米中首脳会談、声明の細部は異なるも、「建設的な戦略的安定」の追求は一致

(米国、中国)

ニューヨーク発

2026年05月19日

米国のドナルド・トランプ大統領は5月14~15日に中国を訪問し、習近平国家主席と首脳会談を行った。両首脳による共同声明などは発表されておらず、双方が別々に成果を発表した(注1)。それぞれの発表内容を比べると、中国による米国産品の購入拡大などで違いがあるといった細部は異なる一方で、両国関係を「建設的な戦略的安定」と位置付ける点では一致している。

通商政策に詳しい首都ワシントンの弁護士事務所は、米中双方の発表内容の違いを指摘している(注2)。米国側の発表では、「中国はボーイングの航空機を200機購入する」「中国は2026~2028年に年間170億ドル規模の米国産農産品を購入する」と記載している。だが、航空機の購入について、中国側の発表では、米国の新型航空機およびエンジンの調達に関する取り決めに達したと表明するのみで、詳細は記載していない。米国産農産品の購入については、中国側の発表では合意した具体的な金額は明記していない。また、中国側の発表では、両国の関心に応じて関税の引き下げで合意したと記載しているが、米国側の発表では、関税の引き下げに関する記載はない。

現在、米中両国の大きな懸念事項の1つになっている双方の重要鉱物や半導体の輸出管理措置については、米国側の発表では、レアアースや重要鉱物の供給不足や、レアアースの生産・加工設備および技術の販売禁止や制限について、「中国が米国の懸念に対処する」と記載しているが、中国側の発表ではレアアースや重要鉱物の輸出規制に関して言及していない。なお、米中両国は、2026年11月まで特定の輸出規制の一時停止に合意しており、前出の法律事務所は、「双方は、相手国が義務をどの程度履行しているか、懸念を抱いているようだ」と評している(注3)。

一方で、両国関係の位置付けについては、両国で一致している。米国側の発表では、両首脳は公平性と相互性に基づき「建設的な戦略的安定関係の構築」で合意したと記載した。中国側の発表でも同様の表現を用いた(2026年5月15日記事参照)。この点について、同法律事務所は、「『戦略的安定』とは、米国と旧ソビエト連邦が冷戦時代に紛争の激化を防ぐよう努めた際に用いられた用語で、これにウィンウィンの両国関係を表現する『建設的』という言葉を組み合わせたものだ」「2国間関係を『建設的な戦略的安定』と定義することで合意があったと示唆される」と分析している。

また、今回の米中首脳会談の成果の1つに、「貿易委員会」と「投資委員会」の設立合意がある。過去の米国の政権も、米中の経済関係を管理するための枠組みを設立しており、ジョージ・W・ブッシュ政権時代の「戦略的経済対話(SED)」(2008年12月15日記事参照)、バラク・オバマ政権時代の「戦略的・経済対話(S&ED)」(2013年7月19日記事参照)、第1次トランプ政権時代の「包括的対話」(2017年4月13日記事参照)などがある(注4)。同法律事務所は、これらの枠組みは幅広い政策課題に対する2国間の協力関係構築には成功したものの、多くのワシントンの政策立案者は現在、「両政府間の大規模かつ根本的な対立は解決できなかったと評価している」と指摘している。そのため、貿易・投資委員会はこうした過去の枠組みとは異なり、「中国との戦略的なデカップリングを追求しながら、関係を管理し、『建設的な戦略的安定』の維持に重点を置いているようだ」と指摘している(注5)。

(注1)米国側の発表は2026年5月18日記事、中国側は2026年5月18日記事参照。

(注2)ジェトロに対する5月18日付の報告。

(注3)トランプ政権下の米中関係は、特に輸出管理をめぐって、緊張と緩和を繰り返すとみられている(2025年12月9日付地域・分析レポート参照)。

(注4)ジョー・バイデン前政権下では、閣僚間による経済と金融に関するワーキンググループが設置されていた(2023年9月25日記事参照)。

(注5)米中間の貿易額の変遷については、2026年5月13日付地域・分析レポート参照

(赤平大寿)

(米国、中国)

ビジネス短信 78f7da0c3a7faf51