ジェトロ対日投資報告2024
第2章 日本の対内直接投資動向
第6節 グローバル企業による日本のビジネス環境評価

ビジネス拠点として「研究開発拠点」および「営業・販売・マーケティング拠点」が高評価

本節では、第1章第3節で触れたジェトロの「グローバルバリューチェーン(GVC)の構造変化による影響調査」(対象62社)の結果をもとに、日本国外のグローバル企業から見た日本のビジネス環境に対する評価を取り上げる。 日本におけるビジネス拠点別の魅力度について、グローバル企業にとっては特に「研究開発拠点」および「営業・販売・マーケティング拠点」の評価が高い傾向にある。調査対象企業の約35%が、日本は「研究開発拠点」として「とても魅力的である」、約33%が「魅力的である」と回答した。また、日本は「営業・販売・マーケティング拠点」として、約27%が「とても魅力的である」、約53%が「魅力的である」と回答した。

図表2-20 ビジネス機能ごとの日本の魅力度
ジェトロの「グローバルバリューチェーン(GVC)の構造変化による影響調査」(対象62社)の結果をもとに作成。小数点以下第2位を四捨五入しているため合計は必ずしも100%とならない。ビジネス機能ごとの日本の魅力度について、研究開発拠点として:「とても魅力的である」35.1%、「魅力的である」33.3%、「どちらでもない」22.8%、「あまり魅力的でない」8.8%。 営業・販売・マーケティング拠点として:「とても魅力的である」27.1%、「魅力的である」52.5%、「どちらでもない」10.2%、「あまり魅力的でない」10.2%。 地域統括拠点として:「とても魅力的である」9.1%、「魅力的である」34.5%、「どちらでもない」23.6%、「あまり魅力的でない」32.7%。経営企画・管理拠点として: 「とても魅力的である」5.7%、「魅力的である」30.2%、「どちらでもない」26.4%、「あまり魅力的でない28.3%。「全く魅力的でない」9.4%。 顧客対応拠点として:「とても魅力的である」5.4%、「魅力的である」25.0%、「どちらでもない」35.7%、「あまり魅力的でない」32.1%。「全く魅力的でない」1.8%。製造・加工拠点として:「とても魅力的である」3.5%、「魅力的である」29.8%、「どちらでもない31.6%。「あまり魅力的でない」31.6%。「全く魅力的でない」3.5%。データセンターとして:「とても魅力的である」3.8%、「魅力的である」15.1%、「どちらでもない」50.9%、「あまり魅力的でない」26.4%。「全く魅力的でない」3.8%。物流拠点として:「とても魅力的である」1.9%、「魅力的である」13.2%、「どちらでもない」52.8、「あまり魅力的でない」26.4%。「全く魅力的でない」5.7%。
  1. 〔注1〕

    小数点以下第2位を四捨五入しているため合計は必ずしも100%とならない。

  2. 〔注2〕

    nは拠点ごとに評価を入れた企業の数。一部企業が空欄または部分的に空欄のためn=62とはならない。少なくとも1つの拠点で回答した企業は有効回答とした。

  3. 〔出所〕

    ジェトロ「グローバルバリューチェーン(GVC)の構造変化による影響調査」

【コラム】高く評価されるR&D拠点としての日本

2020年代に入り新型コロナやロシアのウクライナ侵攻を受け、地政学リスクや経済安全保障への意識の高まりなどから、投資先地域としての日本が改めて評価されている。特に研究開発(R&D)の重点化や新設により、近隣の大学や研究機関と共同研究を進める外資系企業の動きが活発化している。

ドイツの精密機器メーカー ボッシュ・グループの日本法人は、大規模投資によりR&D施設を横浜市に新設して本社機能を移転すると2022年2月に発表。自動車開発のトレンドに対応するため、最先端のテスト設備等を導入しR&D機能を強化する。 2024年5月から新本社が稼働し、2024年9月には同社初の公民連携プロジェクトとなる都筑区民文化センター(愛称:ボッシュ ホール)等施設一帯の竣工記念イベントを実施した。自社の拠点と地域施設を一体化し、地域活性化への貢献を目指す。本取り組みにより、日本国内に点在する8拠点から約2,000人が集約され、新たなR&D拠点を核に、事業部横断型の開発力を強化し、未来のモビリティ形成を推進するとしている。

近年注目を集める半導体産業についても、2023年12月に韓国の大手半導体メーカーのサムスン電⼦が横浜市に半導体の次世代パッケージング技術の最先端R&Dを新設すると発表。横浜市の発表資料の中でサムスン電⼦ CEOは「横浜はパッケージ関連企業が多く、優秀な⼤学と⼈材もあるため、業界、⼤学、研究機関などと協⼒するのに適した場所の⼀つ」と日本の投資環境を評価している。

2022年6月には台湾の半導体受託製造大手TSMCが、茨城県つくば市の産業技術総合研究所つくばセンター内に「TSMCジャパン3DIC研究開発センター」を開所した。クリーンルーム施設を備えた同社初の海外研究開発拠点とされる。

日本のビジネス環境の強みは「自社のビジネス分野を含む市場の成長性」、「整備されたインフラ」、「市場の大きさ」

諸外国と比較した日本のビジネス環境の強みについて、調査対象企業から多く挙げられたのは「自社のビジネス分野を含む市場の成長性」、「整備されたインフラ」、「市場の大きさ」などであった。内訳でみると、上位のものから最大3つ選択する形式において、約3割もの企業(回答企業62社中21社)が第1位に選択したのは「市場の大きさ」であった。

図表2-21 諸外国と比較した日本のビジネス環境の強み
ジェトロ「グローバルバリューチェーン(GVC)の構造変化による影響調査」から作成。横長の棒グラフにて、日本のビジネス環境の強みとして多く挙げられたのは上位から、1位 「自社のビジネス分野を含む市場の成長性」、2位 「整備されたインフラ(交通、物流、エネルギー、情報通信 等)」、3位 「市場の大きさ」 であった。
  1. 〔注1〕

    少なくとも1つを回答した企業は有効回答とした。

  2. 〔注2〕

    最大3つ選択する形式のため第2選択以降の回答数が同数とは限らない。

  3. 〔出所〕

    ジェトロ「グローバルバリューチェーン(GVC)の構造変化による影響調査」

グローバル企業は「新規顧客の獲得が見込める」ことを日本拠点進出・強化する際に最も重視する

同調査によれば、日本への新規進出または既存拠点の強化を行う場合に、グローバル企業が最重視するのは「新規顧客の獲得が見込める」ことであった(回答企業61社中40社が選択)。主要なものから最大3つ選択する形式において、選択に含められた総数では「充実したインフラ」(23社)が続くが、第1位の選択に着目すると、「大学や企業との研究開発ができる」、「魅力的な地方自治体のインセンティブ」などを重視する企業が一定数存在することが分かる。

図表2-22(1)日本への立地を行う場合に選定基準として重視する点
ジェトロ「グローバルバリューチェーン(GVC)の構造変化による影響調査」から作成。横長の棒グラフにて、日本への立地を行う場合に選定基準として重視する点として多く挙げられたのは上位から、1位「新規顧客の獲得が見込める」、2位 「充実したインフラ(交通、物流、情報通信、エネルギー)」、3位 「現地にて優秀な人材の確保が見込める」 であった。
  1. 〔注1〕

    少なくとも1つを回答した企業は有効回答とした。

  2. 〔注2〕

    最大3つ選択する形式のため第2選択以降の回答数が同数とは限らない。

  3. 〔注3〕

    1社未回答企業があったためn=61となる。

  4. 〔出所〕

    ジェトロ「グローバルバリューチェーン(GVC)の構造変化による影響調査」


図表2-22(2)日本への立地を行う場合に選定基準として重視する点(内容詳細)
立地場所の選定に重視する点 自由記述
新規の顧客獲得が見込める
  • 顧客の獲得が最優先事項である。
  • 現地市場のニーズに応えるために新規顧客の獲得が可能であるかをチェックする。
  • 主要顧客との距離が近く、直接かつ頻繁に取引できることが重要である。
充実したインフラ
(交通、物流、情報通信、エネルギー)
  • 公共交通機関、公共インフラが整っていることは重要である。
  • 充実したインフラは業務効率化のために重視している。
  • 十分に整備された日本の輸送インフラは日本の魅力である。
現地にて優秀な人材の確保が見込める
  • 日本語と英語で十分なコミュニケーションが取れ、技術的な面でも優秀なローカルの人材の確保が見込めることは重要である。
  • 日本国内でのプロモーション強化が必要なため、現地の優秀な人材を確保できるかを重視している。
魅力的な地方自治体のインセンティブ
  • 税制上の優遇措置が設けられていることが重要である。
  • 現在、クリーンエネルギーには十分なインセンティブがないことが懸念される。
大学や企業と研究開発ができる
  • 研究開発に向けて、大学と提携できるかどうかを重視する。
関連産業クラスターが存在する
  • 関連産業クラスターの存在が相互協力に繋がるため重視している。
ビジネスコスト(土地、人件費等)の低さ
  • 政府からの補助金、優遇政策に期待。
  • 事業立ち上げ時の事業コストの低さは重要な要素である。
その他
  • 立地を選ぶ際、物流、地元の補助金、地域社会、顧客やパートナーへのアクセスを評価し、点数を付け、総合的な評価に基づいて最適な場所を選定する。
  • 合弁事業や業務提携に適したパートナーの存在が重要である。

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