特集:駐在員が見るアジアの投資環境南西アジア2

2018年4月2日

パキスタン・カラチ
不動産価格が上昇


CPECで開発されるタール炭田(ジェトロ撮影)

近年のパキスタンの経済成長は右肩上がりで、2017/18年度の実質国内総生産(GDP)成長率は6.0%を見込む。中国パキスタン経済回廊(CPEC)計画により、電力や道路インフラの整備など総額640億ドルのプロジェクトが進められており、今後数年間は投資が継続される見通しだ。

雇用が増えたことで、人口2億人の消費市場は旺盛となっており、景況に一部過熱感も見られる。特に不動産価格は高騰している。中国人を中心とする外国人駐在員の急増による住宅需要増、富裕層や海外在住パキスタン人による住宅投資ブーム、商業施設の開発などが要因だ。今回の調査では駐在員用住宅借上料(月額)が、前年に比べて約1.5倍となっており、家賃相場の上昇が見られた。元々、十分な安全対策がされた住宅やオフィスが少ないため、需要が供給を上回っている。また、外国人駐在員の住宅には自家発電機、警備員などが必要で、こうした安全対策コストも上昇している。

執筆者紹介
ジェトロ・カラチ事務所 野上 活(のがみ いくる)
2014年、ジェトロ入構。ジェトロ・途上国ビジネス開発課(2014年~2017年)を経て現職。現在、パキスタンの政治・経済に関する調査を中心に担当。

バングラデシュ・ダッカ
支援がもたらす想定外の物価高


市場で売られ流通する世界食糧計画(WFP)の支援米(ジェトロ撮影)

バングラデシュ南部に隣国ミャンマーから多くの避難民が集まっている。2017年8月下旬からの新規流入だけで約70万人、それ以前の合計では100万人を超える。これは欧州連合(EU)に流入したシリア難民のペースをはるかに上回る。世界食糧計画(WFP)は過去6カ月で合計8,000万ドルに相当する支援米を配給したが、調理器具、調味料、野菜等は支援対象外だ。避難民たちは米を売ってこうした物資を調達するため、地元の米価は下落し、それ以外の物価は高騰している。農家の収入は少なくなり、物価高は地元住民の生活を圧迫している。さらに、相場よりも安い賃金で仕事を請け負う避難民も出ている。そのため国際機関や非政府組織(NGO)の間では、ホストコミュニティーへの配慮も重要との認識が広がっている。

執筆者紹介
ジェトロ・ダッカ事務所 古賀大幹(こが たいき)
2010年、ジェトロ入構。サービス産業支援課、アジア経済研究所研究管理課を経て、2015年8月より現職。

スリランカ・コロンボ
物価上昇で給与増圧力


生鮮食品の販売で生計を立てる人も多い(ジェトロ撮影)

スリランカでは近年、相次ぐ天候不順により1次産品の不作が続き、生活必需品の物価上昇が著しい。米やココナツの価格が一時は前年比1.5~3倍にも膨れ上がるなど、台所を直撃している。生鮮食品の値段が安定しない背景には、国内コールドチェーンの整備不足による深刻な食品ロスもある。また、食品以外にも子供の塾や習い事の教育費増などを訴える声も多く、物価上昇は幅広く市民生活に影響している。

生活コストの高騰は国内の賃金上昇圧力につながっており、ジェトロ調査では経営上の問題点として「従業員の賃金上昇」を挙げた企業の割合が70.0%に上るなど、他国・地域の総数平均より高い数値となった。実際に、2017年発行のスリランカ中央銀行年次報告書によれば、2016年の名目賃金上昇率は7.9%と、2015年の7.3%からさらに加速化している。多くの日系企業では1年に1回の昇給制度を設けており、今後も物価上昇とのにらみ合いが続きそうだ。

執筆者紹介
ジェトロ・コロンボ事務所 山本 春奈(やまもと はるな)
2015年、ジェトロ入構。対日投資部(2015~2017年)を経て現職。

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