特集:2021年中南米の貿易動向銅輸出が黒字幅拡大に寄与、対日自動車輸入も拡大(ペルー)

2022年9月16日

ペルーの2021年の貿易額は、国内外の需要増加により、輸出入ともに前年比で増加した。特に輸出では、銅を中心とした伝統輸出産品が牽引役となり貿易黒字幅の拡大に寄与した。対日貿易では、鉱物資源の輸出が拡大し、輸入では国内の経済活動回復による内需拡大に後押しされ、商用車や乗用車を中心に拡大した。

本稿ではまず、2021年におけるペルーのGDP統計を振り返り、2021年の経済情勢を概観しながら、貿易統計を分析していく。

2021年は中銀見通しを上回る経済成長を記録

ペルー国家統計情報庁(INEI)によると、2021年の実質GDP成長率は前年比13.3%と、中央準備銀行(BCR)の見通し(11.9%)を上回る結果となった。また、「新型コロナ禍」前の2019年比でも0.8%の成長を記録した。

経済活動別では、経済活動の回復に伴い、製造業(前年比17.7%増)、建設(35.5%増)、商業(18.0%増)が実質GDP全体に対する寄与度が高かった。また、レストランやホテル分野は、収容人数の緩和や、一部入国禁止措置の解除に加えて、入国後の強制隔離解除など水際対策の緩和により、43.3%増と顕著な伸びを示した。

需要項目別にみると、実質GDP全体の6割超を構成する民間消費が前年比11.7%増となった。政府消費(6.0%増)、総資本形成(34.9%増)も伸長した。国際収支ベースの財貨・サービスの輸出については17.1%増、輸入も25.1%増となった。以下ではその貿易について、詳細を見ていく。

輸入は生産活動再開と消費需要増加でコロナ禍前の水準に回復

2021年貿易額(通関ベース)は、輸出が前年比39.8%増の573億3,700万ドル、輸入は39.0%増の510億8,300万ドルだった。貿易収支は62億5,400万ドルの黒字となり、黒字額が前年から46.5%増と大きく拡大した。相手国別では、輸出入のいずれも8年連続で中国が首位を維持し、輸出構成比は32.2%、輸入構成比は28.6%となった(表1参照)。輸出で2位は米国(構成比:12.6%)、3位は韓国(5.0%)だった。輸入では米国が2位(18.5%)、ブラジルが3位(6.7%)となった。

表1:ペルーの主要国・地域別輸出入(通関ベース)(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域名 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2020年 2021年 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
北米 9,060 10,564 18.4 16.6 9,061 12,319 24.1 36.0
階層レベル2の項目米国 6,190 7,249 12.6 17.1 6,741 9,460 18.5 40.3
階層レベル2の項目カナダ 2,449 2,752 4.8 12.4 809 981 1.9 21.3
階層レベル2の項目メキシコ 421 563 1.0 33.6 1,511 1,878 3.7 24.3
EU28(注1) 5,503 8,198 14.3 49.0 4,079 4,910 9.6 20.4
階層レベル2の項目オランダ 1,379 1,906 3.3 38.3 169 239 0.5 41.6
階層レベル2の項目スペイン 1,083 1,510 2.6 39.4 677 862 1.7 27.4
階層レベル2の項目英国 422 1,318 2.3 212.3 189 236 0.5 24.8
階層レベル2の項目ドイツ 902 1,172 2.0 30.0 1,070 1,187 2.3 10.9
スイス 1,381 1,935 3.4 40.1 135 133 0.3 △ 1.8
アンデス共同体(注2) 1,839 2,517 4.4 36.9 1,956 2,806 5.5 43.4
階層レベル2の項目エクアドル 641 937 1.6 46.1 450 687 1.3 52.7
階層レベル2の項目コロンビア 661 872 1.5 31.9 979 1,194 2.3 21.9
階層レベル2の項目ボリビア 537 708 1.2 31.9 528 925 1.8 75.3
チリ 1,111 1,729 3.0 55.6 1,082 1,318 2.6 21.9
メルコスール(注3) 925 1,299 2.3 40.4 4,050 6,093 11.9 50.4
階層レベル2の項目ブラジル 793 1,085 1.9 36.8 2,125 3,431 6.7 61.5
階層レベル2の項目アルゼンチン 104 165 0.3 59.6 1,667 2,314 4.5 38.8
その他 21,189 31,095 54.2 46.8 16,376 23,504 46.0 43.5
階層レベル2の項目中国 12,302 18,452 32.2 50.0 10,526 14,612 28.6 38.8
階層レベル2の項目韓国 2,381 2,870 5.0 20.5 651 972 1.9 49.3
階層レベル2の項目日本 2,010 2,826 4.9 40.6 725 1,024 2.0 41.2
階層レベル2の項目インド 1,159 2,510 4.4 116.6 825 1,111 2.2 34.7
合計 41,008 57,337 100.0 39.8 36,739 51,083 100.0 39.0

注1:統計上、英国は引き続きEUに含まれているためEU28と記載。
注2:アンデス共同体:ボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルー。
注3:メルコスール:ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ベネズエラ。
出所:国家税務監督庁(SUNAT)

輸出を品目別にみると(表2参照)、銅(構成比:31.7%)、金(13.7%)、亜鉛(3.9%)や鉛(3.4%)などの鉱物資源のほか、魚粉(3.2%)、天然ガス(3.0%)、石油派生製品(2.9%)などの伝統産品が全体の71.1%を占めた。伝統産品全体では、前年比43.6%増に回復している。このうち、銅と金の増加は、特にアンタミナ銅鉱山、セロ・ベルデ銅鉱山、アウリフェラ・レタマス金鉱山、ミネラ・ポデロサ金鉱山やアレス金鉱山などにおける増産のほか、中国などの銅需要拡大に伴う銅の国際価格の高騰(ロンドン金属取引所の年平均価格で前年比50.8%増)が背景にある。また、魚粉の輸出増(65.1%増)は、原料となる加工用カタクチイワシの2021年年間漁獲量が19.7%増の520万トンに上ったことに下支えされている。全体の28.6%を占める非伝統産品も、前年に続き農産品・加工食品(構成比:13.9%)が牽引役となり、31.0%増加した。そのなかでも特に、生鮮ブドウ、生鮮ブルーベリー、生鮮・乾燥アボカドはそれぞれ21.8%、25.1%、42.2%の増加となった。これら生鮮ブドウなどは、主に米国(当該品目全体の36.4%)とオランダ(22.4%)向けに出荷されている。国連の国際貿易センター(ITC)によると、ペルーは2021年に、生鮮ブドウと生鮮ブルーベリーで世界1位、生鮮アボカドで世界3位の輸出国だった。輸出で最大の伸び率を記録したのは過去2年続けて減少していた繊維製品で、2021年は米国(当該品目全体の3.7%)向けのOEM製品が66.2%増となった。

表2:ペルーの主要品目別輸出(通関ベース)(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率
輸出総額(FOB) 41,008 57,337 100.0 39.8
伝統産品 28,373 40,739 71.1 43.6
階層レベル2の項目銅(地金・精鉱) 12,941 18,167 31.7 40.4
階層レベル2の項目 6,643 7,837 13.7 18.0
階層レベル2の項目亜鉛(地金・精鉱) 1,659 2,229 3.9 34.3
階層レベル2の項目鉛(地金・精鉱) 1,396 1,940 3.4 38.9
階層レベル2の項目魚粉 1,094 1,807 3.2 65.1
階層レベル2の項目天然ガス 568 1,703 3.0 199.7
階層レベル2の項目石油派生製品 855 1,691 2.9 97.7
階層レベル2の項目コーヒー 638 766 1.3 20.1
階層レベル2の項目魚油 336 533 0.9 58.3
非伝統産品 12,529 16,417 28.6 31.0
階層レベル2の項目農産品・加工食品 6,641 7,955 13.9 19.8
階層レベル3の項目果実 3,972 4,811 8.4 21.1
階層レベル4の項目生鮮ブドウ 1,031 1,256 2.2 21.8
階層レベル4の項目生鮮ブルーベリー 964 1,206 2.1 25.1
階層レベル4の項目生鮮・乾燥アボカド 738 1,049 1.8 42.2
階層レベル3の項目野菜 1,191 1,262 2.2 6.0
階層レベル4の項目生鮮アスパラガス 381 404 0.7 6.2
階層レベル2の項目化学品 1,460 1,996 3.5 36.7
階層レベル2の項目繊維製品 992 1,648 2.9 66.2
階層レベル2の項目水産品 1,304 1,523 2.7 16.8
階層レベル3の項目冷凍赤イカ(ポタ) 407 427 0.7 4.8
階層レベル3の項目調製しまたは保存に適する処理をしたイカ 182 159 0.3 △ 12.7
階層レベル2の項目金属製品 834 1,497 2.6 79.6
階層レベル3の項目銅線 174 343 0.6 96.7
階層レベル3の項目含有量が全重量の99.99%未満の亜鉛 178 279 0.5 57.0
階層レベル2の項目非鉄金属 441 676 1.2 53.3
階層レベル2の項目機械 457 567 1.0 24.1
階層レベル2の項目木材・紙 235 281 0.5 19.9
その他 107 182 0.3 69.7

出所:国家税務監督庁(SUNAT)および輸出業協会

輸入は、国内での生産活動の再開による中間財需要の増加、輸入価格の高騰、消費需要の回復などにより、2020年の減少から一転して増加した。品目別では、特に燃料は国際価格の高騰を受け、前年比96.0%増を記録したほか、鉱業分野向けの中間財は55.1%増加した(表3参照)。資本財では、アルゼンチンからのピックアップトラックなどを中心に輸送機器が61.9%増加した。23.2%増となった消費財では、インド(当該品目全体の17.2%)からの医薬品のほか、乗用車やテレビなどの耐久消費財(44.5%増)が増加した。また、中国からの携帯電話(同国からの輸入の6.9%)とパソコン(同6.0%)がそれぞれ34.5%、34.6%増加したほか、米国からはB5混合軽油(注)(構成比13.0%)が金額(12億4,200万ドル、2.3倍)、数量(189万トン、60.9%増)ともに増加した。

表3:ペルーの主要品目別輸入(通関ベース)(単位:100万ドル、%)
品目 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率
輸入総額(CIF) 36,739 51,083 100.0 39.0
原材料・中間財 16,252 24,899 48.7 53.2
階層レベル2の項目工業用 11,322 16,366 32.0 44.6
階層レベル2の項目燃料・潤滑油 3,260 6,391 12.5 96.0
階層レベル2の項目農業用 1,670 2,142 4.2 28.3
資本財 11,570 15,182 29.7 31.2
階層レベル2の項目工業用 7,982 9,529 18.7 19.4
階層レベル2の項目輸送機器 2,202 3,566 7.0 61.9
階層レベル2の項目建築資材 1,225 1,883 3.7 53.7
階層レベル2の項目農業用 161 203 0.4 26.6
消費財 8,906 10,973 21.5 23.2
階層レベル2の項目非耐久消費財 5,644 6,261 12.3 10.9
階層レベル2の項目耐久消費財 3,262 4,712 9.2 44.5
その他 11 29 0.1 174.7

出所:国家税務監督庁(SUNAT)および輸出業協会

銅、軽油、天然ガスの対日輸出拡大

2021年の対日往復貿易額は、「新型コロナ禍」により大幅減少した前年に比べ52.2%増の39億5,800万ドルとなり、コロナ禍以前の水準に回復した。このうち、対日輸出は56.5%増の29億3,300万ドルに上った(表4参照)。品目別では、住友金属鉱山と住友商事が参加するセロ・ベルデ銅鉱山の鉱物資源や、ペルーLNG、プルスペトロル(PLUSPETROL)が取り扱う炭化水素資源(軽油や天然ガス)を中心とした伝統産品輸出が61.4%増の27億4,500万ドルとなった。非伝統産品では、三井食品が輸入するミカンが前年の6倍の600万ドルに伸ばしたほか、冷凍マスのフィレやとびこなどの水産品もそれぞれ81.8%増、27.3%増と拡大した。さらに、北部ピウラ州で操業するマルハニチログループのサカナ・デル・ペルーも、赤イカ(ペルー名:ポタ)を前年の3.6倍の40万ドル、アナゴを6.6倍の200万ドル輸出している。

表4:ペルーの対日主要品目別輸出(通関ベース)(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率
輸出総額(FOB) 1,874 2,933 100.0 56.5
伝統産品 1,701 2,745 93.6 61.4
階層レベル2の項目銅(地金・精鉱) 1,140 1,262 43.0 10.7
階層レベル2の項目亜鉛(地金・精鉱) 119 189 6.4 58.8
階層レベル2の項目鉄(地金・精鉱) 50 119 4.1 138.0
階層レベル2の項目錫(地金・精鉱) 36 82 2.8 127.8
階層レベル2の項目鉛(地金・精鉱) 23 7 0.2 △ 69.6
階層レベル2の項目天然ガス 107 204 7.0 90.7
階層レベル2の項目原油・同派生製品 120 758 25.8 531.7
階層レベル2の項目魚粉 65 71 2.4 9.2
階層レベル2の項目魚油 11 14 0.5 27.3
階層レベル2の項目コーヒー 14 12 0.4 △ 14.3
非伝統産品 173 188 6.4 8.7
階層レベル2の項目農産品・加工食品 75 87 3.0 16.0
階層レベル3の項目果実 43 55 1.9 27.9
階層レベル4の項目生鮮アボカド 20 25 0.9 25.0
階層レベル4の項目冷凍フルーツ 8 7 0.2 △ 12.5
階層レベル4の項目ミカン 1 6 0.2 500.0
階層レベル4の項目生鮮バナナ 4 5 0.2 25.0
階層レベル4の項目冷凍マンゴー 5 5 0.2 0.0
階層レベル4の項目生鮮マンゴー 2 3 0.1 50.0
階層レベル3の項目野菜 17 19 0.6 11.8
階層レベル4の項目冷凍アスパラガス 13 16 0.5 23.1
階層レベル4の項目アスパラガス加工品 2 1 0.0 △ 50.0
階層レベル4の項目その他の野菜 1 1 0.0 0.0
階層レベル2の項目水産品 74 74 2.5 0.0
階層レベル3の項目冷凍赤イカ(ポタ) 21 20 0.7 △ 4.8
階層レベル3の項目冷凍マスのフィレ 11 20 0.7 81.8
階層レベル3の項目とびこ 11 14 0.5 27.3
階層レベル3の項目冷凍エビ(無頭) 6 6 0.2 0.0
階層レベル2の項目亜鉛(合金を除く) 7 8 0.3 14.3
階層レベル2の項目衣類 9 9 0.3 0.0
階層レベル2の項目化学品 2 3 0.1 50.0
階層レベル3の項目植物性・動物性着色料 1 2 0.1 100.0
階層レベル2の項目繊維 1 2 0.1 100.0

出所:輸出業協会 (ADEX)の通関統計を基に作成

対日輸入は、経済活動回復による内需拡大に後押しされ、商用車や乗用車を中心に前年比41.1%増の10億2,500万ドルとなった(表5参照)。自動車の輸入統計をメーカー別にみると、ペルーで最大のシェアを持つトヨタが37.4%増(1億2,400万ドル)だった。次いでゼネラルモーターズ(GM)によるいすゞが86.4%増(6,300万ドル)、デルコ(DERCO)によるマツダが31.5%増(4,900万ドル)、三菱自動車が66.3%増(4,500万ドル)と上位を占めた。さらに、鉱山活動再開により、ブリヂストンによるタイヤの輸入も増加し、33.4%増となり、「新型コロナ禍」 前の水準に戻った。なお、輸入ビジネス全般では、「新型コロナ禍」で高騰を続ける海運費用に加え、ドル高、インフレなどが共通課題として各社ビジネスに大きく影響を及ぼしている。

表5:ペルーの対日主要品目別輸入(通関ベース)(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率
輸入総額(CIF) 726 1,025 100 41.1
自動車および同部品 241 336 32.8 39.7
階層レベル2の項目商用車・トラック 80 141 13.7 75.2
階層レベル2の項目乗用車 111 134 13.1 20.5
階層レベル2の項目バス(10人以上乗り) 20 24 2.3 18.7
機械類および同部品 152 210 20.5 38.0
階層レベル2の項目ショベルカー 12 35 3.4 189.4
階層レベル2の項目印刷機・プリンター・複写機 21 21 2 △ 2.0
階層レベル2の項目ブルドーザー・地ならし機 12 10 1 △ 16.1
電気製品および同部品 19 24 2.4 31.7
階層レベル2の項目デジタルカメラ・ビデオカメラ 2 3 0.3 54.2
階層レベル2の項目電動機および発電機 2 2 0.2 45.3
階層レベル2の項目電話機器 2 2 0.2 △ 3.4
その他機械類 26 25 2.4 △ 5.6
階層レベル2の項目化学分析用機器 7 10 0.9 42.6
階層レベル2の項目X線機器 11 7 0.7 △ 34.3
化学品 126 173 16.9 37.0
階層レベル2の項目タイヤ(新品に限る) 79 112 10.9 40.8
鉄鋼・鉄鋼製品 101 109 10.6 8.1
階層レベル2の項目鉄フラットロール(めっきしたもの) 40 45 4.4 13.3
セメント(クリンカー) 2 15 1.5 538.4
その他 59 132 12.9 124.8

出所:輸出業協会 (ADEX)の通関統計を基に作成


注:
軽油に5%以下のバイオディーゼル燃料を混合した燃料。
執筆者紹介
ジェトロ・リマ事務所長
設楽 隆裕(しだら たかひろ)
1992年、ジェトロ入構。ジェトロ・マドリード事務所(1997~2001年)、ジェトロ・ブエノスアイレス事務所長(2006~2010年)、ジェトロ大阪本部情報サービス課長および主幹(2013~2017年)などを経て、2018年8月より現職。