手続きに2カ月、最低資本金もほぼ制限なし-パラグアイにおける会社設立(1)-

(パラグアイ、ブラジル)

サンパウロ発

2018年03月13日

安価な人件費や低い税率などを求めてパラグアイに進出するブラジル企業が増えている。外資企業の誘致を推進するパラグアイでは、会社設立の手続き開始からおよそ2カ月で事業を開始できる。最低資本金の制限もほぼなく、外貨口座保有も可能だ。パラグアイにおける会社設立について2回に分けて報告する。

ブラジル企業のパラグアイ進出が増加

パラグアイのメリットを活用し、ブラジルとのビジネスを行う企業が増えている。「フォーリャ・デ・サンパウロ」(2017年12月31日)は、パラグアイ政府によると過去5年間でパラグアイ進出外資系企業のおよそ7割がブラジル企業だと伝えている。安価な労働力や電力コスト、低い税率のパラグアイに進出し、そのほとんどが同国の税制優遇制度であるマキラ制度を活用する「マキラドーラ企業」として、さらなる税制インセンティブを享受している(2018年1月31日記事参照)。マキラドーラ企業を管轄する国家輸出マキラドーラ産業審議会(CNIME)によると、2017年のマキラドーラ企業による輸出額全体のおよそ75.5%がブラジル向けだという。

ジェトロが2017年10月18日から11月22日にかけて、中南米7国(メキシコ、ベネズエラ、コロンビア、ペルー、チリ、ブラジル、アルゼンチン)に進出する日系企業を対象に行った「2017年度中南米進出日系企業実態調査」でも、在ブラジル日系企業がビジネスを行う際に「財務・金融・為替面」で抱える問題点として最も大きいのが、「税務(法人税、移転価格課税など)の負担」で、「雇用・労務面」では「従業員の賃金上昇」が最大の課題として挙げられている。

パラグアイの投資誘致機関である商工省投資輸出促進局(REDIEX)によると、パラグアイの人件費は業種によるがブラジルのおよそ3分の1で、税率も法人所得税、個人所得税、付加価値税(VAT)がいずれも10%と低い。パラグアイ進出は「ブラジルコスト」と呼ばれる障壁を回避する手段として注目を集めているようだ。

金融・保険業は株式会社に限定

パラグアイにおける主な会社形態は株式会社や有限会社などで、支店での進出も可能。個人で有限会社を立ち上げることもできる。形態は自由だが、金融業や保険業などは株式会社でなければならない。いずれの法人形態でも最低資本金の制限はないが、個人有限会社の場合は「最低日給である7万8,505グアラニー(約14ドル)の2,000倍」、およそ2万8,000ドルと法律で定められている。

設立に当たり必要な書類は、(1)親会社の定款、(2)親会社の謄本、(3)親会社で子会社設立が承認された旨の議事録、(4)設立に当たり親会社の代理人となる者への委任状となっている。(3)および(4)には、子会社名や子会社の形態、総資本金、事業目的、住所、パラグアイ国籍あるいは永住ビザを保有する会社代表者と監査人の任命についてなどが記載されている必要がある(民法1183/85参照)。

会社代表者となる者は、パラグアイ国籍を有しているか永住ビザを保有する必要があるほか、18歳以上の成人でなければならない。現地人の雇用義務については特段定められていないが、採用の際、ほぼ同じ条件のパラグアイ人と外国人である場合はパラグアイ人を優先するよう、労働法第62条で定められている。なお、株主や役員はこの対象外だ。

パラグアイでは会社名義での外貨口座の保有が認められている。口座開設に当たり必要となる書類は、(1)会社定款、(2)法人納税者番号(RUC)、(3)会社代表者を証明する書類で、場合によっては親会社の定款や役員構成などの書類を求められることもある。なお、日本への利益送金にかかる税金は、配当送金課税が10%、利子送金課税が5%の計15%だ。

会社設立にかかる時間は、事業分野により許認可が必要なものもあるが、それを加味しなければ、一般的には手続き開始からおよそ2カ月で事業を開始できる。現地の弁護士などと行うのが一般的だ。

(辻本希世)

(パラグアイ、ブラジル)

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