知的財産に関する情報(The Daily NNA【韓国版】より)韓国の特許・商標出願件数、2026年上期は過去最高に
2026年10月14日
The Daily NNA【韓国版】掲載(File No.214)
ジェトロ・ソウル 副所長 横山 幸弘(特許庁出向者)
韓国知識財産処は、2026年9月17日、26年上半期の産業財産権の出願動向を分析した結果を発表しました。韓国国内の特許出願は14万1,259件で前年同期から29.2%の増加、商標出願は18万787件で18.6%の増加となり、いずれも過去最高を更新したとのことです。
1.26年上期の特許・商標出願が過去最高
韓国における26年上半期(1月~6月)の特許出願は前年同期の10万9,322件から29.2%増、商標出願は15万2,419件から18.6%増となりました。このうち個人による特許出願は3万3,819件と、前年同期の1万4,454件から134.0%増え、全体に占める比率は13.2%から23.9%に上がったとのことです。また、初めて特許を出願した新規出願人による特許出願も2万5,726件と前年同期比74.2%増えました。商標でも新規出願人の商標出願は、6万9,134件で、前年同期比31.8%の増加です。
産業別では、半導体・人工知能(AI)など先端産業の好調が、コンピューター・ソフトウエア・情報サービス分野の特許・商標出願拡大につながっているようです。特許出願では、「コンピュータープログラミング・システム統合および管理業」は2万503件で、全出願に占める比率が昨年上半期の10.5%から今年上半期には16.0%に増加しました。商標では、「コンピューター・科学技術サービス業(第42類)」の出願が9,635件と、前年同期比64.2%増えています。
2.特許出願増加の一因に生成AIの活用拡大
今回の産業財産権出願動向の分析結果には、過去最高の特許出願という記録以外にも、もう1つ注目される特徴があるようです。個人特許出願のうち、代理人を介さない個人特許出願の割合は、23年上半期は28.8%であったのが、26年上半期には66.7%に達しました。代理人を介さない個人特許出願が、3年前は3割に満たなかったものが、3分の2近くに達したことになります。
韓国知識財産処は、このような傾向の要因の1つとして、生成AIの活用拡大を指摘しています。生成AIの急速な発達・浸透は、個人による情報収集と文書作成の速度を飛躍的に向上させており、特許出願のハードルを下げている可能性は十分考えられます。
なお、日本においても26年上半期(1月~6月)の特許出願は16万3,616件(日本特許庁「特許出願等統計速報」)と、前年同期比9.0%増加しているようです。
3.韓国知識財産処の動向
このような特許・商標出願の増加傾向の中で、知的財産が韓国の成長をけん引していけるよう、韓国知識財産処もさまざまな施策を通じて対応を強化しています。
韓国知識財産処は、25年10月には、輸出企業が海外進出戦略を適時に策定できるよう審査期間を大幅に短縮し、早期に韓国国内における知的財産権の確保を支援する超高速審査制度(特許の場合、全体平均:16.1カ月(24年)、超高速審査:1カ月)を導入し、26年9月15日には、その対象を既存の半導体分野などに加え、青年スタートアップ、AIデータセンター、フィジカルAI関連技術にまで拡大すると発表しています。
また、迅速かつ正確な審査・審判サービスを提供するため、先行技術調査を拡大し、AI審査技術の開発、次世代審査システムの構築など、AI基盤の審査支援インフラを拡充するとしています。
4.知的財産で稼ぐ時代をつくる
26年上半期、韓国で特許・商標出願件数が過去最高を更新したことは、知的財産を取り巻く環境が大きく変化する兆しを示しているのかもしれません。
韓国知識財産処は9月の統計に先立つ8月4日、大統領への業務報告の重点課題として「知的財産で稼ぐ時代をつくる」ことを発表しました。韓国知識財産処は「韓国は世界第4位の特許出願大国であるが、これを活用した収益創出能力はまだ十分ではない」と述べています。
出願件数の記録更新と、知的財産を価値に変えるという課題認識。出願の増加そのものは通過点に過ぎず、増えた権利からどれだけの経済的価値を引き出せるかが問われています。生成AIの発達と浸透により出願のハードルが下がりつつある可能性が指摘されている今、知財を「持つ」ことと「稼ぐ」ことの距離を縮める取組が、これまで以上に求められる局面に入ったのではないでしょうか。
今月の解説者
日本貿易振興機構(ジェトロ)ソウル事務所
副所長 横山 幸弘(日本国特許庁知財アタッシェ)
2005年日本特許庁入庁後、特許審査官・審判官として、特許審査・審判実務に従事。また、特許庁 調整課・総務課での課長補佐、米国イリノイ大学客員研究員、近畿経済産業局 知的財産室長等を経て現職。
本記事はジェトロが執筆あるいは監修し、The Daily NNA【韓国版】に掲載されたもので、株式会社エヌ・エヌ・エーより掲載許諾をとっています。
ジェトロ・ソウル事務所知的財産チーム
ジェトロ・ソウル事務所 知的財産チームは、韓国の知的財産に関する各種研究、情報の収集・分析・提供、関係者に対する助言や相談、広報啓発活動、取り締まりの支援などを行っています。各種問い合わせ、相談、訪問をご希望の方はご連絡ください。
担当者:横山、徐(ソ)、權(クォン)(いずれも日本語可)
E-mail:kos-jetroipr@jetro.go.jp
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