外国企業の会社設立手続き・必要書類

最終更新日:2023年12月15日

外国企業の会社設立手続き・必要書類

マレーシアにおける外国企業の進出形態は、主に次の3種類である。
1. マレーシアの会社法(Companies Act 2016)により設立される現地法人、2. 外国で設立された法人のマレーシア支店、3. 駐在員事務所・地域事務所

管轄官庁

現地法人設立手続き

外国企業がマレーシアで会社を設立する場合、株式有限責任会社(Company Limited by Shares)を選択するのが一般的なため、ここでは株式有限責任会社の設立手続きを説明する。株式有限責任会社は、公開会社の場合は社名の後に「BHD.」、非公開会社の場合は社名の後に「SDN. BHD.」を付ける。「SDN. BHD.」はマレー語のSendirian Berhadの略で、Private Company Limitedの意味である。

2017年1月31日より、2016年会社法(Companies Act 2016)が一部を除いて施行された。これに伴い、現地法人の設立および届出等は、オンラインで行えることとなった。

2016年会社法(Companies Act 2016PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(19.4MB))(マレーシア会社登記所(CCM))

現地法人の設立手続きは、ネームサーチと呼ばれる社名の使用許可申請、および、社名使用許可後の設立登記書類の提出から成る。

  1. 会社名の使用許可申請(ネームサーチ)

    会社設立に際しては、まずネームサーチ申請書(会社法Section 27(1)(4))を使用して、マレーシア会社登記所(CCM)に希望する会社名のネームサーチ(社名使用許可申請)を行い、許可を得る必要がある。オンラインでの申請により、半日から1日で結果を得ることができる。ハイフンやドットを入れた社名は認められている。社名についてのガイドラインは、次のマレーシア会社登記所(CCM)ウェブサイトを参照。

    社名に関するガイドライン "Guidelines on Company Names (also refer Gazette Notification for Application of Company NamePDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(210KB))"

    なお、社名使用の許可は30日間有効である。別途、延長申請を行い承認されない限りは、この間にCCMにオンラインで登記書類を提出し、会社設立の登記を行わなければならない。

  2. 書類の提出および会社設立

    スーパー・フォームと称される登記申請書に必要事項を記入の上、取締役による宣誓書等を添付し、登記料1,000リンギを支払った上で、オンラインでCCMに申請する。CCMから設立登記完了の通知(Notice of Registration)を受領すれば、登記手続きの完了となる。

    登記料、届け出料等:2017年会社規則(CCM) "Companies Regulations 2017PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(630KB)"

  3. 設立後の義務
    会社設立後、30日以内に会社秘書役を任命しなければならない。
  4. 監査済財務諸表

    株式有限責任会社の場合、設立時は設立日から18カ月以内、その後は会計年度末から6カ月以内に株主に監査済財務諸表を送付し、送付日から30日以内にCCMに届出なければならない。会社法では、定款に定めのない限り、年次総会を開催する必要はなくなった。

    2016年会社法に関する法令、ガイドライン、通知等(CCM) "Companies Act 2016外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

  5. 実質的所有者(Beneficial Owner)の情報
    CCMは、2020年2月27日付で、「法人の実質的所有者の報告枠組みのガイドライン」(Guidelines for the Reporting Framework for Beneficial Ownership of Legal Person)を公開した。本ガイドラインの概要は、以下のとおり。
    1. 本ガイドラインは、会社(マレーシアの会社およびマレーシア国外の会社)などの法人が、[1]自社の実質的所有者の最新情報を取得・維持・更新すること、および[2]当該情報をCCMに通知することの義務について、理解し遵守する助けとなるために発行されたものである。
    2. 実質的所有者とは、会社等を所有または支配する自然人のことであり、会社であれば20%以上の株式または議決権を直接または間接に保有するか、株式以外の方法で当該会社の支配権を持つ個人を指す。
    3. 必要な実質的所有者の情報には、氏名、住所、国籍、誕生日、ID/パスポート番号、実質的支配者になった日が含まれる。
    4. マレーシア中央銀行のライセンスを有する会社や上場会社などは、本報告枠組みの対象外とされる。

    前記[1]および[2]の義務の適用時期については、ガイドラインでは、経過措置期間として2020年3月1日から2020年12月31日までは[1]のみ、経過措置期間終了後の2021年1月1日以降には[2]も適用すると規定していた。この点、関連する会社法の改正法案が施行されるまで、前記[1]の経過措置期間が延長されることが、2020年12月17日付で発表された(ガイドラインにおける経過措置期間の延長)。2023年7月現在、会社法の改正法案は国会に提出されておらず、したがって、前記[2]の通知義務の導入時期は未定である。通知義務が導入されるまでは、各会社は、自社で実質的所有者の情報を取得・維持・更新していくことが求められている。

    法人の実質的所有者の報告枠組みのガイドライン(CCM) "Guidelines for the Reporting Framework for Beneficial Ownership of Legal PersonsPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(768KB)"

支店登記手続き・必要書類

外国企業の支店の登記は、マレーシア会社法に基づいてCCMで行う。その際、外国企業に代わって書類や通知を受理する権限を有する居住者をエージェントとして、所定フォームに従って選任しなければならない。エージェントは、会社法により外国企業に課せられているすべての事項に対して報告する義務があり、裁判所がエージェントに責任がないと判断した場合を除き、会社法上の違反を犯した外国企業に課せられるすべての刑罰について責任を負わなければならない。
なお、「流通取引・サービスへの外国資本参入に関するガイドライン」(MDTCCガイドライン)では、卸・小売業においては、支店開設が認められていない。このガイドラインは法令ではないが、多くの日系企業の支店設立を事実上難しくしている。

支店登記の手続きは、次のとおり。

  1. 支店名の使用許可申請
    登記予定の社名はCCMの許可を得る必要があり、オンラインで申請する。申請から1~2日で、社名使用の可否について回答が得られる。
  2. 書類の提出
    CCMへの登記に必要な書類は、次のとおり。
    1. 本社の登記簿謄本および定款(英訳し、公証人の認証を受けたもの)
    2. 取締役リスト
    3. エージェント選任に関する宣誓書およびエージェント選任書(英文で、公証人の認証を受けたもの)
  3. 登記料
    外国法人の支店登記料(株式会社の場合)
    資本額 登記料
    100万リンギ以下 5,000リンギ
    100万超1,000万リンギ以下 20,000リンギ
    1,000万超5,000万リンギ以下 40,000リンギ
    5,000万超1億リンギ以下 60,000リンギ
    1億リンギ超 70,000リンギ

    なお、株式資本を有しない会社の登記料は、7万リンギ。

    登記料の支払いを含め、すべての書類を整えてCCMに提出すれば、1~2日で外国企業の登記証書(Notice of Registration of a Foreign Company)(会社法Section 562(3)(b))が発行され、登記が完了する。

  4. 登記後の義務
    登記後1カ月以内に、登記事務所住所の通知(会社法Section 567(1))をCCMに提出する。
    登記された支店は、現地法人と同様、会計監査および税務申告を行い、会社法の規定に従わなければならない。
    支店の義務には、次のようなものがある。
    • 年次報告書は、毎年、支店登記日から30日以内にCCMに提出する。
    • 本社および支店の財務諸表を、年次株主総会後2カ月以内にCCMに提出する。
    • 本社取締役の変更等、登記内容に変更があれば変更後14日以内に、授権資本の引き上げ・増資等については変更後30日以内に、CCMに届出を行う。

駐在員事務所・地域事務所設立の手続きと必要書類

外国企業が駐在員事務所(Representative Office)および地域事務所(Regional Office)を設立する際には、所定フォームに次の書類などを添付して、マレーシア投資開発庁(MIDA)に申請する。申請は、MIDA e-TRANSポータルを通じてオンラインで行う。

  1. 直近2年分の会計報告書(英文)
  2. 申請会社の登記簿謄本(英訳し、公証人の認証を受けたもの)
  3. 会社案内、製品カタログなど(英文)
  4. 他の所轄官庁からの認可書(必要な場合)
  5. 駐在員を置く場合は、当該駐在員に関する次の書類も必要である。
    1. 英文卒業証書(True copyとして認証されたもの)
    2. 英文履歴書
    3. パスポートコピー(True copyとして認証されたもの)

MIDA:ガイドライン "GUIDELINES FOR SETTING UP A REPRESENTATIVE OFFICE(RE)/ REGIONAL OFFICE(RO)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(129KB)"
MIDA e-TRANSポータル(MIDA e-TRANS portal外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

書類提出から認可取得までの所要期間は約2カ月である。認可期間は通常2~3年であるが、場合によっては延長も可能。駐在員事務所および地域事務所は、主として将来の工場建設に向けた事前調査をはじめ、マレーシアにとって有益と認められる活動を目的とした非営利活動に限定して認可されている。

駐在員事務所・地域事務所の主な認可条件は、次のとおり。

  1. 主な活動内容は、マレーシアにおける投資や原材料・部品調達に関する情報収集、事業企画、研究開発、関係会社間のコーディネート、および本社への報告とし、直接商取引に結びつくような営業活動を行ってはならない。
  2. 駐在員の就労には、出入国管理局から正式な雇用パスを得る必要がある。
  3. 独立した事務所を構え、事務所設置後14日以内に、その住所をMIDA宛に通知する。
  4. 「駐在員事務所」または「地域事務所」であることを明示した看板を掲示する。
  5. 毎年、活動報告書をMIDAに提出する。

これらに加え、事務所として年間30万リンギ以上の費用支出と、それを証明する書類の提出が求められている。。1回目の延長の場合は、年間60万リンギ以上の費用支出、複合企業体に限りさらに延長する場合は年間100万リンギの費用支出が必要となる。

また、駐在員事務所の駐在員は通常の個人所得税の対象となるが、地域事務所の駐在員に関しては、税制上優遇されており、マレーシア滞在日数分に基づく課税対象所得についてのみ課税される。

なお、金融機関の駐在員事務所設立は、マレーシア中央銀行に申請する。

マレーシア中央銀行(Bank Negara Malaysia外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます):

観光関連サービス・事業に関する駐在員事務所設立の申請は、観光・芸術・文化省に対して行う。

観光・芸術・文化省(Minister of Tourism, Arts and Culture外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

これ以外のサービス業についても、申請時にMIDA外国投資部(Foreign Investment Division)へ個別に要件を確認することが推奨される。

外国企業の会社清算手続き・必要書類

現地法人の清算には、株主による任意清算、債権者による任意清算、裁判所の命令による清算がある。日系企業の現地法人の場合、株主による任意清算が一般的に行われている。なお、これに加え2016年会社法には会社再生手続きの規定が設けられており、2018年3月1日から、この規定が施行された。

ジェトロ調査レポート 「マレーシアにおける事業閉鎖及び清算に関するガイド(2019年3月)」を参照。

関連法規:

その他

特になし。