日系企業対象に「新会社法セミナー」開催-規定は簡素化の方向、2017年後半に施行の見通し-

(マレーシア)

クアラルンプール発

2016年07月12日

 ジェトロは6月29日、在マレーシア日系企業を対象に「マレーシアビジネスセミナー」をクアラルンプール市内で開催し、クォンタムコンサルティングサービスの竹ノ山千津子代表取締役が「新会社法に備えて」と題して講演した。2017年後半に施行されるとみられる新会社法では、現行の会社法と比較して規定は全般的に簡素化されるものの、留意を要する規定もあるとのことだ。

<年次総会の開催は選択制に>

 新会社法案は44日に下院を通過し、同月28日には上院を通過した。今後は国王の勅許を経て、2017年後半に施行されるのではないかとみられている。竹ノ山氏はマレーシアで多くの日系企業の活動形態に該当する非公開株式有限責任会社(Sdn. Bhd.)向けの変更点を中心に、以下のように説明した。

 

 新会では、日本企業の株主総会に相当する年次総会の開催は会社の判断に委ねられる(表参照)。ただし、定款に開催を義務付ける規定がある場合や10%以上の株主が開催を要請した場合は、会社は年次総会を開かなければならない。また、会社は会計年度末から6ヵ月以内に監査報告書を株主に送達し、30日以内には同報告書を会社登記所(CCM)に提出する義務があり、これは厳守しなければならない。なお、公開会社の年次総会は必ず開催しなければならない。

表 新会社法の主な変更点

 総会決議事項の配当について、現行の会社法は利益から出すこととしているが、新会社法では配当支払いから12ヵ月以内に到来する全ての債務を弁済することができると取締役会が判断する限りにおいて、取締役会の決定で配当は出されると規定している。つまり、利益があっても債務を弁済できる可能性がない場合は、会社は配当を支払えなくなる。これに違反し有罪が確定した場合、会社、取締役、財務担当者などには罰則規定が適用される。

 

 総会における書面決議について、現行法では全株主が署名する必要があったが、新会社法では普通決議事項は過半数の株主、特別決議事項は75%以上の株主が署名すれば、決議は有効とされる。また、総会後に作成される登記住所、事業所の所在地、株主、取締役など会社の状況報告を記載した年次報告書について、現行の会社法では年次総会直後の会社の状況を年次総会後30日以内に監査報告書とともにCCMに届け出ることとしているが、新会社法ではCCMへの届け出は毎年の会社設立日から30日以内に変更された。なお、総会の開催地は主会場がマレーシアであれば、世界中どこでも開催できるようになる。

 

<定款作成も会社の裁量内>

 現行の会社法では定款の作成が義務付けられているが、新会社法では定款の作成は会社の裁量に委ねられる。定款は会社の基本的事項、すなわち社名、登記住所がマレーシアに立地すること、設立目的、会社の権限、株主の責任の有限性や会社が行う主な事業以外に会社に利するあらゆる事業が行えるような設立目的などが記載される。定款は会社、株主双方に順守義務がある。定款の事業目的については、新会社法では会社が記載せずとも、違法でない限り会社はどういった事業でも実施できることになっている。

 

 新会社法では定款の作成が会社に委ねられることになるが、マレーシアに進出している有限会社は、定款による縛りを嫌って現在の定款を破棄することは決して望ましくない。なぜなら、マレーシアでは会社が事業ライセンスを申請する際に、各省庁は定款に記載された事業内容を確認の上でライセンスを発行するので、定款がない場合、企業は事業実施の前提となるライセンスを取得できなくなる。つまり、会社法は変わっても、その他の法律が会社法に合わせて変更されているわけではないために、会社は定款を破棄するか否かに当たっては注意を要する。

 

<居住取締役は1人でも可>

 現行の会社法では、マレーシア居住の取締役は常時2人が必要とされたが、新会社法では1人に変更される。取締役の年齢は18歳以上で、これは現行と変わらない。新会社法では取締役会の開催は、マレーシアにいる取締役に通知さえすれば可能になる。つまり、非居住者に通知しなくても取締役会を開催できることに留意が必要だ。また、書面決議はマレーシアにいる全取締役の署名で有効になる。

 

 会社の減資も行いやすくなる。現行会社法では会社は減資の実施前に裁判所に申請し、承認を得る必要があるが、このプロセスはコストと時間がかかるデメリットがある。一方、新会社法では、全取締役が会社の債務は弁済可能な状況にあることを確認した宣言書があれば、減資は可能になる。

 

 以上、新会社法は現行会社法に比べて多方面で効率化が図られているが、一部の規定については、そのデメリットも考え合わせた上で、実際に活用するかどうかを検討する必要がある。

 

(新田浩之)

(マレーシア)

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