米上院超党派議員団、重要鉱物を巡るインドネシアとの貿易協定に懸念を表明

(米国、インドネシア)

ニューヨーク発

2023年10月27日

米国の共和党上院議員2人と民主党上院議員6人からなる超党派の議員団は10月24日、米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表らバイデン政権当局者に対し、現在、政府が進めているとされるインドネシアとの重要鉱物に関する貿易協定交渉への懸念を表明する書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを提出した。

2022年8月に成立したインフレ削減法(IRA)では、クリーンビークルの購入に際し、購入者は7,500ドルの税額控除を受けられる。ただし、対象となる車両のバッテリーに使用される重要鉱物の抽出あるいは加工が、一定の割合で米国か、IRAが定める自由貿易協定(FTA)締結国で行われていることが、受給要件の1つとなっている。インドネシアは、電気自動車(EV)用バッテリーの原材料となるニッケルの世界的産地(注)だが、米国とFTAを結んでいないことから、税額控除要件を満たすための対象となっていない。そこでインドネシアは米国政府に対し、重要鉱物貿易協定の締結を提案していた。重要鉱物に関する協定を結ぶことによって、IRA上のFTA締結国とする狙いがあるとみられている(ロイター9月8日)。

議員団は書簡の中で、インドネシアとの協定締結の懸念として、米国での雇用機会の喪失のほか、同国の生産現場における脆弱(ぜいじゃく)な労働者保護や、採鉱・精製における中国の支配的立場、不適切な廃棄物処理などによる海洋汚染、地域社会への関与の欠如、生産過程における他の生産国に比べた二酸化炭素(CO2)排出量の多さ、といった点を挙げた。また、「インドネシア産の鉱物と金属は現在、米国市場への完全なアクセスを享受しており、関税における最恵国待遇の地位も享受している。インドネシア産の鉱物は、米国内の自動車メーカー、バッテリーメーカー、その他のエネルギー関連メーカーが十分に入手可能であり、(IRAで)納税者の莫大な資金が活用されていることを考慮すると、重要鉱物に関する税額控除は、国内生産者と既存のFTAパートナーを優先する必要があると強く信じている」と述べている。

(注)米国地質調査所(USGS)によると、2022年のインドネシアの生産量は、世界の48.5%を占める。

(大原典子)

(米国、インドネシア)

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