欧州委、メルコスール産農畜産物へのセーフガード措置案を提案、域内生産者へのFTA影響の緩和策

(EU、メルコスール、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ)

ブリュッセル発

2025年10月21日

欧州委員会は10月8日、EUメルコスール・パートナーシップ協定(EMPA)に関連し、一部の農産品を対象とするセーフガード措置に係る規則案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。規則案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

欧州委は9月3日、EMPAのEU批准に向けた協定案に、EU側のセンシティブ品目についてセーフガード措置の導入を提案した(2025年9月5日記事参照)。規則案はその手順を定め、牛肉や鶏肉、コメ、エタノール、砂糖など23品目が対象となる。

具体的には、欧州委は輸入量の急増や、1つまたは複数の加盟国での市場価格の下落がある場合に、優先的に検証するなど、対象品目の輸入動向の監視を強化する。メルコスール産品の価格がEUの同一、または競合する産品より少なくとも10%低く、かつ(1)優遇的な条件下でのメルコスール産品の年間輸入量が前年比10%増、または(2)同条件下でのメルコスール産品の輸入価格が前年比10%以上下落した場合、セーフガード措置の発動が必要か調査を開始する。調査は十分な根拠があれば、加盟国からの要請後すぐに開始し、域内産業への損害の恐れがあると判断すれば、加盟国の要請を受けてから21日以内に暫定措置を発動する。調査は4カ月以内に結論を出すことを目指す。セーフガード措置実施中は、関税率の段階的引き下げを一時停止するなどし、最長2年間実施する。延長は可能だが、総適用期間は暫定措置発動から4年を超えない。

産業界はあらためて早期批准を要望も、割れる欧州議会

欧州産業界では、製造業を中心にEMPAへの期待が高い(2025年9月11日記事参照)。欧州化学工業連盟(Cefic)、欧州自動車工業会(ACEA)など26の産業団体は10月13日、早期批准を求める共同声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

現地報道によると、欧州委は2025年内の署名を目指している。一方、欧州議会では、10月8日の本会議でEUの中南米諸国に対する政治戦略に関する報告書の採決に当たり、「EMPAの交渉妥結を歓迎する」という文言(29項)について、不支持(269票)が支持(259票)をわずかに上回った(棄権97票)。同項は「EMPAにパリ協定の目標達成を順守するという条項が含まれたことを歓迎」という内容に修正された。今後の批准に向けた審議の行方が注目される。

(滝澤祥子)

(EU、メルコスール、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ)

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