税制

最終更新日:2025年09月12日

法人税

法人税の標準税率は2016年1月1日から20%。原則、暦年が課税年度となるが、管轄当局から事前の承認を得れば、決算期を各四半期末、すなわち3月末、6月末または9月末に変更することも可能。

納税義務者

納税義務者は、内国法人と外国法人に大別できる。

  1. 内国法人:
    1. ベトナムの企業法、投資法、保険業法などに従い設立された企業
    2. 製造、卸売業などから課税所得を得る公益団体、非公益団体、協会
    3. 協同組合法に従い設立され、運営している組合
  2. 外国法人:主として次のいずれかの要件を満たす、外国の法令により設立された法人
    1. ベトナム国内に恒久的施設を有するもの
    2. ベトナム国内を源泉とする所得(新法人税法67/2025/QH15の施行に伴い、2025年10月1日から、電子取引やデジタルプラットフォームを通じて事業を行う法人の所得も含む)を有するもの

ジェトロ:恒久的施設PDFファイル(165KB)

課税対象期間

原則として、暦年が課税対象期間となるが、管轄当局から事前の承認を得て、各四半期末(3月末、6月末、9月末)に変更が可能である。
なお、新設企業または清算企業などで課税対象期間が3カ月未満になる場合、前後の課税対象期間と合算して課税計算を行うことができる。このとき、最初または最後の課税対象期間は、15カ月を超えてはならない。

課税所得

  1. 計算式

    課税所得は次の算式により算定される。
    課税所得 = 総所得 - (非課税所得 + 繰越欠損金)

    課税所得を構成する総所得は、次の算式により算定される。
    総所得 = (収入 - 損金算入可能な費用) + その他の所得

  2. 収入
    物品の販売、役務の提供、サーチャージ、追加手数料などを含む。収入の認識は、物品の場合は所有権の移転時、役務の提供の場合は役務提供完了時または役務提供一部完了時となる。
  3. 損金算入可能な費用
    「損金不算入費用」の項目を参照。
  4. その他の所得
    事業許可証に記載されていない事業から生じた所得を指し、例として、株式や持分の譲渡、土地の譲渡、固定資産の譲渡がある。
  5. 非課税所得
    農水産業、畜産業およびそれらに関連する事業から生じた所得、科学・技術開発から生じた所得、身体障害者、麻薬中毒者、HIV感染者などの雇用支援事業から生じた所得、少数民族・服役後の受刑者などの職業訓練事業から生じた所得、国内法人からの配当所得、各種寄附金の受け入れなどが非課税所得として規定されている。
  6. 繰越欠損金
    「繰越欠損金」の項目を参照。

損金不算入費用

  1. 損金算入費用
    次の3つの条件をすべて満たす場合に限り、損金として認められる。
    1. 事業活動に直接起因および関連すること
    2. 法律の規定に沿ったインボイスなどの証憑を添付すること
    3. 2,000万ドン以上の取引は、銀行送金などの非現金決済方法による支払証憑を添付すること
  2. 損金不算入費用

    前記1.の全条件を満たしても損金として認められない費用がある。通達78/2014/TT-BTC、通達96/2015/TT-BTC、通達130/2016/TT-BTCおよび通達25/2018/TT-BTCに規定されており、詳細は別添のとおり。

    ジェトロ:損金不算入費用PDFファイル(241KB)

固定資産と減価償却

  1. 固定資産
    企業は、次の3つの条件を満たす費用を固定資産として計上する。
    1. 資産を使用する将来にわたって経済的便益が発生すること
    2. 1年を超えて使用すること
    3. 取得原価が3,000万ドン以上であること
  2. 減価償却

    減価償却費は、通達に定める償却限度額の範囲内で損金算入が可能となる。
    減価償却の方法としては、定額法、定率法、生産高比例法が規定されているが、定率法および生産高比例法の適用には、一定の条件を満たす必要がある。なお、減価償却適用のためには、事前に、所轄の税務署への登録が必要である。
    減価償却期間は、通達に定める耐用年数(詳細は別添のとおり)に従う。

    ジェトロ:固定資産の耐用年数表PDFファイル(142KB)

繰越欠損金

欠損金の繰越は、発生した翌年から5年間認められる。優遇税制による免税期間も欠損金の繰越限度である5年に含まれるため、優遇税制の適用を受けている場合には、当該期間を考慮したスケジュールの検討が必要である。

税率

  1. 税率

    標準税率は、2016年1月1日から20%。
    石油・ガス事業に関しては、契約ごとに25~50%の範囲となる。
    希少で貴重な資源の探索、探査、開発に関しては、プロジェクトごとに32~50%の範囲となる。

    新法人税法67/2025/QH15の施行に伴い、2025年10月から、石油・ガスの探索、探査、開発に関しては25~50%の範囲となり、油田の位置・採掘条件および埋蔵量に基づいて、政府首相は各石油・ガス契約に合わせた具体的な税率を決定する。
    希少で貴重な資源(白金、金、銀、錫、タングステン、アンチモン、宝石、希土類および法令に定められるその他の希少で貴重な資源)の探索、探査、開発に関しては50%となる。ただし、鉱区総面積の70%以上が特に困難な経済・社会状況にある地域に位置する鉱山の場合、税率は40%となる。

    優遇税制の適用については「優遇税制」の項目を参照のこと。

  2. 課税対象期間に複数の税率を適用する場合
    課税対象期間に複数の税率を適用する場合、課税所得を対象期間で按分して税額を計算する。

    (例)標準税率を適用し、課税対象期間が2015年10月から2016年9月の場合
    法人税額 = 課税所得÷12カ月×3カ月×22%+課税所得÷12カ月×9カ月×20%

優遇税制

ベトナムの優遇税制は、大きく分けて優遇税率と減免税とがあり、通達78/2014/TT-BTCで次のように規定されている(2021年1月1日より施行された投資法61/2020/QH14により一部改正)。なお、その他の所得に対しては、優遇税制が適用されないことに注意が必要。

  1. 優遇税率
    事業内容や設立地域の性質に応じて、10%もしくは20%の優遇税率が、10年あるいは15年もしくは活動期間中適用される。なお、優遇税率は、対象となる事業から収入が発生した年度から適用される。
  2. 減免税
    事業内容や設立地域の性質に応じて、4年間免税・その後9年間50%減税、6年間免税・その後13年間50%減税、もしくは2年間免税・その後4年間50%減税が適用される。
    なお、減免税期間は、単年度で課税所得が発生した課税対象期間から起算される。ただし、減免税の対象となるプロジェクトから初めて収入が発生してから3期連続で欠損金が出ている場合、4年目から自動的に減免税期間が開始される。

申告・納税

四半期ごとの予定納税と課税対象期間末の確定申告が要求されている。企業は、前年度の法人税額、あるいは当年の業績予想に基づき四半期ごとの税額を予定納税する。仮納税額の合計が確定申告額より20%以上少ない場合、当該差額に対する延滞税を納税しなければならない。

移転価格税制

関連者取引がある場合には、ローカルファイル、マスターファイル、国別報告書を作成保存(移転価格の文書化)し、法人税の確定申告時に指定様式(フォーム1)を所轄税務署へ提出しなければならない。

  1. 関連者
    次に該当する場合に関連者となる。
    1. 直接または間接出資比率が25%以上
    2. 原則として、一方の会社の貸付または保証金額が他方の資本金の25%以上、かつ他方の会社の中長期借入金残高の50%以上
    3. 会社が課税期間内に当該会社の資本金の25%以上の取引、もしくは当該会社の資本金の10%以上の借入または貸付を会社の経営幹部、管理者またはそれらと一定の関係を有する個人との間で行った場合の当該個人
    4. その他、事業活動により実質的に支配している場合、個人が複数の会社に対し出資や経営権限があり実質的に支配している場合など
  2. 移転価格文書化の免除規定
    次の要件のいずれかに該当する場合には、文書の作成が免除される。
    その場合でも、フォーム1の所轄税務署への提出は必要となる。
    1. 課税期間の売上金額が500億ドン未満、かつ関連者間取引総額が300億ドン未満の場合
    2. 法令に従う事前確認制度の適用を受けている場合
    3. 売上金額が2,000億ドン未満、かつ単純な事業活動のみを行い、無形資産による収益費用が生じない場合で、利払前利益率(EBIT÷売上高)が、販売業5%、製造業10%、加工業15%以上の場合

グローバルミニマム課税

  1. 適用対象
    会計年度直近4年度のうち少なくとも2年度、最終親会社の連結財務諸表における収益が7億5,000万ユーロ以上に相当する多国籍企業の構成事業体(政府機関、国際機関、非営利組織、年金基金、最終親会社である投資基金・不動産投資組織、これらの各機関・組織を通じて直接または間接的に資産価値の85%以上を所有する組織を除く)が適用対象である。
  2. 最低税率
    前記1.の納税者は最低15%の法人税を支払うことが義務付けられる。
  3. 適格国内最低課税(QDMTT)
    1. QDMTTは、前記1.に掲載されており、ベトナムで事業活動を行っている多国籍企業の構成事業体またはその連合体に適用される。
    2. QDMTTは次の算式により算定される。
      QDMTT=(追加税率 x 追加課税対象利益)+当年度の調整追加税額(発生する場合)

      ※追加税率、追加課税対象利益、当年度の調整追加税額の算式の詳細は、グローバル税源浸食防止規則に基づく納税者に対する追加法人税の適用に関する決議107/2023/QH15に定められている。

  4. 所得合算ルール(IIR)
    1. IIRは、前記1.の構成事業体である最終親会社、部分所有親会社、中間親会社が、会計年度中のいずれかの時点で、軽課税国に所在する構成事業体の持分を直接的または間接的に所有する場合に適用される。
    2. 追加税は次の算式により算定される。
      追加税 = (追加税率 x 追加課税対象利益) + 当年度の追加調整税額(発生する場合) – QDMTT(発生する場合)

      ※追加税率、追加課税対象利益、当年度の調整追加税額、QDMTTの算式の詳細は、グローバル税源浸食防止規則に基づく納税者に対する追加法人税の適用に関する決議107/2023/QH15に定められている。

  5. 構成事業体またはその連合体が、会計年度において以下の条件をすべて満たす場合、当該年度のQDMTTまたはIIRはゼロとする。
    • 平均収益が1,000万ユーロ未満である。
    • 平均収入が100万ユーロ未満または損失である。

    平均収益および平均収入は決議107/2023/QH15および税源浸食・利益移転(BEPS)防止フォーラムのグローバルミニマムタックス規制に適合するベトナム政府の法規範に従って算定されると規定される。

    決議107/2023/QH15の施行細則を定めるグローバルミニマム課税(GMT)に関する政令236/2025/ND-CPは2025年8月29日に公布され、同年10月15日から施行。107号決議と政令236/2025/ND-CPは2024年会計年度から適用され、同政令により、「2024年会計年度」の定義として、2024年1月1日以降に開始する会計年度であると定められる(QDMTTが算定される構成事業体が、最終親会社の規定に従って2023年12月に開始日がある会計年度を2024年会計年度として特定する場合、同政令に定められる2024年度とみなされる)。

    107号決議によると、追加税率=最低税率-実効税率、とされている。

    • 最低税率=15%
    • 実効税率=ベトナムに所在する構成事業体の当該会計年度において、適用対象となるベトナムの法人税総額(調整後)÷ GMTに関する規定に基づく当該会計年度のベトナムにおける純所得

    236号政令により、追加税率が最低税率より大きい場合、追加税率は15%と明記される。

    なお、同政令により、次のとおりQDMTT負担軽減制度が適用される。

    1. 国際的な投資活動の初期段階におけるQDMTT負担軽減制度

      原則として、ベトナムにおける追加税額は、多国籍企業グループが国際的な投資活動の初期段階にある期間中は、ゼロとする。
      多国籍企業グループが国際的な投資活動の初期段階にあると認定されるのは、課税対象となる会計年度において、次の2つの条件を満たす場合である。

      1. 多国籍企業グループが、その会計年度中のいかなる時点においても、6カ国を超えない国に構成事業体を有していること。
      2. 基準国以外のすべての国に所在する構成事業体の有形資産の帳簿価額の合計が5,000万ユーロを超えないこと(基準国とは、GMTの対象となった最初の会計年度に、その多国籍企業グループが保有する有形資産の帳簿価額が最大だった国を指す)。
    2. 最低追加法人税額の完了済みによるQDMTT負担軽減制度

      ある国における適格な国内最低追加法人税額が、BEPSに関する多国間協議フォーラムによって公表されたリストに基づき責任軽減条件を満たしている場合、その国における本政令第7条に基づくベトナムでの追加税額は、ゼロと定められる。

    3. 移行期間におけるQDMTT負担軽減制度

      移行期間は2026年12月31日までに開始する会計年度(ただし、2028年6月30日の後に終了する会計年度を含まない)を指す。
      移行期間において、1カ国に所在する構成事業体全社のデータに基づいて、次のうちいずれか1つを満たせば、その国・地域での国際最低課税額はゼロとされる。

      1. 対象会計年度中、当該国の収益合計額が1,000万ユーロ未満、かつ、税引前利益が100万ユーロ未満(または損失)であること。
      2. 対象会計年度中、当該国の簡便な実効税率が、移行期間の基準税率(2023年・2024年開始会計年度は15%、2025年開始会計年度は16%、2026年開始会計年度は17%)以上であること。
      3. 当該国の税引前利益が、GMT規制に基づく実体ベース所得控除の金額以下であること。
      4. 基準を満たす連国収益報告書に基づいて損失があること。
    4. その他のQDMTT負担軽減制度

      会計年度における1国の追加税額(当該会計年度に係る調整済追加税額を除く)は、以下のいずれかの基準を満たす場合、ゼロとする。

      1. 通常利益基準(定常利益基準)
      2. 最低収益および所得の閾値に関する基準
      3. 実効税率に関する基準。
  6. 申告期限
    QDMTTについて:会計年度終了後12カ月以内
    IIRについて:会計年度終了後15カ月以内、初年度は18カ月以内。
主な関連法令
  • 法律14/2008/QH12:法人税法
  • 法律32/2013/QH13:法人税法14/2008/QH12号の一部改正・補足
  • 法律71/2014/QH13:法人税法32/2013/QH12号の一部改正・補足
  • 法律67/2025/QH15:法人税法(2025年10月1日施行)
  • 法律61/2020/QH14:投資法
  • 政令218/2013/ND-CP:法人税法の実施ガイドライン(2025年10月1日に失効するが、2025年9月12日現在は新政令が制定されていない)
  • 政令12/2015/ND-CP:税務について一部項目の追加・改正
  • 政令57/2021/ND-CP:政令218/2013/ND-CPおよび政令12/2015/ND-CPの改正
  • 政令126/2020/ND-CP:税務管理法の実施ガイドライン
  • 政令91/2022/ND-CP:政令126/2020/ND–CPの一部改正
  • 通達45/2013/TT-BTC:固定資産の管理、使用および減価償却に関する施行ガイドライン
  • 通達78/2014/TT-BTC:法人税法の施行ガイドライン
  • 通達26/2015/TT-BTC:付加価値税・税務管理・インボイスに関する施行ガイドライン
  • 通達96/2015/TT-BTC:通達78/2014/TT-BTCおよび通達119/2014/TT-BTCの改正・補足
  • 法律12/2022/QH15:石油法
  • 政令132/2020/ND-CP:移転価格税制に関する規定(2020年12月20日施行予定)
  • 通達41/2017/TT-BTC:移転価格税制の施行ガイドライン
  • 決議107/2023/QH15:グローバル税源浸食防止規則に基づく納税者に対する追加法人税の適用

二国間租税条約

日本、シンガポールなどと、二国間租税条約を締結済み。

現在、ベトナムは別添のリストに記載された各国・地域と二国間租税条約を締結済みである。

ジェトロ:二国間租税条約締結国リストPDFファイル(152KB)

日越二重課税防止協定

日越二重課税防止協定は、1995年10月24日にハノイで締結された。所得税および資産への二重課税防止に関する協定に関する規定は、財務省発行2013年12月24日付通達205/2013/TT-BTCにおいて定められており、二重課税防止の対象者となるのは、ベトナムにおける居住者(個人および団体)、二重課税防止協定を締結している国の居住者、あるいは両国で居住者となっている個人および団体となっている。この協定は、次の租税に適用される。

  1. ベトナムにおいて
    1. 個人所得税
    2. 利得税
    3. 利得送金税
    4. 外国契約者税(利得に対する税とみなされるものに限る)
    5. 外国石油下請契約者税(利得に対する税とみなされるものに限る)
    6. 使用料税
  2. 日本国において
    1. 所得税
    2. 法人税
    3. 住民税

短期滞在者免税制度

日越租税条約によれば、短期滞在者の所得税に対する免税措置を設けている。

  1. 免税条件
    次の3つの条件をすべて満たす場合は、免税規定の適用が可能である。
    1. 暦年内におけるベトナム国内の滞在期間が合計183日以下である。
    2. 当該滞在者への給与は、ベトナム法人またはベトナム国内の恒久的施設からは支払われていない。
    3. 当該滞在者への給与の負担も、ベトナム法人またはベトナム国内の恒久的施設により行われていない。
  2. 免税申請手続き
    財務省発行の通達80/2021/TT-BTCの62条第2項に基づき免税の適用を受けるためには、外国人がベトナム組織・個人と契約履行する15日前まで(実際は入国時点と考えられる)に、次の申請書類を税務署に提出しなければならない。
    1. 減免税の対象者向け通知(Form 01-HTQT)
    2. 申請者のパスポートの公証コピー
    3. 居住国の税務機関による居住証明(課税証明書)
    4. ベトナムにおける業務の任命状
    5. 対象の収入に関する証拠(契約・資格証明書など)

恒久的施設

日越二重課税防止協定において、恒久的施設については、「事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部または一部を行っている場所をいう」とされている。具体的には、事業の管理の場所、支店、事務所、工場、作業場、鉱山、石油または天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所、倉庫が例示され、加えて、次のものも恒久的施設となることが規定されている。

  1. 6カ月を超えて存続する建築工事現場もしくは建設、据付けもしくは組立ての工事またはこれらに関連する監督活動
  2. 6カ月を超えて行われるコンサルタント活動など(複数の関連事業について、12カ月の間に合計6カ月を超える期間存続する場合を含む)
  3. 企業に代わってその企業の名において契約を締結する権限を有し、かつこの権限を反復して行使する代理人(契約締結代理人であるが、後述の独立代理人である場合を除く)
  4. 3.の権限は有しないが、企業に代わって物品または商品を常習的に保有し、それらを反復して引き渡す代理人(在庫保有代理人であるが、後述の独立代理人である場合を除く)
  5. 保険料の受領または保険契約をする保険業者(保険PE)
  6. 継続する12カ月の間に30日を超える天然資源の探査活動

なお、当該企業のために、準備的または補助的活動のみを行っている場合には、その施設は恒久的施設とされることはない。また、一方の締約国の企業が、他方の締約国の者をその代理人とする場合であっても、その代理人が法的にも経済的にも当該企業から独立しており、かつ自身の通常の事業活動の一環としてその代理活動を行う場合には、独立代理人としてみなされ、前記3.4.に該当する場合であっても、恒久的施設には当たらないことが規定されている。

加えて、前述の規定にかかわらず、次の場合は「恒久的施設」には含まれない。

  1. 企業に属する物品または商品の保管、または展示のためにのみ施設を使用する場合
  2. 企業に属する物品または商品の在庫を、保管または展示のためにのみ保有する場合
  3. 企業に属する物品または商品の在庫を、他の企業による加工のためにのみ保有する場合
  4. 企業のために物品もしくは商品を購入し、または情報を収集することのみを目的として、一定の場所を保有する場合
  5. 企業のために、その他の準備的または補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、一定の場所を保有する場合
  6. a~eの活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として、一定の場所を保有する場合。ただし、当該一定の場所におけるこのような組み合わせによる活動の全体が、準備的または補助的な性格のものである場合に限る。

その他税制

個人所得税、付加価値税、外国契約者税などのほか、輸出入関税、特別消費税、天然資源税、環境保護税、非農地使用税などの国税がある。

個人所得税

納税義務者は居住者と非居住者に区分され、所得はその発生の源泉に応じて区分される。各所得の類型に応じた課税所得計算が規定されており、居住者と非居住者の区分により、課税対象となる所得の範囲と税率が異なる。

納税義務者

納税義務者は、次の条件により、居住者と非居住者に区分される。

  1. 居住者は、滞在日数や恒久的居所の有無により、次のように定義されている。
    概要 具体的な条件
    1年間の半数以上滞在する者
    • 暦年のうち、ベトナム国内に183日以上滞在している者
    • ベトナム入国日から起算した連続する12カ月間のうち、ベトナム国内に183日以上滞在している者
    ベトナム国内に恒久的な居所を有する者
    • 恒久的居所(外国人の場合、Residence Cardに登録された住居)を有する者
    • 契約期間が183日以上の賃貸住宅などを有する者(ホテル、事務所、作業場を含み、契約の名義が個人であるか法人であるかを問わない)

    なお、ベトナム入国日・出国日は、ベトナムに入国および出国する際のパスポート上の入国管理当局の証明に基づき判断し、また、入国日と出国日は各1日として計算される。2013年6月27日付の政令65/2013/ND-CPにより、ベトナムで183日以上の賃貸契約を行っているものの、暦年でベトナム滞在日数が183日未満である場合は、当該居住地国での居住を証明できれば、ベトナム非居住者として認定される。

  2. 前記1.の居住者に該当しない者は、非居住者となる。
  3. 前記1.2.には、ベトナム国外で就労・就学・研究をして課税所得を有するベトナム人や、ベトナムで所得を得ている外国人労働者およびベトナムに滞在していないがベトナム国内源泉所得を有する外国人も含まれる。

課税対象期間

  1. 居住者

    事業所得、給与所得の課税時期は、暦年とする。
    なお、投資所得など、給与所得および事業所得以外の所得の課税時期は、その所得が発生した時点となる。
    証券譲渡所得の課税時期は、暦年またはその所得が発生した時点となる。

  2. 非居住者
    非居住者は、所得発生の都度、申告義務を負い、確定申告は要求されていない。

居住者の課税所得と税率

  1. 居住者
    所得の源泉がベトナム国内・国外を問わず、全世界所得が課税対象となる。
  2. 非居住者
    原則として、ベトナム国内を源泉とする所得が発生した場合、非居住者もベトナムにおいて納税義務が発生する。
居住者・非居住者別各所得の類型に応じた税率
所得 居住者 非居住者
事業所得(個人事業者など) 0.5~5%
  • 物品販売:1%
  • サービス提供:5%
  • その他:2%
給与所得 5~35%(累進税率、詳細は次の表参照) 20%
投資所得 利益に対し5% 利益に対し5%
投資譲渡所得、資本譲渡益 利益に対し20% 取引額に対し0.1%
投資譲渡所得、証券譲渡益 取引額に対し0.1% 取引額に対し0.1%
不動産譲渡所得 取引額に対し2% 取引額に対し2%
ロイヤルティー所得 1,000万ドン超に対し5% 1,000万ドン超に対し5%
フランチャイズ料 1,000万ドン超に対し5% 1,000万ドン超に対し5%
賞金・獲得金からの所得 1,000万ドン超に対し10% 1,000万ドン超に対し10%
相続からの所得 1,000万ドン超に対し10% 1,000万ドン超に対し10%
贈与からの所得 1,000万ドン超に対し10% 1,000万ドン超に対し10%

給与所得の場合、納税者が、課税対象期間内に受け取ったすべての賃金・報酬・その他の収入の合計額が課税所得となる。居住者の給与所得の税率は、次のとおりである。

居住者の給与所得の累進税率
月次課税所得 税率 所得税の計算
500万ドン以下 5% 課税所得の5%
500万超~1,000万ドン以下 10% 課税所得×10%-25万ドン
1,000万超~1,800万ドン以下 15% 課税所得×15%-75万ドン
1,800万超~3,200万ドン以下 20% 課税所得×20%-165万ドン
3,200万超~5,200万ドン以下 25% 課税所得×25%-325万ドン
5,200万超~8,000万ドン以下 30% 課税所得×30%-585万ドン
8,000万ドン超 35% 課税所得×35%-985万ドン

非課税所得

非課税所得の詳細は、別添のとおり。

ジェトロ:所得税の非課税所得PDFファイル(394KB)

所得控除

  1. 基礎控除
    月1,100万ドン。
  2. 扶養控除
    被扶養者1人につき月440万ドン。

    被扶養者の要件は、次のとおりである。なお、扶養控除の適用を受けるためには、納税者は必ず税コードの登録が必要となる。

    扶養控除(○は扶養控除適用のための必要条件、―は条件不要)
    適用対象 年齢条件 無所得(注) 身体障害(注)
    子、養子、非摘出子 18歳未満
    18歳以上
    配偶者、配偶者の父母、父母 労働年齢(注)範囲超
    労働年齢範囲内
    祖父母、叔父、叔母、兄弟姉妹、甥姪
    ※納税者と生計を一にしていること。
    労働年齢範囲超
    労働年齢範囲内

    (注)

    • 労働年齢:男性の場合は18~60歳、女性の場合は18~55歳。なお、2021年1月1日施行の改正労働法により、定年退職年齢が引き上げられ、男性の労働年齢が18~62歳(2028年)、女性の労働年齢が18~60歳(2035年)となる。
    • 無所得:無所得、またはすべての所得の合計が月額100万ドン以下。
    • 身体障害:身体に障害があり、就業が実質的に困難であること。
    • 18歳以上の子、養子、非摘出子の場合、大学などに就学中であり、かつ無所得であれば、扶養控除の条件を満たす。
  3. 社会保険料控除
    社会保険(日本でいう国民年金・厚生年金)、健康保険、失業保険、特定の専門職に対して強制保険になっている専門職賠償責任保険は、所得税計算を行う際に控除対象となる。
    ベトナムに居住している外国人またはベトナム人のうち、ベトナム国外源泉の事業所得・給与所得を有し、かつ当該所得を得ている国において、ベトナムで控除が認められている社会保険などと同様の強制保険を支払っている場合は、ベトナムでの所得税計算を行う際に、当該ベトナム国外で支払った保険料を控除対象にできる。

申告・納税

財務省発行2021年9月29日付通達80/2021/TT-BTCによると、所得税を源泉徴収した法人に対する申告義務と、納税義務者が自ら申告義務を負う場合が、それぞれ規定されている。また、定期的な所得申告期日と非経常的な所得に関する申告期日を規定している。
とりわけ、給与所得については、次のように規定されている。

  1. 申告納税義務者
    1. 外国の法人から受け取る給与:給与を受給する個人(居住者、ベトナム国内の事由で生じた給与であれば非居住者も含む)が自ら申告納税
    2. ベトナム法人から受け取る給与:給与を支給するベトナム現地法人が申告納税
  2. 申告納税の期限は次のとおり。
    1. 月次申告:毎月20日
    2. 四半期申告:四半期終了の日から30日以内
    3. 年次確定申告:暦年終了の日から90日以内
  3. 月次申告と四半期申告の区分

    所得の支払地がベトナム国外の場合には、設立後の経過年数、前年売上高、月次源泉徴収税額にかかわらず、四半期の申告が必要である。所得の支払地がベトナム国内の場合には、設立後の経過年数、前年売上高、月次源泉徴収税額により、四半期申告か月次申告かの区分が、次のように定められている。

    所得の支払地がベトナム国内の場合(―は前年売上が存在しないか、源泉徴収税額による判定が不要の場合)
    設立後の経過期間 前年売上高 源泉徴収税額 月次・四半期
    12カ月未満 四半期
    12カ月以上 500億ドン以下 四半期
    500億ドン超 5,000万ドン未満 四半期
    500億ドン超 5,000万ドン以上 月次
  4. 控除・還付
    確定申告の際に、予定申告額がある場合には、当該税額を控除することができる。予定申告額が確定申告額を上回った場合には、還付申告をすることができる。
主な関連法令
  • 法律04/2007/QH12:個人所得税法
  • 法律26/2012/QH13:個人所得税法の一部条項の改正・補足
  • 法律71/2014/QH13:個人所得税法の一部条項の改正・補足
  • 決定954/2020/UBTVQH14:個人所得税法の人的控除の調整に関する決定
  • 政令65/2013/ND-CP:個人所得税法および改正個人所得税法の一部の詳細規定および実施ガイドライン
  • 政令12/2015/ND-CP:個人所得税法および改正個人所得税法の一部の詳細規定および実施ガイドライン
  • 通達111/2013/TT-BTC:個人所得税法の改正法に関する施行ガイドライン
  • 通達119/2014/TT-BTC:税務行政手続きの簡素化に係る省令の一部条項に対する改正・補足
  • 通達92/2015/TT-BTC:事業者の個人所得税および付加価値税の改正法に関する施行ガイドライン
  • OL 2994/TCT-TNCN:通達92/2015/TT-BTCを補足するオフィシャルレター
  • 法律38/2019/QH14:租税管理法
  • 政令126/2020/ND-CP:租税管理法の施行政令
  • 通達80/2021/TT-BTC:政令126/2020/ND-CPの施行細則
  • 通達69/2025/TT-BTC:付加価値税法の諸条項を詳述し、付加価値税法の諸条項の細則を定める2025年7月1日付政府の政令181/2025/ND-CPの実施を定める。

付加価値税

付加価値税(以下、VATという)とは、事業者が事業の過程で創出する付加価値に課される税金であり、日本の消費税と概ね同様の税金である。事業者は、課税対象となる財およびサービスの販売時に顧客からVATを徴収(以下、売上VATという)し、購入時にVATを支払う(以下、仕入VATという)。VATの計算方法は、控除法と直接法があり、控除法では、売上VATと仕入VATとの差額によって、納付税額を計算する。直接法は、課税対象価額に法令による税率を乗じて計算する。

納税義務者

VATの納税義務者は、次のとおり。

  • VAT課税対象となる物品またはサービスを生産、販売、輸入する組織・世帯および個人。
  • VAT課税対象となる物品またはサービスを輸入する組織・個人。
  • ベトナム国内事業活動のある組織・個人であり、ベトナムに恒久的施設を持たない外国の組織またはベトナムに居住していない外国人個人からサービス(物品を伴うサービスを含む)を購入する者。
  • [1]ベトナムに恒久的施設を有しない外国の供給業者であり、ベトナム国内の組織・個人と電子取引またはデジタルプラットフォームを通じたビジネス活動を行っている者、[2]外国の供給業者に代わって源泉徴収と納付を行う外国電子取引プラットフォームの管理者である組織、[3]ベトナムに恒久的施設を有しない外国の供給業者から電子取引経由またはデジタルプラットフォームを通じて購入したサービスに係るVATの計算方法を適用し、外国の供給業者に代わって源泉徴収および納付を行うベトナムの事業組織
  • 支払サービスを事業内容とするものであり、電子取引プラットフォームまたはデジタルプラットフォーム上で事業を営む事業者である世帯・個人に代わって源泉徴収、納付の代行および源泉徴収税額の申告を行う電子取引プラットフォームまたはデジタルプラットフォームの管理者である組織。

課税対象となる財およびサービス

ベトナム国内において製造、販売、消費される財およびサービスで、海外から輸入したものも含む。ただし、社会政策的な見地から、一部の財およびサービスは課税対象から除かれている。詳細は、別添のとおり。

ジェトロ:付加価値税が課税対象外となる財およびサービスPDFファイル(207KB)

税率

標準税率は10%であるが、社会政策的な見地から、一部の財およびサービスに0%と5%が適用されている。

税率 適用される財およびサービス
0%

輸出

  • 輸出品(海外への販売、輸出生産活動における直接の使用・消費を目的としたベトナム国内から非関税地域への商品の販売、出国手続きを完了した外国人・ベトナム人への隔離エリア内における販売、免税店での販売を含む)
  • 輸出サービス(外国企業などに直接提供され外国で消費されるもの、非関税地域における輸出生産活動に直接貢献するサービス提供(EPE企業向けの物流サービス全般(運搬サービス、港・工場・倉庫でのコンテナの積み下ろしサービス、工場・港・空港での積み込み・積み下ろしサービス)、およびこれらに付随的に発生する費用(書類作成費用、デリバリー・オーダー料、封印費用、貨物取扱費用、梱包費用)、その他非関税地域における組織に提供され、輸出生産活動に直接貢献するサービス)を含む)
  • 国外および非関税地域での建設据付サービス、国際輸送

なお、0%税率の対象外活動が明記された。

  • 海外への技術移転・知的財産権の譲渡
  • 海外への再保険サービス
  • 信用供与サービス
  • 資本譲渡
  • デリバティブ商品
  • 郵便・通信サービス
  • 非課税対象に該当する輸出商品
  • 輸入後に輸出されるたばこ、酒、ビール
  • 国内で購入され、非課税地域内の事業所に販売されるガソリン、石油
  • 非課税地域内の組織または個人に販売される自動車
5%

必需品/必需サービス

水、肥料、教育助成、児童用書籍、食料品、医薬品および医療機器、畜産物、沖合漁船や農業用の特別な機器、農産品、農業サービス、科学技術サービス、基礎化学品など

10%

標準税率

その他の財およびサービスで、0%または5%の課税対象と規定されていないもの

  1. 税率0%を適用する条件
    輸出取引のVAT0%を享受するためには、次の条件をすべて満たさなければならない。
    ただし、EPE(輸出加工企業)の輸出生産に直接貢献する商品や提供サービスの適用税率は基本的に0%となるが、当該企業がベトナム国内向けの販売などを行う場合の適用税率および手続きは異なる可能性がある。
    1. 契約書を有する
    2. 銀行送金証明書などの法定の書類を有する
    3. 財の輸出取引の場合、通関書類を有する
  2. 税率の引き下げ

    ベトナム政府は2025年6月30日に政令174/2025/ND-CPを採択し、2025年7月1日から12月31日まで、VATの10%税率の対象である商品の販売およびサービスの提供に対し、税率を8%に引き下げる。ただし、電気通信、財政、銀行、証券取引、保険、不動産事業、金属および金属製品、鉱業生産物(石炭鉱業を含まない)は減税措置の対象外で、具体的なHSコードは政令174/2025/ND-CPの付録書Ⅰで定められている。同政令の付録書Ⅱで定められている特別消費税の対象商品(ガソリンを除く)・サービスも、減税措置の対象外となっている。

仕入VAT控除要件

売上VATから仕入VATを控除するには、次の書類を備えていなければならない。

  1. 公式インボイスまたは外国契約者に代わって外国契約者税を納付した場合の納税証明書(外国事業者に代わり売上高にパーセンテージを乗じてVATを納税した証明書を含む)
  2. 銀行送金証明書(500万ドン以上の取引の場合)

    同じ納税者から商品・サービスを複数回に分けて購入した場合で、1回当たりの購入額が500万ドン未満であっても、同日中の合計購入額が500万ドン以上になる場合は、非現金決済の証明書類がある場合にのみ税額控除が認められる。

    特定の場合には、次のとおり留意すべき事項がある。

    1. 契約書に明記された仕入代金と販売代金の相殺による決済:両者間の相殺に関する対照確認書が必要である。第三者を介して債務を相殺する場合は、三者間の債務相殺確認書が必要となる。
    2. 契約書に明記された借入金などの債務相殺による決済:書面で作成された金銭借入契約書、送金が賃貸人口座から賃借人口座までに行われたことを証明する書類が必要である。
    3. 第三者を通じた非現金の代理決済(売り手が買い手に指定第三者への支払を求めた場合を含む):代理決済または指定第三者への支払が明記された契約書、かつ、当該第三者がベトナムの法令に従って事業活動を行っている組織または個人でなければならない。
    4. 株式、債券による仕入代金の決済:作成された契約書。
    5. 前記a、b、c、dの決済方法を実行した後、金銭で支払われる残りの代金が500万ドン以上である場合、控除は非現金決済の証明書類がある場合のみ認められる。
    6. 権限のある国家機関の決定に基づき、他の組織や個人が保有する金銭や資産を徴収する強制措置を執行するため、第三者の国庫口座への非現金決済による商品・サービス購入の決済:当該第三者の国庫口座へ振り込まれた金額に対応する仕入付加価値税の控除が認められる。
    7. 後払い・分割払いでの購入:原則として、500万ドン以上の後払い・分割払いによる商品・サービスの購入については、事業者は書面による購入契約書、付加価値税インボイス、および後払い・分割払いによる商品・サービスの非現金決済の証明書類を持って、仕入付加価値税を控除することが可能である。
    8. 1回の輸入額が500万ドン未満の商品・サービス、または1回の仕入額が500万ドン未満(税込価格)の商品・サービス、および外国の組織・個人からの贈答品・サンプル品など無償で輸入された商品については、非現金決済の証明書類は不要である。
    9. 従業員による代理決済:付加価値税の課税対象となる商品・サービスを生産・事業活動に供するために購入する際、事業者の財務規程または内部規程に基づいて従業員が購入代金を非現金で支払い、その後事業者が従業員に非現金で払い戻す場合、仕入付加価値税の控除が認められる。
  3. 輸出取引の場合:契約書、物品販売・サービス提供に関するインボイス、銀行送金証明書、通関申告書、梱包リスト・船荷証券・物品の保険証明書(もしあれば)
  4. ベトナム国外の電子商取引プラットフォームを介した輸出やその他の特殊なケースについては、ベトナム国外で商品を販売したことを証明する書類(プラットフォーム経営者との契約書、インボイス、非現金決済の証明書類、輸出通関が完了した旨示す申告書、外国購入者への納品完了に関する証明書類、梱包リスト・船荷証券・物品の保険証明書(もしあれば)が必要である。

なお、2016年以後、通達173/2016/TT-BTC第1条により、税務署への銀行口座番号の登録は、VAT控除の要件ではなくなった。

VAT還付

原則、ベトナムのVATには年度確定申告の制度がないため、仕入VATが売上VATを超過している場合は、当該超過額を翌課税期間に繰り越す。また、一定の条件の下で、当該超過額の還付も認められている。なお、2016年7月施行の法律106/2016/QH13により、VAT還付は条件が厳しくなっており、留意が必要である。
主として、次の場合にVAT還付が可能となる。

  1. 投資段階にある新規投資プロジェクトを有する新規設立企業を含む事業所に対する仕入VATの還付要件
    • 3億ドン以上の仕入VATの残高が生じていること
  2. 輸出売上から生じた仕入VATの還付要件
    1. 国内売上に係る売上VATと相殺後の仕入VAT残高が3億ドン以上生じていること
    2. 仕入VAT残高が輸出売上高の10%以下であること

    申告・納税

    月次申告が原則となるが、前年の売上金額が500億ドン以下の場合は四半期申告が可能となる。設立後12カ月が経過していない企業については、四半期申告を行い、12カ月経過後の最初の暦年により判定を行う。月次申告は翌月20日まで、四半期申告は翌月30日までに行うことが要求されており、納税期限も同様となる。

    自社インボイスの発行

    ベトナムでは、事業者が商品販売・役務提供を行う場合は、公式インボイス(レッドインボイス)の発行が必要とされる。
    レッドインボイスには、VATインボイス、販売インボイス、公有財産販売用の電子インボイス、国家備蓄品販売用の電子インボイス、電子商取引インボイス、その他のインボイス、インボイスとして使用される証憑の7種類があり、それぞれインボイスの発行方法には、[1]税務署から購入したインボイスを使用する方法、[2]電子インボイスを使用する方法(政令123/2020/ND-CPにおいてインボイスの詳細および施行ガイドラインが定められている)がある。
    なお、2020年10月19日付政令123/2020/ND-CPにより、電子インボイスの適用は2022年7月1日以降に義務化された。

    主な関連法令
    • 法律48/2024/QH15:付加価値税法
    • 政令126/2020/ND-CP:租税管理法の施行政令
    • 政令181/2025/ND-CP:付加価値税法の詳細および施行ガイドライン
    • 政令123/2020/ND-CP:インボイスおよび証書に関する政令
    • 通達69/2025/TT-BTC:政令181/2025/ND-CPの施行ガイドライン
    • 通達119/2014/TT-BTC:通達219/2013/TT-BTC の改正・補足
    • 通達26/2015/TT-BTC:付加価値税・税務管理・インボイスに関する通達
    • 通達32/2025/TT-BTC:政令123/2020/ND-CPの施行ガイドライン
    • 通達130/2016/TT-BTC:通達219/2013/TT-BTC の改正・補足
    • 通達93/2017/TT-BTC:通達219/2013/TT-BTCの一部改正・補足
    • 政令174/2025/ND-CP:国会の2025年6月17日付決議書第204/2025/QH15に伴う付加価値税の減税策の細則

    外国契約者税(FCT)

    外国契約者税(以下、FCTとする)とは、外国の個人または組織(以下、外国契約者)が、ベトナムの個人または組織(以下、ベトナム契約者)との間で締結した契約に基づき、サービスなどを実施する際に、ベトナム居住者であるか否か、あるいは、ベトナムに恒久的施設があるか否かにかかわらず、ベトナム国内において得た所得や付加価値に対して課せられる税金で、法人所得税(CIT)部分と付加価値税(VAT)部分から成る。

    FCTは、投資法に基づく投資形態以外でベトナム企業に対してサービスなどを実施する外国契約者へ課される。なお、FCTと租税条約が相反する場合は、租税条約の規定が優先される。

    納税義務者と税金負担者

    FCTの負担者は外国契約者であるが、一般的には契約代金を外国契約者へ支払う際に、ベトナム契約者がFCTを源泉徴収し、申告納税義務を履行する。

    非課税事業者

    次のような外国契約者は、課税対象とはならない。

    1. ベトナム国内に、ベトナムの法律に基づいて設立された外国法人または個人
    2. サービスの提供を伴わない物品の販売を行う外国法人または個人
    3. ベトナム国外で提供され、かつ消費されるサービスを行う外国法人または個人
    4. 航空機や船舶などの輸送手段の修繕、広告宣伝サービス、トレーニングサービスなどを、ベトナムの企業や個人にベトナム国外で提供する外国法人または個人

    税額計算方法

    FCTは、課税対象収入に外国契約者税率(みなしVAT率、またはみなしCIT率)を乗じて計算された、みなしVATとみなしCITの合計により計算される。

    1. みなしVAT
      外国契約者との契約に基づく、ベトナム国内で消費されるサービスの提供および商品に付随するサービスに関する総収入(ベトナム側が外国人契約者の代わりに支払う費用を含む)に、みなしVAT率を乗じて計算される。
      なお、ベトナムの契約者は、外国契約者の代わりに納税した、みなしVAT額の納税証明書を根拠として、自らのVAT計算の際に、当該VAT金額を控除することができる。
    2. みなしCIT
      外国契約者との契約に基づく、サービスの提供および商品に付随するサービスに関する総収入(VAT除く)に、みなしCIT率を乗じて計算される。

    なお、この税額計算方法の他に、控除法やハイブリッド法も認められているが、ベトナム会計システムなどに基づいた所得と付加価値の計算が必要とされる。そのため、それらの計算方法は一般的には採用されておらず、前述の税額計算方法(直接法)が採用されている。

    税率表

    直接法による、みなしVAT率および、みなしCIT率は、次のとおりである。

    税率表(-はみなしVATの適用がない)
    業種 みなしVAT税率 みなしCIT税率
    サービスが付随する物品販売 1%
    サービス一般、機械設備のリース、保険サービス 5% 5%
    レストラン・ホテル・カジノの管理サービス 5% 10%
    デリバティブ取引 2%
    航空機・航空機エンジン・航空機部品・船舶のリース 5% 2%
    建設・据付(資材・機械設備の供給を伴わない) 5% 2%
    建設・据付(資材・機械設備の供給を伴う)、運輸サービス 3% 2%
    その他の事業 2% 2%
    有価証券譲渡、海外への再保険、再保険手数料 0.1%
    利子 5%
    ロイヤルティー 10%

    申告・納税

    直接法の場合、FCT課税対象取引の発生の都度、10日以内に申告・納税を行い、また、当該FCT課税対象取引の契約終了後45日以内に申告・納税しなければならない。
    なお、FCTを申告するためには、FCTの課税対象となる契約の締結日から20日以内に、外国契約者の税コード登録が必要となる。

    外国契約者に対する二重課税防止協定に基づく税金の免除・減免

    外国契約者は、二重課税防止協定に基づく税金の免除・減免を適用されるために、免除・減免を申請することが必要である。

    1. 控除法の場合、法人所得税を仮計算する際、納税者は四半期ごとの法人所得税の仮納付の時期に合わせて、税務機関に免除・減免の申請書類を提出しなければならない。
    2. 直接法および混合法の場合、税申告期限の15日前までに、外国契約者または外国契約者に対して契約を締結したり、所得を支払ったりするベトナム側の当事者は、税務機関に免除・減免の申請書類を提出しなければならない。

    また、数年間で所得が発生すれば、初年の免除・減免の申請書類を提出済みの場合、翌年以降は、ベトナムおよび外国の組織・個人と新たに締結した契約のコピー(納税者の確認あり)のみを提出しても良い。

    主な関連法令
    • 通達103/2014/TT-BTC:外国契約者税の施行ガイドライン
    • 通達69/2025/TT-BTC:政令181/2025/ND-CP の施行ガイドライン
    • 通達86/2024/TT-BTC:税コード登録に関する税管理ガイドライン
    • 法律38/2019/QH14:租税管理法
    • 通達80/2021/TT-BTC:政令126/2020/ND-CPの施行細則

    輸出入関税

    関税制度」の項目を参照。

    特別消費税(ET)

    国会発行2008年11月14日付の特別消費税法27/2008/QH12などに基づき、たばこや酒類、24席未満の自動車、飛行機、ヨットなどの物品や、ダンスホール、マッサージ、カジノなどのサービスに対して、課税価額に各税率を乗じて課税される。寄付や再輸出を目的とする輸入物品、貨物や旅客の輸送目的の飛行機やヨットなどは免税される。

    納税義務者

    納税義務者は、課税対象物品の生産者、輸入者、課税対象サービスの提供者である。また、課税対象物品を生産者から輸出目的で購入後、実際にはベトナム国内へ販売した場合の当該販売者も納税者に該当する。

    課税価額計算

    1. 国内製造品の場合

      課税価額 = (付加価値税抜き価額 - 環境保護税〔ある場合〕)÷(1+特別消費税率)

    2. 輸入品の場合

      課税価額 = 輸入税の課税価額 + 輸入税

    なお、販売価格が通常の市場取引価格に従わない場合、税務当局は、税管理規定に基づき課税価額を決定することができる。また、特別消費税の課税対象物品を関連会社に販売する場合、課税対象販売価額が非関連会社に対する月次平均販売価額を7%下回ることは認められない。

    税率

    国会発行2014年11月26日付の特別消費税の改正法70/2014/QH13、および国会発行2016年4月6日付の付加価値税法、特別消費税法および税管理法の改正・補足法106/2016/QH13において、各課税対象品に対する税率を定めている。2026年1月1日から適用される税率は2025年6月1日付の特別消費税法66/2025/QH15により制定された。詳細は別添のとおり。

    ジェトロ:特別消費税率の一覧表PDFファイル(292KB)

    営業許可税(事業登録税)

    財務省発行2016年11月15日付通達302/2016/TT-BTC、および2020年2月24日付政令22/2020/ND-CP、政令126/2020/ND-CPにより一部改正された政府発行2016年10月4日付政令139/2016/ND-CPに基づき、生産・事業活動を行う組織や個人に対して、登録資本金額、または年間売上額に応じて営業許可税が課税される。

    申告期限

    新設企業の場合は、設立初年度の翌年1月30日までに申告を行う。当初申告額から変更が生じない場合は、翌年以降の申告は不要とされる。また、仮に翌期の申告額が変化する場合は、翌年1月30日までに申告が必要となる。

    納税期限

    営業許可税は、毎年1月30日までに納税する。

    申告納税額

    生産・事業活動を行う組織に対する営業許可税額は、企業登録証明書(ERC)に記載される定款資本金額により決定される。定款資本金額がない場合は、投資登録証明書(IRC)に記載される投資額によって決定される。なお、2017年1月1日以後、139/2016/ND-CPに基づき、ベトナム現地法人の駐在員事務所も、課税対象とされている。

    レベル 資本金額(ドン) 年間事業登録税額(ドン)
    レベル 1 100億超 300万
    レベル 2 100億以下 200万
    レベル 3 支店、駐在員事務所、事業拠点、
    その他の経済組織
    100万

    生産・事業活動を行う個人などに対する営業許可税額は、次のとおり年間売上高により決定される。

    レベル 年間売上高(ドン) 年間事業登録税額(ドン)
    レベル 1 5億超 100万
    レベル 2 3億超~5億 50万
    レベル 3 1億~3億 30万

    なお、自営業者から事業形態を変更した中小企業については、設立日より3年間、その支店、駐在員事務所および営業所を含め、事業登録税が免除され、当該免除期間が暦年の下半期に終了する場合は、その年税額の50%を申告・納税する。

    天然資源税

    財務省発行2015年10月2日付の通達152 /2015/TT-BTCおよび2016年2月26日付通達36/2016/TT-BTCに基づき、ベトナムが指定する石油、鉱物、森林資源、水産物、天然水などの開発には、天然資源税が課税される。
    国会発行2009年11月25日付の天然資源税法45/2009/QH12において、各課税対象品に対する税率の上限と下限を規定しており、具体的な税率は、国会常任委員会発行2015年12月10日付の議決1084/2015/UBTVQH13により1~35%の範囲で定められている。
    なお、政府が国の発展にとって重要とみなすプロジェクトに関しては、税率を引き下げる場合もある。また、ベトナムの合弁パートナーなどが天然資源を資本の一部として出資している場合は、この税が免除されることもある。

    環境保護税

    2010年11月15日公布の環境保護税法57/2010/QH12および財務省発行2011年11月11日付の通達152/2011/TT-BTCなどに基づき、課税対象品を製造または輸入している企業・個人は、課税数量に従量税率を乗じた金額により課税される。

    課税対象品および税率

    環境保護税法57/2010/QH12では、各課税対象品に対する税率の上限と下限を規定しており、具体的な税率は、国会常任委員会発行2018年9月26日付の議決579/2018/UBTVQH14(2024年12月24日付の議決60/2024/UBTVQH15による一部改正)により定められている。

    課税対象品 単位 従量税 (ベトナムドン/単位)
    石油 ガソリン(エタノールを除く) リットル 4,000(2,000)※注
    飛行機の燃料 リットル 3,000(1,000)※注
    ディーゼル油 リットル 2,000(1,000)※注
    パラフィン油 リットル 1,000(600)※注
    Mazut油 リットル 2,000(1,000)※注
    潤滑油 リットル 2,000(1,000)※注
    グリース キロ 2,000(1,000)※注
    石炭 褐炭 トン 1万5,000
    無煙炭 トン 3万
    瀝青炭 トン 1万5,000
    その他 トン 1万5,000
    HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)(HCFCを含有する混合物を含む) キロ 5,000
    ビニール袋 キロ 5万
    使用制限付き除草剤 キロ 500
    使用制限付き殺ヤモリ剤 キロ 1,000
    使用制限付き木材保存剤 キロ 1,000
    使用制限付き殺菌剤 キロ 1,000

    ※注:2025年1月1日から12月31日までは、減税措置としてカッコ内の税額が適用される。

    課税数量

    • 国内製造品の場合:販売、交換、内部消費、または寄付される製造品数量
    • 輸入品の場合:輸入数量

    課税時点

    • 販売・交換・寄付:所有権が引き渡された時点
    • 社内使用:実際に使用された時点
    • 輸入:通関申告書の提出時点

    なお、販売目的で輸入されるガソリンの場合は、販売時点で課税される。

    申告・納税

    環境保護税は、製品製造または輸入時に1度だけ課税される。

    • 国内製造品の場合:翌月20日までに申告・納税
    • 輸入品の場合:輸入税とともに申告・納税

    還付

    次の場合、納税者は環境保護税の還付を受けることができる。

    • 国境で保管される商品を再輸出する場合
    • ベトナムにおける代理人を通じた海外への販売目的で輸入される商品、または、ベトナムの港に入港する外国の船舶や国際輸送の用に供するベトナムの船舶に販売されるガソリンおよび油の場合
    • 一時輸入し再輸出される輸入商品の場合
    • 輸入者が輸入商品を再輸出する場合
    • 商品見本市、展示会、紹介などのための輸入商品を再輸出する場合

    非農地使用税

    国会発行2010年6月17日付の非農地使用税法48/2010/QH12に基づき、課税非農地面積に平米単価および税率を乗じた金額により、非農地使用税が課税される。一定の要件を満たす投資案件に対しては、免税・50%減税の優遇措置も認められている。

    納税義務者

    次の土地に対する使用権を有する個人・組織は、非農地使用税の納税義務者となる。

    • 農村・都市部における宅地
    • 工業・商業用の非農地:工業団地開発用の土地、生産拠点建設用の土地、鉱物発掘用の土地、建設資材生産用の土地、陶磁器生産用の土地
    • 事業目的で利用される他の非農地

    申告・納税

    申告納税の詳細は2019年6月13日付租税管理法38/2019/QH14に規定されている。

    申告期限

    申告内容に変更がある場合や納税者が変更になった場合には、変更となった日から30日以内に申告書を提出しなければならない。

    納税期限

    非農地使用税は、毎年2回、5月31日と10月31日に納税する。