欧州産業連盟、次期EU議長国キプロスに競争力強化に向けた具体策実施を要請

(EU、キプロス)

ブリュッセル発

2025年11月26日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は11月21日、2026年上半期のEU理事会(閣僚理事会)議長国のキプロスに対する政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUは「競争力コンパス」(2025年2月6日記事参照)に基づき、競争力強化、産業支援に本腰を入れ始めた。しかし、情勢が目まぐるしく変化する中で、産業界はその効果を実感できていないとし、事業環境を改善する具体策の展開が重要と強調した。

通商分野では、EU企業のグローバル市場での利益擁護のため、EUの団結と貿易の多角化への取り組みを加速することが必要と述べた。具体的には、米国との関税合意(2025年8月22日記事参照)の履行に加え、メルコスール(2025年9月5日記事参照)、メキシコ(2025年2月3日記事参照)、インドやASEANなど、EU域外国との自由貿易協定(FTA)締結・交渉を推進し、輸出先や重要原材料の供給元の多角化が重要と訴えた。

域内政策では、規制簡素化と単一市場の統合深化に関し、人権・環境デューディリジェンス関連法令に係るオムニバス法案(2025年11月18日記事参照)の早期成立や、「単一市場戦略」(2025年6月6日記事参照)の完全実施などを要請した。エネルギー、気候分野では、エネルギー価格の引き下げ、大規模な官民投資、必要インフラの整備、先行する市場の創出などに加え、過剰規制を回避しイノベーションを促進する技術中立的な規制環境が必要と訴えた。2026年1月から本格適用される炭素国境調整メカニズム(CBAM、2025年11月19日記事参照)に関し、実効性がないと判断した場合、EU排出量取引制度(EU ETS)の無償排出枠の段階的削減を一時的に見直すべきとした。また、高品質な域外カーボンクレジットや認証を受けた炭素除去(2024年3月1日記事参照)の活用など、政策に柔軟性を持たせることは企業のコスト削減や部門別の温室効果ガス(GHG)削減策に資するとした。

雇用創出や人材不足への対応も重要と強調し、労働者の技能向上に関する「技能同盟」(2025年3月14日記事参照)を手始めに、生産性の向上や労働力確保を進めるべきとした。イノベーション促進に向け、人工知能(AI)の活用やリモートワークの活用を阻害するような規制の導入には反対姿勢を示し、企業が労使交渉により問題を解決する余地を残すなど、必要に応じて社会面での法規制も改正すべきとの立場を示した。

EUの2028~2034年の中期予算計画(MFF)案(2025年7月22日記事参照)にも言及し、企業に新たな税負担を求めることなく、欧州競争力基金や研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」などの予算額を維持するよう、キプロスが加盟国間の議論を主導することを期待するとした。

(滝澤祥子)

(EU、キプロス)

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