フォン・デア・ライエン委員長が一般教書演説、経済分野は新政策なく実施の重視鮮明に

(EU、中国、米国、カナダ)

ブリュッセル発

2026年09月24日

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は9月16日、欧州議会本会議で一般教書演説を行った(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。今回の演説は、2025年に続き(2025年9月19日記事参照)、「独立した欧州」や「欧州人のための欧州」を強調するなど、安全保障や外交に最も多くの時間を割く内容となった。米国への依存軽減を念頭に置いた安全保障体制の構築や関税戦争が続くカナダへのEU「準加盟国」提案といった、米国を名指しこそしなかったものの、対米関係の変化を踏まえた内容となった。

一方で経済産業政策に関しては、欧州経済の再始動が最優先課題であると述べるものの、フォン・デア・ライエン委員長がこれまで前面に掲げてきた「競争力」への直接的な言及はなく、目新しい政策の発表もなかった。今回の演説では新たな政策構想よりも、単一市場改革や規制簡素化など既存政策の実施が強調された。欧州委は「競争力コンパス」(2025年2月6日記事参照)に基づく政策の立案から、その実行へと重点を移しつつあることがうかがえる。そのため加盟国に対しても、単一市場の深化に向けた行程表「1つの欧州、1つの市場」(2026年3月26日記事参照)に沿った立法を2027年末までに完了することや、EU法の国内実施時に加盟国が独自に追加する規制を撤廃することを求めた(2026年2月18日記事参照)。なお、同委員長は、戦略分野への投資を後押しするため、許認可にかかる時間のさらなる短縮に向けた法案を提案することも明らかにした。

また、電化推進に向け、再生可能エネルギーと原子力を並列に位置付けたことから、欧州委がエネルギー安全保障の観点から原子力を含めた技術中立的なアプローチを維持する姿勢もあらためて示された。欧州委は、2040年までに電化率46%という目標を提示したばかりだ(2026年7月22日記事参照)。一方で気候変動目標(2025年12月16日記事参照)については、既存の目標を維持する方針をあらためて示した。

今回、懸念国として名指ししたのは中国だ。1日当たり10億ユーロに上る貿易赤字や、中国製品の流入拡大による域内産業の空洞化を指摘し、関係の不均衡の是正に向け「利用可能なあらゆる手段」を講じると述べた。ただし、調達先の多角化加速に向けた法案(2026年6月25日記事参照)などの新たな対抗措置には踏み込まなかった。欧州委としては、10月までを当面の期限とする対中協議を優先し、その結果を踏まえて今後の措置を判断する考えとみられる。

(吉沼啓介)

(EU、中国、米国、カナダ)

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