ウクライナ最大のドラッグストアチェーン、積極的投資で事業拡大
2026年7月22日
ウクライナ最大のドラッグストアチェーンであるEVAは、国内に1,170店舗以上を展開する。スキンケア・ボディケア製品、化粧品、香水、家庭用消費品、アクセサリーなど、「女性のあらゆるニーズにこたえる」同社の価値観のもと幅広い製品を扱っている。戦時下でありながら、店舗網の拡大、ロジスティクスセンターの拡大・近代化、プレミアムフォーマット店舗の立ち上げなど、積極的な投資で注目される。ジェトロは2026年4月16日、同社の戦略的マーケティング・コミュニケーション担当副本部長のハンナ・フリシュナ氏、オンライン店舗「EVA.UA」営業部長のイリーナ・ボコバ氏、レピュテーション・マネジメント担当次長のオレクサンドラ・グナティク氏に話を聞いた。
積極的投資で物流インフラ、店舗ネットワークを拡大
EVAは2002年にウクライナ中東部のドニプロを本拠地として創業。同国内に1,170店舗以上構える実店舗には約3万SKU(容量や色などの違いを含む取扱商品数)、オンラインストアには約67万SKUの商品を取り扱う。キーウ州東部のブロバリ、ウクライナ東部のドニプロ、西部のリビウ、南部のオデーサ、北東部のハルキウに小売り用のロジスティクスセンターを構える。特にリビウとブロバリのロジスティクスセンターは大規模で、近年、拡張・近代化や太陽光発電設備の設置などを実施した。フリシュナ氏は、事業の成長見通しは好調であり、物流インフラの増強が必要だと語った。
インターファクス・ウクライナ(2026年4月7日)によると、同社は2025年に新たに73店舗を開設し、2026年には約60店舗を開設予定だ。2026年の投資額は13億3,000万フリブニャ(約48億円、1フリブニャ=3.6円)を見込んでおり、ロジスティクスインフラや店舗ネットワークの拡大、デジタル化などに投資予定だ。
プレミアムフォーマット店舗の設立、ITの活用で顧客サービスに力点
同社は2023年12月、高級セグメントの美容・パーソナルケア商品を中心に取り扱うプレミアムフォーマット店舗「EVAビューティー」を立ち上げた。2026年7月時点でキーウ、リビウ、ドニプロ、チェルニウツィー(ウクライナ南西部の都市)に計5店舗展開しており、新店舗の立ち上げも計画する。顧客の商品選びを支援するサービスにも注力しており、専門家に肌や髪質、メイクアップの相談ができるコーナーや、バーチャル上で化粧品を自分の顔に試すことができるARミラー、アンケート回答内容に応じておすすめの香水を提案するデバイスなどを設置している。顧客のニーズに応じて専門家や人工知能(AI)、テクノロジーを活用しながら、顧客の購買活動を促進する充実したサービスが強みだという。

(ジェトロ撮影)

(ジェトロ撮影)
EVAビューティーのドニプロ店舗は2025年に開設された。ドニプロが所在するドニプロペトロウシク州はウクライナ最大級の産業集積地である一方で、前線に近く、安全性の観点から進出する企業は少ない状況だ。そのような状況下でEVAビューティーが同都市に新店舗を開設することは挑戦であるものの、ウクライナの人々に未来や希望があることを示しているとフリシュナ氏は語った。
EC事業はウクライナ有数のプラットフォームに発展
EVAはオンライン販売にも注力する。同社のオンライン販売サイト「EVA.UA」は、ウクライナの主要なECプラットフォームの1つだ。同社の発表によれば、2017年からEC事業に乗り出し、2023年にはブラックフライデーの売り上げ実績に基づき、EC分野の小売業者トップ3に名を連ねた。また、フォーブス・ウクライナが2024年3月に発表したウクライナのEC企業トップ30では8位に入った。「EVA.UA」では他の販売業者の商品を含めて67万SKU以上の商品を取り扱い、総売上高の12%以上を占める。複数の店が乱立するプラットフォームではなく、1つのマーケットとして形成し、顧客のリクエストを自社のコールセンターに集約するなど、信頼性や透明性の確保を意識している。
ECプラットフォームでは、EVAビューティー、EVAヘルス、EVAキッズ、EVAペットなど、顧客の購入シナリオに合わせて専用ページを設置する。EVAビューティー、EVAヘルスにはオンライン相談機能を設けるなど、カテゴリーごとのマーケティング、顧客サービスを展開する。
ブロバリ、ドニプロ、リビウにEC用のロジスティクスセンターがあり、全国平均配達時間は1.8日だ。物流企業や自社による配達だけでなく、全ストアにピックアップポイントがあることで、顧客が短時間で商品を入手できるのが強みだ。

PB開発力も強み
プライベートブランド(PB)の開発力も同社の強みだ。EVAは70以上のプライベートブランド、5,000SKU以上を擁し、販売数量ベースで約4割を占める。PBは低価格な大衆層向けの商品というイメージが強いが、同社は付加価値のある独自のブランド商品として開発しており、EVAの店舗・ECプラットフォームで独占的に販売する。フェースマスクやヘアケア商品、タイツや香水など、さまざまな商品が国際展示会やコンテストで受賞している。2025年のデータによれば、おむつブランドのJOYは約29%、タイツブランドのビビエン・ペティ(Viv’en petty)は約17%のマーケットシェア(いずれも数量ベース)を誇る。
日本ブランドの取り扱い拡大に意欲
EVAではオンラインを中心に、フェースパックやスキンケア商品、サプリメントなどの日本製品を扱っている。ウクライナでも人気を博する韓国ブランドと比較すると日本ブランドの存在感は劣るが、同国の消費者の間では、日本製品は高品質で信頼できるとの認識が広がっており、EVAとしてもさらなる日本商品を調達したい意向だ。直近では、ある日本企業とのオンライン面談とサンプル分析の結果、新たにスキンケア商品の調達を決め、オンライン販売を開始した。個別のブランドや日本ブランドそのものについて消費者への説明が必要な点は課題ではあるものの、大企業だからこそできる「実験」と捉え、消費者の反応を見ながらさらなる日本ブランドの可能性を探りたいという。
EVAはロシアによるウクライナ侵攻により、店舗の破壊や前線地域での店舗閉鎖、従業員の安全確保、メインターゲット層である女性数百万人の国外避難など、さまざまな困難に直面しながらも、事業継続・拡大に向けて挑戦を重ねている。 新たな顧客を獲得するための出店地域戦略の再考、新たなブランド店舗やテクノロジーを活用した新サービスの立ち上げ、物流施設の近代化・自動化などによる業務プロセスの最適化など、取り組みは多岐にわたる。 ウクライナ全土をカバーする広範なネットワークを通じて同国消費者の生活を支えながら、潜在的な顧客ニーズにこたえるべく積極的な挑戦を続ける同社のビジネス展開が注目される。
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部欧州課ロシアCIS班
柴田 紗英(しばた さえ) - 2021年、ジェトロ入構。農林水産食品部、ジェトロ・ワルシャワ事務所を経て、2024年9月から現職。





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