CBAM、2026年1月からの本格適用に向け注視される実施規則

(EU)

ブリュッセル発

2025年11月19日

欧州委員会の炭素国境調整メカニズム(CBAM、注)担当部門の責任者は11月13日、在欧日系ビジネス協議会(JBCE)が開催したセミナーで、2026年1月からの本格適用に向けた準備状況を説明した。2025年10月20日に発効したCBAMの簡素化・強化規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより、報告の適用除外基準をこれまでの150ユーロ以下の少額貨物から輸入者当たりCBAM対象製品の年間累積50トンと重量ベースに変更し、報告対象を9割削減(2025年6月25日記事参照)。報告対象者に対しても対応負担、コストを軽減しつつ、環境への影響は損なわず、カーボンリーケージを防ぐ措置となると強調した。

具体的には簡素化規則により、許可CBAM申告者(認可申告者)による前暦年分のCBAM報告の期限を5月末から9月末に延長。これにより、2026年分の申告期限は2027年5月31日から9月30日となった。また、中央プラットフォームから購入するCBAM証書の販売も2027年2月1日からと定めたことにより、準備時間を確保することができたと説明した。このほか、温室効果ガス(GHG)排出量の報告は、引き続き実際の排出量データに基づく報告を前提とするものの、デフォルト値(既定値)の利用は「実際の排出量データの把握が難しい場合に可能」としていた条件付けは削除。実際の排出量データの算出にかかる対応コストに鑑み、デフォルト値には輸出国ごと、製品ごとのマークアップの上乗せも継続する。デフォルト値、マークアップは今後発表される実施規則に記される。

また、第三国で支払われた炭素価格に関する控除に関しても手続きを簡素化するため、2027年以降、欧州委は炭素価格制度が導入されている第三国について、当該国のデフォルト炭素価格を決定し、CBAM登録簿に算出方法とともに公開することができると説明した。体化排出量の検証については、認定検証者はEU加盟国認定機関に認定された法的主体である点に変更はないが、これはCBAMの目的であるカーボンリーケージを防ぐためとした。

同責任者は、2026年1月の本格適用に向け、排出量の計算方法に関する実施規則や認定・検証者の条件に関する委任規則などは2025年第4四半期(10~12月)中に提出されると話した。輸出手続きなどにはリードタイムが必要だが、引き続き詳細が待たれる。

(注)CBAMの詳細はジェトロ調査レポート「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)」(2024年2月)を参照。

(薮中愛子)

(EU)

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