EU首脳、エネルギー価格対策で前進も、ウクライナ支援や中東情勢への対応に進展なし
(EU、イタリア、ポーランド、ハンガリー、ウクライナ、イラン、米国)
ブリュッセル発
2026年03月26日
欧州理事会(EU首脳会議)は3月19日、ブリュッセルで公式会合を開催した(プレスリリース
)。今回の会合では、ウクライナ向け900億ユーロの融資に対するハンガリーの反対や米国とイスラエルによるイラン攻撃への対応が主題となり、多くの時間が割かれたものの、具体的な進展はなかった。一方で、高騰するエネルギー価格への対策については、的を絞った一時的な対策の必要性で合意し、欧州委員会に対し至急、具体策を取りまとめるよう要請した。
まず、ウクライナへの融資については、ハンガリーの反対により、2025年12月の会合(2025年12月22日記事参照)で24加盟国が合意した900億ユーロの融資実施が延期された。12月の会合では、ハンガリーは融資への参加は拒否するものの、実施自体には反対しない姿勢を示していた。しかし、2026年1月以降のウクライナ経由でのロシア産石油の供給停止を受け、方針を転換し、強硬に反対を貫いた結果、融資の実施は引き続き保留となった。また、中東情勢に関しては、関係国に緊張緩和と自制を求めるにとどまり、EUレベルでの対応策は示されなかった。
エネルギー価格対策について、欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は会合後の記者会見で、加盟国による対応策の策定を支援すると強調。企業への直接支援を可能にする国家補助緩和策(2025年6月30日記事参照)のさらなる柔軟化、ネットワーク料金の引き下げを可能にする法案、化石燃料より電力への課税率が高い場合にその引き下げを義務付ける法案を提案するとした。
また、イタリアやポーランドなど10の加盟国が求めていたEU排出量取引制度(EU ETS、注)の全般的な見直しについても、一部柔軟に対応する方針を表明。エネルギー集約型産業の支援策となる無償割当ベンチマークの更新や、炭素価格の乱高下を抑制するための市場安定化リザーブの強化策を数日中に発表するほか、産業界の脱炭素化に向けた財政支援策として300億ユーロ規模のETS投資ブースターを新設することも明かした。
2027年末までに単一市場の統合深化の方針で合意
域内産業の競争力強化策については、前回会合(2026年2月18日記事参照)の議論を踏まえ、「1つの欧州、1つの市場」と題する行程表を立ち上げることで合意した。これは、域内のビジネス障壁(2025年6月6日記事参照)を撤廃するために加盟国法を調和させるEU法案と、その2027年末までの実施スケジュールをまとめたものだ。具体的な内容は、今後、欧州委が発表するとしている。
(注)調査レポート「EU ETSの改正およびEU ETS II創設等に関する調査報告書(2024年5月)」を参照。
(吉沼啓介)
(EU、イタリア、ポーランド、ハンガリー、ウクライナ、イラン、米国)
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