米大統領輸出評議会、クリーンエネルギー技術の輸出支援を提言、IPEFの着実な実施も促す

(米国)

ニューヨーク発

2023年12月06日

輸出促進などに関して米国大統領に助言を行う大統領輸出評議会(PEC)は11月29日、バイデン政権下で2回目となる会合を開催し、クリーンエネルギー、農業、製造業の3分野に関する提言を採択外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。会合には、ジーナ・レモンド商務長官やキャサリン・タイ米国通商代表部(USTR)代表、トム・ビルサック農務長官を含むバイデン政権の閣僚らも参加した。

PECは民間企業や労働組合、学術界の代表者らで構成され、2023年6月にバイデン政権下で初めての会合を開催した。その際は、イノベーション・技術と貿易円滑化に関する提言をまとめていた(2023年7月3日記事参照)。

今回の会合で採択した提言のうち、クリーンエネルギーに関する提言PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、サプライチェーンの強靭(きょうじん)化や脱炭素化に関わるこれまでの取り組みに加え、気候変動対策に資する技術を持つ米国企業の輸出支援を検討するよう促した。具体的な技術としては、電気自動車(EV)やバッテリー技術、水素などを挙げた。これらの輸出促進のため、米国貿易開発庁(USTDA)や米国輸出入銀行などの政府機関の支援プログラムの調整などに取り組むよう提起した。インド太平洋経済枠組み(IPEF)で実質妥結したクリーン経済協定の着実な実施も求めた(2023年11月17日記事参照)。官民パートナーシップを最大限活用し、クリーンエネルギーの導入などで協力を進めるための具体的なプロジェクトを早期に特定することが重要だと強調した。

製造業に関する提言PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、基準や規制、不透明な通関手続きなど他国の非関税障壁に対処するよう奨励した。また、米国内でクリーンエネルギー関連製品の生産が加速する中、重要物資の強靭なサプライチェーンを整備することが必要だと訴えた。EUや英国と重要鉱物に関する協定を締結し、労働や環境分野で高い基準の約束を取り付けるよう提言した。バイデン政権がインドネシアと、重要鉱物に関する行動計画を策定することに合意したことも歓迎した(注1)。そのほか、自由なデータ流通などを定める国際的なデジタル貿易ルールの形成や、アフリカ成長機会法(AGOA)の失効前の更新(注2)などを求めた。

今回の会合で、レモンド商務長官はPECに輸出管理に関する小委員会(PECSEA)を再び設置すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。PECSEAは2019年に活動を停止しており、PECは前回の会合で復活を提言していた。同長官は、PECSEAで「(輸出)管理が米国の技術リーダーシップを推進しながら、米国の国家安全保障への影響を最大化するために慎重に調整されたものとなるよう、主要な利害関係者から意見を集める」とした。

レモンド長官はまた、PECによるIPEF参加国へのミッション派遣について、2024年3月にフィリピンとタイを訪問すると明らかにした。前回の会合で発表していたとおり、ミッション派遣には同長官も参加する予定だ。

(注1)EUとは2023年3月に、英国とは同年6月に重要鉱物協定の交渉開始を発表した(2023年6月9日記事10月24日記事参照)。インドネシアとは同年11月の首脳会談で、重要鉱物協定の将来的な交渉入りを視野に行動計画の策定で合意したが、米国連邦議会からは同国との協定締結を懸念する声も出ている(2023年10月27日記事11月15日記事参照)。

(注2)AGOAは2000年に成立した法律で、米国がアフリカ・サブサハラ諸国の発展に関与すべく、特定の条件を満たす国からの輸入に対し、無関税の特恵待遇を与えることを定めている。AGOAは2025年9月末に失効予定となっている(2023年11月8日記事11月13日記事参照)。

(甲斐野裕之)

(米国)

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