日系企業を対象に「新会社法セミナー」開催

(マレーシア)

クアラルンプール発

2017年04月11日

ジェトロは2月21日、在マレーシア日系進出企業を対象にマレーシアビジネスセミナーをペナン州で開催し、クォンタムコンサルティングサービスの竹ノ山千津子代表取締役が「会社法2016年」について講演した。講演内容と同氏へのインタビュー(3月24日)により、新会社法のポイントをまとめた。

企業に裁量を広く付与

2016年会社法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(以下、新会社法)は2017年1月31日から、企業再生などに関する一部の条文を除いて施行されている。旧会社法は1965年に制定されたが、コーポレートガバナンスや情報開示強化の必要性、インターネットの普及といった環境の変化に鑑み、新会社法の制定・施行となった。新会社法のポイントとしては、設立・運営、株式・資本の手続きの簡素化、取締役・株主の自主的統制の強化・促進などが挙げられる。マレーシアにおける多くの日系企業の活動形態に該当する非公開株式有限責任会社(Sdn. Bhd.)向けの大きな変更点9つを取り上げて解説する(表参照)。

新会社法の主な変更点
項目 変更内容
定款 策定するか否かは会社判断
居住取締役 これまでの2人から1人で可
年次株主総会 開催するか否かは会社判断
株主の書面決議 (従来)どのような内容でも全株主の署名が必要
(今後)普通決議は過半、特別決議は75%以上の株式保有の株主の署名で有効
取締役の免責と補償 取締役、秘書役、監査人の過失や契約違反、不履行などによる損害について、民事訴訟における補償も認め、これに係る保険加入も認められる
取締役の罰則強化 旧法に比べて有罪確定の場合の罰則は強化
額面株式の廃止 (従来)発行時点の株価にかかわらず、額面1リンギで株式が発行される
(今後)発行時点の会社の価値を反映した価額での発行に
減資手続き (従来)裁判所の承認が必須
(今後)株主の特別決議、IRB、CCMへの通知、全ての取締役による弁済可能な状況であることの宣誓書によって、減資が可能
社名および登記番号の表示 社名と登記番号の表示をウェブサイトやメールを含めた各種書類に要求
(出所)新会社法、旧会社法を基に作成

第1に、会社は社名、設立目的、株主総会や取締役会の招集通知方法など会社の基本的事項を定めた定款(Constitution)を策定する義務がなくなった。ただし、既に定款を有する会社は、株主によって破棄を決議しない限りは有効となる。また、ライセンス取得や許認可などの際に会社法以外の法律が定款を要求している場合は、企業は定款を関係当局に提出する必要があるため、定款の提出が免除されるわけではないことに留意が必要だ。

第2に、居住取締役に関して、これまで会社設立に当たっては常時2人(18歳以上)が必要とされたが、1人で可能になった。この居住取締役は、外国人で雇用パスなどの長期滞在ビザを所持して居住している場合も認められる。なお、これまで企業は取締役の情報に関して、名前、パスポート番号、国籍、住所などをマレーシア企業委員会(CCM)に通知する義務があったが、今後は勤務先などの連絡先(サービスアドレス)やメールアドレスの通知も義務に加えられた。

第3の変更点は、年次株主総会の開催が会社側の判断に委ねられることだ。ただし、公開会社はこれまでどおり開催が必ず求められる。また、非公開会社でも定款規定または10%以上の株式を保有する株主からの要請がある場合、総会を開催しなければならない。総会開催の有無にかかわらず、監査報告書は会計年度末から6ヵ月以内に株主に送達する必要がある。なお、旧会社法では監査報告書と年次報告書を年次総会後に同時にCCMに届け出ていたが、新会社法では監査報告書は開催通知日(株主への送達)から30日以内、年次報告書は会社の設立記念日から30日以内の届け出にそれぞれ変更された。

第4は、株主による書面決議に関して、これまでは全株主による署名を必要としたが、新会社法では、普通決議については過半の議決権を持つ株主の署名でよく、特別決議事項については75%以上の株主の署名で決議されることとなった。ただし、旧会社法下の定款を持つ会社については、変更しない限り全株主の署名が必要となる。

取締役の罰則は強化

第5は、取締役の免責と補償のカバー範囲が拡大される。取締役、秘書役、監査人の過失や契約違反、不履行などによる損害について、民事訴訟における会社側の補償も認め、これに係る保険加入も限定的ながら認められることになる。これまでは、会社は取締役、秘書役、監査人が訴訟手続きにおいて、有利な判決を受けた場合や手続き自体が継続されない場合に弁護費用を補償するにとどまっていた。

第6は、取締役の罰則強化だ。例えば、取締役が情報開示義務の履行を怠った場合、新会社法では最長5年の禁錮刑または罰金300万リンギ(約7,500万円、1リンギ=約25円)、もしくは両方が科される、と旧会社法よりも刑罰は重くなった。

増減資の手続きは容易に

第7は、額面株式と授権資本の廃止に関わる事項が挙げられる。旧会社法下では、発行時点の株価にかかわらず額面1リンギで株式が発行されていたが、今後は発行時点の会社の価値を反映した価額での発行に変更される。額面株式の廃止に伴って、授権資本もなくなった。これまでは授権資本に基づく登記料を納める必要があったが、登記料が廃止されることで、増資手続きは容易になった。

第8は、減資手続きを行う上で、これまでは裁判所に申請し、承認を得る必要があったが、財務が健全な会社は株主の特別決議、税務当局(IRB)、CCMへの通知、全ての取締役による弁済可能な状況であることの宣誓書(Solvency Statement) によって、減資が可能になる。

第9は、社名と登記番号の表示義務が強化された。レター、通知、その他会社の正式な印刷物、ウェブサイト、メール、請求書、領収書、発注書などの取引関係書類、小切手、ビジネスに関わるあらゆる書類に、社名と登記番号を表示することが求められる。

施行から間もないこともあり、日系企業は新会社法への評価を下せていない。条件は一部で緩和されているものの、取締役の変更などの届け出が早まるなど旧会社法より厳しい要件も課されており判断は難しい。現在、日本企業は定款の変更検討、取締役会の構成の見直しなど制度に則した最適な形態を模索中の状況だ。

(新田浩之)

(マレーシア)

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