欧州議会、CSDDD・CSRD簡素化法案の立場採択、対象企業の大幅削減へ

(EU)

ブリュッセル発

2025年11月18日

欧州議会は11月13日、企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD、2025年3月7日記事参照、注1)と、企業持続可能性報告指令(CSRD、2025年3月7日記事参照、注2)を簡素化する法案の立場(修正案)を採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EU理事会(閣僚理事会)は既に立場を採択していることから、2025年内の正式採択に向けて交渉を始めるとみられる。

両機関の立場はいずれも、欧州委員会が提案した簡素化案と比べ、適用対象基準をさらに引き上げるものであることから、CSDDDとCSRDの対象企業はごく一部の大企業に限定される見通しとなった。欧州委案と両機関の立場における適用対象の基準は添付資料表を参照。

義務内容についても、特にCSDDDに関する両機関の立場は、欧州委案と比べてより簡素化を強化する内容となっている。デューディリジェンスの実施義務について、対象企業が人権侵害などのリスクの特定と評価に際して実施すべき作業は、現行指令や欧州委案が規定するあらゆる実施対象のリスクを射程に行う包括的なマッピングではなく、合理的に入手可能な情報に基づくリスクの一般的なスコーピングで良いとする。気候変動に関するパリ協定に沿った移行計画について、欧州議会案は策定義務自体を撤廃する。

なお、CSDDDとCSRDの適用開始時期を延期する改正法は既に成立している(2025年4月7日記事参照)。

大幅な規制簡素化求めるEPPが勝利宣言

欧州議会の最大会派・欧州人民党グループ(EPP、中道右派)は、より大幅な環境規制の削減に向け、右派や極右に協力を求める動きが目立ってきている。欧州議会では従来、連立を組むEPPと社会・民主主義進歩連盟グループ(S&D、中道左派)などの中道会派が協力し(2024年11月25日記事参照)、法案を採択してきた。しかし、現地報道によると、欧州委案からさらなる義務の緩和を求めていたEPPと、大幅な簡素化に消極的な中道・中道左派は投票前日になっても折り合いがつかず、最終的にEPPは右派・極右と協力し、立場を採択した。EPPが勝利宣言をする一方で、S&Dは反発を強めており、今後の議会運営への影響が懸念される。

(注1)CSDDDの詳細は、ジェトロの調査レポート「EU人権・環境デューディリジェンス法制化の最新概要」(2025年5月)を参照。

(注2)CSRDの詳細は、ジェトロの調査レポート「CSRD適用対象日系企業のためのESRS適用実務ガイダンス」(2024年5月)を参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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