EU、炭素除去の認証枠組みに関する規則案で政治合意

(EU)

ブリュッセル発

2024年03月01日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は2月20日、炭素除去の認証枠組みを導入する規則案に関して、暫定的な政治合意に達したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。規則案は欧州委が2022年12月に発表(2022年12月6日記事参照)。EUレベルで任意の認証枠組みを導入することで、グリーンウォッシング(実質を伴わない環境訴求)を防ぎつつ、有用性の高い炭素除去技術の整備促進を目指すものだ。今後、両機関よる正式な採択を経て施行される見込み。

両機関は認証枠組みの対象に関して、欧州委が提案した炭素除去に加え、土壌から排出される温室効果ガス(GHG)削減を盛り込むことで合意した。炭素除去に関しては、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)に合わせ、包括的な定義を採用。大気中と生物由来の炭素除去が含まれる。対象となる活動は、バイオマス燃料の使用時に排出された二酸化炭素(CO2)を回収・貯留する技術(BECCS)や大気中のCO2を直接回収・貯留する技術(DACCS)などを用いた永久的な炭素除去、建築用木材など耐久性のある製品への一時的な炭素貯留、森林再生や土壌管理などのカーボンファーミングによる一時的な炭素貯蔵・土壌排出量削減だ。なお、森林破壊の回避や再生エネルギー事業など、炭素回収や土壌排出量削減に結びつかない活動は対象外となる。

炭素除去の基準については、欧州委案の(1)定量化、(2)追加性、(3)長期貯留、(4)持続可能性からなる「QU.A.L.ITY」とすることで合意。ただし、認証方法については、合意により一部明確化されたが、詳細は欧州委が策定する委任法令を待つ必要がある。

認証された炭素除去や土壌排出量削減は、除去あるいは削減されたCO2換算で1トン相当を1単位として証書が発行される。欧州委は規則案の施行から4年以内にEU共通の電子記録簿を設置し、発行済みの証書とその単位数を記録、公開する。証書の信頼性と透明性を高めることで、加盟国政府や民間投資家が財政支援や投資を検討する際に、証書を判断材料にすることを容易にする。また、証書を任意で売買する市場が発展することで、カーボンファーミングが新たなビジネスモデルになることも予想される。

欧州委員会は2月、2050年までに気候中立を目指す欧州グリーン・ディールの達成には温室効果ガス(GHG)排出削減だけでなく、炭素除去が必要不可欠との立場を明確にし(2024年2月14日記事参照)、CO2の回収・有効利用・貯留(CCUS)の産業界での大幅な利用拡大に向けた戦略(2024年2月14日記事参照)を発表したばかり。規則案の施行により、炭素除去技術への投資が加速することが期待される。

(吉沼啓介)

(EU)

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