中東では2024年の貿易量増加、2025年も米相互関税の一時停止状況では増加予測、WTO
(中東、米国)
調査部中東アフリカ課
2025年04月23日
WTOが4月16日に公表した貿易に関する報告書「世界貿易見通し」によると、中東の2024年の輸出量は前年比3.7%増だった。輸入量は同15.0%増と大幅な上昇を見せた。
同報告書では、2025年の世界の商品貿易量(輸出入平均)について、4月14日時点の米国の相互関税の一時停止(中国は除外、全世界の追加関税10%措置は継続)の状況下で、2.9ポイント下方修正の前年比0.2%減少すると予測する。一方で、中東では、4月14日時点の関税率では、2025年の輸出量は0.1ポイント上方修正で5.2%増、輸入量は0.1ポイント上方修正の6.3%増を見込むという。中東全体では世界と比べて米国の関税による貿易への影響は少ないとの予測だ。
なお、今回の予測に対するリスクは依然として存在しており、米国が現在一時停止中の相互関税の実施や、各国の貿易政策の不確実性により、2025年の世界の貿易量は1.5%減の可能性もあるという(2025年4月17日記事参照)。
中東の主要国に対する米国の関税措置について、湾岸協力会議(GCC)のアラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、バーレーン、オマーン、カタール、クウェートの6カ国と、トルコに対しては、10%の追加関税が課されることになったが、国・地域別の相互関税は対象外だ(2025年4月7日記事、4月9日記事参照)。一方で、イスラエルは17%(2025年4月3日記事)、ヨルダンは20%(2025年4月9日記事参照)の相互関税が発表された(現在は一時停止)。
中東での貿易は増加傾向
同報告書によると、中東の輸出量の増加率の推移は次のとおり(2025年、2026年は4月14日時点の関税率での予測値、かっこ内は米国の追加関税措置の前からの変動)。
- 2023年:8.1%
- 2024年:3.7%
- 2025年:5.3%(0.1ポイント上方修正)
- 2026年:5.1%(変動は0.1ポイント未満)
中東の輸入の増加率の推移は次のとおり(かっこ内は同上)。
- 2023年:9.0%
- 2024年:15.0%
- 2025年:6.3%(0.1ポイント上方修正)
- 2026年:6.7%(0.1ポイント下方修正)
サービス貿易は減少、GDP成長率の変動少なく
同報告書によると、旅行、物流、デジタル配信サービスなどを含むサービス輸出は、世界では2024年に6.8%増だが、中東は4.1%増だった。中東でのサービス輸出は、2025年は1.7%、2026年は1.0%とプラス成長ながら、成長率は低い見通しだ。
なお、2025年のGDP成長率は、世界では米国の追加関税措置などの影響もあり、0.6ポイント下方修正の2.2%、中東は変動が0.1ポイント未満で、3.2%の成長を見込むという。
(井澤壌士)
(中東、米国)
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