EUメルコスールFTA、5月1日から暫定適用が開始
(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、EU)
調査部欧州課
2026年05月12日
欧州委員会は4月30日、EUメルコスール自由貿易協定(FTA)の暫定貿易協定(iTA)の適用を5月1日から開始すると発表した(プレスリリース
)。
同協定の適用開始により、EUからメルコスール向け輸出の91%以上、メルコスールからEU向け輸出の92%に対する関税を段階的に撤廃する(注1)。EUは、メルコスールから輸出される主要な農産品について関税割当数量枠を設け(注2)、セーフガード条項を導入する(2025年10月21日記事参照)。また同協定では、地理的表示(GI、注3)について、EU側で350件以上、メルコスール側で220件を保護する。iTAに基づきメルコスールから輸入される商品には、衛生植物検疫(SPS)基準やアニマルウェルフェア(2023年12月18日記事参照)など、EU市場への流通に関する規制が適用される。
メルコスールとEUは2026年1月17日、パートナーシップ協定(EMPA)およびiTAに署名したが(2026年1月21日記事参照)、直後に欧州議会が同協定のEU条約との整合性についてEU司法裁判所(CJEU)による審査を求めることを決議(2026年1月27日記事参照)。欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は2月27日、欧州議会の同意を待たずに暫定適用する方針を発表し(2026年3月4日記事参照)、欧州委は3月23日、iTAが5月1日から適用されると発表していた。
メルコスールは対EU貿易拡大を見込む
iTAの適用開始に伴いメルコスール事務局は5月4日、「地政学的環境や通商構造が大きく変化する中で、メルコスールとEUという巨大市場間の貿易促進に向けた歴史的な日」との声明を発表した。アルゼンチンのパブロ・キルノ外相は「これを機に生産の拡大と経済を強化する」と述べた。ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は「両地域における雇用創出、所得向上、開発促進に寄与する」と述べて、自由貿易の重要性を強調した(メルコスール事務局公式サイト)。ブラジル政府系メディア「アジェンシア・ブラジル」は5月1日、「メルコスールからEU向けに輸出される、農産品や工業製品を含む5,000品目超の関税が即時撤廃される」と報じた。メルコスールは中南米域外ではイスラエルやエジプトとFTAを締結しているものの、メルコスールの貿易に占める同2カ国の割合は1%にも満たない(注4)。他方、EUはメルコスールにとって貿易相手国・地域で第2位。輸出では10.1%、輸入では20.1%を占める(注5)。同協定の発効により両地域間の貿易活性化が見込まれる。
(注1)共に、金額ベース。自動車と自動車部品の関税削減スケジュールについては、2026年4月17日付地域・分析レポート参照。
(注2)EUへの主要農産品の輸入における関税割当枠については、2026年4月17日付地域・分析レポート参照。
(注3)GIは、ある製品が特定の国や地域を原産地としており、その品質や評判などの特性がその原産地と結びつきがある場合に、その原産地を特定する表示。例えば、イタリア産「パルミジャーノ・レッジャーノ」やスペイン産「ケソ・マンチェゴ」など。GIの詳細は、ジェトロの調査レポート「EUの地理的表示(GI)保護制度」参照。
(注4)対イスラエルFTAは2011年9月に発効、対エジプトFTAは2017年9月に発効。貿易割合は、メルコスール事務局の統計(2025年通年)による。
(注5)メルコスールの貿易相手第1位は輸出入ともに中国。貿易割合は、メルコスール事務局の統計(2025年通年)による。
(川嶋康子、辻本希世)
(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、EU)
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