特集:駐在員が見るアジアの投資環境北東アジア3

2018年4月2日

中国・青島
地下鉄や高速鉄道の整備が進む


青島市の地下鉄(ジェトロ撮影)

山東省青島市では地下鉄が2015年末に初めて開通、2016年末には市街地へと延伸した。現在は2路線が開通し、バスに代わる市民の足として定着している。地下鉄は全16路線が計画されており、うち7路線が2021年までに開通する予定である。地下鉄の延伸に合わせて沿線に商業施設が出店するなど、青島市の商業エリアも変化している。

交通網整備によって移動が容易になり、消費などの経済活動は活発化するとみられる。一方、地下鉄建設が進むことで沿線や周辺地域の地価が上昇し、賃料など不動産コストが増加する可能性もあるため、沿線地域の不動産価格の今後の動向に注意する必要がある。

青島市郊外の膠州市(青島市の県級市)に建設中の新空港は、現在の青島流亭国際空港に代わり2019年から利用可能になり、北京首都国際空港、上海浦東国際空港と肩を並べる規模となる予定だ。同新空港は高速鉄道と地下鉄が接続する中国初の空港となる。

山東省内では高速鉄道網の整備も進む。青島市、煙台市、威海市を結ぶ青煙威栄鉄道は2016年11月に全線が開通し、青島~威海間を約2時間で結んでいる。青島と済南を結ぶ済青高速鉄道については、新たな軌道の建設が2018年末の開通に向けて進んでいる。新路線が開通すれば青島~済南間の所要時間は現在の約2時間半から1時間へ、青島~北京間の所要時間は現在の約5時間から約2時間へと短縮される。また、青島から連雲港(江蘇省)を経由し上海方面に向かう高速鉄道の建設も計画されている。

執筆者紹介
ジェトロ・青島事務所 朱 秀霞(シュ シュウカ)
2016年、ジェトロ入構。2016年4月より青島事務所。

中国・武漢
中部6省で最も高い賃金水準


賑わう繁華街・江漢路(ジェトロ撮影)

武漢市の2017年の実質域内総生産(GRP)成長率は前年比8.0%増となり、中国全体の6.9%を1.1ポイント上回った。社会消費品小売総額(前年比10.4%増)や都市住民の1人当たり可処分所得(同9.2%増)も好調が続いており、武漢市民の消費力は年々高まっている。

これを受けて日系サービス業のビジネス展開も活発だ。中古車買い取り・販売大手のガリバー(本社名:IDOM)は2017年4月、武漢市に中国1号店を開業した。また、同年12月には武漢市に3店舗目となるイオンモールが開業し、2018年には4号店も開業予定だ。

そうした中、武漢市では2017年11月、2年ぶりとなる最低賃金の引き上げが実施された。市内の中心部14地区の最低賃金が月額1,550元から1,750元(約2万9,750円、1元=約17円)となり、中部6省の省都では最も高くなった。消費の拡大によって日系企業のビジネスチャンスが広がる一方、今後は人件費の上昇という課題にも対応を迫られそうだ。

執筆者紹介
ジェトロ・武漢事務所 片小田 廣大(かたおだ こうだい)
2014年4月、ジェトロ入構。進出企業支援・知的財産部進出企業支援課(2014~2015年)、ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課(2015~2016年)を経て現職。

中国・成都
市内の地下鉄路線が計6本に


成都の地下鉄(ジェトロ撮影)

成都市は、2020年までに13本の地下鉄を開通させ、総運行距離508kmの地下鉄網を構築することで、市内「30分交通圏」を実現するという目標を掲げた。

2017年6月に4号線の第2期区間、2017年9月に市内と成都双流国際空港を結ぶ10号線、2017年12月に同市初の環状線7号線が相次いで開通した。これにより、地下鉄路線は計6本、総運行距離は179kmとなった。2017年の地下鉄利用者の年間乗降回数は7億8,200万回に達し、過去最高となった。

市内において地下鉄網の構築が進む一方、市外・省外への高速鉄道の整備も進んでいる。2017年12月に、運行時速250kmで成都市と陝西省西安市を結ぶ高速鉄道「西成高鉄」が開通し、成都~西安間の所要時間が従来の10時間から4時間に短縮された。「西成高鉄」は成都東駅と西安北駅を結ぶ。成都東駅は多くの高速鉄道の発着駅となっており、その影響もあって市東部は、IT企業などが多数立地し若年層人口が流入している市南部とともに、同市で不動産価格が大きく上昇している地区となっている。

執筆者紹介
ジェトロ・成都事務所 郭 穎(カク エイ)
2015年、ジェトロ・成都事務所入所。対日投資事業などを主に担当。

中国・重慶
重慶-貴陽の高速鉄道が開通


重慶西駅(ジェトロ撮影)

市内中心部の軌道交通システムにモノレールを採用している重慶市。2017年12月、市内を南北に貫く地下鉄5号線、高速鉄道駅と空港と市内を結ぶ地下鉄10号線が新たに開通し、運行中の軌道交通路線は6本となった。これにより、軌道交通路線の総運行距離は264kmに伸び、中国国内では第6位、西南地域では第1位の長さとなった。

他方、市内と市外を結ぶ交通インフラの整備にも進展があった。2018年1月25日、重慶-貴陽間の高速鉄道が正式に運行を開始した。最高時速が200kmである同路線の開通により、両都市間の移動時間は従来の約10時間から約2時間に短縮された。これにより、西南地域から、国家戦略である一帯一路を構成する「21世紀海上シルクロード」の拠点都市の一つである広東省広州市までの移動時間が大きく短縮され、今後、西南地域と沿海地域間のさらなる経済的連携も期待される。

また、2017年8月、重慶市江北国際空港の第3滑走路および第3旅客ターミナルが運用を開始し、同空港の全ターミナルの総面積は73万7,000平方メートルに増加した。

重慶市では、交通渋滞が深刻で通勤などに多くの時間を要すること、かつ到着時間が予測できないことが日系企業からも課題として挙げられていた。地下鉄等の公共交通網が整備されれば、渋滞の緩和につながる。また、当地の日系企業には重慶市以外に四川省、雲南省、貴州省など西南部地域全体をカバーしている企業も多いため、域内の連結性を高める鉄道網の整備は物流などの企業のコスト引き下げにつながるとみられる。

執筆者紹介
ジェトロ・成都事務所 郭 穎(カク エイ)
2015年、ジェトロ・成都事務所入所。対日投資事業などを主に担当。