米英首脳会談、経済安保含む新たなパートナーシップ発表、重要鉱物協定の交渉開始へ

(米国、英国)

ニューヨーク発

2023年06月09日

米国のジョー・バイデン大統領は6月8日、訪米した英国のリシ・スナク首相と首都ワシントンで会談外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

両国は、会談後に「21世紀の米英経済パートナーシップのための大西洋宣言」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。宣言では、パートナーシップの最初の具体的なステップとして、大西洋宣言行動計画(ADAPT)を示した。ADAPT は、(1)重要・新興技術における米英のリーダーシップの確保、(2)経済安全保障および技術保護の方策とサプライチェーンに関する協力の推進、(3)包摂的で責任あるデジタルトランスフォーメーションに関する連携、(4)未来のクリーンエネルギー経済の構築、(5)防衛、健康安全保障、宇宙分野における同盟関係のさらなる強化、の5つの柱から成る。

これらの柱のうち、(2)では、対外投資がもたらす国家安全保障上のリスクへの対処や輸出管理での協調などを盛り込んだ。(3)では、人工知能(AI)に関して、5月のG7広島サミット(2023年5月23日記事参照)で創設が決まった「広島AIプロセス」などの国際的な取り組みを歓迎し、米国は、スナク首相が2023年中の開催を計画するAIの安全性に関するグローバルサミットへの政府高官の派遣を約束した。(4)では、コバルトなどの重要鉱物に関する協定の交渉を始めると記した。この協定により、英国で採掘または加工された重要鉱物が、米国のインフレ削減法におけるクリーンビークル(注)税額控除を受けるためのバッテリー関連の調達価格要件を満たせるようにする計画だ(2023年4月3日記事参照)。

両国政府は、ADAPTの下で年に2回会合を開き、具体的な成果を出すことを目指す。宣言では、「大西洋宣言とそれに伴う行動計画が、われわれの経済、技術、商業、貿易関係の全領域にわたって、新しいタイプの革新的なパートナーシップの基礎を形成する」と強調した。

米英首脳会談と同日、米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表はフランス・パリで、英国のケミ・バデノック・ビジネス・通商相と会談した。USTRの発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、両氏は、重要鉱物協定の交渉開始など、スナク首相の訪米中に発表された前向きな進展に言及した。また、今後も緊密に連絡を取り合い、両国の通商関係を深化させるために取り組むことに合意した。

(注)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。

(甲斐野裕之)

(米国、英国)

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