欧州委、ビジネス障壁を撤廃し、競争力を強化する「単一市場戦略」を発表

(EU)

ブリュッセル発

2025年06月06日

欧州委員会は5月21日、欧州域内の貿易、投資障壁を撤廃し、中小企業の事業拡大支援、デジタル化の促進による手続き負担の軽減を通じ、単一市場の強みを最大限活用できるビジネス環境整備を目指した単一市場戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

同戦略は、第1章において、域内市場の「最も深刻な障壁10選」を特定し、対策案を示した。まず、(1)過度に複雑なEU規制、(2)加盟国による単一市場の過小評価、(3)複雑な事業設立と運営に関しては、主な対策として、中小企業や規制簡素化オムニバス法案の第4弾として新たに発表した「小規模ミッドキャップ(SMC)」企業(2025年5月27日記事参照)を対象とした規制対応負担の軽減を図る。防衛分野を含め、公共調達のルールも共通化する。単一市場深化の妨げとなっている各国の障壁を取り除くハイレベルの担当官として、加盟各国が「単一市場シェルパ」を任命することを提案。このほか、「競争力コンパス」(2025年2月6日記事添付資料参照)で発表された27の加盟国法を補完する28番目の企業規制枠組み(28th regime)を通じ、手続きのデジタル化と、労働法、税制などについて域内共通ルールの設定を行うとした。

上記3点に加え、域内のモノ貿易の障壁としてあげられた4点と主な対策案は次のとおり。「(1)標準化策定にかかる時間、遅延がイノベーション・競争力に与える影響」に関しては、標準化プロセスの迅速化に向けた規則の改正を行うにあたり、スタートアップや中小企業、市民社会、学術界などの参画を得た上で行う。「(2)統一化されていない包装・ラベル・廃棄物」の規則に関しては、要件を明確化する。将来的には「デジタル製品パスポート(DPP)」(2024年3月22日記事参照)により、消費者がデータに容易にアクセスすることを可能とする。また、拡大生産者責任(2025年2月21日記事参照)により、製造事業者に製品の廃棄管理まで義務付ける。「(3)時代に則していない製品規則と製品の規制順守の欠如」に関しては、規則の改正、市場監視を強化する。「(4)地域的供給制約(TSC)」に関しては、特に小売りに対し、域内で同一商品の価格差が大きい場合は対策を講じるとした。

域内のサービス貿易の障壁としてあげられた3点に対する人材面での主な対策案は次のとおり。「(1)域内の資格非取得国での就労促進」のため、デジタルツールを用い、職業資格の自動認定枠組みを促進する。「(2)加盟国により異なるサービス規則」については、加盟国企業が一時的に欧州域内全体でサービスを提供できるよう、サービス許可および認証制度を調和させる。「(3)労働者の一時的な派遣・赴任にかかる複雑な手続き」の簡素化のため、社会保障書類の認証をデジタル化・共通化する「欧州社会保障パス(ESSPASS)」を推進(2023年9月12日記事参照)する。

同戦略は、サービス市場の深化(第2章)、中小企業支援(第3章)、デジタル化促進(第4章)、規則順守策(第5章)と具体策が続く。

(薮中愛子)

(EU)

ビジネス短信 2900e41699442410