
ブラジル国外からの投資は、すべてブラジル中央銀行に登録されなければならない。この登録を行わない場合、駐在員の永住ビザの申請、配当金の国外への送金や投資を引き上げる際の権利が確保されない。企業が出資者となる場合には外国企業の場合でも法人税登録番号(CNPJ)の取得が必要となる。

最低資本金の規制はないが、国外の企業がブラジル国内に会社を設立し、そこに駐在役員を置く場合、原則として60万レアル相当以上の投資を行い、ブラジル中央銀行に登録する。これにより駐在役員1人分の永住ビザが発給される。複数の永住ビザが必要な時、60万レアル相当額×人数分の投資が必要。海外からの投資の登録後2年以内に10人以上のブラジル人従業員を雇用可能な計画を提示できた場合は、15万レアル相当の投資額をもって1人分の永住ビザの申請ができる。これらの駐在役員は、現地企業の定款に役員として記載されなければならない。

6. 当該業界の許可取得
業種によっては、各業界が定める許可の取得、または登録をする必要がある。例えば、金融機関、製薬工業、食品工業、保険会社など。

7. 輸入許可・製造許可の取得
輸出入業務や製造を行うためのライセンスの取得は煩雑かつ時間を要するため、通常は会社を設立した後から必要な許可の申請を行うことになる。

輸出入業務を行うためには財務省連邦収税局へ申請しラダール(RADAR「税関関与活動の追跡調査登録」)の取得が必要。RADARに関する規定は2012年8月31日付財務省連邦収税局指令1288号により変更された。新設企業の場合には通常、制限付きのライセンス「リミターダ(Limitada)」が与えられる。リミターダのライセンスでは6カ月間にCIFベースで15万ドル相当の輸入が可能。輸出金額には制限がない。6カ月間の輸入金額が15万ドル相当を超える場合には、限度額の増額申請を行うか、または無制限のライセンス「イリミターダ(Ilimitada)」に切替える必要がある。

工場の建設・操業等を行うには環境ライセンスの所得が必要。環境ライセンスの基準や取得手続きは州や市により異なる。

※RADARについては「貿易管理制度」のページも参照。

「ブラジルにおける会社設立の基本的な手順」PDFファイル(213KB)  

    

外国企業の会社清算手続き・必要書類

ブラジルから撤退することになった場合、投資した資本を本国に送還することができる。会社の清算および撤退手続きとそれに要する時間は進出形態や、投資優遇措置を受けているか否かによっても異なる。


事業環境の変化や拠点再編等の事業戦略の変更に伴い、ブラジルに設立した会社を清算し撤退することになった場合、払込資本金を本国に送還することが認められている。ただし、現地会社に投資した資本がブラジル中央銀行に登録されており、かつ、純資産がマイナスになっていないことが条件となる。送還額が払込資本金を下回る場合には、通常、源泉所得税の対象にならない。払込資本金を超える金額を送還する場合、差額はキャピタルゲインとみなされ、源泉所得税の対象となる。
キャピタル・ゲインに対する税率は一律15%であったが、2016年1月1日以降はキャピタル・ゲインの額に応じ4段階の税率が適用となった。キャピタル・ゲインが500万レアル以下の場合、税率15%を適用。500万レアル超1,000万レアル以下は同17.5%、1,000万レアル超3,000万レアル以下は同20%、3,000万レアルを超える場合には同22.5%が適用となる。

会社の清算および撤退手続きとそれに要する時間は進出形態(製造現地法人かあるいは販売・サービス法人か)や、投資優遇措置を受けているか否かによっても異なる。

販売・サービス法人の場合には、一般的に土地や工場を所有しないことや解雇対象となる従業員数が比較的少ないことから、相対的に手続きを簡単に進めることが可能。製造現地法人の場合には、人員整理に伴う労働裁判や土地・工場の売却などに長時間を要するケースが多い。また、製造現地法人など事業規模が大きい場合には、清算手続きに際し詳細な税務検査が行われ、長い時間を必要とする。進出に当たり投資優遇措置を受けていた場合には、通常の手続きに加え所管の監督機関に対する手続きが発生するためにさらに時間を要する場合もある。また、税制恩典が付与されていた場合には、遡及して税の支払いを求められるなどのペナルティが課せられることもある。

なお、ブラジルの労働訴訟の提訴期間は退職または解雇後2年間、税務訴訟の訴求期間は5年間あるため、この期間内に清算手続きを完了させることは容易でなく、会社登記が完全に抹消されるまで長期にわたり法人格を存続し続けなくてはいけないケースもある。


現地法人の清算・消滅に必要な一般的な手続きは以下のとおりである。
1. 臨時株主総会にて会社清算を決議
臨時株主総会を開催し会社の清算を決議し、清算人を任命する。清算人は会社の財産の管理、資産の現金化、残余債務の支払い、総会の開催・議事録の作成、所轄機関(商業登記所や連邦・州・市の税務局、社会福祉院(INSS)、地方労働監督局、組合等)への必要な手続きなどを行う。

2. 州商業登記所に対する解散の登録
決議決定の日から30日以内に、会社の本店が所在する州の州商業登記所に対し会社解散の総会議事録を登録する。

3. 会社の清算を公告
清算人は官報および広く流通している新聞に会社の清算を発表する。

4. 法人税登録番号(CNPJ)等の更新
CNPJやINSS、勤続年数保証基金(FGTS)など、連邦、州、市に対する会社の登録に関し、会社が清算手続き中であることを通知する。

5. 清算手続き中の会社業務
清算手続き中も会社の法人格は存続しており、会社の商号の使用は可能。ただし、社名に「清算中」の文言の追加が必要。会社業務は必要最小限に制限され、新たな業務を引き受けることや契約を結ぶことなどはできなくなる。

6. 債務の弁済および資産の分配
清算人は資産や所有物、未払債務の処分を行い、債権者に対する債務の弁済を行う。残余財産の株主への分配はすべての債務の弁済の終了後、または資産の価値が債務を十分上回る場合に認められる。

7. 清算手続きの完了(会社の消滅)
清算人は総会を開催し、清算手続きの完了と会社の消滅を承認する決議を行い、総会議事録を商業登記所に登記する。その際、INSS、FGTS、税金の完納証明の提出が必要となる。会社の消滅が商業登記所に登記されることにより、正式に会社が消滅したことになる。清算人は消滅の事実を官報や広く流通する新聞に公告する。出資者またはその代理人はCNPJやINSS、FGTSの登録を中止し、ブラジル中央銀行に対する外国投資登録の中止手続きを行う。

   

その他

現地での資金調達制度:金利が高く、国内での資金調達手段は少ない。そのため、他国・地域への進出に比較し、親会社からの資本金を資金計画の柱にし、事業拡大などによる資金需要には増資で対応しているケースも少なくない。外資系企業は親会社からの借り入れや外貨建てローン、輸出企業は輸出前貸(ACC)なども利用している。日系金融機関としては、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行がブラジル国内で銀行業務を行っている。


短期のレアル建て融資は日系金融機関、地場銀行ともに取り扱っている。

海外の銀行や親会社からの外貨建て借入(4131号ローン)や、ブラジル国内銀行から転貸されるドル建て中長期ローン(3844号ローン)などの利用も可能。外貨建て借入はレアル建て借入に比較し低金利で長期の借入が可能だが、為替リスクが発生する。現地会社の為替リスクを避けるために最近ではレアル建ての親子ローンを採用する日系企業も増えている。

輸出入取引がある企業の場合は貿易金融を利用するケースも少なくない。

中・長期のレアル建てでの資金調達はブラジル国立経済社会開発銀行(BNDES)の制度金融を除き、高金利のため利用実績は非常に限られている。

国内での外貨預金は認められていない。また、ブラジル国外の銀行に口座を開設することも原則、認められていない。


<外貨建て借入>
1. 3844号ローン(旧2770号ローン・63号ローン)
ブラジルの銀行が海外で外貨を調達し、これを国内で転貸するシステム。外貨建てで契約されるが、受け払いは現地通貨で行われる。外貨建てのため、下記の4131号ローンとともに一般的に借入金利は国内の現地通貨建てに比べ低い。長期の借入が可能だが、借り手は為替リスクを負う。借入期間に制限はないが、180日以内の借入の場合、6%の金融取引税が課せられる(4131号ローンも同じ)。中銀決議2010年3月23日付3844号に規定。

2. 4131号ローン
ブラジル企業が直接海外の金融機関や親会社から外貨建てで借り入れる方式。いわゆる“親子ローン”も含まれる。ローンの条件は中央銀行システムに登録する必要がある。金利に対する源泉所得税は通常15%。貸出人が日本の居住者であれば日伯租税協定が適用され源泉所得税率は12.5%となる。親会社からの借入を資本に切替えることも可能。1962年9月3日付法令4131号に規定。

3. 輸出入ファイナンス
輸出前貸(ACC)、輸出手形買取(ACE)、輸入ファイナンス、輸出ファイナンスなどがある。ACCとACEは実行時にドル建ての輸出債権額を上限とする金額をレアルに転換した金額を調達。返済は輸出債券の回収代金を直接銀行に支払うため、輸出代金決済時の為替手続きが不要。輸出振興の目的から、ACC/ACEおよび輸出ファイナンスは金利に対する源泉所得税と金融取引税が免除されている。ただし、ACCおよびACEともに原則としてキャンセルは認められない。輸出契約が成約しなかった時などにはペナルティが適用される。


<国内通貨建て借入>
ホットマネー、当座貸越、証書貸付などがある。借入時に金利を確定させる固定金利式と、借入期間中の市場金利に連動させる変動金利式とがある。
為替リスクはないが、借入金利は高い。短期資金の調達手段として利用しているケースが多い。一般的に借入期間は1年以内で、BNDESの制度融資を除き長期の資金調達は難しい。金融取引税の対象となる。金融取引税の税率は借入時に0.38%、借入期間に応じ日歩0.0041%(上限は365日分で1.4965%)。1年間の借入を行う場合、金融取引税だけで合計約1.88%発生することになる。


ブラジル国立経済社会開発銀行(BNDES)の制度融資
BNDESは国内産業の育成、近代化、輸出促進を目的にしており、支援目的別に各種融資制度を扱っている。経済情勢に応じ特別プログラムも随時実行している。実際の借入はBNDESに登録されている金融機関を通じて利用される。借入条件(金利、借入期間、限度額、資金使途等)は融資プログラムと借手の与信により異なるが、一般の融資に比べて有利な金利で、レアル建てでの長期資金の調達が可能。JBIC(国際協力銀行)がBNDESに資金を提供し、BNDESはその資金を利用して優遇条件で日本企業に対し現地通貨建てで融資を行う2ステップローンの制度もある。
なお、BNDESの貸出金利の基礎となる長期金利(TJLP)は2013年から2014年まではインフレ率を下回る年5.0%が適用されていたが、政府の助成金削減を目的に2015年第4四半期までに年7.0%に引き上げられている。また、これまで免除されてきた金融取引税についても2015年9月から一般の融資と同じく課税対象となっている。

   

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