WTO、2025年の世界貿易量を前年比0.2%減と予測、1.5%減の可能性も
(世界)
ジュネーブ発
2025年04月17日
WTOは4月16日、最新の世界貿易見通しを発表し、2025年の世界のモノ(財)の貿易量(輸出入平均)が前年比0.2%減少するとの予測
を示した。この数値は14日時点の関税状況を前提としており、追加関税なしの「低関税」のベースラインシナリオでの予測値より2.9ポイント低い(添付資料表1参照)。
今回の予測に対するリスクは依然として存在しており、米国が現在一時停止中の相互関税を実施した場合、世界の財貿易量はさらに0.6ポイント減少し、米国以外の貿易に影響を与え得る貿易政策の不確実性の拡大により、加えて0.8ポイント減少する可能性があると予測している。相互関税と貿易政策の不確実性を合わせると、2025年の財貿易量は1.5%減となる可能性もある。
最も大きな影響を受けるのは北米地域で、2025年の輸出が12.6%減、輸入が9.6%減と予測しており、同地域が世界の貿易量全体の伸びを1.7ポイント押し下げ、マイナスに転じさせる主因となる予測を示している。アジアと欧州は引き続きプラスに寄与するが、ベースライン予測値よりは減少し、アジアの寄与は0.6ポイントに半減し、その他の地域も貿易量が減少するが、プラスの伸びを維持するとしている。
米中貿易の混乱は大幅な貿易転換を引き起こし、中国との競争激化に対する第三国市場の懸念を高めると予測する。貿易の転換に伴い、中国の財輸出は北米以外の全地域で4%から9%の間で増加し、同時に、米国の中国からの輸入は繊維やアパレル、電気機器などの分野で激減すると予想し、そのギャップを埋めることができる他のサプライヤーに新たな輸出機会を創出する。この結果、一部の後発開発途上国が米国市場への輸出を増やす道が開かれる可能性があるとしている。
また、今回の世界貿易見通しでは、財貿易の予測を補完するため、初めてサービス貿易の予測を網羅した。関税の直接の対象ではないが、サービス貿易も悪影響を受けると予測している。関税によって引き起こされる財貿易の減少が輸送やロジスティクスなどの関連サービスへの需要を減退させ、より広範な不確実性が旅行に対する裁量的支出を弱め、投資関連サービスを鈍化させると分析した。その結果、世界の商業サービス貿易量は2025年に4.0%増、2026年に4.1%増と予測し、これはそれぞれのベースライン予測値の5.1%と4.8%をかなり下回る(添付資料表2参照)。
WTOのエコノミストは、2025年の世界のGDP成長率(市場為替レートベース)は2.2%で、関税変更なしのベースライン予測値を0.6ポイント下回るが、2026年には2.4%にわずかに回復すると予測している。関税変更は2025年のGDP成長率には、北米地域に最も大きな影響を与え(1.6ポイント減)、アジア地域(0.3ポイント減)、中南米・カリブ海地域(0.2ポイント減)が続くと予測した。相互関税の賦課が世界のGDP成長率に与える影響は限定的だが、貿易政策の不確実性がより広範に広がれば、GDPの損失はベースライン予測値比でほぼ2倍の1.3ポイントに達する可能性もあるとしている。
(田中晋)
(世界)
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