新車販売最高も生産減(フィリピン)
セダン離れと中国EV台頭

2026年10月1日

フィリピンの2025年新車販売台数は前年から増加し、3年連続で過去最高を記録した。ただし、輸入車の販売が伸びた一方、国内生産台数は減少した。セダンやハッチバックなどの乗用車と、多目的車(MPV)やスポーツ用多目的車(SUV)、ピックアップトラックなどを含む商用車で販売動向の明暗が分かれた。また、中国EVメーカーの存在感が高まった。販売拡大が続く一方、市場需要はセダン中心からMPV・SUV中心へ移っており、既存の現地生産体制とのミスマッチもみられる。

販売台数は過去最高

フィリピン自動車工業会(CAMPI)とトラック製造業者協会(TMA)の発表によれば、加盟企業による販売台数は、前年比0.8%減の46万3,646台(注1)だった(図1参照)。一方、BYDなどの非加盟企業も含めたフィリピン市場全体の新車販売台数は前年比3.7%増の49万1,395台だった。2024年の47万3,842台を上回り、3年連続で過去最高を更新した。ただし、目標の50万台には届かなかった(2026年2月26日付ビジネス短信参照)。

図1:フィリピンの新車販売台数(CAMPIおよびTMA加盟企業のみ)
2015年から2025年までの台数推移を示した棒グラフ。2015年の28万8,609台から2017年の42万5,673台まで増加した後、2020年に22万3,793台まで減少。その後は回復基調となり、2024年に過去最高の46万7,252台を記録した。2025年は46万3,646台で、前年からわずかに減少したものの高水準を維持している。各年の台数は、2015年28万8,609台、2016年35万9,572台、2017年42万5,673台、2018年35万7,410台、2019年36万9,941台、2020年22万3,793台、2021年26万8,488台、2022年35万2,596台、2023年42万9,807台、2024年46万7,252台、2025年46万3,646台。全体として、2020年を底に大幅な回復が見られる。

出所:フィリピン自動車工業会(CAMPI)およびトラック製造業者協会(TMA)の発表データを基にジェトロ作成

BYDが急成長、セダンから多用途車へ需要シフト

2025年のブランド別販売台数(注2)では、トヨタや三菱自動車が引き続き市場を牽引した。一方、中国の比亜迪(BYD)は前年の上位10位から3位に浮上し、市場での存在感を急速に高めた(表1参照)。

表1:フィリピンの新車販売台数(ブランド別) (単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 ブランド 販売台数
(2024年)
販売台数
(2025年)
市場シェア 前年比
1 トヨタ 215,756 227,595 46.2 5.5
2 三菱自動車 89,124 86,808 17.6 △ 2.6
3 BYD 4,780 26,122 5.3 446.5
4 スズキ 20,371 21,984 4.5 7.9
5 フォード 27,997 21,784 4.4 △ 22.2
6 日産自動車 26,774 20,571 4.2 △ 23.2
7 いすゞ 17,641 17,237 3.5 △ 2.3
8 ホンダ 15,518 16,257 3.3 4.8
9 現代自動車 12,023  10,475 2.1 △ 12.9
10 上海汽車(MG) 9,016 8,715 1.8 △ 3.3

出所:「オートインダストリア・ドット・コム(2026年1月30日付)」を基にジェトロ作成

前年比で見ると、日系ではトヨタ(5.5%増)、スズキ(7.9%増)、ホンダ(4.8%増)が販売台数を伸ばした一方、三菱自動車(2.6%減)、日産自動車(23.2%減)、いすゞ(2.3%減)は減少した。日系以外でも、フォードは22.2%減、現代自動車は12.9%減、上海汽車(MG)は3.3%減と、販売台数が減少したブランドが多かった。前年10位だった韓国の起亜は、11位に順位を落としたが、前年比16.7%増で販売台数を伸ばし、10位のMGとの差を縮めた。

こうした中、販売台数を大きく伸ばしたのがBYDだ。前年はブランド別の上位10位圏外(4,780台)だったが、5.5倍の2万6,122台へと急増した。BYDは車種別の販売データを発表していないが、現地自動車メディアはシーライオン6〔販売価格159万8,000ペソ(約399万5,000円、1ペソ=約2.5円)〕について、車種別販売台数上位10位に入った可能性があると指摘している。同社は、大手財閥アヤラ傘下のACモビリティーズ(ACM)が正規販売代理店となっており、フィリピンのエネルギー省(DOE)とも連携し、EV(電気自動車)の普及を推進している。

部門別(加盟企業のみ)で見ると、乗用車が前年比23.1%減の9万2,924台だったのに対し、商用車が7.0%増の37万722台だった。2024年はいずれも前年比で増加傾向にあったが、2025年は乗用車の減少が目立った。
フィリピンの自動車情報サイト「オートインダストリア・ドット・コム」による車種別販売台数ランキングでも、商用車が伸びている(表2参照)。車種別販売データを公表しているメーカーの中で、2025年に最も売れたモデルは、三菱自動車のエクスパンダーだった。販売台数を前年の2万6,242台から2万8,081台(注3)に伸ばし、4位から1位に順位を上げた。エクスパンダーのほか、トヨタのアヴァンザ、ハイエースなども販売を伸ばした一方、セダンタイプの売り上げ減少が目立った。前年1位だったトヨタのヴィオスは、前年比36.3%減の2万7,811台で2位だった。また、前年3位だった三菱自動車のミラージュG4も、32.5%減の1万7,757台で2万台を下回り、8位に順位を落とした。

表2:フィリピンの新車販売台数(車種別) (単位:台)(ーは記載なし) 注:()内は前年度の順位。(-)は前年比で順位が同順、(↑)は上昇、(↓)は下降を示す。
順位 前年比
順位
モデル(ブランド) 販売台数
(2024年)
販売台数
(2025年)
販売価格
(単位:ペソ)
タイプ
1 ↑(4) エクスパンダー(三菱) 26,242 28,081 1,159,000 コンパクトMPV
2 ↓(1) ヴィオス(トヨタ) 43,636 27,811 780,000 セダン
3 ↑(8) アヴァンザ(トヨタ) 17,489 24,704 1,016,000 コンパクトMPV
4 ↓(2) ハイラックス(トヨタ) 26,643 23,819 1,662,000 LCV
(ピックアップ)
5 ↑(9) ハイエース(トヨタ) 15,744 20,526 1,534,000 LCV(バン)
6 ↓(5) ウィーゴ(トヨタ) 18,103 19,063 690,000 ハッチバック
7 ↓(6) ライズ(トヨタ) 18,024 17,965 847,000 コンパクトSUV
8 ↓(3) ミラージュG4(三菱) 26,313 17,757 841,000 セダン
9 ↑(-) タマラオ(トヨタ) — 17,542 1,075,000 LCV
(ピックアップ)
10 ↓(7) イノーバ(トヨタ) 17,648 16,112 1,381,000 MPV

注:()内は前年度の順位。(-)は前年比で順位が同順、(↑)は上昇、(↓)は下降を示す。

出所:「オートインダストリア・ドット・コム(2025年2月5日付、2026年2月3日付)」および各メーカーウェブサイト(2026年6月1日時点)を基にジェトロ作成

現地生産体制の変化と次世代車への対応

自動車産業ポータルを運営するマークラインズによれば、2025年のフィリピンにおける生産台数は、前年比12.5%減の10万2,795台だった(図2参照)。

図2:フィリピンの自動車生産台数
2016年から2025年までの台数推移を示した棒グラフ。2017年の12万6,566台が期間中の最多で、その後減少し、2020年には4万8,616台まで落ち込んだ。2021年以降は回復傾向が続き、2024年には11万7,421台まで増加した。2025年は10万2,795台で前年を下回ったものの、2022年から2023年を上回る水準となっている。各年の台数は、2016年9万6,835台、2017年12万6,566台、2018年8万2,353台、2019年9万3,405台、2020年4万8,616台、2021年6万4,656台、2022年9万3,402台、2023年9万9,496台、2024年11万7,421台、2025年10万2,795台。全体として、2020年を底に回復基調が続いていることを示している。

出所:マークラインズの発表を基にジェトロ作成

四輪車を製造している日系企業は3社で、このうちトヨタの現地法人トヨタ・モーター・フィリピン(TMP)は、ヴィオス(セダン)、イノーバ(MPV)、タマラオ(小型商用車、LCV)を製造している。また、三菱自動車の現地法人ミツビシ・モーターズ・フィリピン(MMPC)は、ミラージュ(ハッチバック)、ミラージュG4(セダン)、L-300(LCV)を生産している。

TMPのヴィオスとMMPCのミラージュ(G4を含む)は、政府の「包括的自動車産業振興戦略(CARS)」の対象車種であり、1車種につき期限延長を含めて11年間で20万台以上を生産するなどの条件の下、総額270億ペソ(約675億円、1ペソ=約2.5円)の優遇措置が適用されている。CARSが公告された2015年当時はセダンが市場の主流であり、同制度もセダンを中心とした現地生産の促進を目的としていた。一方、前述のとおり、コロナ禍以降のフィリピンの自動車市場では、セダンからMPVなどへの需要シフトがみられる。生産面でも、乗用車は前年比15.9%減の7万6,427台となった。フィリピン全体の生産台数の減少幅1万4,626台のうち、乗用車の減少が1万4,452台を占めた。このように、市場需要がMPVなど商用車に分類される車種へ移る中、現地生産の車種構成にも変化が生じている。

また、CARSの後継プログラムとして、「自動車産業における競争力強化のための再活性化プログラム(RACE:Revitalizing the Automotive Industry for Competitiveness Enhancement)」が策定された。併せて、EVの国内生産を推進する「EVインセンティブ戦略プログラム(EVIS)」も導入された。2026年4月には三菱自動車がEVISへの参加意向を表明し、2028年半ばから新型ハイブリッド車(HEV)の現地生産を計画している。

以上のように、フィリピン自動車市場は、新車販売台数が過去最高を更新するなど市場規模の拡大が続いた一方で、需要や競争環境には大きな変化がみられた。消費者の嗜好(しこう)はセダンやハッチバックなどの乗用車から、MPVやSUV、ピックアップトラックなどの商用車へと移りつつある。また、中国EVメーカーが販売台数を急伸させるなど、市場の主要プレイヤーにも変化の兆しがみられる。政府はRACEやEVISを通じて次世代車の国内生産促進を図っており、自動車産業の高度化や電動化に向けた環境整備を進めている。一方で、RACEの具体的な運用には不透明な部分もあり、今後の制度運用の動向や、それがメーカーの投資判断に与える影響が注目される。


注1:

2023年10月5日付地域・分析レポート「内需や物流の改善で、自動車販売・生産ともに前年比増(フィリピン)」では、CAMPIの発表データに自動車輸入流通業者協会(AVID)に加盟しているブランドの台数を加算した推計値を掲載。2023 年以降、AVIDからの情報公開がなくなったため、本レポートではCAMPIおよびTMA発表のデータのみを掲載。 本文に戻る

注2:
「オートインダストリア・ドット・コム」は、CAMPIおよびTMA発表の台数に加え、AVIDなどのデータを含んでいる。 本文に戻る
注3:
エクスパンダーの販売台数は2025年と2026年を含む。本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ・マニラ事務所
西岡 絵里奈(にしおか えりな)
2016年、ジェトロ入構。途上国ビジネス開発課、ジェトロ・プノンペン事務所、ビジネス展開支援課、対日投資課DX推進チーム、ジェトロ島根を経て、2023年9月から現職。